表紙 前文

 

 ?あ ?い 'い ?う 'う ?え 'え ?お 'お                             ?め   ?や  ?ゆ  ?よ       ?わ  ?ゐ  ?ゑ  ?ん  

 

   な

 

 日頃、琉球語および言語学に関して思いついていることを述べたい。以下は、ある特定の会社の従業員のことを普遍化しようとするものではなく、自分の考えを実証しようとするものである。会社の名前は名護市宮里に本店をおく「フレッシュミートがなは」である。琉球語は現在、消滅危機言語に指定されている。K・Nは、二十代後半の男性であるが、大家(うふやあ)、家小(やあぐぁあ)という単語も理解しえないようである。そのわりには、共通語に存在しない「ぐぁあ」という発音がとてもスムーズである。S・Nという女性は二十代であるが、普段の会話は実にきれいな名護言葉(国頭語)のイントネーションである。私が日頃思いついていることとは、言語の根幹をなすのはイントネーションなのではないかということである。その次に発音があって最後に意味がやって来るものなのではないかということである。英語の達人といわれる人達の英語を聞いていて感じることは、まず文法的に正しく、次に発音がネイティブに近いにもかかわらず、イントネーションがネイティブとは明らかに違うということである。同時通訳の神様と言われた國弘正雄からしてそうなのである。言語におけるイントネーションは脳みそにおける脳幹のようなものなのではなかろうか。仮にいま芥川の「羅生門」を京都弁のイントネーションで読んだとすれば、もはやそれは共通語ではなく「京都弁」といえるのである。(実際に私は京都弁で源氏物語を読んだことがある。)聖書のコリント人への手紙13章13節に「信仰・希望・愛のうちもっとも大いなるものは愛である。」とあるが、言語においてもっとも大いなるものはイントネーションであることを、元ウェイトリフターのS・Nが立証しているように思える。もう一点であるが、十代のYとRという女生徒、二十代のMという女性の発音を聞いていると「sa,,shi,su,se,so」がほぼ「sha,shi,shu,she,sho」と聞こえるのである。ほぼというのはやや中間的な発音だということである。これは私が難聴だからではないようである。「し(shi)」が昔は「si」と発音されていたのであるから、その他の音も将来同じように変化するのはむしろ自然と思われる。何年か後には、「世界」が「しぇかい」、「砂糖」が「しゃとう」、「好き」が「しゅき」、「空」が「しょら」と発音される時代が確実に来るものと思われる。こんにちでも、幼児の発音はだいたいそのようであるが、これは幼児の発音が悪いのではなく、将来の自然な日本語の発音を先取りしているものと思われる。現在、琉球語のハ行は、「ふぁ、ふぃ、ふぅ、ふぇ、ふぉ」と発音する人と「は、ひ、ふ、へ、ほ」と発音する人が混在している。たとえば、「火」は、「ふぃい」と発音する人と「ひい」と発音する人がいて、どちらも相手に対して違和感がないのである。これは要するに、ファ行がハ行に移行する中間点にあるということである。琉球語は、いわゆる進化論のミッシングリンクを目の当たりにすることができる貴重な言語なのである。ちなみに今帰仁では「火」を「ぴい」と発音する。「屁をひる」は「ぴいぴいん」である。これは、その昔琉球語のハ行が全体的にパ行であった名残りである。琉球語は、パ行、ファ行、ハ行を一望することができ、なおかつその移行過程も同時に見ることができる言語なのである。もう一つちなみに言えば、共通語のハ行は奈良時代以前はパ行であり、その後平安時代あたりにファ行となり室町時代あたりにハ行となったようである。室町時代のなぞなぞの本に「母には二度あうが父には一度もあわないものは何か」というのがある。このなぞなぞは平安時代にできたもので、答えは「くちびる」である。室町時代には答えの意味自体が分からなかったようである。平安時代の「母」の発音が「ふぁふぁ」であることがわからなかったからである。重ねてちなみに言えば、サ行を発音する時には舌先が歯に接しているが、シャ行を発音する時には舌先が歯から離れている。パ行・ファ行を発音する時には、両唇が接しているが、ハ行を発音する時には両唇が離れている。つまりどちらもあまり労力を使わない方向へと向かっているのであり、これらを止めること自体が自然の流れに反する不合理なことなのである。(最後に、フレッシュミートがなはの社長は、授業員とその家族に対してきわめて細やかな配慮をされ、また社会奉仕にも力を入れていらっしゃる敬服に値する人物であることを述べておきます。従業員の皆様には私のようなわけのわからない人物とお付き合いいただき感謝申し上げます。ここで筆者が現在当店の従業員であることを明記しておきます。)

 

⁼な: (接尾) な。禁止の意を表す。ふつう本土方言の「終止形」に対応する形に付く。 

@読(ゆ)むな。[読むな]など。ただし、ラ行の動詞の場合は、@喚(あ)びんな。

[泣くな]、取(とぅ)んな。[取るな]などとなる。また、‐な、のあとに、‐けえ、

[<置(う)けえ。置けよ]を付けていうこともある。 @為(しゅ)なけえ。[する

なよ]など。

‐な: (接尾) 動詞の「未然形」について希望の意をそえる。 @聞(ち)かな。[聞

こうよ。聞きたい]など。

菜(なあ)⓪: (名) からし菜。菜。すなわち葉野菜一般は、青葉(おおふぁ)、とい

う。

縄(なあ)⓪: (名) 縄。

名(なあ)@: (名) @名。名前。人や物の名。 @名(なあ)言(ぃや)りゆん。

/名高い。有名だ。 @彼(あ)れえ言(ぃや)而居(とお)ん。/彼は有名である。 

➁名前、とくに童名(わらびなあ)すなわち生まれる時に付けられる名前。例をあげ

れば次のようなものがある。

 士族男子・・・太郎(たるう)⓪、次郎(じるう)⓪、三郎(さんどぅう)⓪、山

(やまあ)⓪、松(まつう)⓪、亀(かみい)⓪、牛(うしい)⓪、乙(んんとぅう)

⓪、愛(かなあ)⓪、鎌手(かまでえ)⓪、真刈(まかるう)⓪、巣盛(しゅみい)

⓪、素田(すたあ)⓪、柄付(うぃちゃあ)⓪、鶴千代(ちるじゅう)⓪、虎千代(と

ぅらじゅう)⓪、金(かにい)@、鍋(なびい)⓪など。

 平民男子・・・太郎(たらあ)⓪、次郎(じらあ)⓪、三郎(さんだあ)⓪、松(ま

ちゃあ)⓪、亀千代(かみじゃあ)⓪、牛(うしゃあ)⓪、乙(んんたあ)⓪、鎌手

(かまだあ)⓪、桝(ましい)⓪、斗掻(とぅかあ)⓪、仁王(によお)⓪、庭(に

わあ)⓪など。

 士族女子・・・鶴(つぃるう)⓪、乙(うとぅう)⓪、亀(かみい)⓪、竈(かま

どぅう)⓪、鍋(なびい)⓪、牛(うしい)⓪、真勝手(まかてえ)⓪@、御税(ぐ

じい)⓪、真銭(まじにい)⓪@、前者(めえぬう)⓪、真松(ままちい)@、御樽

(ぅんだるう)⓪、松(まつう)⓪など。

 平民女子・・・鶴(つぃらあ)⓪、乙(うたあ)⓪、亀千代(かみじゃあ)⓪、窯

(かまあ)⓪、鍋(なばあ)⓪、牛(うしゃあ)⓪、真井戸(まかあ)⓪、御税(ぐ

じゃあ)⓪など。

 このほか、貴族男子は、ま‐[真]を冠して、真大和(まやまとぅう)@、真三郎

(まさんどぅう)@など、また、うみ‐[思]を冠して、思次郎(うみじるう)⓪、

思愛(うみかなあ)⓪、思亀(うみかみい)⓪などと、またあとへ、‐がにい[金]

を付して、樽金(たるがにい)⓪、松金(まつぃがにい)⓪、虎千代金(とぅらじゅ

がにい)⓪などと呼ばれ、貴族女子は、ま‐[真]を冠して、真鶴(まじるう)@、

真牛(もおしい)⓪などと呼ばれた。身分によるこのような区別は明治の中ごろまで

あった。

庭(なあ)@: @(名)農家の前庭。家の前の、仕事をするための広場。 ➁(接尾)

広場を意味する。〜場。 @牛庭(うしなあ)[闘牛場]、相撲庭(すぃまなあ)[相

撲場]、遊(あすぃ)び庭(なあ)[村芝居をする広場]など。

汝(なあ)@: (名) おまえさん。あんた。目下の年長に対し、幾分敬意を含めてい

う。二人称の人代名詞。 @汝(なあ)や何時(いつぃ)参(もお)ちゃが。/おま

えさんはいつ来られたか。 *混効験集:坤巻・言語に、な、とある。

了(なあ)⓪: (副) おしまい。終わり。完了したさま。 @早(ふぇえ)く了(な

あ)成(な)し。/早く終わりにしろ。 @了(なあ)成而居(なとお)る仕事(し

ぐとぅ)。/終わった仕事。 @了(なあ)有(や)ん。/おしまいだ。もうできた。

既・今(なあ)@: (副) もう。いまや。もはや。既(にゃあ)、ともいう。 @既(な

あ)一回(ちゅけえん)。/もう一回。 @既(なあ)少(くう)てえん。/もう少し。 

@既(なあ)行(い)かん。/もう行かない。 @既(なあ)如何(ちゃあ)ん成(な)

らん。/もはやどうにもならない。 @既(なあ)い。/もういいかい。 @既(な

あ)有(や)さ。/もういいよ。 @既(なあ)少(いふぃ)為(し)いねえ。/も

う少しのところで。もうちょっとで。 @既(なあ)行(ぃん)じ来(ち)い。/も

う行って来たか。

なあ⓪: (助) かい。かねえ。の。軽く尋ねる場合に用いる。 @読(ゆ)ぬんなあ。

/読むかい。 @彼(あ)りなあ。/あれかね。

各(なあ)‐: (接頭) おのおの・銘々の意を表す接頭辞。あとに付く語を重複させ

る。 @各(なあ)家々(やあやあ)[めいめいの家]、各(なあ)言(い)い言(い)

い[めいめいが違うことを言うこと]など。

‐箇々(なあ): (接尾) ずつ。 @一(てぃい)つぃ箇々(なあ)取(とぅ)れえ[一

つずつ取れ]、同(いぃん)さ箇々(なあ)[同量ずつ]、少(くう)てえん箇々(なあ)

[少しずつ]、緩(よお)ん箇々(なあ)[ゆっくり。弱くずつの意]など。

各(なあ)言(い)い言(い)い⓪: (名) 各人各様に言うこと。銘々が(別なこと

を)言うこと。 @各(なあ)言(い)い言(い)い有(や)たん。/各人各様に言

っていた。

中(なあか)⓪: (名) 中。中央。内部。中間。 @中(なあか)あ何(ぬう)ぬ入

而居(いっちょお)が。/中は何が入っているか。 @中(なあか)取(とぅ)ゆん。

/中庸をとる。 @中(なあか)に噛(くぁあ)さりゆん。/中にはさまれる。板ば

さみになる。

仲(なあか)⓪: (名) 仲。交情の仲。 @仲(なあか)直(のお)ゆん。/仲直り

する。 @仲(なあか)取(とぅ)い直(のお)しゅん。/仲をとりなす。仲直りさ

せる。

中(なあか)あ膨(ふうか)あ⓪: (名) 中空。中がから(のもの)。

仲(なあか)固(ぐふぁ)い⓪: (名) 仲たがい。仲違(なあかたげ)え、ともいう。

‐ぐふぁい<固(くふぁ)ゆん。

仲違(なあかたげ)え⓪: (名) 仲たがい。中違(なかたげ)え、とは別。不仲(ふ

  なか)、仲固(なあかぐふぁ)い、ともいう。

既(なあ)勝(が)てぃ@: (副) やがて。 @既(なあ)勝(が)てぃ夜(ゆう)

ぬ明(あ)きゆん。/やがて夜が明ける。

仲(なあか)取(とぅ)い端(はた)取(とぅ)い⓪: (副) 仲をとりもつさま。仲

裁して円満にさせるさま。仲を取り端を取る意。 @仲(なあか)取(とぅ)い端(は

た)取(とぅ)い為(しゅ)ん。/※動詞化。

仲直(なあかのお)い⓪: (名) 仲直り。和解。

各(なあ)探(かめ)えい探(がめ)えい⓪: (名) (副) おのおのが捜し合うさ

  ま。 @各(なあ)探(かめ)えい探(がめ)えい為(しゅ)ん。/※動詞化。

各(なあ)構(かめ)え構(がめ)え⓪: (名) 各自思い思いに構えること。銘々違

った構え方をすること。ばらばらで統一のないこと。各人各様。 @彼(あ)ぬ辺(ふ

ぃん)ぬ家(やあ)や皆(んな)各(なあ)構(かめ)え構(がめ)え有(や)さ。

/あの辺の家は構え方がてんでんばらばらだ。 @各(なあ)構(かめ)え構(がめ)

えぬ考(かんげ)え。/各人各様の考え。 @彼達(あったあ)や何(ぬう)有(や)

てぃん各(なあ)構(かめ)え構(がめ)え為(しゅ)んどお。/彼らは何をするの

もばらばらだぞ。

各(なあ)考(かんげ)え考(かんげ)え⓪: (名) 各自思い重い。銘々が違った考

えを持つこと。 @各(なあ)考(かんげ)え考(かんげ)えぬ親(うや)とぅ子(っ

くぁ)。/それぞれの考え方の違う親と子。 @新引(にいび)ちに付(つぃ)いてえ

親(うや)ん子(くぁ)ん各(なあ)考(かんげ)え考(かんげ)え有(や)ん。/

結婚については親も子も考えが別々だ。

土産(なあぎ)⓪: (名) みやげ。都笥(みゃあぎ)、ともいう。

脈(なあく)⓪: (名) 脈。脈搏。脈(みゃく)、ともいう。

宮古(なあく)@: (名) 宮古島。宮古(みゃあく)、ともいう。 ※「みやこ」。

名子(なあぐ)⓪: (名) 「名子」に対応する。元来は農村で農奴的な使用人をさし

たが、首里では転義して分家をいうようになった。

宮古(なあく)う⓪: (名) 宮古島(なあく、みゃあく)の者。卑称。

各(なあ)喰(くぇ)え喰(ぐぇ)え⓪: (名) 銘々が別々に働き、別々に食うこと。

各人が自活すること。 @彼処(あま)ぬ家(やあ)や親(うや)とぅ子(っくぁ)

とぅ各(なあ)喰(くぇ)え喰(ぐぇ)え有(や)ん。/あそこの家は親と子が別々

に暮らしている。

各(なあ)後(くしゃ)あ後(ぐしゃ)あ⓪: (名) 銘々がそっぽを向くこと。各人

が背を向けて一致しないこと。 @家(やあ)一(てぃい)つぃどぅ有(や)すぃが、

彼処(あま)ぬ家(やあ)や各(なあ)後(くしゃ)あ後(ぐしゃ)あ有(や)ん。

/一つの家に住みながら、あそこの家は各人がそっぽを向いて暮らしている。

脈八重羽(なあくだあまあ)⓪: (名) 八重羽(たあまあ)、と同じ。

翌々日(なあさてぃ)@: (名) 翌々日。翌日(なあちゃ)、の次の日。 @其(う)

ぬ翌々日(なあさてぃ)。/その翌々日。 *混効験集:乾巻・時候に、なあさて、と

ある。

苗代(なあしる)⓪: (名) 苗代。

苗代守(なあしるまぶ)い⓪: (名) 案山子(かかし)。 ※ちなみに、案山子(かか

  し)という当て字は、伝灯録によるらしい。

中酸実(なあすぃび)⓪: (名) なす。「なすび」に対応する。 ※当て字は、大言海

  による。

未(なあ)だ⓪: (副) まだ。いまだ。未(まあ)だ、ともいう。 @未(なあ)だ

  来(くう)ん。/まだ来ない。 @未(なあ)だ有(や)ん。/まだだ。

各(なあ)為為(たまし)為為(だまし)⓪: (名) 銘々の分。各自に分け与えられ

たもの。 @各(なあ)為為(たまし)為為(だまし)ぬ御菓子(うくぁあし)。/銘々

のお菓子。

翌日(なあちゃ)@: (名) 翌日。明日は、あちゃ、という。 @其(う)ぬ翌日(な

あちゃ)ぬ夜入(ゆうい)り方(がた)。/その翌日の日の暮れかた。 @翌日(なあ

ちゃ)早(ふぇえ)く。/翌日早く。 @翌日(なあちゃ)ぬ早朝(すとぅみてぃ)。

/翌朝。 *混効験集:乾巻・時候に、なあちや、とある。

翌日朝(なあちゃあさ)@: (名) 翌朝。

翌日見(なあちゃみ)い⓪: (名) 葬式の翌日に婦人が行う墓参。死後49日間、男

は毎日墓参する習慣となっているが、女は翌日だけ墓参する。死者がもしや蘇生する

ことはないかと翌日見に行った習慣が残ったものだと言い伝えられている。

各(なあ)散(ち)り散(ぢ)り⓪: (副) 銘々が散り散りになること。四散するこ

と。 @家人数(やあにんず)各(なあ)散(ち)り散(ぢ)り成(な)てぃ。/家

族が散り散りになって。

名付(なあづぃ)きい⓪: (名) 名付け。命名。また、小児が生まれて七日目に名前

  を付けること。

翌月(なあづぃち)@: (名) 翌月。 @其(う)ぬ翌月(なあづぃち)。/その翌月。

‐為(なあ)でぃい: (助) から。を通って。経由路・経由点を示す。 @此処(く

ま)為(なあ)でぃい行(い)けえ。/ここから(この道を通って)行け。 @一方

(ちゅかた)為(なあ)でぃい。/片端から。 @何処(まあ)為(なあ)でぃい行

(い)ちゅが。/どこを通って行くか。 @鹿児島(かぐしま)為(なあ)でぃい行

(い)ちゅん。/鹿児島経由で行く。

各胴々(なあどぅうどぅう)⓪: (名) 銘々。各自。また、銘々勝手。 @親(うや)

  ん子(っくぁ)ん各胴々(なあどぅうどぅう)。/親も子も銘々勝手。

各(なあ)尋(とぅ)めえい尋(どぅ)めえい⓪: (名) おのおのが捜し合うこと。

庭葉(なあば)⓪: (名) きのこ。木(ち)ぬ子(く)、と同じく、かさと柄のはっき

りした、きのこ型のものをいう。食用になるものをもいうが、主として食用にならぬ

ものをいうようである。 木(ち)ぬ子(く)、の項参照。

各(なあ)走(は)い走(ば)い⓪: (名) 銘々勝手に散り散りになること。各人ば

らばら。 @首里(しゅい)ん人(ちょ)お揃(すり)い揃(ずり)い、那覇(なあ

ふぁ)ん人(ちょ)お各(なあ)走(は)い走(ば)い、久米村(くにんだ)ん人(ち

ょ)お踏(く)ん転(くるば)あ為(せ)え、泊(とぅまい)ん人(ちょ)お尋(と

ぅ)めえい尋(どぅ)めえい。/首里の人はうち揃って、那覇の人はばらばらで、久

米村の人は互いに争って、泊の人は互いに捜し合う。(頭韻をふんでいる) ※頭韻が

見事な上にそれぞれの特色をよくとらえていると思う。 @各(なあ)走(は)い走

(ば)いぬ仕方(しかた)。/各自ばらばらのやり方。

梅毒(なあばる)⓪: (名) 梅毒。南蛮瘡(なばんがさ)、ともいう。

鍋(なあび)⓪: (名) 鍋。釜は、羽釜(はがま)、という。小さい順に、五合炊(ぐ

ごおだ)ち[5合だき]、一升炊(いっしゅだ)ち[1升だき]、二升炊(にしゅだ)

ち[2升だき]、二枚鍋(にんめえなあび)、三枚鍋(さんめえなあび)、四枚鍋(しん

めえなあび)、などの種類がある。

鍋(なあび)掻(か)ち掻(か)ちい⓪: (名) あぶらぜみ。鍋のしりをかき落とす

ような騒がしい声で鳴くのでいう。

鍋(なあび)探(さぐ)い⓪: (名) つまみ食い。鍋の中をさぐって、食べること。

鍋(なあび)な錮(くう)⓪: (名) 鍋(なあび)ぬ錮(くう)、と同じ。

鍋(なあび)ぬ錮(くう)⓪: (名) 鍋釜の修理。鍋釜の穴のあいたものをふさぐこ

  と。いかけ。また、いかけ屋。鍋の(なあびぬ)いかけ[くう(錮)]の意。

鍋(なあび)ぬ鍋垢(ふぃんぐ)⓪: (名) 鍋墨。鍋釜のしりにつく煤。

鍋(なあび)ぬ蓋(ふた)⓪: (名) 鍋のふた。甘藷を煮る時などの編んだ大きなふ

  たは、釜(かま)ん蓋(た)、という。

那覇(なあふぁ)⓪: (名) 那覇。 ※「なは」、那覇市に那覇という地名は無いよう

である。

那覇(なあふぁ)あ⓪: (名) 那覇の者。卑称。 ※おそらく、首里人のみが使う言

  葉であったのだろう。

那覇(なあふぁ)ん人(ちゅ)⓪: (名) 那覇の人。

各(なあ)引(ふぃ)ち引(び)ち⓪: (名) 銘々の縁故。または、銘々のひいき筋。

未(なあ)ふぃん⓪: (副) もっと。さらに。なお。一層。 @未(なあ)ふぃん呉

召候(くぃみしょお)り。/もっと下さい。 @未(なあ)ふぃん清(ちゅ)らさん。

/さらに美しい。

糸瓜(なあべえらあ)⓪: (名) 植物名。へちま。実は未熟のうちは食用にする。へ

ちま水は咳・やけどの薬、酒の酔いざましに用いる。熟して肉を取り去ったものは浴

用に用いる。 *混効験集:乾巻・飲食に、ながふゑ、とある。

各(なあ)向(む)てぃ向(む)てぃ⓪: (名) 銘々の受け持ち。各人の得意。銘々

の専門。 @各(なあ)向(む)てぃ向(む)てぃぬ有(あ)くとぅ。/銘々の得意

があるから。

各(なあ)前々(めえめえ)⓪: (名) 銘々。各自。 @各(なあ)前々(めえめえ)

  ぬ物(むん)。/銘々の物。

既(なあ)や⓪: (副) もはや。もう。今となっては。 @既(なあ)や斯(か)ん

成(な)たる上(ぅうぃい)や仕方(しかた)あ無(ねえ)ん。/もはやこうなった

以上しかたがない。

各(なあ)家々(やあやあ)⓪: (名) 各自の家。銘々の家。

再来年(なあやあん)@: (名) @再来年。未(なあ)ん来(ちゅ)、ともいう。 ➁

翌々年。未(なあ)ん来(ちゅ)、ともいう。 @其(う)ぬ再来年(なあやあん)。

/その翌々年。

名(なあ)ゆる@: (連体) 名高い。有名な。 @名(なあ)ゆる物(むん)。/有名

な者。 @名(なあ)ゆる人(っちゅ)。/有名な人。

女童(なあらび)⓪: (名) 女童(みゃあらび)、と同じ。

各(なあ)別(わか)い別(わか)い⓪: (名) 銘々別れ別れ。各自別々。 @各(な

あ)別(わか)い別(わか)い成(な)ゆん。/各自別々になる。 @各(なあ)別

(わか)い別(わか)いぬ夫婦(みいとぅ)ん達(だ)。/別々になっている夫婦。

各(なあ)向(んけ)え向(んけ)え⓪: (名) 銘々の向き向き。銘々の好みや向い

た仕事など。 @各(なあ)向(んけ)え向(んけ)えぬ仕事(しぐとぅ)。/銘々に

向いた仕事。

未三年(なあんちゅ)⓪: (名) @翌々年。その時から三年目の意。‐んちゅ<三年

(みとぅ)。 ➁再来年。再来年(なあやあん)、ともいう。

成(な)い⓪: (名) なり。ありさま。身なり。 @散々(さんざん)に窶(やつぃ)

り此(く)ぬ成(な)いゆ有(や)りば。[散々にやつれ このなりよやれば(花売之

縁)]ひどくおちぶれて、このありさまであるかる。 ※花売之縁(はなうりのえん)

は、高宮城親雲上(たかみやぐすくぺえちん)作の組踊である。

生(な)い⓪: (名) 実。果実。くだもの・瓜など、大きなものをいう。小さな実は、

持凝(むっく)う[つぼみの意もある]という。

‐ない: (助) へ。に。の方へ。の所へ。のそばへ。人・動物を表す語に付く。 @

彼(あ)りない行(い)ちゅん。/彼の所へ行く。 @汝(ぃやあ)遣(つぃか)た

る親(うや)ない行(い)き。/おまえを遣わした親の所へ行け(夜など、捕らえた

虫を放す時にいうことば)。

生(な)い苧(うぅう)⓪: (名) バナナのなる芭蕉。実芭蕉。

‐成(な)い形(がたあ): (接尾) なりかけ。 @女(うぃなぐ)成(な)い形(が

たあ)[女になりかけ]、大人(うふっちゅ)成(な)い形(がたあ)[おとなになりか

け]、蛙(あたびちゃあ)成(な)い形(がたあ)[蛙になりかけ。足のはえたおたま

じゃくし]など。

成(な)い崩(くじ)り物・者(むん)⓪: (名) できそこない。できそこないの物、

  または人間。

成(な)い崩(くじ)り⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) できそこなう。悪い結果にな

  る。

成(な)い切(ち)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼っち) なりきる。すっかり〜になる。 @

盗人(ぬすどぅ)成(な)い切而居(ちっちょお)ん。/泥棒になりきっている。

生(な)い粒(つぃじ)⓪: (名) 果実になりかかった小さい粒。

成(な)い外(はん)⁼しゅん⓪: (自 ⁼さん、⁼ち) @成りそこなう。 @先生(し

んしい)成(な)い外(はん)しゅん。/先生になりそこなう。 ➁不成功に終わる。

できそこなう。 @仕事(しぐとぅ)ぬ成(な)い外(はん)しゅん。/仕事が不成

功に終わる。

成(な)い外(はん)ち@: (名) 唐手の型の名。 ※ナイファンチともいう。空手

の型は「ナイハンチに始まり、ナイハンチに終わる」といわれるほどの基本的な型で

あるそうだ。流派により、いろいろな漢字表記がある。たとえば、内歩進、内畔戦、

内範置など。語源的には、成(な)い外(はん)しゅん、の連用形と思われる。空手

の型はどんな場合でも「なりそこない・できそこない」であるという謙虚な意味では

なかろうか。

生(な)い物(むん)⓪: (名) 「なりもの」に対応する。果実。くだもの。

鳴(な)い物(むん)@: (名) 鳴り物。楽器の総称。

名折(なう)り@: (名)[文] 名折れ。 @敵(てぃち)に首(くび)曲(ま)ぎて

ぃ降参(こおさん)ゆ為(すぃ)らば武士(ぶし)ぬ身(み)ぬ名折(なう)り。[敵

に首曲げて 降参よすらば 武士の身の名折〜(忠臣身替)]敵に首を曲げて降参をす

れば、武士の身の名折れ〜。 ※忠臣身替(ちゅうしんみがわり)は、辺土名親雲上

(へんとなぺえちん)作の組踊である。

仲(なか)⓪: (名) 仲。なあか(仲)と同じ。 @仲(なか)為(しゅ)ん。/仲

裁する。仲をとりもつ。また、媒介する。

中(なか)⓪: (名) なあか(中)と同じ。

長(なが)あ⓪: (名) 長いもの。

長歩(ながあっ)ち@: (名) 長旅。長い期間旅をすること。また、長歩き。遠足な

どで長いこと歩くこと。 @長歩(ながあっ)ち為(しゅ)ん。/※動詞化。

長雨(ながあみ)⓪: (名) 長雨。 ※蜻蛉日記、「六月(みなづき)になりぬ。つい

たちかけてながあめいたうす」。

‐なかい: (助) に。の中に。存在する場所を表す。 @首里(しゅい)なかい有(あ)

たる話(はなし)。/首里にあった話。 @何処(まあ)なかいん無(ねえ)ん事(く

とぅ)。/どこにもないこと。 @彼処(あま)なかい海(うみ)ぬ見得(みいゆ)ん。

/あっちに海が見える。 @彼処(あま)ぬ道(みち)なかい幽霊(ゆうりい)ぬ出

(ん)じ而居(とお)たんでぃさ。/あの道におばけが出たということだ。

長居(ながいぃ)い@: (名) 長居。

中指(なかいいび)⓪: (名) 中指。

長生(ながい)ち@: (名) 長生き。長命。

長伊平屋節(ながいひゃぶし)@: (名) [長伊平屋節] 御前風(ぐじんふう)、の

一つ。

中入(なかい)り⓪: (名) 仲介。周旋。仲立ち。

長追(ながうう)い@: (名) 長追い。長い間追いかけること。遠くまで追いかける

こと。 @短(いん)ちゃ棒(ぼお)持(む)っち長追(ながうう)い為(しゅ)ん。

/短い棒を持って長追いする。充分なよりどころがないのに、しつこく追及する。

長御門(ながうじょお)@: (名) 首里城の門の名。御城(うぐすぃく)、の項参照。 

  *混効験集:乾巻・家屋に、ながおぢやう、とある。

長掛(ながが)かい@: (名) 長くかかること。工事などが長引くこと。

長関(なががら)けえ@: (名) 長くかかること。効果があがらずに長引くこと。‐

がらけえ<関(から)かゆん。

中子(なかぐう)⓪: (名) [中子]芯。中心部にあるもの。植物の種子の部分。葉

などの中に包みこまれた部分など。 @芋(んむ)ぬ葉(ふぁ)や蒸(ん)ぶち、竹

(だき)ぬ葉(ふぁ)や抱(だ)かち、蘇鉄葉(すてぃつぃば)ぬ中子(なかぐ)思

(うむ)い召候(みしょ)り。(童謡)いもの葉は蒸して、竹の葉は抱かせて、そてつ

の葉が包んだ芯のように、心から思って下さい。 ※「いもの葉」、「竹の葉」、「そて

つの芯」、どれも粗末で何の役にも立たないようであるが、大切にせよという意味らし

い。この三つを自分自身の存在にたとえた謙遜の歌でもあるようだ。

中城(なかぐすぃく)⓪: (名) 中城。 ※「なかぐすく」、中頭郡中城村に、中城と

いう集落名はないようである。

中城端前節(なかぐすぃくはんためえぶし)⓪: (名) [中城はんた前節]御前風(ぐ

  じんふう)、の一つ。 

中御代(なかぐでえ)⓪: (名) 歴史時代。なかんかし(中昔)ともいう。神御代(か

みぐでえ)[先史時代]に対していう。 ※上御代(かみぐでえ)、の方が正しいかも

しれないが、話者の意識としては、神御代(かみぐでえ)、であろう。神と上は、奈良

時代の共通語では違った発音であったらしいが、日本人の意識としては、同じ語のよ

うに思われる。

中頃(なかぐる)⓪: (名) 中ごろ。

仲座(なかざ)⓪: (名) 仲座。 ※「なかざ」、島尻郡八重瀬町の地名。

長座(ながざ)@: (名) 長座。長居。 @長座(ながざ)為(しゅ)ん。/※動詞

化。

仲里(なかざと)⓪: (名) 仲里。 ※「なかざと」、島尻郡久米島にあった村名。具

  志川村と合併して久米島町となった。

長(なが)さん⓪: (形) 長い。時間についても距離についてもいう。

流(なが)し⓪: (名) 夏の通り雨。夕立。流すように降ってすぐ晴れる雨。

中島(なかしま)⓪: (名) [中島] 那覇にあった遊郭の名。

流(なが)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) @流す。 ➁質に流す。

中芯(なかじん)⓪: (名) @中心。中央。まん中。面の中心。また、屋敷の場合は

  全面の中央。 ➁果実の芯、身体の中心部など。

中剃(なかず)い⓪: (名) 中剃り。男が髪を結っていた時代、頭髪の中央部だけを

剃ること。前額部にかけて剃る本土の月代(さかやき)とは形が異なる。

仲宗根(なかずに)⓪: (名) 仲宗根。 ※「なかそね」、国頭郡今帰仁村、および、

沖縄市の地名。偶然ではあるが、今帰仁村の村役場は仲宗根にあり、沖縄市の市役所

は、仲宗根町にある。

仲田(なかだ)⓪: (名) 仲田。 ※「なかだ」、島尻郡伊是名村の地名。仲田港があ

り、今帰仁村の運天港とフェリーで接続している。

中違(なかたげ)え⓪: (名) @中途半端。帯に短く、たすきに長いこと。 ➁女が

  婚期を逸していること。

仲立(なかだ)ち⓪: (名) @なこうど。結婚の仲立ちをして、結婚式の時、新引(に

  いび)ちん人(ちゅ)[その項参照]を務める人。 ➁仲立ち。仲介。

仲地(なかち)⓪: (名) 仲地。 ※「なかち」、宮古島市伊良部の地名。となりが国

仲(くになか)である。

中突(なかづぃ)ち⓪: (名) 織機の器具の名。布を織る時、経糸を上下に分けてま

  ん中に入れるもの。

長続(ながつぃぢ)ち@: (名) 長続き。 @長続(ながつぃぢ)ち為(しゅ)ん。

  /※動詞化。

長尻(ながつぃば)あ@: (名) 長居をする人。長じりの者。ぞうりの裏を焼く[草

履(さば)ぬ裏(うら)焼(や)ちゅん]と帰るといわれている。

長尻(ながつぃび)@: (名) 長居。長じり。

中弦(なかづぃる)⓪: (名) 三味線(さんしん)の二の糸。中弦。

中手(なかてぃい)⓪: (名) 中の物。中手。大中小など三種ある場合の中のもの。

長代(ながでえ)⓪@: (名) 長い間。久しい間。 @長代(ながでえ)見(ん)ん

だん。/長い間見ない。 @長代(ながでえ)ぬ病(やんめ)え。/長い間の病気。

長通(ながどぅう)し⓪: (名) ずっと。続いて。続く限り。長い間ずっと。長通(な

ぎどぅう)し、ともいう。 @道(みち)ぬ長通(ながどぅう)し話(はなし)ぬ絶

(てえ)らん。/長い道のりの間、話が絶えない。

仲泊(なかどぅまい)⓪: (名) 仲泊。 ※「なかどまり」、国頭郡恩納村、および、

  島尻郡久米島町の地名。

長堂(ながどお)@: (名) 長堂。 ※「ながどう」、豊見城市の地名。南部農林高等

学校がある。

長根(ながに)⓪: (名) 背中。腰長根(くしながに)、ともいう。

仲西(なかにし)⓪: (名) 仲西。 ※「なかにし」、浦添市の地名。

長根骨(ながにぶに)⓪: 背骨。腰骨(くしぶに)、ともいうが、腰骨(くしぶに)、は

背中の下の方を主としてさすようである。

中庭(なかにわ)⓪: (名) 中庭。中門の中にある庭。

長年(ながにん)@: (名) 長年。多年。

長伸(ながぬ)び倒(とお)り⓪: (名) 長々とねそべること。なまけ者や不健康な

者のさま。

仲直(なかのお)い⓪: (名) 仲直(なあかのお)い、と同じ。

半(なか)ば⓪: (名) なかば。中間。半分。

中走(なかばしる)⓪: (名) 部屋の間を仕切る板の引き戸。板のふすま。

長浜(ながはま)⓪: (名) 長浜。 ※「ながはま」、中頭郡読谷村、および、宮古島

市伊良部の地名。

中辺(なかび)⓪: (名) なかぞら。中空。中天。 @北谷(ちゃたん)真牛種(も

しじゃに)が歌声(うたぐぃ)打(う)ち出(じゃ)しば、中辺(なかび)飛(とぅ)

ぶ鳥(とぅい)ん宿(ゆどぅ)でぃ聞(ち)ちゅさ。[北谷真牛ぎやねが 歌声打出せ

ば なかべ飛ぶ鳥もよどで聞きゆさ]北谷まうし(女歌手の名)が歌を歌い出せば、

中空を飛ぶ鳥もとまって聞く。

長引(ながび)⁼ちゅん@: (自 ⁼かん、⁼ち) 長引く。遅滞する。

長降(ながぶ)い@: (名) 長降りの意。長雨。

長引(ながふぃ)ちゅ類(るい)@: (名) (事件・病気などが)長引くこと。

長引(ながふぃ)ちゅ類(るう)@: (名) 長引(ながふぃ)ちゅ類(るい)、と同じ。

長引(ながふぃ)ちゅ類(るう)い@: (名) 長引(ながふぃ)ちゅ類(るい)、と同

  じ。

仲風(なかふう)⓪: (名) [仲風]歌の形式の一つ。和歌と琉歌の混合した形式の

もの。七・七・八・六の形をもつ。今風(いまふう)、ともいう。ことばも本土方言と

沖縄方言の混合である。

長平(ながふぇえ)らあ⓪: (名) 長々と延びたもの。へちまなど、大変に長いもの。

仲程(なかふどぅ)⓪: (名) 仲程。 ※「なかほど」、南城市大里にあった地名。

長這(ながぼお)い⓪: (名) 長々と寝ること。ねそべること。 @長這(ながぼお)

い為(しゅ)ん。/※動詞化。

長這(ながぼお)やあ⓪: (名) 長這(ながぼお)い、と同じ。 @長這(ながぼお)

やあ為(しゅ)ん。/※動詞化。

仲間(なかま)⓪: (名) 仲間。 ※「なかま」、南城市大里の地名。

名嘉間(なかま)⓪: (名) 名嘉間。 ※「なかま」、糸満市にあった地名。恩納村に

は、名嘉真がある。

中身(なかみ)⓪: (名) 豚などの小腸。食物としての名。 @中身(なかみ)ぬ吸

  (すぃ)い物(むん)。/料理名。豚の小腸を実にした吸いもの。

長目(ながみ)⓪: (名) 寛容。寛容性。伸(ぬ)び、ともいう。 @長目(ながみ)

ぬ有(あ)ん。/寛容性がある。

眺(なが)み⓪: (名) ながめ。眺望。

長道(ながみち)@: (名) 長途。長い旅路。

長(なが)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 免ずる。 @子(っくぁ)に長(なが)

みてぃ堪(くね)えれえ。/子に免じて我慢してくれ。

眺(なが)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 眺める。

中盛(なかむ)い⓪: (名) 一合桝。正確には、一合中盛(いちごおなかむ)い、と

いう。

中盛(なかむ)い小(ぐぁあ)⓪: (名) 五勺桝。五勺中盛(ぐしゃあくなかむ)い、

ともいう。

中元(なかむうとぅ)@: (名) 大元(うふむうとぅ)[本家の先祖]に対して、中ご

  ろの先祖。すなわち分家の先祖をいう。

中昔(なかむかし)⓪: (名) 中昔。中御代(なかぐでえ)、ともいう。大昔(うふん

  かし)[大昔、先史時代]に対して歴史時代をいう。

長持(ながむ)ち@: (名) 長もち。長くもつこと。長く使用できること。

長物(ながむん)⓪: (名) ながもの。蛇(主として、はぶ)を忌んでいう語。 

中前(なかめえ)⓪: (名) 茶の間。居間。家の中央にあり、中庭に面している部屋。

  遊郭では表の出入口をいう。

中休(なかやすぃ)み⓪: (名) 中休み。仕事の途中でしばらく休むこと。

長休(ながやすぃ)み⓪: (名) 長休み。長期欠勤。

長病(ながや)み⓪: (名) 長わずらい。長い間の病気。

中憩(なかゆく)い⓪: (名) 中休(なかやすぃ)み、と同じ。

半(なか)ら⓪: (名) なかば。半分。半量。量・距離などについていう。 @半(な

か)らあ無(ねえ)ん。/半分はない。 *混効験集:坤巻・言語に、なから、とあ

る。

‐為従(ながら): (助) ながら。とはいうものの。ではあるが。 @刀自(とぅじ)

為従(ながら)二拝(にふぇえ)んでぃ思(うむ)ゆん。/妻ながらありがたいと思

う。

半(なか)ら道(みち)⓪: (名) 中途。道・事業などのなかば。道半(みちなか)

  ら、ともいう。

長(なが)ら⁼ゆん@: (自 ⁼あん、⁼てぃ) [文] 長らえる。生き長らえる。

半(なか)ら腹(わた)⓪: (名) 腹半分。腹半分食べること。腹半(わたなか)ら、

  ともいう。

泣(な)からん泣(な)ち⓪: (名) 無理に泣こうとすること。子供が泣いておとな

を牽制しようとする時などにいう。 @泣(な)からん泣(な)ちどぅ有(や)る。

/無理に泣こうとしているんだよ。

流(なが)り⓪: (名) @流れ。 ➁質流れ。

流(なが)り舟(ぶうに)い⓪: (名) 舟遊び。舟に乗って遊ぶこと。

流(なが)り⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @流れる。 ➁質流れする。 

長(なが)ん裂(さあ)ぢ⓪: (名) 手裂(てぃいさあ)ぢ[手ぬぐい]の敬語。お

手ふき。裂(さあ)ぢ、は頭に巻く手ぬぐい。

仲村渠(なかんだかり)⓪: (名) 仲村渠。 ※「なかんだかり」、島尻郡久米島町の

  地名。本土の人には難読である。「仲村分かれ」が縮まったものであろうか。

仲嶺(なかんみ)⓪: (名) 仲嶺。 ※「なかみね」、うるま市の地名。 *おもろさうし・251に、なかみね、とある。

長(なぎ)⓪: (名) 長さ。

‐頃(なぎい): (接尾) ころ。あたり。時についていう。 @今日頃(ちゅうなぎい)

[きょうあたり]、来年頃(やあんなぎい)[来年ごろ]、明日頃(あちゃなぎい)や温

(ぬく)く成(な)ゆさ[あしたあたりは暖かくなるようだ]など。

‐為従(なぎい)な: (接尾) 〜ながら。〜しているのに。〜にもかかわらず。逆接

の場合に用いる。 @思(うみ)い為従(なぎい)な[思いながら、思っているのに]、

知(し)り為従(なぎい)な[知りながら、知っているのに]、親(うや)ぬ家(やあ)

ぬ前(めえ)通(とぅう)い為従(なぎい)な延憚(ぬばが)いん為(さ)ん[親の

家の前を通りながら、寄りもしない]など。 ※沖縄語辞典、「逆説」となっているが、

「逆接」のほうが妥当ではなかろうか。

投(な)ぎ合(え)え⓪: (名) 投げあい。

投(な)ぎ声(ぐぃい)⓪: (名) 自分の用だけ言って、返事を聞かずに立ち去るこ

  と。投げ声の意。

長通(なぎどぅう)し⓪: (名) ずっと。続いて。続く限り。長い間ずっと。長通(な

がどぅう)し、ともいう。 @此間(くま)から彼間(あま)迄(までぃ)長通(な

ぎどぅう)し家(やあ)ぬ続(つぃじ)而居(ちょお)ん。/ここからあそこまでず

っと家が続いている。 @長通(なぎどぅう)しぬ木(きい)諸(むる)松(まあつ

ぃ)どぅ有(や)る。/見渡す限りずっと松だ。

投(な)ぎ計(ばか)れえ⓪: (名) 投げ散らすこと。

投(な)ぎ放(ほお)りい⓪: (名) 投げ散らしておくこと。投げやり。

投(な)ぎ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 投げる。

投(な)ぎ入(ん)⁼ちゅん⓪: (他 ⁼かん、⁼ち) 投げ込む。

名護(なぐ)@: (名) 名護。 ※「なご」、名護市の地名。

今食(なぐ)い⓪: (名) 豚に食わせる人糞。便所に豚を飼い、人糞を食わせたので

  いう。 ※便所に豚を飼うというより、便所と豚小屋が同居しているというべきかも。

中頭方(なくがみほお)⓪: (名) [中頭方] 沖縄の旧行政区画の名で、のちの中

  頭郡。

慰(なぐさ)⁼ぬん@: (他 ⁼まん、⁼でぃ) 慰むに対応する。(自分を)慰める。文

語的な語。 @歌(うた)んでえ読(ゆ)でぃ胴(どぅう)慰(なぐさ)ぬん。/歌

でも読んで自分の心を慰める。

慰(なぐさ)み@: (名) 慰め。慰安。

慰(なぐさ)み⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 慰める。

名護岳(なぐだき)@: (名) 名護岳。国頭地方にある山の名。

泣(な)く泣(な)く@: (名) 泣く泣く。 @刀自夫婦(とぅじみいとぅ)一所(ち

ゅとぅくる)に暮(く)らし方(がた)成(な)らん、泣(な)く泣(な)くん二年

(たとぅ)三年(みとぅ)や別(わか)てぃ働(はたら)ちゃい〜[妻めいと一所

に 暮し方ならぬ 泣く泣くも二年三年や 別て働きやり〜(花売之縁)]夫婦ひとと

ころに生活できない。泣く泣く二、三年は別れて働いて〜。 ※花売之縁(はなうり

のえん)は、高宮城親雲上(たかみやぐすくぺえちん)作の組踊である。

名護曲(なぐま)がい⓪: (名) 名護湾。 ※特に許田から東江までの8キロの道の

りは「七曲(ななまが)り」と呼ばれていたが、現在は整備され、それほど曲がって

はいない。

名護蘭(なぐらん)@: (名) 植物名。蘭の一種。名護蘭。名護は地名。鑑賞用。

名残(なぐ)り⓪: (名) @なごり。心残り。 @降分(ふや)かりてぃ後(あとぅ)

ぬ名残(なぐ)り無(ね)ん如(ぐとぅ)に語(かた)い尽(つぃく)さりる恋路(く

いじ)有(や)らな。[ふやかれてあとの 名残無ぬごとに 語りつくされる 恋路や

らな]別れたあとの心残りがないぐらいに、充分語りつくされる恋であればよいがな

あ。 @名残(なぐ)りぬ有(あ)ん。/(別れて)心残りがする。 ➁あらしなど

の余波。 @大風(ううかじ)ぬ名残(なぐ)りに海(うみ)ぬ荒(あ)り而居(と

お)ん。/台風の余波で海が荒れている。

名残(なぐ)りしゃん⓪: (形) なごり惜しい。

長(なげ)え⓪: (名) 長い間。長らく。久しく。 @長(なげ)え考(かんげ)え

為(しゅ)ん。/長い間考える。 @長(なげ)え成(な)ゆる事(くとぅ)。/長い

こと。

長(なげ)えさん⓪: (形) 久しい。時間が長くたつ。 @行会(いちゃ)てぃから

長(なげ)えさん。/会ってから久しい。 @長(なげ)えさ有(や)あ。/久しぶ

りだねえ。 @長(なげ)えさ拝(うぅが)な侍(び)らんたすぃが、殿地(とぅん

ちぇ)え御総様(ぐすうよお)御障(うさわ)いん為(さあ)召候侍(みせえび)ら

に。/長いことお目にかかりませんでしたが、お宅は皆様お変わりもございませんか。

仲栄間(なけえま)⓪: (名) 仲栄間。 ※「なかえま」、玉城村に存在した地名のよ

うであるが、仲栄真と書くのが正しいようである。

仲井間(なけえま)⓪: (名) 仲井間。 ※「なかいま」、那覇市の地名。元沖縄県知

事は、仲井眞弘多である。

仲尾(なこお)⓪: (名) 仲尾。 ※「なかお」、名護市の地名。上空から見ると、本

部半島の北側の基部である。

仲尾次(なこおし)⓪: (名) 仲尾次。 ※「なかおし」、名護市の地名。文字通り、

仲尾のとなりである。地元の人は何と発音しているのであろうか。やはり、「なこおし」

と発音するのがスムーズなのではなかろうか。私の中学校の同級生に「仲尾次」とい

う女の子がいたが、「なかおじ」であった。

名探(なさが)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 陰口を言う。

情(なさき)⓪: (名) @[文]情。あわれむ心。 ※情(なさ)き有(あ)てぃ隠

(かく)し野辺(ぬび)ぬ花薄(はなすぃすぃち)、二人(たい)が玉(たま)ぬ緒(う

ぅ)ぬ惜(う)しさ有(あ)らば。[情あてかくせ 野辺の花薄 二人が玉の緒の 惜

しさあらば]情をもって隠してくれ、野辺のすすきよ、二人の命を惜しいと思うなら。 

※玉(たま)ぬ緒(うぅ)、の項参照。 ➁愛のしるし。男女間の贈り物。 @何(ぬ

う)ん情(なさき)ん貰(いぃ)いてえ居(うぅ)らん。/何も愛の贈り物をもらっ

てはいない。

名指(なざ)し@: (名) 名ざし。指名。

名里(なざとぅ)⓪: (名) 名里。 ※「なさと」、糸満市にあった地名のようである。

生(な)し上(あ)が⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 生みあげるの意。子を何人か生

んでのち、生まなくなる。また、(鶏が)卵を生まなくなる。

生(な)し落(う)とぅ⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 生み落とす。

生(な)し親(うや)⓪: (名) 生みの親。

生(な)し子(ぐぁ)⓪: (名) 生みの子。生んだ子。愛児。 @天降(あも)り為

(し)ち我身(わみ)や夢(ゆみ)ぬ間(ま)どぅ有(や)すぃが、互(たげ)に馴

(な)り初(す)みてぃ生(な)すぃ子(ぐぁ)吾(わ)ね二人(ふたい)。[天降し

てわ身や 夢の間どやすが 互になれ染めて なし子わない二人(銘苅子)]天から降

りて来て、わたしは夢のように過ごしたが、その間に男と愛し合って生んだ子がわた

しにはふたりある。 ※銘苅子(めかるし)は、玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)

作の組踊である。

生(な)し育(すだ)てぃ⓪: (名) 生み育てること。

生(な)し月(づぃち)⓪: (名) 産み月。臨月。

長刀(なじなた)⓪: (名) なぎなた。

長刀草履(なじなたさば)⓪: (名) はきくずして長くのびた草履。

生(な)し繁盛(はんじょお)⓪: (名) 出産。単に、繁盛(はんじょお)、ともいう。 

@生(な)し繁盛(はんじょお)為(しゅ)ん。/出産する。

生(な)し広(ふぃる)ぎ⓪: (名) 子孫をふやすこと。繁殖。

名島(なじま)⓪: (名) 名目だけの領地。名のみあって実在しない領地。 @名島

(なじま)拝(うぅが)ぬん。/名前だけの領地をいただく。沖縄は土地が狭いため

に有名無実の論功行賞として与えられることがあった。

生(な)し前(めえ)⓪: (名) お産の前。産前。

生(な)し場(みい)⓪: (名) 里方。腰当(くしゃ)てぃ方(かた)[嫁入り先]に

対していう。 @生(な)し場(みい)ぬ事(くとぅ)為(しゅ)ん。/里方への補

助をする。

生(な)し者(むん)ぬ子(っくぁ)⓪: (名) 生みの子。

成(な)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) @(ある状態に)する。なす。 @子(っく

ぁ)人(っちゅ)ぬ御下(んじゃ)成(な)しゅん。/子を人の召使にする。 @彼

(あり)が刀自(とぅじ)成(な)しゅん。/彼の妻にする。 @清(ちゅ)らく成

(な)しゅん。/美しくする。 ➁移す。移動させる。寄せる。 @此処(くま)ん

かい成(な)せえ。/こっちに場所を移せよ。

生(な)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 生む。 @子(っくぁ)生(な)しゅん。/

子を生む。 @生(な)ちゃる親(うや)やか育(すだ)てぃぬ親(うや)。/生みの

親よりも育ての親。 @生(な)しみゆん。/生ませる。

擦(なすぃ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) なする。なすりつける。塗りつける。 @

  油(あんだ)擦(なすぃ)ゆん。/油をなすりつける。

安(なすぃ)れえ⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) かんべんする。おだやかに許してや

  る。宥恕する。まれな語。

涙(なだ)⓪: (名) 涙。 @涙(なだ)ぬ落(う)てぃゆん。/涙が出る。

灘(なだ)⓪: (名) 灘。波の高い、航海の難所。 ※万葉集・3893、「昨日こそ

船出(ふなで)はせしか鯨魚(いさな)取り比治奇(ひじき)の灘(なだ)を今日見

つるかも」。鯨魚取りは、海に掛かる枕詞。比治奇の灘は、兵庫県高砂市の海面。

涙含(なだぐ)る回(まあ)い⓪: (副) 涙ぐんださま。いまにも泣きそうなさま。

涙含(なだぐ)る回(まあ)やあ、ともいう。 @涙含(なだぐ)る回(まあ)い為

居(しょお)る童(わらび)。/いまにも泣きそうな子供。

涙含(なだぐ)る回(まあ)やあ⓪: (副) 涙含(なだぐ)る回(まあ)い、と同じ。 

@涙含(なだぐ)る回(まあ)やあ成而居(なとお)ん。/いまにも泣きそうである。

名高(なだけ)え者・物(むん)@: 名高いもの。名(なあ)ゆる者・物(むん)、とも

  いう。

宥安(なだやっ)さん@: (形) [灘安さん]おだやかである。心安い。 @宥安(な

だやすぃ)い事(くとぅ)。/心安いこと。 @彼(あ)りが宥安(なだやすぃ)こお

返事(ふぃじぇ)え為(さ)ん筈(はじ)。/彼がおだやかに承諾はしないだろう。

涙弱(なだよお)さん⓪: (形) 涙もろい。すぐ泣く。

泣(な)ち明(あ)か⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 泣き明かす。泣いて夜を明かす。

泣(な)ち入(い)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼っち) 泣き入る。ひどく泣く。

泣(な)ち顔(がう)@: (名) 泣き顔。

泣(な)ち掛(か)か⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 泣きつく。泣いて訴える。泣い

て、くってかかる。

泣(な)ち喰(くぁあ)り⁼ゆん@: (他 ⁼りらん、⁼ってぃ) 泣きつかれる。泣いて、

  くってかかられる。

泣(な)ち声(ぐぃい)@: (名) 泣き声。

泣(な)ち暮(く)ら⁼しゅん@: (自 ⁼さん、⁼ち) 泣き暮らす。

泣(な)ちげえげえ@: (副) 激しく泣くさま。泣いてしゃくり上げるさま。また、

泣かんばかりに嘆くさま。 @泣(な)ちげえげえ為居(しょお)る人(っちゅ)。/

泣かんばかりに嘆いている人。

今帰仁(なちじな)あ⓪: (名) 今帰仁(なちじん)の者。卑称。

今帰仁(なちじん)⓪: (名) 今帰仁。 ※「なきじん」、国頭郡今帰仁村に、今帰仁

という集落名はないようである。本土の人には難読名のようである。今(なあ)[もう、

いまや、もはや]という沖縄語が分かればそれほどの難読名ではない。

今帰仁拝(なちじんうが)み⓪: (名) 行事の名。一門を代表する女が、数年おきに

  今帰仁(なちじん)の城(ぐすぃく)に詣でる行事。

泣(な)ち真似(ねえ)び⓪: (名) 泣きまね。 @泣(な)ち真似(ねえ)び為(し

  ゅ)ん。/※動詞化。

泣(な)ち虫(ぶし)@: (名) 泣き虫。

泣(な)ち虫(ぶしゃ)あ⓪: (名) 泣き虫。泣(な)ち虫(ぶし)、ともいう。

泣(な)ち物言(むに)い@: (名) 泣(な)ち物言(むぬい)い、と同じ。

泣(な)ち物言(むぬい)い@: (名) 泣き声。または泣くような甘え声で、ものを

言うこと。

泣・鳴(な)⁼ちゅん@: (自 ⁼かん、⁼ち) @泣く。(悲しんで)泣く。泣き叫ぶ意

では、喚(あ)びゆん、という。 ➁[文]鳴く。口語では、鶏の鳴くのは、歌(う

た)ゆん、目白・うぐいすなどの小鳥の場合は、吹(ふ)きゆん、犬・猫・豚の場合

は、吠(あ)びゆん、という。 @誰(たる)ゆ恨(うら)みとぅてぃ鳴(な)ちゅ

が、浜千鳥(はまちどぅり)、会(あ)わん連(つぃ)り無(な)さや我身(わみ)ん

共(とぅむ)に。[誰よ恨めとて 鳴きゆが浜千鳥 会わぬつれなさや 我身も共に]

誰を恨んで鳴くのか浜千鳥よ、子を失って会えぬ悲しみは、わたしも同じだ。

海人草(なちょおら)⓪: (名) 植物名。海人草。まくり。虫下しの薬となる海草。

  畦祓(あぶしばれ)え、の項参照。

泣(な)ち笑(われ)え@: (名) 泣き笑い。

夏(なつぃ)@: (名) 夏。

懐(なつぃ)かしゃん⓪: (形) 悲しい。 @銘苅子(みかるしい)見(ん)んち懐

(なつぃ)かしく成(な)てぃ涙(なだ)ぬ落(う)てぃたん。/銘苅子(組踊りの

名)を見て、悲しくなって涙が出た。 @懐(なつぃ)かしい芝居(しばい)。/悲し

い芝居。 ※共通語の「懐かしい」は「なれ親しみたい気持ち」というのが原義で、

中世以後に「懐古」の意に転義した。沖縄語では、「悲しい」という意に転義したよう

である。

名付(なづぃ)き@: (名) そぶり。ふり。 @水(みずぃ)欲(ふ)しゃや名付(な

づぃ)き戯(たわふ)りどぅ有(や)ゆる。[水欲しややなづけ たはふれどやゆる(手

水之縁)]水が欲しいのはそぶりだけで、たわむれであろう。 ※手水之縁(てみずの

えん)は、平敷屋朝敏(へしきやちょうびん)作の組踊である。 @好(すぃ)かん

名付(なづぃ)き為(っし)。/好かぬふりをして。

‐名付(なづぃ)きい: (接尾) 〜するふり。 @読(ゆ)み名付(なづぃ)きい[読

むふり]、歩(あっ)ち名付(なづぃ)きい為(っし)此処(くま)見而居(んんちょ

お)たん[歩くふりをしてこっちを見ていた]など。

夏口(なつぃぐち)⓪: (名) 初夏。夏の初め。

夏暮(なつぃぐ)り@⓪: (名) 夏のにわか雨。夕立。文語的な語。流(なが)し、

ともいう。 @里前(さとぅめ)舟(ふに)送(うく)てぃ戻(むどぅ)る道(みち)

直従(すぃがら)、降(ふ)らん夏暮(なつぃぐ)りに我袖(わすでぃ)濡(ぬ)らち。

[里前船送て 戻る道すがら 降らぬ夏ぐれに 我袖ぬらち]恋しい君の船を見送っ

て帰る道すがら、降らぬ夕立ちにわが袖を濡らしてしまった。 ※涙が夕立ちのよう

に降ったという詩的な比喩は、現代人からすれば、リアリティーの著しい欠如という

ことになるのだろうか。 *混効験集:坤巻・言語に、なツくれ、とある。

夏負(なつぃま)き@: (名) 夏負け。夏やせ。熱(ふみ)ち負(ま)き[暑気あた

り]ともいう。

夏物(なつぃむん)⓪: (名) 夏着。夏物。夏の着物。

‐等(なっ)くぇえ: (助) などと。なんて。なんか。 @叔父(うぅんちゅう)等

(なっ)くぇえ汝(ぃやあ)が言(ぃや)りいみ。/おじさんなどとおまえが心安く

言えるか。 @童(わらび)ぬ出(ぃん)じ而居(とお)てぃ酒(さき)飲(ぬ)ま

し等(なっ)くぇえ、相応(そおうう)為(さ)ん。/子供のくせに酒を飲ませろな

どとおこがましい。 @役(やこ)おい立(た)たん為居(しょお)てぃ為(っさ)

等(なっ)くぇえんでぃ言(い)ち。/役に立たないくせにやりましょうなどと言っ

て。

納豆(なっとぅう)⓪: (名) 料理名。本土の納豆とは異なる。芋糟(ぅんむかすぃ)

[その項参照]をこねて煮たもの。砂糖・ごまなどを加えたものは、砂糖納豆(さあ

たあなっとぅう)、という。

撫(な)でぃ育(すだ)てぃ⓪: (名) 撫育。愛育。かわいがって育てること。

撫(な)でぃ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) なでる。手のひらでなでる。

滑(などぅ)ってえん⓪: (副) なめらかなさま。つるつるしたさま。 @声(くぃ

  い)ぬ滑(などぅ)ってえん為居(しょお)ん。/声がなめらかである。

七(なな)⓪: @(感) なな。ななつ。声を出して数える時だけいう。 ➁(接頭) 

なな。七。 @七羽(ななふぁに)、七回(ななけえん)、など。

七小盛(ななくむ)い⓪: (名) 1銭4厘。じん(銭)の項参照。

七小盛(ななくむ)い五十(ぐんじゅう)⓪: (名) 1銭5厘。じん(銭)の項参照。

七人(ななたい)⓪: (名) 七人。普通は、七人(しちにん)、という。

七(なな)つぃ⓪: (名) ななつ。七。また、七歳。時刻の場合は、午前午後の4時。

七(なな)つぃ星(ぶし)⓪: (名) 七つ星。北斗七星。 ※七(なな)つ星(ぼし)、

は愚管抄にも見える共通語である。

七七日(なななんか)⓪: (名) 四十九日(しんじゅうくにち)、と同じ。

七尋(ななふぃる)⓪: (名) 七尋。女物の着物一着分の長さ。女物の布一反。

七尋(ななふぃる)御半(んなあか)り⓪: (名) 七尋半。男物の着物の一着分の長

さ。男物の布一反。

七読(ななゆ)み⓪: (名) 七よみ。織機の筬(おさ)の種類の名。経糸500本を

通す。またそれで織った布。最も目が荒く、芭蕉布などの粗末な織物である。解(ふ

どぅ)ち、の項参照。 @七読(ななゆ)みとぅ果(は)てん綛(かし)掛(か)き

てぃ置而居(うちょ)てぃ、里(さとぅ)が蜻蛉羽(あきずばに)御衣(んす)ゆ為

(すぃ)らに。(果(は)てん、の項参照)

七世経(ななゆふぃ)い⓪: (名) 七世経(ななゆふぃ)い墓(ばか)、の略。

七世経(ななゆふぃ)い墓(ばか)⓪: (名) 七世減(ななゆふぃ)い、は七度身請

けする意。親のため七度身を売り、七度身請けしたという伝説のある孝子の墓。その

付近の地を、七経辺(なねえふぁ)、という。

七煩(ななわじゃ)ん⓪: (名) 非常ににがにがしい顔をすること。苦虫をかみつぶ

したような顔をすること。

何某(なにがし)⓪: (名) なにがし。人の名がわからないとき用いる語。 @汝(ぃ

  やあ)や何処(まあ)ぬ何某(なにがし)が。/おまえはどこの何という者か。

何分(なにぶん)@: (名) 何分(なんぶん)、と同じ。

名乗(なぬ)い@: (名) 名乗り。士族以上の男子が成人してから、名乗る実名。島

  袋盛敏・比嘉春潮などの、盛敏・春潮は名乗りである。わらびなあ(童名)に対する。

名乗(なぬ)い頭(がしら)@: (名) 名乗りの頭に用いる字。氏によって一定して

いて、たとえば、尚氏・向氏は朝、毛氏は喜・栄・盛・宗・安・清、馬氏は維・良・

正・厚、翁氏は忠・重・盛・可、など。なお、尚・向の両者はともに、しょお、と読

まれるが前者は王子以上の家柄に限られている。

名乗(なぬ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @名乗り(なぬい)を付ける。 @汝(ぃ

やあ)や名乗而居(なぬとお)み。/おまえは名乗りを付けたか。 ➁[文]名乗る。 

@名乗(なぬ)てぃ出(ぃん)じれえ。/名乗って出よ。

並(な)⁼ぬん@: (自 ⁼まん、⁼でぃ) @[文]並ぶ。 ➁揃う。平均している。(同

等なものが)並ぶ。 @並而居(などお)ん。/揃っている。 @並(な)だる清(ち

ゅ)らさ。/揃ってどれも美しい。

七綯(なねえ)ん⓪: (名) 七読(ななゆ)み、と同じ。

弄(なばく)い者(むん)⓪: (名) なぶり者。からかわれる者。

弄(なばく)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) からかう。なぶる。ひやかす。

南蛮瘡(なばんがさ)⓪: (名) 梅毒。南蛮瘡の意。南蛮来(なばる)、ともいう。

鍋笥(なびげえ)⓪: (名) おたま。しゃくし。鍋匙の意。汁をすくうもの。

靡(なび)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) なびく。風に、また、人に、なびく。

那覇(なふぁ)⓪: (名) 那覇港。港の名としての那覇。町の名としてはふつう、那

覇(なあふぁ)、という。

那覇四町(なふぁゆまち)⓪: (名) [那覇四町]旧行政区画による那覇の四つの町。 

※那覇四町とは、西町、東町、泉崎町、若狭町である。那覇はもともとはこの四町で

あった。

名札(なふだ)@: (名) 名札。名前を書いた札。

生(なま)⓪: (名) なま。食物の煮たり焼いたりしてない状態。

今(なま)@: (名) @今。また、現在。現代。 @今(なま)から。/今から。 @

今(なま)ぬ人(っちゅ)。/現代の人。 ➁いまに。もう。もうすぐ。やがて。 @

今(なま)落(う)てぃゆんどお。/いまに落ちるぞ。 @今(なま)来(ちゅう)

さ。/もうすぐ来るよ。 *混効験集:乾巻・時候に、なま、とある。

生苧(なまうぅう)⓪: (名) 芭蕉布の一種。煮てない芭蕉から糸を抜いて織ったも

  ので、白色。

生芋(なまぅんむ)⓪: (名) なまのさつまいも。

今方(なまがた)@: (名) 今しがた。ちょっと前。今先(なまさち)、ともいう。

生小糟(なまくがし)⓪: (名) 小糟(くがし)[すりつぶした米のかゆ]の煮ないも

の。悪酔をさますのによい。小糟(くがし)、の項参照。 ※見出し語、焦(く)がし、

となっているが、小糟(くがし)の方が妥当かもしれない。

今頃(なまぐる)⓪: (名) 今ごろ。

生殺(なまぐる)し⓪: (名) なま殺し。半殺し。

今先(なまさち)@: (名) いまさっき。いましがた。今方(なまがた)、ともいう。

生(なま)さん⓪: (形) @なまである。煮えて(焼けて)いない。 ➁無神経であ

る。無感覚である。また、ずうずうしい。

生肉(なまじし)⓪: (名) @なま肉。なまの肉。 ➁無神経な人間。ずうずうしい

人間。生肉(なまじしゃ)あ、ともいう。

生肉(なまじしゃ)あ⓪: (名) 無神経な人間。ずうずうしい人間。

生尿(なましばい)⓪: (名) あぶら汗。病気の時、苦しい時などに出る汗。

今時分(なまじぶん)@: (名) 今時分。今ごろ。

生白髪(なましらが)⓪: (名) 生絹。すずし。練らない生糸で織った布。薄くて軽

  い。

膾(なますぃ)⓪: (名) 料理名。なます。魚を生のまま酢であえたもの。

生怠(なまた)り者(むん)⓪: (名) なまけ者。

生怠(なまた)り⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @なまける。 ➁病気が長引く。病

  がなまける意。

生気(なまち)⓪: (名) 気の荒いこと。向こう見ず。無鉄砲。 @生気(なまち)

な者(むん)。/気の荒い者。

生肝(なまぢむ)⓪: (名) 生き肝。殺したばかりの人畜の肝。

生気(なまちゃ)あ⓪: (名) 気の荒い者。向こう見ず。無鉄砲者。

生頭痛(なまつぃぶるや)ん⓪: (名) 軽い頭痛。

生面(なまづぃら)@: (名) @ずうずうしい顔。厚顔。恥知らずの顔。 ➁おどけ

た顔。

生面(なまづぃら)あ⓪: (名) @厚顔な者。ずうずうしい者。 ➁いつもおどけ顔

をしている者。

生連(なまづぃ)り者(むん)@: (名) 生面(なまづぃら)あ、と同じ。

今迄(なまでぃい)⓪: (副) いまだに。こんなに遅くなっても。 @名護(なぐ)

や山原(やんばる)ぬ行(い)ち果(は)てぃがやゆら、今迄(なまでぃ)名護舟(な 

ぐぶに)ぬ当(あ)てぃや無(ね)らん。[名護や山原の 行き果てがやゆら なまで

名護船の あてやないらぬ]名護は山原のはてであろうか。こんなに遅くなっても、

名護通いの船の便りもない。 @今迄(なまでぃい)来(くう)んすぃが如何(ちゃ

あ)為(しゅ)が。/まだ来ないが、どうするか。 @今迄(なまでぃい)成(な)

てぃ御無礼(ぐぶりい)成而居(なとお)ん。/こんなに遅くなって失礼しました。

今垂(なまて)え⓪: (名) おどけ者。

生水(なまみずぃ)⓪: (名) なま水。

生物知(なまむぬし)り@: (名) 半可通。いいかげんな物知り。

生物(なまむん)⓪: (名) なまもの。煮たり焼いたりしてないもの。

鈍(なま)らあ⓪: (名) 鈍(なま)り者(むん)、と同じ。

鉛(なまり)⓪: (名) 鉛。白金(しるかに)、ともいう。その項参照。

鈍(なま)り者(むん)⓪: (名) おどけ者。また、ずうずうしい者。鈍(なま)ら

  あ、ともいう。

鈍(なま)り⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @なまる。刃の切れ味が鈍る。 ➁おど

  ける。不まじめになる。また、ずうすうしくなる。

生笑(なまわれ)え@: (名) 薄笑い。嘲笑的ににやにや笑うこと。

波(なみ)⓪: (名) 波。

並(な)み@: (名) 並み。平凡。普通。 @並(な)みぬ物・者(むん)。/普通の

もの。

波風(なみかじ)⓪: (名) @波風。波風のあること。 ➁世間の波風。 *おもろ

  さうし・852に、なみかせ、とある。

涙(なみだ)⓪: (名)[文] 涙。口語は、涙(なだ)。

並(な)みてぃ@: (名) 平均して。一般に。総体に。概して。 @此(く)ぬ村(む

ら)ぬ人(っちょ)お並(な)みてぃ良(い)い人(っちゅ)有(や)ん。/この村

の人は概していい人だ。 @並(な)みてぃぬ事(くとぅ)有(や)ん。/一般的な

ことだ。 ※前の例文では副詞、後の例文では名詞のようである。 *おもろさうし・

1016に、なめて、とある。

舐(な)み虫(むし)⓪: 舐(な)み虫(むしゃ)あ、と同じ。

舐(な)み虫(むしゃ)あ⓪: (名) なめくじ。舐(な)み虫(むし)、ともいう。

無無者(なむじゃあ)@: (名) 道理のわからぬ者。わからずや。

名前(なめえ)⓪: (名) 人の名前。人名。物の名は、名(なあ)、という。

成上(なや)がい者(むん)@: (名) 自負心の強い者。思い上がっている者。うぬ

ぼれた者。

名上(なや)が⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @[文]名が高くなる。名があがる。 

@此(く)ぬ丈(たき)に吾(わぬ)ん名上(なや)がい居(うぅ)すぃが、気(ち)

に適(かの)お女(うぃなぐ)側(すば)に又(また)居(うぅ)らん。[此たけに我

も なやがやり居すが 気に叶ふ女 側にまた居らぬ(大川敵討)]これだけわたしも

名があがっているが、心にかなう女が側にはいない。 ※大川敵討(おおかわてきう

ち)は、久手堅親雲上(くでけんぺえちん)作の組踊である。 ➁思い上がる。うぬ

ぼれる。思い上がって出しゃばる。 @胴(どぅう)許(びけえ)い成上(なや)が

てぃ。/我こそはと思い上がって。 @彼(あ)れえ常時(ちゃあ)成上(なや)が

ゆんどお。/彼はいつも思い上がって、でしゃばっているぞ。 ※➁は、「成上(なや)

がゆん、と当て字したほうが妥当かもしれない。

成(な)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @(ある状態に)なる。 @大人(うふっち

ゅ)成(な)ゆん。/おとなになる。 @畑(はたき)ぬ草原(もお)成(な)ゆん。

/畑が野となる。 @強(ちゅう)く成(な)ゆん。/強くなる。 ➁行く。寄る。 

@彼処(あま)んかい成(な)れえ。/あっちに行け。 Bできる。なしうる。なる。 

@此(く)れえ吾(わあ)がん成(な)ゆん。/これはわたしでもできる。 @此(く)

ぬ仕事(しぐとぅ)汝(ぃやあ)が成(な)ゆみ。/この仕事が君にできるか。 @

成(な)ゆん。/できる。 @成(な)らん。/できない。 @為(さ)んだれえ成

(な)らん。/しなければならない。せねばならぬ。為(さ)んどぅん有(あ)れえ

成(な)らん、ともいう。 @成(な)らあ。/できれば。なるべく。 @成(な)

らあ行(い)ちゅせえ好(ま)し。/なるべく行った方がいい。 @成(な)らあ汝

(ぃやん)くる書(か)けえ。/なるべくおまえ自身で書け。 @成(な)れえ。/

なるべくなら。

生(な)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) (実が)なる。 @九年母(くにぶ)ぬ生(な)

ゆん。/オレンジがなる。

鳴(な)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 鳴る。 @鐘(かに)ぬ鳴(な)ゆん。/鐘

が鳴る。

習(なら)あし⓪: (名) @教育。しつけ。 @童(わらべ)え習(なら)あしぬ者

(むん)。/子供はしつけがもっとも大切だ。 ➁習慣。習性。

習(なら)あ⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 教える。習わせる。 @物言(むぬい)

い様(よお)習(なら)あしゅん。/ことば使いを教える。 @習(なら)あ為而居

(さっとお)ん。/イ・教えられている。ロ・そそのかされている。入れ知恵されて

いる。

並(なら)し⓪: (名) 衣紋竿。衣紋竹。竿を横に渡し、何枚も着物を掛けるように

  したもの。

均(なら)し⓪: (名) 平均。戸並(とぅな)み、ともいう。

馴(な)らし@: (名) 薬指。無名指。馴(な)らし指(いいび)、ともいう。

馴(な)らし指(いいび)@: (名) 薬指。単に、馴(な)らし、ともいう。

均(なら)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) @平らにする。ならす。 ➁ならす。平均

する。戸並(とぅな)みゆん、ともいう。 @均(なら)ち幾(ちゃっ)さが。/平

均していくらか。 ※戸並(とな)む、は共通語である。

砕(なら)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 粉にする。碾(ひ)く。ひき臼で粉に砕く。

鳴(な)ら⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) (楽器などを)鳴らす。

成(な)らば⓪: (副)[文] できれば。なるべく。口語は、成(な)らあ。<成(な)

ゆん。

並(なら)び@: (名) 並び。また、並んでいる隣。 @学校(がっこお)ぬ並(な

ら)び。/学校の隣。

並(なら)び⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 並べる。

並(なら)⁼ぶん@: (自 ⁼ばん、⁼てぃ) 並ぶ。列を作る。

習(なら)⁼ゆん⓪: (他 ⁼あん、⁼てぃ) 習う。学ぶ。教えを受ける。

慣(な)り⓪: (め) 慣れ。習慣。慣(な)れえ、ともいう。 @慣(な)り成而居

(なとお)ん。/習慣となっている。

馴(な)り初(す)み⓪: (名)[文] なれそめ。 

成(な)り風儀(ふぢ)⓪: (名)[文] 姿。みなり。容姿。 @里(さとぅ)や成(な)

り風儀(ふぢ)ぬ姿(すぃがた)取(とぅ)い召候(みせ)ら、我身(わみ)や為情

(しなさき)ぬ縁(いぃん)どぅ取(とぅ)ゆる。[里やなりふじの 姿取りめしやい

ら わみやしなさけの 縁ど取ゆる]あなたは容姿の美しいのをお取りになるのでし

ょうが、わたしは情愛の深い縁を取ります。

鳴(な)り物(むん)⓪: (名) 割れ物。陶磁器の類。割れるという語を忌んで鳴り

物といったものか。ただし、楽器類の鳴り物は、鳴(な)い物(むん)、という。

鳴(な)り物(むん)道具(どおぐ)⓪: (名) 瀬戸物類。皿・茶碗などの道具。

成(な)り行(ゆ)ち⓪: (名)[文] なりゆき。いきさつ。てんまつ。

慣・馴(な)り⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @(人に)慣れる。親密になる。なじ

む。 @一期(いちぐ)儘(まま)とぅ思(む)てぃ言語(いかた)れん為(しゃ)

すぃが、里(さとぅ)や肝(ちむ)変(か)わてぃ他所(ゆす)に馴(な)りてぃ。[い

ちごままともて い語らひもしやすが 里や肝変て他所に馴れて]一生涯一緒になる

と思って語らいもしたが、君は心変わりして他の女と親しくなってしまった。 ➁(も

のごとに)慣れる。習熟する。習慣となる。 B(酒などが)なれる。しっとりとし

たよい味になる。 

成可(なるびち)⓪: (副) なるべく。なるたけ。 @成可(なるびち)来(くう)

よお。/なるべく来いよ。 @成可(なるびちぇ)え良(いぃ)い物(むん)取(と

ぅ)ゆん。/なるたけいい物を取る。

成(な)る程(ふどぅ)⓪: (副)[文] なるほど。口語では、実(ん)ちゃ、という。

習(なれ)え⓪: (名) 習わし。習慣。 @阿蘭陀(うらんだあ)ぬ習(なれ)えや

御礼(ぐりい)や為(さ)ん、手(てぃい)どぅ握(にぢ)ゆる。/西洋人の習わし

は、お辞儀はしないで、手をにぎる。「〜のことであるので」という軽い意味にも用い

る。 @山原(やんばる)ぬ習(なれ)や阿檀葉(あだにば)ぬ筵(むしる)、敷(し)

かば入(い)り召候(みしょ)り首里(しゅい)ぬ主(しゅ)ぬ前(め)。[山原ぬな

れや 阿旦葉のむしろ 敷かば入りめしやうれ 首里の主の前]山原のこととて阿旦

の葉のむしろしかありませんが、敷いたらお入り下さい。首里の旦那様。 *おもろ

さうし・1193に、ならい、とある。

‐習(なれ)え: (接尾) 習い。習うこと。練習。 @墨(すぃみ)習(なれ)え[学

問]、物習(むんなれ)え[作法などを習うこと]、泳(ぅうぃい)ぢ習(なれ)え[泳

ぎの練習]など。

成(な)れや⓪: (副)[文] なるべく。なるべくならば。できることなら。口語は、

成(な)れえ。<成(な)ゆん。 @汝達(いったあ)門(じょお)に待(ま)ちゅ

み、風回(かじま)やに待(ま)ちゅみ、成(な)れや風回(かじま)やや好(ま)

しや有(あ)らに。[いつた門に待ちゆめ 風回に待ちゆめ ならいや風回や ましや

あらね] きみの家の門で待つか、四つ角で待つか。なるべくなら四つ角がよくはな

いか。  

似合(なわあ)しゃん@: (形) 似合わしい。似つかわしい。ふさわしい。似合而居

(なわとお)ん[<似合(なわ)ゆん]を多く用いる。 @似合(なわあ)しこお無

(ねえ)ん。/似つかわしくない。 @似合(なわあ)しい物(むん)。/似つかわし

いもの。

似合(なわ)い@: (名) 似合い。似合うこと。つり合うこと。 @似合(なわ)い

ぬ女(うぃなご)お居(うぅ)らんがやあ。/似合いの女はいないかなあ。

似合(なわ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 似合う。つり合う。ちょうどよい。 @

着物(ちん)ぬ良(ゆ)う似合(なわ)而居(とお)ん。/着物がよく似合っている。 

@年程(とぅしふどぅ)ぬ似合(なわ)ゆん。/背たけがちょうどよい。 @良(ゆ)

う似合(なわ)而居(とお)る夫婦(みいとぅ)ん達(だ)。/似合いの夫婦。

難(なん)⓪: (名) @難。災難。 ➁難。欠点。

何(なん)‐: (接頭) 何。 @なんどぅ(何度)、なんにん(何年)など。

七日(なんか)⓪: (名) 人が死んで七日目ごとに行う法事。なぬかごとの法事。月

の第七日および七日間の意では、七日(しちにち)、という。はつぃなんか(初七日)、

たなんか(ふた七日)、みなんか(み七日)、ゆなんか(よ七日)、いつぃなんか(いつ

七日)、むなんか(む七日)、しじゅうくにち、または、なななんか(四十九日、なな

七日)など。

七日(なんか)ぬ節句(しく)⓪: (名) 正月7日の節供。若菜を雑炊に入れて祝う。

何個(なんく)⓪: (名) 遊戯の名。短く折った箸などを手の中ににぎって差し出し、

その数を当てさせるもの。何個。 ※宮崎県南部と鹿児島県に残る酒席の遊びで、ナ

ンコ、ナンゴ、ナンコ遊び、薩摩拳(さつまけん)、ともよばれる遊戯と同じように思

われる。

南瓜(なんくぁあ)@: (名) かぼちゃ。京瓜(ちんくぁあ)、ともいう。 ※沖縄語

  辞典、ちゃんくぁあ、となっている

成(な)ん来(く)る⓪: (副) ひとりでに。自然に。 @成(な)ん来(く)る芽

(みい)ゆん。/自然に生える。

成(な)ん来(く)る芽(みい)⓪: (名) 自生。野生。‐芽(みい)<芽(みい)

  ゆん。

並里(なんざとぅ)⓪: (名) 並里。 ※「なみざと」、国頭郡本部町の地名。

難産(なんさん)@: (名) 難産。

銀(なんじゃ)⓪: (名) 銀。 *混効験集:乾巻・器材に、なむぢや、とある。お

  もろさうし・1099に、なむちや、とある。 

銀結髪(なんじゃぢいふぁあ)⓪: (名) 銀のかんざし。士族の女子が使う。

何程(なんじゅ)⓪: (副) たいして。それほど。 @何程(なんじゅ)良(い)い

物(むの)お有(あ)らん。/たいしていいものではない。 @何程(なんじゅ)出

来(でぃき)らん。/たいしてできない。

難渋(なんじゅう)@: (名) いさかい。悶着。もめごと。「難渋」に対応する。

難渋頻渋(なんじゅうふぃんじゅう)@: (名) ごたごた。もめごと。 @難渋頻渋

(なんじゅうふぃんじゅう)為(しゅ)ん。/ごたごたともめる。 @難渋頻渋(な

んじゅうふぃんじゅう)ぬ一杯(いっぺえ)有(あ)ん。/もめごとがたくさんある。

難船(なんしん)@: (名) 難船。

難儀(なんぢ)⓪: (名) 難儀。苦労。 @若(わか)さいにぬ難儀(なんぢぇ)え

買(こお)てぃん為(っし)。/若い時の難儀は買ってでもした方がよい。

難儀困儀(なんぢくんぢ)⓪: (名) たくさんの難儀。多くの苦労。 @難儀困儀(な

んぢくんぢ)ぬ多(うふ)さん。/苦労が多い。 @難儀困儀(なんぢくんぢ)為(し

ゅ)ん。/※動詞化。

難付(なんつぃ)ち⓪: (名) こげ付き。こげて鍋などに付いたもの。 @共通語の

お焦げに相当し、かまどで炊いた場合に鍋底に焦げ付く御飯のことである。

難付(なんつぃ)ち臭(かざ)⓪: (名) 飯などのこげつくにおい。こげくさいにお

い。

嘗(なん)でえ酸(し)い⓪: (名) 桑の実。おもに農民が使う語。首里では、桑木

(くぁあぎ)ぬ持凝(むっく)う、ということが多い。

何度(なんどぅ)⓪: (名) 何度。幾度。

何時(なんどぅち)⓪: (名) 何時(なんじ)。時刻を尋ねるときに使う。

滑泥(なんどぅる)う⓪: (名) すべっこいもの。

滑泥(なんどぅる)さん⓪: (形) すべっこい。なめらかである。つるつるする。

滑泥道(なんどぅるみち)⓪: (名) すべりやすい道。ぬかるみになった道。

滑泥物(なんどぅるむん)⓪: (名) すべっこいもの。すべりやすいもの。 @銭(じ  

の)お滑泥物(なんどぅるむん)。/銭は失いやすいもの。

何日(なんにち)⓪: (名) 何日。幾日。月の第何日の意では、幾日(いっか)、とい

う。

何人(なんにん)⓪: (名) 何人。幾人。

何年(なんにん)⓪: (名) 何年。幾年。

何(なん)ぬう彼(かん)ぬう⓪: (名) 何のかの。文句をいうこと。 @何(なん)

ぬう彼(かん)ぬう為(しゅ)ん。/何のかのと言う。 @何(なん)ぬう彼(かん)

ぬうぬ多(うふ)さん。/何のかのと文句が多い。

南蛮(なんばん)⓪: (名) @南蛮。 ➁南蛮甕(なんばんがあみ)、の略。

南蛮甕(なんばんがあみ)⓪: (名) 南蛮焼き。南洋から渡来した素焼きの甕。酒を

入れると味がよくなるというので重宝がられる。単に、南蛮(なんばん)、ともいう。

何匹(なんびち)⓪: (名) 何匹。

何分(なんぶん)@: (名) なにぶん。何分(なにぶん)、ともいう。 @何分(なん

  ぶん)ぬ返事(ふぃんじ)聞(ち)かせえ。/なにぶんの返事を聞かせろ。

並減(なんべ)えい⓪: (名) 斜め。真正面でないこと。また、傾いていること。

並減(なんべ)え⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @傾ける。斜面にする。 ➁斜めに

する。真正面に向かせない。

並松(なんまつぃ)@: (名) 松並木。