表紙 前文

 

 ?あ ?い 'い ?う 'う ?え 'え ?お 'お                             ?め   ?や  ?ゆ  ?よ       ?わ  ?ゐ  ?ゑ  ?ん  

 

 「琉和辞典」、いよいよ完成です。結局3年あまりもかかってしまいました。社会的ないやがらせ・いじめが原因ではないことをここに明記いたします。

 

 

   ん:(’ん)

 

 共通語から見ると「ん」で始まる語があるのは不思議なようであるが、「ん」は、「う」、「む」、「ぬ」などが変化したもののようだ。元の音は漢字からおおよそ推測することが出来る。

 

 

御(ん)‐: (接頭) 御(み)。御(おん)。尊敬の接頭辞。御(み)‐、の項参照。 

@御手(んち)、御鼻(んぱな)、御歯(んぱあ) 、御中部(んちゅうぶ)[御腹]な

ど。

ん‐: (助) も。「ん」に終わる語に付く時は、たとえば、衣(ちん)[着物]→衣(ち

ぬ)ん[着物も]のようになる。ただし、吾(わん)[わたし]に付くと、吾(わん)

にん[私も]となる。‐が(が)、‐ぬ(が)、に付くこともある。それぞれの項参照。 

@彼(あ)りん此(く)りん。/あれもこれも。 @取(とぅ)いん為(さ)ん。/

取りもしない。 @何処迄(まあまでぃ)ん。/どこまでも。

‐向(ん)かい: (助) に。「ん」で終わる語に付く時はその「ん」を「ぬ」に変えて、

犬(いん)→犬(いぬ)んかい、のようになる。ただし、吾(わん)[わたし]に付く

時は、吾(わん)にんかい[わたしに]となる。 @木(きい)向(ん)かい登(ぬ

ぶ)ゆん。/木に登る。 @親(うや)向(ん)かい言(ぃゆ)ん。/親に言う。 @

先生(しんしい)向(ん)かい押上(うしゃ)ぎ遣侍(やび)ら。/先生にさしあげ

ましょう。 @先生(しんしい)向(ん)かい御習(うなれ)え為(しゅ)ん。/先

生にお習いする。 @兄上(やっちい)向(ん)かい宣(ぬ)らあったん。/兄に叱

られた。 @仕事(しぐとぅ)向(ん)かい引傾(ふぃっかた)ん而居(ちょお)ん。

/仕事に熱中している。

昔(んかし)⓪: (名) 昔。 @昔(んかし)から今迄(なままでぃ)。/昔から今ま

で。

昔歌(んかしうた)⓪: (名) 昔の歌。古歌。

昔事(んかしぐとぅ)⓪: (名) 昔の事。

昔話(んかしばなし)⓪: (名) 昔話。

昔風儀(んかしふうぢ)⓪: (名) 昔風。昔流。

昔物語(んかしむぬがたい)⓪: (名) 物語。昔話。

昔(んかし)ん人(ちゅ)⓪: (名) 昔の人。古人・老人・故人など。 @昔(んか

  し)ん人(ちゅ)ぬ云言葉(いくとぅば)。/昔の人のことば。格言。

百足(んかぢ)⓪: (名) むかで。

向(ん)か⁼ゆん@: (自 ⁼あん、⁼てぃ) @向かう。向く。 A適する。 B向かう。

敵対する。

剥(ん)き⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 剥ける。 @皮(かあ)ぬ剝(む)きゆん。

  /皮がむける。

向(ん)き⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 向ける。

無空(んくう)⓪: (名) 幼児の喃語。赤んぼうが、まだことばになっていない音声

を発すること。生後二か月くらいからする。 @坊主(ぼおじゃ)あや無空(んくう)

為侍(しゃびい)み。/ぼっちゃんは声を出しますか。

向(ん)けえ@: (名) @向かい。向かい側。 @向(ん)けえや誰(たあ)有(や)

が。/向かい(の家)は誰か。 A(接尾)向き。 @南風(ふぇえ)向(ん)けえ

[南向き]、東(あがり)向(ん)けえ[東向き]など。

向(ん)けえ風(かじ)⓪: (名) 向かい風。逆風。

迎(んけ)え面(づぃら)@: (名) 迎えてすぐ。会うが早いか。‐づぃら<つぃら

  (顔)。迎(んけ)え端(はな)、ともいう。 

迎(んけ)え端(はな)@: (名) 迎えてすぐ。迎えたとたん。会うが早いか。迎(ん

け)え面(づぃら)、と同じ。 @迎(んけ)え端(はな)悪口(あっく)為(しゅ)

る物(むの)お有(あ)らん。/会うが早いかどなりつけるものではない。

迎(んけ)え⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 迎える。 @迎(んけ)えが行(い)ち

ゅん。/迎えに行く。

下座(んざ)⓪: (名) @下人。下男下女。奴隷的な使用人。身代金[胴代(どぅし

る)]によって使われる者。 A[文]やつ。 @嫌(い)や生(い)ち逆為(さかし)

下座(んざ)ぬ言(ぃゆ)る事(くとぅ)ぬ憎(にく)さ。[いや 生さかしんざの 言

ふることの憎さ(忠臣身替)]いや、なまいきなやつの言うことの憎さよ。 ※忠臣身

替(ちゅうしんみがわり)は、辺土名親雲上(へんとなぺえちん)作の組踊である。

下座子(んざっくぁ)⓪: (名) 下座(んざ)、と同じ。とくにその若い者をいう。

美里(んざとぅ)@: (名) 美里。 ※美里(みさと)は、沖縄市の地名。

嫌(ん)じゃでぃ⓪: (副) いやというほどたくさん。どっさり。うんと。 @芋(ぅ

  んむ)ぬ嫌(ん)じゃでぃ有(あ)ん。/さつまいもがうんとある。

武者者(んしゃむん)⓪: (名) [文]頼もしい人間。申し分のない者。 @村原刀

自(むらばるとぅじ)や目口(みいくち)柔柔(やふぁやふぁ)とぅ小萎(くうしゅ

う)らあしい影(かあぎ)、本(ふん)ぬ是(んちゃ)武者者(んしゃむん)有(や)

すぃん付(つぃ)いてえ然(だあ)按司(あじ)や丁度(ちゃんとぅ)打(う)ち惚

(ふ)りてぃ。[村原妻や目口やはやはと小しほらしいかあげ ほんのむちやむしやも

のやすんついてや だあ按司やちやんとうちほれて(大川敵討)]村原の妻は顔だちが

やさしく美しく、ほんとうに申し分のない者なので、そこで按司はすっかり惚れこん

で。 ※大川敵討(おおかわてきうち)は、久手堅親雲上(くでけんぺえちん)作の

組踊である。

乱(んじゃ)らか⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) (糸・髪などを)もつれさせる。乱

れさせる。

乱(んじゃ)り⓪: (名) 乱れ。もつれ。髪・糸・縄などについていう。国・家など

の乱れは、乱(みだ)り、という。

乱(んじゃ)り者(むん)@: (名) 乱暴者。手こずらせる者。

乱(んじゃ)り⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @(髪・糸などが)もつれる。乱れる。 

A(事が)もつれる。やっかいな事になる。 @此(く)ぬ仕事(しぐと)お乱(ん

じゃ)り而居(とお)さ。/この仕事には手こずっている。[心・国などが乱れること

には、乱(みだ)りゆん、を用いる。]

引去引去(んじゃんじゃ)とぅ⓪: (副) ずけずけ。無遠慮に面罵するさま。 @引

去引去(んじゃんじゃ)とぅ言(い)ち取(とぅ)らち面小(つぃらぐぁあ)成(な)

ちゃん。/ずけずけと言って、顔も上げられなくしてやった。

引種(んしゅ)@: (名) 火薬。 引種(いぃんしゅ)、と同じ。

重重(んじゅんじゅ)うとぅ@⓪: (副) うんと強く。 @重重(んじゅんじゅ)う

  とぅ殴(すぐ)ゆん。/うんと強くなぐる。

味噌(んす)⓪: (名) 味噌。味噌(みす)、ともいう。

御衣(んす)@: (名) [御衣]@着物(ちん)、の敬語。御召し物。みそ(御衣)。 

A黄色紙(ちいるかび)[その項参照]のことをいうことがある。

溝(んず)⓪: (名) 溝。下水。溝(んんず)、ともいう。

味噌菜葉(んすなばあ)⓪: (名) 味噌菜の意。葉野菜の名。ふだん草に似て大きい。

‐召候(んせえ)ん: (接尾・不規則) 〜られる。お〜になる。‐召候(みせえ)ん、

と同じ。ただしふつう、‐召候(みせえ)ん、の方がやや敬意の度が高い。しかし、

接頭語、御(う)、が付くと、ふつう、‐召候(んせえ)ん、の方がかえって敬意の度

を増す。すなわち、たとえば、読(ゆ)み召候(んせえ)ん、読(ゆ)み召候(みせ

え)ん、御読(うゆ)み召候(みせえ)ん、御読(うゆ)み召候(んせえ)ん[いず

れも読まれる、お読みになる]の順にあとのものほど敬意の度が増す。

無蔵(んぞ)@: (名) [文][無蔵]男が恋する女を親しんでいう語。恋人(女)。

萎(しゅ)ら[その項参照]ともいう。 @無蔵(んぞ)が面影(うむかぢ)に魅(ふ

ぃ)かさりてぃ我身(わみ)ぬ傘(かさ)に顔(かう)隠(かく)ち忍(しぬ)でぃ

行(い)ちゅん。[無蔵が面影に ひかされてわ身の 傘に顔かくち 忍で行きゆん]

恋する女のおもかげにひかれて、わたしは傘に顔をかくして忍んで行く。

無蔵(んぞお)さん@: (形) 愛らしい。かわいい。那覇その他で多く用いるが、首

  里ではあまり用いない。

んだ⓪: (感) @どて。どりゃ。 @んだ見(み)しれえ。/どれ、見せろ。 Aこ

  ら。 @んだ此(く)に輩(ひゃあ)。/こら、こいつ。

濡(ん)だ⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 濡らす。

御手(んち)@: (名) 手(てぃい)の敬語。御手。

棘(んぢ)@: (名) とげ。草木・魚骨・木片などのとげ。

御櫃(んちぇえ)@: (名) 櫃(けえ)[衣びつ・衣裳箱]の敬語。御衣裳箱。

棘突(んぢつぃ)ちゃあ⓪: (名) あざみ。突花(つぃばな)、ともいう。 

剥(ん)ち卵(たまぐ)@: (名) 皮をむいたゆで卵。肌の美しいのにたとえる。 @

色(いろ)お芙蓉(ふゆう)ぬ色(いる)、肌(はだ)あ剥(ん)ち卵(たまぐ)ぬ肌

(はだ)。/色は芙蓉の色、肌はむき卵の肌。

土(んちゃ)⓪: (名) 土。土壌。

是(んちゃ)@: (副) なるほど。全く。ほんとに。はたして。予想にたがわず。 @

是(んちゃ)彼(あ)ん有(や)さ。/ほんとうにそうだよ。

御影(んちゃあぎ)⓪: (名) 影(かあぎ)[姿・容貌]の敬語。御姿。御容貌。

御綿入(んちゃあぎ)りい⓪: (名) 綿入れ(わたいり)の敬語。御綿入れ。

苦木(んぢゃき)⓪: (名) 植物名。にがき。樹液は健胃剤、害虫駆除などに用い、

木材は、虫がつかないのでたんすなどを作る。

苦(んぢゃ)さん⓪: (形) にがい。

磨(んぢゃ)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 磨く。磨いて光らせる。

苦竹(んぢゃたき)⓪: (名) 竹の一種。ほうらいちく。「にがたけ」に対応する。苦

竹(んぢゃだき)、ともいう。垣根などに植え、高さ3〜4メートル。ざるなどを作る

のに用いる。

苦竹(んぢゃだき)⓪: (名) 苦竹(んぢゃたき)、と同じ。

御蚊帳(んちゃちゃ)⓪: (名) かちゃ(蚊帳)の敬語。御蚊帳。

御加手物(んちゃてぃむん)⓪: (名) 加手物(かてぃむん)[おかず]の敬語。

苦菜(んぢゃな)⓪: (名) 植物名。わだん。ほそばわだん。薬草の名。山野に自生

  し、その葉は大変にがく、健胃剤となる。「にが菜」の意。

御綿無(んちゃな)し⓪: (名) 綿無(たな)し[女の夏の礼服]の敬語。また、夏

  着全体の敬語にもなる。

苦菜湯(んぢゃなゆう)⓪: (名) 苦菜(んぢゃな)、の葉をすりつぶして取った汁。

  解熱剤・健胃剤にする。

土(んちゃ)ぬ間(みい)⓪: (名) 土の中。土中。 @土(んちゃ)ぬ間(みい)

  から緑(みどぅり)ぬ出(ぃんじ)ゆん。/土の中から芽が出る。

御紙(んちゃび)⓪: (名) 紙銭。春秋の彼岸に焚く、銭型を打った紙。御紙の意。

また、その行事。彼岸祭り。平民は多く、紙焙(かびあん)じい、という。大名以上

は彼岸の入り[入(い)り日(ふぃ)]に行い、士族は彼岸の中日[中日(ちゅうにち)]

に行う。平民はその後に行う。

土塊(んちゃぶく)⓪: (名) 土塊。土くれ。

御釜(んちゃま)⓪: (名) 御釜。鍋釜類の敬語。

苦味(んぢゃみ)⓪: (名) にがみ。

土弄(んちゃむた)あん⓪: (名) 土遊び。泥遊び。

苦物(んぢゃむん)⓪: (名) @にがいもの。 A悪者。

苦笑(んぢゃわれ)え⓪: (名) 苦笑い。 @苦笑(んぢゃわれ)え為(しゅ)ん。

  /※動詞化。

御神(んちゃん)@: (名) [御神]神。神様。祖神。祖先の神様をいう。自然の神・

  火の神などにはいわない。

御神御棚(んちゃんうたな)@: (名) 神棚。

御神(んちゃん)一(てぃい)つぃ@: (名) 一族一門。同族。「御神一つ」の意。 @

飛出(とぅんじ)たる者(むぬ)や村原(むらばる)ぬ母(あやあ)とぅ御神(んち

ゃん)一(てぃい)つぃぬ近御同胞(ちちゃうんぱだん)[とんぢたる者や 村原のあ

やと 御神一つの 近おんぱだん(大川敵討)]まかり出た者は、村原夫人と祖神を同

じくする近い親類。 ※大川敵討(おおかわてきうち)は、久手堅親雲上(くでけん

ぺえちん)作の組踊である。

三年(んちゅ)@: (名) 一昨年。おととし。また、三年前。<三年(みちゅ)。 @

三年(んちゅ)成(な)てぃ。/三年経って。 @三年(んちゅ)成(な)てぃぬ戦

(いくさ)。/三年前の戦争。 ※おととしは、二年前である。満と数えが混在してい

るのである。

‐ん人(ちゅ): (接尾) の人(<‐ぬ人(っちゅ))。 @首里(しゅい)ん人(ちゅ)

[首里の人]。大和(やまと)ん人(ちゅ)[日本人]など。

御瘤(んちゅうぶ)@: (名) 腹の敬語。御腹。さらにその上の敬語は、御瘤(うん

  ちゅうぶ)。<瘤(くうばあ)。 

御腰(んちゅし)⓪: (名) @くし(腰)の敬語。 ➁おこし。女の腰巻の敬語。 

御庫裡(んちゅちゃ)@: (名) 庫裡(くちゃ)[若夫婦の寝室]の敬語。上流家庭で

使う語。

御庫裡(んちゅちゃ)母前(あやあめえ)@: (名) 夫が旅行中の奥様。

御米(んちゅみ)⓪: (名) お米。 ※「okome」が「ukumi」となって変化したので

あろう。

剥(ん)⁼ちゅん@: (他 ⁼かん、⁼ち) 剥く。皮をむく。 @九年母(くにぶ)剥(ん)

ちゅん。/オレンジをむく。 @芋(ぅんむ)剥(ん)ちゅん。/さつまいもの皮を

むく。

‐入(ん)⁼ちゅん: (接尾 ⁼かん、⁼ち) 込む。 @投(な)ぎ入(ん)ちゅん[投

げ込む]、押(う)し入(ん)ちゅん[押しこむ]、差(さ)し入(ん)ちゅん[さし

こむ]、入(ふぇえ)りん入(ん)ちゅん[はいりこむ]など。

‐んでぃ: (助) @と。引用句を受ける。 @何(ぬう)んでぃ言(ぃゆ)たが。/

何と言ったか。「ん」に終わる語に付く時は短縮されて、‐でぃ、となることもある。 

@行(い)ちゅんんでぃ言(ぃゆ)たん。/「行く」と言った。短縮されて、行(い)

ちゅんでぃ言(ぃゆ)たん。[行くと言った。]ともなる。 @此(く)ん長(なげ)

え待(ま)ちゅんでえ思(うま)あんたん。/こんなに待つとは思わなかった。 A

ために。 @息変(いいちげ)えい為(しゅ)んでぃ浮上(うちゃ)がたん。/息を

するために水中から浮き上がった。

濡(ん)でぃ皮(かあ)@: (副) @雨などに濡れたさま。びっしょり。 @濡(ん)

でぃ皮(かあ)為居(しょお)ん。/びっしょり濡れている。 Aみじめで見るかげ

もないさま。

‐んでぃさ: (助) とさ。ということだ。‐んでぃ言(ぃゆ)さ[と言うよ]の略。 

  @幽霊(ゆうりい)ぬ出(ぃんじ)たんでぃさ。/幽霊が出たとさ。

‐んでぃち: (助) と言って。 ‐んでぃ言(い)ち[と言って]の略。

濡(ん)でぃ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @濡れる。 A零落する。

‐んでぃる: (助) という。‐んでぃ言(ぃゆ)る[という]の略。

‐んでえ: (助) など。でも。軽く扱う意を表す。 @此(く)りんでえ。/これで

も。 @煙草(たばく)んでえ御押上召候(うしゃがみしょおれ)え。/たばこでも

召し上がり下さい。 @何(ぬう)んでえ有(あ)が。/何などがあるか。

空(んな)@: (名) から。むなしいこと。空虚。 @空(んな)成而居(なとお)

ん。/からになっている。

皆(んな)@: (名) 皆。すべて。全員。全部。

胸半計(んなあか)り@: (名) 一尋の半分。半尋。片手を伸ばして指先から胸の中

央までの長さをいう。昔、布の長さなどを計った単位。

‐未(んなあ)ら: (接尾) 「不適切に早い時期に」の意。 @明月(あかつぃち)

未(んなあ)ら[夜明けなのに]、正月(しょおぐぁつぃ)未(んなあ)ら[正月早々

にもかかわらず]など。

空居(んない)い@: (名) 無為に座っていること。‐いい<居(いぃ)ゆん。

空嬉(んなうっ)しゃ@: (名) ぬか喜び。

空殻(んながら)@: (名) から。からっぽ。容器に何もはいってないこと。

空籤(んなくじ)@: (名) からくじ。はずれたくじ。

空口(んなくち)⓪: (副) 何も食べさせないさま。 @空口(んなくち)為(し)

みゆん。/何も食べさせない。 @空口(んなくち)戻(むどぅ)ち肝(ちむ)痛(や)

ぬん。/何も食べさせずに帰して後悔する。

空車(んなぐるま)@: (名) からの車。空車。

空騒(んなさわ)ぢ@: (名) から騒ぎ。

空頼掛(んなたるが)き@: (名) 空頼み。

空手(んなでぃい)⓪: (副) 素手。手ぶら。手に何も持たないさま。また、みやげ

ものを持たないさま。 @空手(んなでぃい)行(い)ちゅん。/手ぶらで行く。

虚手(んなでぃい)空手(からでぃい)⓪: (副) 素手。手ぶら。徒手。 @虚手(ん

なでぃい)空手(からでぃい)為(っし)。/手ぶらで。 @虚手(んなでぃい)空手

(からでぃい)行(い)ちゅん。/手ぶらで行く。

港(んなとぅ)@: (名) 港。泊(とぅまい)、ともいう。

空胴(んなどぅう)⓪: (副) 身に何も持たないさま。身一つ。また、みやげものを

持たないさま。素手。手ぶら。 @空胴(んなどぅう)行(い)ちゅん。/手ぶらで

行く。

虚胴(んなどぅう)空胴(からどぅう)⓪: (副) 身一つ。素手。

港小(んなとぅぐぁあ)⓪: (名) 港小。島尻の旧具志川間切にある港。 ※港小(み

なとぅぐぁあ)は、現在の島尻郡八重瀬町の港川(みなとがわ)のこと。更新世化石

人骨の港川人で有名である。具志川間切は、具志頭間切の間違い。

港昨夜(んなとぅゆうび)ぬ子(っくぁ)@: (名) さめの一種。ぼうざめ。

空難儀(んななんぢ)@: (名) 徒労。無駄骨折り。

空張(んなば)い@: (名) むなしく目をあいていること。目をあけていても何も見

ないこと。 @目(みい)空張(んなば)い為居(しょお)ん。/呆然としている。

空畑(んなばた)@: (名) 何も植えてない畑。あいている畑。

空待(んなま)ち@: (名) むなしく待つこと。待ちぼうけ。

空物(んなむん)@: からっぽ。中に何もないこと。

空家(んなやあ)@: (名) あき家。

空屋敷(んなやしち)@: (名) あき屋敷。家のない敷地。さら地。

空腹(んなわた)⓪: (名) 空腹。すき腹。

空(んな)ん喰(ぐぇ)え@: (名) 徒食。働かないで食うこと。

胸(んに)@: (名) 胸。 @胸(んに)時目化(だくみか)しゅん。/胸をときめ

かす。 @胸(んに)焼(や)ちゅん。/焦心苦慮する。危険に会った時や他人の危

険を見た時などにいう。

衽(んに)@: (名) 着物のおくみ。

棟(んに)@: (名) 建物の棟。

胸毛(んにぎい)@: (名) 胸毛。

胸屹度屹度(んにぎとぅぎとぅ)@: (副) 胸がどきどきするさま。胸動悸動悸(ん

にだくだく)、胸鼓動鼓動(んにどんどん)、などともいう。 @胸屹度屹度(んにぎ

とぅぎとぅ)為(しゅ)ん。/※動詞化。

胸口(んにぐち)@: (名) みずおち。落(う)とぅし、ともいう。

胸修羅(んにじいら)@: (名) 心労。精神的な苦労。心を痛めること。‐じいら<

修羅(しいら)。 @胸修羅(んにじいら)ぬ多(うふ)さん。/心労が多い。 @子

(っくぁ)ぬ触(ふ)り者(むん)成(な)てぃ胸修羅(んにじいら)入而居(いっ

ちょお)さあ。/子供がならず者になって苦労させられているよ。

胸俵(んにたあら)@割(わ)りゆん@: (句) 心配で、胸がつぶれる。 @只今(た

でえま)ぬ事(くとぅ)有(や)てぃ胸俵(んにたあら)割(わ)り而居(とお)ん。

/突然のことなので、心配で胸がつぶれる思いだ。

胸動悸動悸(んにだくだく)⓪: (副) 胸がどきどきするさま。 @胸動悸動悸(ん

にだくだく)為(しゅ)ん。/※動詞化。

胸鼓動鼓動(んにどんどん)⓪: (副) 胸がどきどきするさま。 @胸鼓動鼓動(ん

にどんどん)為(しゅ)ん。/※動詞化。

胸冷(んにふぃじゅる)さん@: (形) はっとする。肝を冷やす。

蓑(んぬ)⓪: (名) みの。かや・わら・びろうなどで編んだ、農民の雨着。 ※万

葉集・3125、「ひさかたの雨のふる日をわが門に蓑笠着ずて来(け)る人や誰(た

れ」。

否(んば)⓪: (感・名) いや。拒絶・不承知の意を表す語。また、いやがること。

いやと言うこと。拒否すること。否(んんば)、否(んぱ)、否(んんぱ)、ともいう。 

@否(んば)有(や)い侍(びい)ん。/いやです。 @否(んば)為(しゅ)ん。

/いやと言う。拒絶する。

否(んぱ)⓪: (感・名) 否(んば)、と同じ。

‐否(んぱ)あ: (接尾) いやがる意を表す接尾辞。〜するのをいやがること。 @

行(い)ち否(んぱ)あ、行(い)か否(んぱ)あ[ともに、行くのをいやがること]、

書(か)ち否(んぱ)あ、書(か)か否(んぱ)あ[ともに、書くのをいやがること]、

為(し)い否(んぱ)あ、為(さ)ん否(んぱ)あ[ともに、するのをいやがること]

など。 @為(し)い否(んぱ)あどぅ有(や)る。/するのはいやだ。 @呼(ゆ)

だすぃが来(ち)い否(んぱ)あ為居遣侍(しょおやびい)ん。/呼んだが、来るの

はいやだと言っています。

否否(んぱあんぱあ)@: (感・名) いやいや。いやがること。 @否否(んぱあん

ぱあ)ぬ多(うふ)さん。/いやがることが多い。 @否否(んぱあんぱあ)為居(し

ょお)てぃ。/いやいやながら。不承不承。

御花(んぱな)⓪: (名) お花。花の敬語。 @御花(んぱな)押上(うしゃ)ぎゆ

ん。/(仏壇に)お花を上げる。

御鼻(んぱな)@: (名) 御鼻。鼻の敬語。

御花御酒(んぱなうざき)⓪: (名) 御花米(んぱなぐみ)[祭祀用の米]とお神酒。

御願(うぐぁん)[祈願]をする時、米を洗い清めて盆に盛り、その上に酒をみたして

杯をのせて拝む。その米と酒をいう。

御花米(んぱなぐみ)⓪: (名) [御花米]御願(うぐぁん)[祈願]をする時に用い

る、洗い清めた米。もし、あたりに水がなくて洗ってない場合には、涸(か)ら御花

(んぱな)、という。また、洗った時には、御澄(うし)まし、という。

嶺井(んみ)@: (名) 嶺井。 ※嶺井(みねい)は、南城市大里の地名。

ンモオ⓪: (感) モー。牛の鳴き声。

牛額突子(んもおがっくい)⓪: (名) 子供の遊戯の名。ごっつんこ。額と額とを突

き合わせること。

見(んん)⁼じゅん⓪: (他・不規則) @見る。 @芝居(しばい)見(んん)じゅん。

/芝居を見る。 @見(んん)だん風(ふう)なあ。/見ないふり。 @見(んん)

だりゆん。/イ・見られる(受身)。ロ・見られる・見るに足る。 @見(んん)だん

物(むん)見(んん)ちゃんねえ。/見ないものを見たようにの意。子供などが非常

にかわいいさま。また、玩具などを非常に大事にするさま。 @見(んん)じゃい聞

(ち)ちゃい。/見たり聞いたり。 A〜してみる。 @取(とぅ)てぃ見(んん)

でえ。/(取るなら)取ってみろ。 @読(ゆ)でぃ見(んん)だ。/読んでみよう。

溝(んんず)⓪: (名) 溝(んず)、と同じ。

否(んんば)⓪: (感・名) 否(んば)、と同じ。

否(んんぱ)⓪: (感・名) 否(んぱ)、否(んんば)、否(んば)と同じ。

否否(んんんん)⓪: (感) ううん。いや。いいえ。目下またはきわめて親しい者に

  対して、軽く、否定または拒絶の意を表す語。