表紙 前文

 

 ?あ ?い 'い ?う 'う ?え 'え ?お 'お                             ?め   ?や  ?ゆ  ?よ       ?わ  ?ゐ  ?ゑ  ?ん  

 

   へ:ふぇ:べ:ぺ

 

南風(ふぇえ)⓪: (名) @南。 ➁南から吹く季節風。南風風(ふぇえかじ)、とも

  いう。 *おもろさうし・928に、はゑ、とある。

肺(ふぇえ)⓪: (名)[新] 肺。元来は、肺(ふく)、といった。

灰(ふぇえ)@: (名) 灰。

蝿(ふぇえ)@: (名) 蝿。

流行(ふぇえ)い⓪ (名) (衣服・病気・風俗などの)はやり。流行。 @此(く)

ぬ冠(かんむえ)え今(なま)ぬ流行(ふぇえ)い有(や)ん。/この帽子は今の流

行だ。

酢(ふぇえい)⓪: (名) 酢。甘酒(あまざき)、ともいう。

流行(ふぇえ)い歌(うた)⓪: (名) はやり歌。流行歌。民間にはやる小唄の類。

明治の末ごろまでに流行した有名なものとしては、茶売(ちゃあう)い節(ぶし)、川

平節(かびらぶし)、主(しゅう)ん刀自(とぅうじい)、首里(しゅい)から来居(ち

ょお)すぃが[首里から来やうすが]、博打(ばくちゃ)やあ節(ぶし)[ばくちやや

節]、越来様(ぐぃいくうよお)[越来よう]、愛(かな)あ様(よお)[かなよ]、挽(ふ

ぃ)ち物(むん)口説(くどぅち)、小禄染屋節(うるくすみやぶし)、皆其(みなう

り)賛成節(さんせえぶし)[皆おれ賛成節]などがあった。

流行(ふぇえ)い言葉(くとぅば)⓪: (名) 流行語。たとえば、 @医者(いしゃ)

どぅ有(や)る[彼は医者だ。何でも上手な者をさしていう。]鞭(ばち)喰而居(く

ぁとお)ん。[うまいことをした場合にいう。こまを回すばちがよく利いている意か]

などがあった。

灰色(ふぇえいる)@: (名) 灰色。

灰色(ふぇえいる)う⓪: (名) 灰色のもの。 

早起(ふぇえう)き⓪: (名) 早起き。

早生(ふぇえぅん)まり⓪: (名) 早生まれ。正月から3月ごろまでに生まれたもの。

  鈍生(にぶぅん)まり[遅生まれ、11〜12月生まれ]の対。

蠅瘡(ふぇえがさ)⓪: (名) 頭にできる一種の湿疹。蠅がたかるので蠅瘡といった

ものか。

南風風(ふぇえかじ)⓪: (名) 夏に南から吹く季節風。南風(ふぇえ)、南風吹(ふ

  ぇえぶ)ち、ともいう。ただの南風は、南風(ふぇえ)ぬ風(かじ)。

早合点(ふぇえがってぃん)⓪: (名) 早合点。

早(ふぇえ)く@: (名) (時刻が)早く。また、以前。昔。 @朝(あさ)早(ふ

ぇえ)く。/朝早く。朝の早い時間。 @早(ふぇえ)くぬ人(っちゅ)。/以前の人。

昔の人。 @早(ふぇえ)くとぅ今(なま)とお諸(むる)変(か)わ而居(とお)

ん。/以前と今とではすっかり変わっている。 @早(ふぇえ)くから。/以前から。

早くから。かねてから。つとに。 @早(ふぇえ)くから出来(でぃき)やあ有(や)

たん。/以前からよくできる者だった。 @早(ふぇえ)くからぬ怯(しか)あ。/

以前からの臆病者。

早・速(ふぇえ)さん⓪: (形) 早い。速い。時刻・速度がはやい。 @速(ふぇえ)

く歩(あっ)ちゅん。/早く歩く。(時刻の「早く」は、早(ふぇえ)く、の項参照。)

囃子(ふぇえし)⓪: (名) @はやし。はやしことば。声を出して歌曲の詞を助ける

もの。たとえば、サッサ、ハイヤ、ヒヤルガ、無蔵(んぞ)よ、修羅(しゅら)よ、

など。 @囃子(ふぇえし)入(い)りゆん。/はやしを入れる。 ➁口説囃子(く

どぅちべえし)、と同じ。

囃子立(ふぇえした)てぃ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) はやしたてる。けしかけ、

  扇動する。また、おだて上げる。

生(ふぇ)えし手間(でぃま)⓪: (名) (鏡などの)みがき賃。(刃物)のとぎ賃。

早仕舞(ふぇえじめ)え⓪: (名) 早く支度ができること。早仕舞の転意。

早強(ふぇえじゅう)い⓪: (名) 発育が早いこと。強(ちゅう)い、は発育。

囃・映・栄(ふぇえ)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) @囃す。多くは、囃子(ふぇえ

し)入(い)りゆん[はやしを入れる]、囃子立(ふぇえした)てぃゆん[はやしたて

る]を用いる。 ➁染物の色揚げをする。さら染め上げる。 @縢(かな)映(ふぇ

え)ちゃくとぅ清(ちゅ)らく成而居(なとお)ん。/かせ糸を染め上げたら美しく

なった。 B栄やす。みがく。みがいて光らせる。とぐ。 @鏡(かがん)栄(ふぇ

え)為侍(さび)ら。/鏡(金属製)をみがきましょう。 @包丁(ほおちゃあ)栄

(ふぇえ)しゅん。/包丁をとぐ。 *おもろさうし・1101に、はゑて、はへて、

とあり、575に、はやさ、とある。

生・増(ふぇ)え⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 切りきざむ。けずる。「はやす」に

対応する。 @鰹(かつう)増(ふぇ)しゅん。/かつお節をけずる。 @大根根(で

えくに)増(ふぇ)えしゅん。/大根を切りきざむ。

牌女郎(ふぇえずら)あ@: (名) 牌女郎(ふぇえずり)、と同じ。

牌女郎(ふぇえずり)@: (名) 街娼。辻君。遊郭以外で売春する者。‐ずり、は女

郎。ふぇえ、は禁止の意か。また、「昔は公娼は牌尾類とて牌板に其名を書き列ね公示

したりと、然るに今は牌尾類と云へば密娼のこととなれり」(真境名安興)。牌女郎(ふ

ぇえずら)あ、ともいう。 @牌女郎(ふぇえずり)為(しゅ)ん。/街娼となって

売春する。

配剤(ふぇえぜえ)⓪: (名) [配剤] 薬の調合。処方。

配剤書(ふぇえぜえが)ち⓪: (名) 処方箋。

冷素麺(ふぇえぞおみん)⓪: (名)[新] ひや素麺。 

這(ふぇ)え着(ち)り⓪: (名) (小児が)這い回ること。 @這(ふぇ)え着(ち)

り為(しゅ)ん。/※動詞化。

早新引(ふぇえにいび)ち⓪: (名) 早婚。新引(にいび)ち、は結婚。

早寝(ふぇえに)んじ⓪: (名)早寝。夜早く寝ること。

南風(ふぇえ)ぬ御殿(うどぅん)⓪: (名) 首里城の建物名。御城(うぐすぃく)、

  の項参照。 *混効験集:乾巻・家屋に、南風の御殿、とある。

南風(ふぇえ)ぬ風(かじ)⓪: (名)南風。南風風(ふぇえかじ)、は夏に南から吹く

季節風。

蠅(ふぇえ)ぬ糞(くす)う⓪: (名) そばかす(雀斑)。蠅のくその意か。

南風(ふぇえ)ぬ島(しま)あ⓪: (名) 踊りの名。頭に棕梠の皮をかぶり、棒を持

  って、南洋土人の風をして踊るもの。南の島の者の意。

南風(ふぇえ)ぬ坂(ふぃら)⓪: (名) 南風之平等。 ※首里三平等(しゅりみふ

  ぃら)の一つ。現在では使われない概念のようである。

南風原(ふぇえばる)⓪: (名) 南風原。 ※「はえばる」、うるま市勝連の地名。島

尻郡の町名。

フェエフェエ@: (副) はあはあ。息を切らしてあえぐさま。 @一散(いっさん)

成(な)たくとぅ息(いいち)フェエフェエ為(しゅ)ん。/一散に走ったので、は

あはあ息が切れる。

灰吹(ふぇえふ)ち@: (名) 灰吹き。たばこの灰をたたき入れる竹筒。

南風吹(ふぇえぶ)ち⓪: (名) 南風風(ふぇえかじ)[南から吹く夏の季節風]と同

  じ。

南風吹(ふぇえぶ)ちゃあ⓪: (名) 南風の吹く季節。夏。

配分(ふぇえぶん)⓪: (名) 配分。配り分けること。

早々(ふぇえべえ)とぅ@: (副) 早々と。 @早々(ふぇえべえ)とぅ御参候侍(ぅ 

  めえせえび)りよお。/早々とおいで下さいませよ。

早番(ふぇえばん)⓪: (名) 早番。順番が早いこと。 

南風回(ふぇえまあ)い⓪: (名) (冬などに)風向きが南に回ること。なま暖かい

風が吹き、雨になりやすい。

早儘(ふぇえまあ)し⓪: (名) 早死に。年若くして死ぬこと。農村などでは、早死

(ふぇえじ)に、ともいう。‐まあし<儘(まあ)しゅん。

早物(ふぇえむん)⓪: (名) 早いもの。 @既(な)あ成而居(なとお)てぃい、

  早物(ふぇえむん)有(や)さやあ。/もうできていたか、早いもんだねえ。

延(ふぇえ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 張る。張り渡す。「延ふ」に対応する。

引(ふぃ)っ張(ぺえ)ゆん、ともいう。 @沖縄(うちなあ)とぅ八重山(いぇえ

ま)縁(いぃん)ぬ糸(いとぅ)延(ふぇえ)てぃ、面影(うむかぢ)ぬ立(た)た

ば互(たげ)に引(ふぃ)かな。[沖縄と八重山 縁の糸はへて 俤の立たば 互に引

かな]沖縄と八重山の間に縁の糸を張り渡して、おもかげが浮かんだら互いに引っ張

ろう。 *おもろさうし・983に、はゑちへ、とある。

流行(ふぇえ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) はやる。流行する。@風気(ふうち)

ぬ流行(ふぇえ)ゆん。/伝染病がはやる。

流行(ふぇえ)らん風儀(ふうぢ)⓪: (名) はやらない風儀の意。異常な服装、常

識はずれの流儀などをいう。

早立身(ふぇえりっしん)⓪: (名) @早い出世。 ➁(女の)早婚。

入(ふぇえ)り込(ん)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) はいり込む。

憊懶(ふぇえれえ)@: (名) 追いはぎ。「人をこなし気任するを云唐音也憊懶と書(混

効験集)」 @憊懶(ふぇえれえ)行会(いちゃ)てぃ。/追いはぎに会って。 @多

幸黒山(たこおくるやま)憊懶(ふぇえれえ)てぃんどお、喜納番所(ちなあばんじ

ゅ)に泊(とぅ)まらなやあ。女(うぃなぐ)てぃらむん、番所(ばんじゅ)に泊(と

ぅ)まゆみ、急(いす)ぢすぢすぢ屋戸(やどぅ)掛(か)から。(歌の文句)/多甲

黒山は追いはぎが出るそうだ、喜納番所に泊まろうかなあ。女とあろうものが番所に

泊まれるものか、さあ大急ぎで家へ帰ろう。 ※混効験集の「気任」は、「きまかせ」

と読む。混効験集には、現代的な「送り仮名」がないために音読みにしてしまいがち

なことが多い。 *混効験集:坤巻・言語に、はへらい、とある。

拝領(ふぇえろお)@: (名) 勲功などにより、国王から品物をいただくこと。拝領

の意。御拝領(ぐふぇえろお)、はその敬語。 @拝領(ふぇえろお)成(な)ゆん。

/(国王から)いただく。

早業(ふぇえわざ)⓪: (名) 早業。

南風向(ふぇえん)けえ⓪: (名) 南向き。

隼(ふぇんさ)@: (名) はやぶさ。「はいんさ 鷹の惣名(混効験集)」。 *混効験

集:坤巻・気形に、はいんさ、とある。 *おもろさうし・53に、はやふさ、とあ

り、船の美称として使われている。

ヘイ@: (感) おい。目下へ呼びかける時いう語。 @太郎(たるう)、へい。/おい、

太郎。目上に対しては、ヘイ然(さい)[もし]と、然(さい)、を付ける。

ベエ@: (感) いやだ。拒絶する場合の卑語。ベエル、ともいう。相手を軽視・罵倒

して言う。けんかの時には、さらに卑語、ヒャア、を付けて、ベエヒャア、ベエルヒ

ャア、などと言う。

倍(べえ)⓪: @(名)倍。二倍。 @倍(べえ)有(あ)ん。/二倍ある。 @倍(べ

え)喰(か)ぬん。/二倍食う。 ➁(接頭)倍の。 @倍難儀(べえなんぢ)[二倍

の難儀]、倍仕口(べえしくち)[二倍の仕事]など。 B(接尾)倍数を示す。 @

三倍(さんべえ)など。 

ペエ⓪: (名) 物を捨てること・口に入れたものを吐き出すことの小児語。パイ。チ

ャイ。 @ペエ為(しゅ)ん。/※動詞化。

倍仕口(べえしくち)⓪: (名) 倍の仕事。

拝請(ぺえちん)⓪: (名) [親雲上]廃藩前の位階の名。[大やくもい][大役思(う

ふやくむい)]の俗称。一村を領する、里之子親雲上(さとぅぬしぺえちん)、と、筑

登之親雲上(ちくどぅんぺえちん)、の二階があり、王子から数えて前者は四番目、後

者は六番目に位する。 ※親雲上は、「うやくむい」の当て字であろうと思われるが、

「ぺえちん」は、おそらく中国語であろうが、元の漢字が何であるかはわからない。

倍難儀(べえなんぢ)⓪: (名) 倍の難儀。

山羊(べえべえ)⓪: (名) 山羊(ふぃいじゃあ)、の小児語。泣き声によったもの。

樋川(べえべえ)⓪: (名) 筧[樋川(ふぃいぢゃあ)]の小児語。 ※筧(かけい)

  と読む。

ペエペエ⓪: (名) きたない物の小児語。ばっち。御物(ぅんんな)あ、ともいう。

ベエル@: (感) いやだ。拒絶する場合の卑語。ベエ、と同じ。