表紙 前文

 

 ?あ ?い 'い ?う 'う ?え 'え ?お 'お                             ?め   ?や  ?ゆ  ?よ       ?わ  ?ゐ  ?ゑ  ?ん  

 

   ?

 

 琉球語は母音が3個で、「e」と「o」の母音が無いといわれる。この「?え」に収録された語はすべて、短母音の「e」ではなく、長母音の「ee」である。この「ee」は、「ai」が変化した発音である。たとえば、合(あい)、相(あい)、藍(あい)、間(あい)、愛(あい)などである。「ae」が「ee」になったものとしては、「和(あ)え」が変化した「和(え)え」がある。

 

ええ:@ (感) おい。もし、目下の者へ呼びかける語。目上へは、男は、ええさい、

女は、ええたい、と呼ぶ。非常に丁寧には、男は、ええさり、女は、ええたり、とい

う。目下の長老へは、ええなあ、という。 @ええ、姉末(あんしい)。/もし

みさん。

間(ええ)⓪: (名) @うち。 @太郎(たるう)とぅ次郎(じるう)が間(ええ)、

誰(たあ)が来(くう)わ。/太郎と次郎のうちだれかが来い。 @汝(ぃやあ)

や二(たあ)つぃぬ間(ええ)孰(じ)取(とぅ)いが。/おまえは二つのうち

れを取るか。 @其丈(うさきい)人(っちゅ)ぬ間(ええ)ねえ盗人(ぬすどぅ)

ぬ居(うぅ)いがしゅら分(わ)からん。/それだけ多くの人のうちには泥棒がいる

かもしれない。 ➁間(ま)。しばらくの時間。 @間(ええ)有(あ)ん。/間が

ある。 @間(ええ)無(ねえ)ん来(ちゅう)さ。/間もなく来るよ。 @新引

(にいび)為(っし)間(ええ)ん無(ねえ)んでぃどぅ思(うむ)いすぃが、既

(いい)な坊主(ぼおじゃ)生(ん)りたる場所(ばしゅ)い。/結婚して間も

ないとばかり思っていたのに、もう男の子が生まれたのか。 ※間(あい)は、宇治

拾遺物語、義経記にも見える古い共通語である。

藍(ええ):⓪: (名) 藍。藍色染料の原料となる植物。

藍魚(ええいゆ)@: (名) 魚名。小さい魚で薬用になる。

藍色(ええいる)⓪@: (名) 藍色。

藍色(ええいる)う⓪: (名) 藍色のもの。

藍朧(ええうぶる)う⓪: (名) 藍で染めた模様。型付けで染めるので、藍型(ええ

  がた)、ともいう。また、その模様の着物。女の夏物にする。

ええ、ええ⓪: (感・副) おおい おおい。遠くから呼びかける語。 @ええ、ええ

為(しゅ)ん。/(遠くから)おおいと呼びかける。

ええ、ええ@: (感・副) おいおい。もしもし。 @ええ、ええ為(しゅ)ん。/

いおいと呼びかける。もしもしと呼びかける。

藍傘(ええがさ)@: (名) 藍色の紙で張ったから傘。

藍型(ええがた)@: (名) 藍朧(ええうぶる)う、と同じ。

藍紙傘(ええがみがさ)⓪: (名) 藍色に染めた髪を張った傘。着婦人用の傘で、一

般の婦人は白い紙に油を塗っただけの傘を用いた。

相子(ええく)⓪: (名) 胎児がものに感応して、何かの動物に似て畸形などに生

れること。 @兎(うさじ)相子(ええく)。/三つ口。兎唇。 @猿(さある)

相子(ええく)。/口のとがった子など。 @蛸(たく)相子(ええく)為居(

お)ん。/たこの申し子として生まれている。骨なしのかたわである。 *混効験集:

坤巻・言語に、あへこ、とある。

櫂(ええく)⓪: (名) 舟を漕ぐもの。櫂(ぅうぇえく)、ともいう。 *混効験集:

  坤巻・器材に、おやこ、とある。

合喰(ええくぇ)え⓪: (名)[古] 言い合い。言い争い。 @合喰(ええくぇ)えん

  無(ねえ)ん。/言い争いもない。円満である。平和である。 

間(ええ)ざ⓪: (名) 間。物と物との間。また、あい間。すき間。 @走(はし)

るとぅ走(はし)る間(ええ)に指(いいび)挟(はさ)まったん。/雨戸と雨

戸の間に指をはさまれた。

間(ええ)書(が)ち⓪: (名) 行間の注記。

挨拶(ええさつぃ)@: あいさつ。出会った人へのあいさつにも、今日(ちゅう)拝侍

(うぅがなび)ら[こんにちは。目上へ]、今日(ちゅう)[こんにちは。目下へ]、良

いぃ)上月(ぅわあつぃち)でえびる[いいお天気です。目上へ]、嫌(や)な上月

(ぅわあつぃち)遣侍(やいびい)んやあ[悪い天気ですねえ。目上へ]、御草臥(

くたん)でぃん為居侍(さあいび)らに[お疲れもありませんか。目上の老人へ]、気

張(ちば)ゆみ[働いているか。働いている目下の若者へ]、遊(あすぃ)ぶ

でいるか。遊ぶ子供に]、立而居(たっちょお)み[立っているか。立っている目下へ]、

居而居(いぃちょお)み[すわっているか。すわっている目下へ]、何処(まあ)かい

が[どこへ。どこかへ行く目下へ]、などさまざまある。

合図(ええじ)⓪: (名) 呼ぶこと。呼んで誘うこと。 @合図(ええじ)為(しゅ)

  ん。/呼ぶ。

藍絞(ええしぶ)い⓪: (名) 染物の名。藍色のしぼりぞめ。

相中(ええじゅう)⓪: (名) [相中]同僚。仲間。

落(ええ)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) (乳・膿などを)出す。したたらす。「

やす(零す)」に対応する。 @乳(ちい)落(ええ)しゅん。/乳を出す。 ※落(あ)

ゆ、は万葉集・2272にも見える古い共通語である。

相性(ええしょお)⓪: (名) 相性。陰陽家のいう男女の相性。 @彼(あ)二人

(たい)や良(いぃ)い相性(ええしょお)やん。/あのふたりはよく性が合って

る。

相性固(ええしょおぐふぁ)さん⓪: (形) 性が合わない。

藍染(ええず)みい⓪: (名) 藍染め。藍で染めたもの。

藍染(ええす)みやあ⓪: (名) 藍染屋。単に、染屋(すみや)、ともいう。

愛想(ええそお)⓪: (名) 愛想。 @愛想(ええそお)有(あ)る人(っちゅ)。

/愛想のある人。 @愛想(ええそお)良(ゆ)たしゃん。/愛想がよい。

愛想持(ええそおむ)ち⓪: (名) 愛想のいい者。

合気(ええち)⓪: (名)[文] [相気]互いに気が合うこと。 @御近盛(うじゃか

むい)御世(みゆ)や天地(あみち)合気(ええち)成(な)とぅてぃ、時(とぅち)

違(たが)雨(あみ)が降(ふ)りば世果報(ゆがふ)。[おぎやかも御代や 天

地相気なとて 時たがぬ雨が 降ればよがほ]尚真王の御代は天地も気をそろえて、

時節にたがわぬ雨が降れば豊年となる。 ※降(ふ)り、「ば」は已然形であろう。

藍壷(ええつぃぶ)⓪: (名) 藍壷。藍汁を貯えておく甕。

相手(ええてぃ)⓪: (名) @相手。 @相手(ええてぃ)成(な)ゆん。/相手に

なる。 @相手(ええてぃ)為(しゅん)。/相手をする。 ➁同等の力量。甲乙なし。 

@相手(ええてぃ)為(しゅん)。/甲乙なし。 *おもろさうし・33に、あいて、

とある。

藍手入(ええでぃい)る⓪: (名) 藍の葉で作った染料を入れておく竹のかご。手入(てぃい)る、はかご。

相人(ええとぅ)⓪: (名) 同等の力量の者。甲乙のない者。いい相手。 @相人(

  えとぅ)やん。/いい相手だ。

相望(ええぬず)み⓪: (名) 相惚れ。相愛。互いに結婚を望むこと。

藍(ええ)花(はな)⓪: (名) 藍汁に生じる泡。表面に美しく花のように浮かぶ

  のでいう。

合無(ええね)え⓪: (副) あるいは。 @合無(ええね)彼(あ)んがやら分(わ)

  からん。/あるいはそうかもしれない。

藍引(ええび)ちゃあ⓪: (名) 魚の名。刺身などにする、長さ20センチほどの藍

色の魚。

和(ええ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) あえる。あえものにする。

落(ええ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 乳・膿などが、出る。したたり出る。 @

  乳(ちい)ぬ落(ええ)ゆん。/乳が出る。 ※落(あ)ゆ、万葉集2272参照。

愛(ええ)らあしゃん⓪: (形) 愛らしい。(子供などが)かわいらしい。

藍蠟(ええろお)⓪: (名) 藍蠟。染料の名。薄水色に染めるもの。