表紙 前文

 

 ?あ ?い 'い ?う 'う ?え 'え ?お 'お                             ?め   ?や  ?ゆ  ?よ       ?わ  ?ゐ  ?ゑ  ?ん  

 

 首里方言では、母音および半母音の声門破裂音[?]があるかないかによって単語の意味が違ってくる。すなわち、声門破裂音の有無による音韻的対立をもつ。そこでその声門破裂音が伴う場合を子音音素[?]があるとし、声門破裂音が伴わない場合を子音音素[’]があるとする。(沖縄語辞典p29〜30を引用)。※たとえば、首里方言では、?いん(犬)と、‘いん(縁)、?うとぅ(音)と‘うとぅ(夫)、では発音が違うのである。共通語は、このような声門破裂音の有無に関して無関心であるが、首里方言では、声門破裂音の有無によって別の単語になってしまうので、この有無をはっきりしなければならない。難しく考えなくても琉球語のネイティブから普通に発音を聞いたことのある人であれば、普通に発音できるはずである。

 

   ?      [子音音素(?)があることを示す。]

        [母音の(あ)は、子音音素(’)を伴うことがない。] 

 

ああ(感動詞)@: (感)ああ。

泡(ああ)⓪: (名)泡。 @泡(ああ)ぬ立(た)ちゅん。/泡が立つ。

安和(ああ)⓪: (名)安和。 ※「あわ」名護市の地名、旧屋部村。セメントの原料

  となる石灰石の採石場がある。

ああああ(ため息)@: (感・副)ああああ。 @ああああしゅん。/ああああと嘆息

  する。

開(ああ)⁼かしゅん⓪: (他 ⁼さん、ち)割る。裂く。離す。また、割れ目を入れる。

開(ああ)き⓪: (名)裂け目。割れ目。ひび。すき間。 @走(はしる)ぬ開(ああ)

  きから透見(すうみい)しゅん。/雨戸のすき間からのぞき見する。

ああきい⓪: (名)組踊用語。愁嘆場。親子兄弟の別離・再会などで、感情が高まる場

面。@あき、如何(いちゃが)成(な)ゆら。/ああ、どうなることか。 @あき、

夢(い み)がやゆら。/ああ、夢ではないか。などの、あきを、地謡が長く引き延

ばして歌うのでこういう。

開(ああ)き⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @割れる。裂けて離れる。また、ひびが

入る。裂け目ができる。 @板(いちゃ)ぬ枯(か)りてぃ開(ああ)きゆん。/板

が枯れて割れる。 @村吟味為(むらじんみしゃ)すぃが、幾(いくつぃ)ぬんかい

開(ああ)きたん。/村の協議をしたが、意見がいくつにも割れた。 ➁言行が食い

違う。つじつまが合わない。矛盾する。 @二人(たい)が言(ゆ)る言葉(くとぅ

ば)ぬ開(ああ)きとおん。/ふたりの言うことばは矛盾している。 @ありが言(ゆ)

る事(くと)お後(あとぅ)とぅ先(さち)とぅ常(ちゃあ)開(ああ)きゆん。/

彼の言うことは前とあとといつも食い違う。

ああぐうる⓪: (名)かくれんぼ(くぁっくぃんどおれえ)で、隠れた者を探しだせず

に鬼が降参すること。また、その降参するときに言う言葉。鬼が、ああぐうる、と叫

ぶと、隠れた子供たちが現れ、鬼にお辞儀をさせてから、やり直す。

秋津(ああけえずう)⓪: とんぼ。 ※共通語の古語では、あきづ、あきつ、と言う。

なお、あきづ、が古い発音らしい。私は「ああけえじゅう」と発音する。 *混効験

集:乾巻・気形に、あけづ、とある。同:坤巻:気形に、あきづ、とある。 *おも

ろさうし479に、あけず、とある。

青苔(ああさ)⓪: (名) @海苔の名。青のりの一種。あおさ。わかめのようにして

汁の実などにする。毛青苔(もおああさ)と区別して海青苔(うみああさ)ともいう。 

➁毛青苔(もおああさ)(きのこの一種)と同じ。

青苔炒(ああさい)りち⓪: (名) 料理名。毛青苔(もおああさ)の油いため。

泡瀬(ああし)⓪: (名) 泡瀬。中頭郡東海岸にある港。 ※「あわせ」、沖縄語辞典

編纂当時は、中頭郡美里(みさと)村であった。現在は沖縄市で、港というよりは地

名である。

合(ああ)し鏡(かがん)⓪: (名) 合わせ鏡。後ろ姿を見るために、前後から鏡を

合わせてみること。 合(ああ)し鏡(かがん)しゅん。/※合わせ鏡を動詞化した

ものである。 ※合わせ鏡は平安時代の物語には見えない。平安貴族は後ろ姿をどの

ように見ていたのであろうか。鏡(かがん)は、最後の母音が脱落してmnに変化

したもので、このような例は他に多く見られる。

合(ああ)し物(むん)⓪: (名) 袷(あわせ)。裏付きの着物。 ※物(むん)は、

  最後の母音が脱落したものである。

合(ああ)し着物(じん)⓪: (名) 合(ああ)し物(むん)と同じ。合(ああ)し

  物(むん)を多く用いる。

合(ああ)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) @合わせる。適合させる。基準などに合わ

せる。 ➁調合する。 @薬合(くすいああ)しゅん。/薬を調合する。 B牛など

を戦わせる。 @牛合(うしああ)しゅん。/牛を戦わせる。

和(ああ)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 粉に水などを加え、練りけす。こね合わせ

る。 @糊和(ぬいああ)しゅん。/のりをこね合わせる。 *混効験集:乾巻・飲

食に、ああせ、とある。

ああた⓪成(な)ゆん⓪: (句) 疲れてくたくたになる。疲れてぐにゃぐにゃになる。

  のびる。

ああた走(ば)い⓪: (名) またぐらの痛い時など、またを横に広げるようにして歩

くこと。その滑稽な歩き方を嘲笑して言う語。ああたは、あたく、あたびち(ともに

蛙の種類の名)の、あた と関係ある形か。ああた走(ば)いは、蛙のよちよち歩く

歩き方と似ている。 @ああた走(ば)いしゅん。/足を広げてよちよち歩く。

合(ああ)ち⓪: (助動詞的に用いられる)同時に。 @行(い)ちゅすぃとぅ合(あ  

  あ)ち。/行くのと同時に。

歩(ああっ)ちゃ⓪: (名) 歩(あっ)ちゃ(歩くことの小児語)と同じ。

ああちらひゃあちら⓪: (副) ぺちゃくちゃ。ぺらぺら。とりとめもなくしゃべるさ

  ま。 @ああちらひゃあちら物読(むぬゆ)ぬん。/ぺちゃくちゃしゃべる。

ああ尊(とお)とぅ@: (感) 神仏を拝む時に発する声。あなとうと。女は、うう尊

(とお)とぅ、とも言う。 ※増鏡(ますかがみ)に、安名尊、とある。 *混効験

集:乾巻・言語、および坤巻・言語に、あふたふと、とある。

ああばあさあばあ⓪: ぺちゃくちゃ。とりとめもなくしゃべるさま。 @ああばあさあ

  ばあ物読(むぬゆ)ぬん。/ぺちゃくちゃしゃべる。

ああひゃんがれえ⓪: (感) 短気を起した時などに発する声。ちくしょう。

泡(ああ)ぶく⓪:  (名) 泡。あぶく。

泡盛(ああむい)⓪: (名) 泡盛。普通は単に、さき、という。

合(ああ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ)合う。計算が合う・時計が合うなどの意味で

は、新しく、当(あたゆん、を多く用いるようになった。 @うぬ靴(ふや)や汝足

(やあふぃしゃ)とぅ合(ああ)ゆみ。/その靴はおまえの足に合うか。算明(さん

みの)お当(ああ)とおみ。/計算は合っているか。

大(ああ)らんかあ⓪: (名) 飾り気のない人。ありのままで遠慮のない人。 @あ

れえ大(ああ)らんかあやくとぅ、全(まっとお)ばんでぃ言(い)ちぇえ全(まっ

とお)ばやん。/彼はありのままの人だから、正直といえば正直だ。

晒(ああ)らんちぇえ⓪: (名) 麻布の一種。さらしてない無地の麻布。びんがた(紅

  型)や、ええがた(藍型)などに加工する前の布。

あい@: (感) 珍しいものに接したとき、また、何か間違った時などに発する声。あ

ら。おっと。人の足を踏んだ時には、あい間違(まちげ)え、(おっと、ごめん。)と

言う。 ※共通語の、あら、は女性が言う言葉で、男性は、あれ、と言うと思う。年 

輩の方は、現在でも、道で突然知り合いに出会った時に、あい、と言うようである。

*混効験集:坤巻・言語に、あい、とある。

蟻(あい)@: (名) 蟻。蟻(あい)こお ともいう。 ※こお、の語源は何であろ

うか。あいは、ありのRの音がなくなったもので、琉球語はR音が脱落する現象が多

くみられる。

有合(あいえ)え⓪: 有合(あえ)えと同じ。 ※あいええは、母音が4個並んでいる

  が、発音の際には、間に無意識のうちにy音がはさまれるようである。

姉小前(あいぐぁあめえ)⓪: (名) お嬢さま。士族の未婚の娘の敬称。使用人や平

民が多く言う。那覇では、妹(うとぅ)がまあ、という。古語に、うぇぐんしょり、

という語もある。

蟻(あい)こお⓪: (名) 蟻の小児語。 @蟻(あい)こお蟻(あい)こお、友呼(ど

ぅしゆ)でぃ来(く)う、我如古(がにく)ぬ後(くし)んじ蟹(がに)焼(や)ち

呉(くぃ)ら。(童謡)蟻よ、蟻よ。友達を呼んで来い。我如古の後ろで蟹を焼いてや

ろう。がにく[我如古]は宜野湾間切の村の名。がにと頭韻をふんだもの。 ※これ

は私の推測であるが、いっとう昔は、かにくぬくしんじかにやちくぃら、と発音され

ていたと思う。かにくは、砂地の浜辺のことであり、意味が非常によくわかる上に、

全体としてKの頭韻が絶妙となる。

有(あ)い所(じゅ)⓪: (名) ありか。あり場所。

綾門(あいじょお)⓪: (名) 綾門(あやじょお)と同じ。 ※これは門の名前では

  なく、大通りの名前のことである。

綾門大縄(あいじょおううんな)⓪: (名) [綾門大縄] あいじょおうふみち[綾

  門大道路]で行われた、首里の東西対抗の綱引き。綱引(つぃなふぃ)ちの項参照。

綾門大道(あいじょおうふみち)⓪: (名) [綾門大路]あやじょお と同じ。

相乗(あいぬ)いい⓪: (名)[新] 人力車の相乗り。また、相乗(あいぬ)い車(ぐ

  るま)の略。

相乗(あいぬ)い車(ぐるま)⓪: (名)[新] 相乗りの人力車。

藍引(あいびつぁ)あ⓪: (名) 藍引(ええびちゃ)あと同じ。 ※魚の名前である。

姉前(あいめえ)⓪: (名)[古] 貴族の嫁がしゅうとめを敬って言う語。他からは、

普通、姉尊前(あっとおめえ)、大姉尊前(うふあっとおめえ)などという。 

相合(あうぇ)え救(しゅくぇ)え⓪: (副) あわてふためくさま。大あわて。 @

只今(たでえま)ぬ事成(くとぅな)てぃ、相合(あうぇ)え救(しゅくぇ)え為(し)

みらっとおん。/突然のことで大あわてさせられている。

有合(あえ)え⓪: (名) あり合わせ。 有(あ)い合(え)え ともいう。 @有

合(あえ)えぬ物(むん)さあに為成(すぃいな)しゅん。/あり合わせのものでう

まくやる。

垢(あか)⓪: (名)頭髪・衣服などについたよごれ。皮膚の垢は ふぃんぐ、ふけは 

鱗(いりち)という。 @垢(あか)ん脱(ぬ)がん。/仕事がはかどらない。効果

が目に見えない。すき櫛がよくない時、髪のよごれがなかなかとれないことからいう。   

@着物(ちん)ぬ垢落(あかう)とぅしゅん。/着物のよごれを落とす。

阿嘉(あか)⓪: (名) 阿嘉。 ※「あか」、島尻郡座間味村の地名。阿嘉島は慶良間

  諸島に属する。

阿嘉(あか)⓪: (名) 阿嘉島。慶良間列島(きらま)の島の名。

赤(あか)@: (名) 赤。色の名。 @赤(あか)ぬ他人(たにん)。[新?]赤の他

  人。

赤(あか)あ@: (名) 赤いもの。

赤赤(あかあかあ)とぅ@: (副) あかあかと。 @電気付(でんきつぃ)き上(あ)

がらち、家(やあ)ぬ内(うち)赤赤(あかあか)とぅ為(しょ)おん。/電気を付

けて家の中があかあかとしている。 @ランプ(らんぶ)やか電気(でんけ)え赤赤

(あかあかあ)とぅ為(しょお)ええさに。/ランプより電気は明るいのではないか。

※この場合の電気は電球のことである。昔の電球はランプとくらべられるほど明るく

はなかったのである。

赤秋(あかあち)@: (名) まぐろ。秋(あち)ぬ魚(いゆ)参照。

明(あか)い@: (名) 障子。あかり障子。 ※光を通す障子があかり障子であり、

光を通さない障子を襖障子(ふすましょうじ)という。現代では、あかり障子を単に

障子といい、襖障子を単に襖(ふすま)というようである。

上(あ)がい@: (名) 地面の高いところ。かみ。下(さ)がい の対。

明(あか)い桟走(さんば)しり@: (名)[文] 明るい桟のある引き戸の意か。 @

明(あか)い桟走(さんばし)り付(つぃ)ち開(あ)きてぃ見(み)りば、庭(に

わ)ぬ白菊(しらちく)ぬ咲遣(さちゃ)る清(ちゅ)らさ。/[あかりさんはしり 

つきあけて見れば 庭の白菊の 咲きやるきよらさ]障子をさっとあけて見ると、庭

の白菊が美しく咲いている。 ※この沖縄語辞典においては、琉歌を音数を変えず日

本語に訳したものが[ ]の中にあり、続いて歌の解釈が書かれている。私のおもろ

そうしの現代語訳は、この[ ]の中のような日本語訳であり、外間守善氏の口語訳

は、[ ]に続く解釈のようなものであると思う。 

明(あか)い桟走(さんばし)る⓪: (名)[文] 明(あか)い桟走(さんば)しり と

  同じ。

上(あ)がい太陽(てぃいだ)@: (名) 上る日。朝日。 @上(あ)がい太陽(て

ぃいだ)どぅ拝(うが)ぬる、下(さ)がい太陽(てぃいだ)あ拝(うが)まん。/

上る日は拝むが、落ちる日は拝まない。権勢のよいものにつく意。

上(あ)がい端(はな)@: (名) 日の上りはじめ。

赤魚(あかいゆ)う⓪: (名) 金魚。 ※あかいゆは、赤い魚のことだと思う。

赤色(あかいる)@: (名) 赤い色。 

赤織(あかうう)⓪: (名) 織物の名。赤みを帯びた上等の芭蕉布。他無(たなし)[そ

の項参照]などを作る。

赤織着物(あかううじん)@: (名) 赤織(あかうう)で織った着物。地は赤みを帯

  び、派手なかすりなどの模様がある。他無(たなし)など、女物の上等な着物。

赤牛(あかうし)@: (名) 赤牛。茶色い牛。 ※赤牛(あかうし)は、日葡辞書に

  も載っている共通語である。

赤御盆(あかうぶん)@: (名) 赤麹(あかこおじ)や食紅などで赤く色をつけて炊

いた御飯。赤飯。あずきを入れた赤飯には、赤豆御盆(あかまあみいうぶん)、とい

う。

赤瓦(あかがあら)⓪: (名) 赤瓦。

赤篝(あかがい)@: (名) @あかり。灯火。 ➁明るい所。明るみ。 暗芯(くら

  しん)の対。 *混効験集:乾巻・時候に、あかがい、とある。

赤篝付(あかがいつぃ)き⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) すっかり明るくなる。

赤紙(あかかび)@: (名) @赤い紙。 ➁正月などに、祭壇と火の神の前に供える

赤い紙。白・赤・黄の三枚の紙[御飾(うかざ)い紙(かび)]を重ねて供える。表裏

とも赤く、紙質は、百田紙(ひゃくだし)。お祝いのとき、聯を書く赤い紙は 朱紙(し

ゅがみ)という。 ※百田紙(ひゃくだし)は、百田紙(ももたがみ)ともいい、か

つて沖縄で生産されていた和紙である。赤い紙に聯(れん)を書く習慣はもともと中

国伝来のようである。聯は、左右に相対して書かれた書のようである。

赤兜(あかがんた)あ⓪: (名) 赤い髪のおかっぱ頭をした者。鬼付物(きじむん)[魔

物の一種]。河上物(かあがりもお)[河童]などのようす。また、赤ちゃけた髪をお

かっぱにしている子供などをもいう。 ‐がんたあ<かんた(髪の卑語)。

赤木(あかぎ)@: (名) 植物名。赤木。亜熱帯性の喬木。木肌が赤い。その実は、

  熟すれば食べられる。

赤毛(あかぎ)い⓪: (名) 赤毛。赤ちゃけた髪をした者。

赤木(あかぎ)ぬ実(むっくう)⓪: (名) 赤木の実。

赤粉(あかぐう)⓪: (名) さつまいもの一種。肉が黄色で、黄色の粉をふき、美味。

  金時という種類に似ている。

赤口(あかぐちゃ)あ前(めえ)⓪: (名)[文] 火(ふぃ)ぬ神(かん)[火の神]

の異称。赤い口をした尊いお方の意。声贄(くぇえな)[旅歌]にある語。 *あかく

ちや、あかぐちや、は、おもろさうしの頻出語である。    

赤麹(あかこおじ)@: (名) 米で作る赤い麹。 @舌返(ちんべえ)る赤麹(あか

  こおじ)。/あかんべえ。

赤麹御盆(あかこおじうぶん)@: (名) 赤麹(あかこおじ)で赤く染めて炊いた御

  飯。

赤桜色(あかざくらいる)@: (名) 赤味を帯びた桜色。人の血色が赤く美しいこと

  にいう。

明(あか)さ暗(くら)さ⓪: (名) 明暗。明るいことと暗いこと。 @明(あか)

さ暗(くら)さん分(わ)からん。/明るいか暗いかもわからない(ほど熱中する)。

無我夢中である。

赤錆(あかさび)@: (名) 赤錆。鉄に生ずる錆。 ※赤錆は共通語である。アクセ

  ントは違うようであるが。

赤(あか)さん@: (形) 赤い。明るいの意では用いない。ただし、明(あか)さ暗

(くら)さ という複合語はある。明るい意では、明明(あかあか)あとぅ為(しょ    

お)ん、明(あか)がとおん などという。

別(あか)し⓪: (名) 松の幹を薄くそいだたきつけ。灯(とぅぶ)し ともいう。

<別(あか)しゅん[引き離す]。 ※山原(やんばら)あが入(い)っちょんどお、

別(あか)しん焚物(たむぬ)ん買(け)んしょおらに。(童謡)山原船(やんばらあ

ぶに)がはいっているぞ。たきつけやまきも買いませんか。

赤銭(あかじな)あ⓪: (名) @胴の一厘銭。主として寛永通宝。黒金(くるかに)

い、に対する。 ➁のちの、5厘・1銭・2銭などの胴貨。 ※米軍占領下の沖縄で

は、1セント銅貨を赤銭(あかじな)あ、と呼んでいた。その他の硬貨は、白銭(し

るじな)あ、である。

赤縞(あかしま)あ⓪: (名) 織物の名。白地に茶褐色のかすりのあるもの。多くは

  八重山地方の産。しま(縞)は織物の模様をいう。しま、参照。

明(あ)かし物(むん)⓪: (名) 考えもの。謎。

別(あか)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) @引き離す。大きいものから小さいものを

引き離す。また、ひっぱがす。はがす。 @灯(とぅぶ)し別(あか)しゅん。/松

のたきつけを幹からはぐ。 @木(きい)から皮別(かああ)かしゅん。/木から皮

をはがす。 @別(あか)しわどぅ成(な)ゆる尺(しゃく)ぬ垢(ふぃんぐ)。/は

がなければならないほどのたいへんな垢。 @瘡蓋別(かさぶたあか)しゅん。/か

さぶたをはぐ。 ➁乳離れさせる。主として家畜についていう。

明(あ)か⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 明かす。夜を明かす。 @夜明(ゆうあ)

  かし兼(か)んてぃい。/夜を明かしかねて。

明(あ)かしゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 明かす。なぞなどの答えを明かす。言い当

てる。 ※上の語と同じであると思う。別立てではなく、同じ語の@と➁にすればよ

かったと思う。

赤染(あかず)みい⓪: (名) 茶褐色に染めた布。主として芭蕉布で、その染料は 手

  勝(てぃかち)という木の皮や根から取る。

明(あか)せえ⓪: (名) 遊戯の名。言い当てる遊び。

赤田(あかた)⓪: (名) 赤田。 ※「あかた」、那覇市首里の地名。私の小中学校の

友達Tのお母さんは、ここの出身で、ほんとうにきれいな首里言葉を話した。昔の沖

縄の人ならだれでも一度は首里言葉にあこがれたと思う。

赤田御門(あかたうじょお)⓪: (名) 首里城の門の名。御城(うぐすぃく)の項参

照。 *混効験集:乾巻・家屋に、あかたおちやう、とある。 *おもろさうし、2

21に、あかたぢやう、とある。

彼方(あがた)⓪: (名) あっちの方。あちら側。 @恩納岳彼方里(うんなだきあ

がたさとぅ)が生(う)まり島(じま)、森(むい)ん押(う)し除(ぬ)きてぃ此方

成(くがたな)さな。/恩納岳のあちら側は恋しい男の生まれ故郷、その山も押しの

けてこちら側にしたい。

汗掻(あが)ち走(は)い⓪: (副) 忙しそうに働くさま。精出すさま。 −はい<

  走(は)ゆん;(走る)。 汗掻(あが)ち走(は)いしゅん。/※動詞化。

汗掻(あが)ち働(はたら)ち⓪: (名) 一生懸命働くこと。精出すこと。 

汗掻(あがちゃ)あ⓪: (名) 労働者。筋肉労働者。

汗掻(あが⁼ちゅ)ん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) @働く。肉体労働をする。また、よく働

く。精出す。 ➁仕事などが、はかどる。はかが行く。 @仕事(しぐとぅ)ぬ諸汗

掻(むるあが)かん。/仕事が全然はかどらない。 @一尋(ちゅふぃる)やか上(う

ぃい)に汗掻(あが)ちゃん。/(機織りが)一尋以上はかどった。 B家畜が成長

する。 

赤月(あかつぃち)⓪: (名) あかつき。夜明け。明け方。 ※共通語のあかつきは、

あかときの変化した語であるらしいが、琉球語のあかつぃちは、赤い月という語感が

する。

赤月起(あかつぃちう)き⓪: (名) 夜明けに起きること。

赤月暗芯(あかつぃちぐらしん)⓪: (名) あかつきやみ。月のない夜の明けがた。 

赤月月夜(あかつぃちじちゅう)⓪: (名)有明の月。明けがたの月。

赤月星(あかつぃちぶし)⓪: (名) 明け方の星。まばらで少ないもののたとえとな

  る。

赤月戻(あかつぃちむどぅ)い⓪: (名) 遊郭(那覇にあった)から、明け方に帰る

  こと。遊郭の朝帰り。

赤顔(あかづぃら)あ⓪: (名) 赤い顔。赤ら顔。また、赤面。 @赤顔(あかづぃ

  ら)あ成(な)ゆん。/赤面する。

赤太陽(あかてぃいだ)⓪: (名) 赤い太陽。夕日をいう。

彼遠(あがとお)⓪: (名) あの遠さ。あんなに遠く。 @彼遠(あがとお)から来

(ち)い。/あんなに遠くから来たか。 @今(なま)でぃいから彼遠(あがとお)

ぬ君達(いったあ)までぃ帰(けえ)ゆんなあ。/こんなに遅くあんな遠くの君の家

まで帰るのか。

赤菜(あかな)⓪: (名) 植物名。紫蘇。

赤縄(あかなあ)⓪: (名) 童謡などにある語。月の中にいる者の意に用いる。月の

薄黒い部分を、水桶をかついで立っている者と見立てたものらしい。 @赤縄家(あ

かなあやあ)ぬ焼(や)きたんどお、泣(な)ちゅる童(わらべ)え水汲(みずぃく)

ましぇえ泣(な)かん童(わらべ)え鉦打(かにう)たしぇえ。(童謡)アカナーの家

が焼けたぞ。泣く子は水を汲ませろ、泣かない子は鉦を打たせろ。(泣く子を泣きやま

せるために歌う歌。)

赤(あか)⁼ぬん@: (自 ⁼まん、⁼でぃ) 赤くなる。赤ばむ。 @顔(つぃら)ぬ赤

(あか)ぬん。/顔が赤くなる。 @九年母(くにぶ)ぬ赤(あか)ぬん。/みかん

が赤くなる。

贖(あがね)え⓪: (名) 倹約。節約。経済。 @贖(あがね)えぬ良(ゆ)たしゃ

  ん。/節約がうまい。

贖(あがね)え⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 節約する。倹約して大事に使う。 @

儲(もおき)らじやか贖(あがね)えり。/もうけるよりも倹約せよ。(ことわざ。も

おきらじ、は形は否定だが、意味は肯定。儲(もおき)ゆすぃやか、ともいえる。

赤恥(あかはじ)@: (名) 赤恥。大勢の前でかく恥。 ※これは共通語である。

赤裸(あかはだか)@: (名) 赤裸。丸裸。 ※この語は方言くさいが、全くの共通

  語である。

赤帕(あかはちまち)@: (名)[古] かんむりの名。帕(はちまち)の項参照。 ※

  はちまちというが、これはいわゆる運動会などのはちまきではなく冠である。Wikipedia

の画像を参照。

赤花(あかばな)あ⓪: (名) ぶっそうげ(仏桑華)。亜熱帯植物で高さ3メートル余

りに達し、深紅の花が咲く。霊前に供える。 ※現在は、ハイビスカスと呼ばれるこ

とが多いようである。ハイビスカスは、アオイ科フヨウ属のことで、およそ200種

あるが、その中で特にブッソウゲのことをハイビスカスと呼ぶようである。赤花(あ

かばな)あは、文字通り、赤いハイビスカスのことである。

赤鼻(あかばな)あ⓪: (名)鼻の赤い者。赤鼻。 ※アクセントは@のように思うが

  どうであろう。

垢食(あかは)⁼ぬん⓪: (自 ⁼まん、⁼でぃ) よごれがたまる。よごれる。垢じみる。 

@髪(からじ)ぬ垢食(あかは)どおん。/髪の毛がよごれている。 @着物(ちん)

ぬ垢食(あかは)どおん。/着物がよごれきっている。 ※食(は)むは、万葉集に

も見える共通語の古語である。今帰仁の方言では、「御飯を手食べろ。」を「物食(む

んは)めえ。」という。

赤髭(あかふぃじ)@: (名) 赤ひげ。赤いひげ。

赤髭(あかふぃじゃ)あ⓪: (名) 赤いひげをしている者の卑称。赤ひげ。 ※黒澤

  明の映画に「赤ひげ」がある。

赤平(あかふぃら)⓪: (名) 赤平。 ※「あかひら」、那覇市首里赤平町。 ※アク

セントは@のように思うがどうであろう。やはり、首里の人は⓪のように発音するの

かもしれない。たとえば、東京の目白を、われわれは@のように発音するが、目白の

人は⓪のように発音するようである。

赤房(あかぶしゃ)あ⓪: (名) 赤房(あかぶしゃ)あ童(わらば)あ と同じ。

赤房(あかぶしゃ)あ童(わらば)あ⓪: (名) 赤ちゃけた髪を振り乱している子供

  (卑称)。

赤札(あかふだ)@: (名)[新] 尾類(じゅり)[女郎]が伝染病によって営業を禁

  止されること。

赤札(あかふだ)あ⓪: (名)[新] 伝染病により、検診に不合格になって営業を禁止

  された尾類(じゅり)[女郎]。

赤豆(あかまあみい)⓪: (名) あずき。 ※琉球語は、長音を好むようである。

赤豆御盆(あかまあみいうぶん)⓪: (名) あずき入りの赤飯。赤御盆(あかうぶん)

  の項参照。 ※我が家では、食紅で染めたごはんが赤飯であった。

赤又(あかまた)あ⓪: (名) 蛇の一種。有毒であるが、はぶほどはこわがられてい

  ない。錦色で美男に化けるといわれる。

赤身(あかみい)⓪: (名) 卵の黄身。

赤目張(あかみいば)ゆ@: (名) 魚名。あかめばる。目張(みいばゆ)[めばる]の

  一種。色は赤で、時に毒を有する。

赤目返(あかみげえ)い@: (副) 赤くなったさま。泣きはらした目・できものなど

  についていう。 @目(みい)ぬ[瘡(かさぬ)]赤目返(あかみげえ)い為(しょお)

ん。/目が[できものが]赤くなっている。

赤元結(あかむうてぃ)い⓪: (名) 赤元結い。赤い色の元結い。元結(むうてぃ)

  いの項参照。 ※元結(もとゆ)いは、髪を束ねたところに結んだひものこと。

赤横為(あかゆくし)@: (名) 真っ赤なうそ。

上(あ)が⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @上がる。昇る。空間を上がる。また、物

価などがあがる。 @太陽(てぃいだ)ぬ上(あ)がゆん。/日が昇る。 @鞠(ま 

あい)ぬ上(あ)がゆん。/まりが上がる。 @値(にい)ぬ上(あ)がゆん。/値

が上がる。 昇(ぬぶ)ゆん の項参照。 ➁上達する。 @手(てぃい)ぬ上(あ)

がゆん。/腕があがる。 @字(じい)ぬ上(あ)がゆん。/字が上達する。 @歌

上(うたあ)がらしゅん。/歌を上達させる。 Bでき上がる。また、終わる。 @ 

市場(まち)ぬ上(あ)がゆん。/市が終わる。 Cかえって悪い。よくあるべきも

のがいっそう悪い。 @子(っくぁ)やか上(あ)がゆん。/子供より悪い。 @盗

人(ぬすどぅ)やか上(あ)がゆん。/どろぼう以上だ。

崇(あが)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) あがめる。敬う。

別(あか)らあ豚(うぁあ)⓪: (名) 別(あか)り豚(うぁあ)と同じ。

赤(あか)ら華(くぁあ)ら@: (副) 派手なさま。けんらんたるさま。豪華なさま。

着物の模様・部屋の装飾などについていう。 ※赤(あか)ら華(くぁあ)ら為(し

ょお)る着物(ちん)。/派手な着物。

赤(あか)ら返(ぐぃえ)い@: (名) 人が血色がよくて太っていること。白返(し

  るぐぇえ)い、黒返(くるぐぇえ)い、などの語もある。

明(あか)ら昼(ふぃる)@: 真昼。白昼。 

東(あがり)@: (名) 東。西(いり)の対。 ※orientは、東のことであるが、「上

  がる、昇る」というのが語源である。

東江(あがりい)⓪: (名) 東江 ※「あがりえ」、名護市の地名である。オリオンビ

  ールの工場がある。

別(あか)り豚(うぁあ)⓪: (名) 乳離れした豚。主として親豚をいうが、子豚の

  ほうをさすこともある。 *混効験集:坤巻・言語に、あかれ、とある。

別(あか)り豚小(うぁあぐぁあ)⓪: (名) 乳離れした子豚。

東江上(あがりうぃい)⓪: (名) 東江上。 ※「ひがしえうえ」、国頭郡伊江村の地

名。なぜ、現在は「ひがしえ」と読むのか。これは、豊見城の読み方と事情が同じな

のかもしれない。私の推測であるが、かなり年をとった方々は、やはり「あがりえう

え」と言うのではないかと思う。  

東御回(あがりうまあ)い⓪: (名) 東方めぐり。行事の名。穀物がはじめて作られ

たといわれるところ[知念村の 受(う)きん所(づ)走(は)いん所(づ)、与那原

村の親川(うぇえがあ)など数箇所]を女が巡拝する。 ※知念村は、現在の南城市、

与那原村は、与那原町である。なお、女とあるが、ノロいわゆるシャーマンのことだ

と思う。

東方(あがりかた)⓪: (名) 東の方。東の地方。 

東(あがり)ぬ海(うみ)⓪: (名) 太平洋。東の海の意。 @韓国では日本海を東

  海(トンヘ)と呼んでいるようである。

東江前(あがりめえ)⓪: (名) 東江前。 ※「ひがしえまえ」、国頭郡伊江村の地名

  である。

別(あか)り⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @離れる。器物などがこわれて、離れる。

また、はがれる。➁乳離れする。主として家畜についていう。 ※別(あか)るは、  

日本書紀にも見える共通語の古語である。

東向(あがりんけ)え⓪: (名) 東向かい。

赤(あか)ん子(ぐぁ)@: (名) 赤ん坊。

赤(あか)ん子(ぐぁ)あ⓪: (名) 赤ん坊(卑称)。

赤(あか)ん子(ぐぁ)あ魚(いゆ)⓪: (名) 人魚。顔が人に似て、前肢のような

  ひれのある哺乳類。南海に産する。じゅごん。ざんぬ魚(いゆ)ともいう。

赤(あか)ん土(ちゃ)⓪: (名) 赤土の土地。赤土の土質。

赤(あか)ん土(ちゃ)@: (名) 赤土。 ※上の語とはアクセントが違うようであ

  る。興味深い現象である。

赤嶺(あかんみ)@: (名) 赤嶺。 ※「あかみね」、那覇市の地名。ゆいレールの駅

  名にもなっている。

あき@: (感) あら。女が驚き・悲しみなどを表して言う語。 @あき、如何為(ち

  ゃあしゅ)が。/あら、どうしよう。

揚(あ)ぎ@: (名) 陸。おか。 @揚(あ)ぎぬ触(ふ)り者(むん)。/女が女郎

  にうつつをぬかす男などを嘲笑していう語。おかの気のふれたもの。 

上(あ)ぎ@: (名) 上げ。歌・三味線の二上がり(にいあぎ)。

−上(あ)ぎいなあ: (接尾) 〜しながら。〜しつつ。同時に動作を進行させる意を

表す。<‐あぎゆん。⁻がちい ともいう。 @歩上(あっちゃ)ぎいなあ/歩きな

がら、 読(ゆ)なぎいなあ/読みながら、 為(しゃ)ぎいなあ/しながら、 思

(うむ)やぎいなあ/思いながら、 など。 @歩上(あっちゃ)ぎいなあ荻噛(う

うじか)ぬん。/歩きながら砂糖きびを食う。 @歩上(あっちゃ)ぎいなあ[ぬく 

とぅ]やたん。/歩きながら[のこと]だった。  

明(あ)き方(がた)@: (名)[文] 明け方。夜明け方。普通は、赤月(あかつぃち)。

明雲(あきぐむ)@: (名)[文] 明け方にたなびく雲。 @偶(たま)さかぬ今宵(く

ゆい)鳥(とぅい)や歌(うた)るとぅん、暫(しば)し明雲(あきぐむ)に情(な

さき)あらな。[たまさかの今宵 鳥や歌るとも しばし明雲に情あらな]たまに会う

今夜だから、鶏は時を告げても、しばらくの間、夜明けの雲に情があって夜があけな

いようにしてほしいものだ。

開(あ)き閉(くぃ)い@: (名) あけたて。開閉。 @走(はし)るぬ開(あ)き

  閉(くぃ)い。/雨戸のあけたて。 閉(くぃ)い<閉(く)うゆん。

明(あ)き暮(く)り@: (名)[文] 明け暮れ。日夜。 

上(あ)ぎ下(さ)ぎ@: (名) 上げ下げ。上げたり下げたりすること。

あきさみよお@: (感) あれえっ。きゃあっ。助けてくれ。非常に驚いた時、悲しい

  時、苦痛にたえない時、救いを求める時などに発する声。

あきさみよお⓪: (副) 悲鳴の声をあげるさま。助けてくれと叫ぶさま。 @あきさ

みよお為(しゅん)。/悲鳴をあげる。 @あきさみよお為(しゅ)たくとぅ行(ん)

じ見(んん)ちゃん。/悲鳴があったので言って見た。 

上(あ)ぎ字(じ)@: (名) 習字の清書。習字で、けいこを終えて清書すること。

安慶田(あぎだ)⓪: (名) 安慶田。 ※「あげだ」、沖縄市の地名。 ※これは私の

  一般論であるが、地名のアクセントは⓪になる傾向があるように思う。

あきとおなあ@: (感) おやまあ。あらまあ。驚いた時、失敗した時などに女のいう

  語。

揚(あ)ぎ豆腐(どおふ)@: (名) 揚げ豆腐。 ※共通語の揚げ豆腐の発音は、英

  語のI get off とほぼ同じ。

開(あ)き開(はた)き⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) (胸などを)はだける。

開(あ)き放(はな)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) あけ放す。解放する。障子など

  すっかり開ける。

揚(あ)ぎ火車(ふぃいぐるま)あ@: (名) [新] おか蒸気。汽車。明治の初め

  汽車ができたという話を聞いてできた語。火車(ふぃいぐるま)あ は蒸気船。揚(あ)  

ぎは陸。沖縄に軽便鉄道ができてからは きしゃ というようになった。

開(あ)き広(ふぃる)ぎ⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) あけ広げる。解放する。

上(あ)ぎ節(ぶし)@: (名) さんしん(三味線)の二上がりの調子の歌。

明(あ)きま年(どぅし)@: (名) 明けた年の美称。新年。

上回(あぎまあ)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) せきたてる。 @でぃい行(い)か

行(い)かっし上回(あぎまあ)ちゃすぃが、悠々(ゆうゆう)とぅ為(しょお)た

ん。/さあ行こう行こうとせきたてたが、のんびりしていた。

開(あ)き目暗(みっくぁ)@: (名) あき盲。目はあいているが、目が見えないこ

  と。また、その者。また文盲。

揚(あ)ぎ物(むん)@: (名) 揚げ物。油揚げにしたもの。てんぷらなど。

上・揚(あ)ぎ⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ)@上げる。 @凧揚(たくあ)ぎゆん。

/たこを揚げる。 @手挙(てぃいあ)ぎゆん。/手を上げる。 @名上(なああ)

ぎゆん。/名を上げる。 @値上(にいあ)ぎゆん。/値を上げる。 ➁楽器や声の

調子を高くする。 @声上(くぃいあ)ぎゆん。/声の調子を高くする。声を出す意

では、鬨(とぅち)ぬ声上(くぃいあ)ぎゆん、(ときの声をあげる)のほかはあまり

用いないようである。 B油で揚げる。 @揚(あ)ぎ物揚(むんあ)ぎゆん。/揚

げ物を揚げる。 C献上する。進上する。さし上げる。押上(うしゃぎ)ゆん、より

も格式ばった、丁寧な語。 @何上(ぬうあ)ぎいが。/何を進上しようか。 Dも

どす。吐く。あげる。 @酒飲(さきぬ)みいねえ常上(ちゃああ)ぎゆる癖(くし)

ぬ有(あ)ん。/酒を飲むといつも吐く癖がある。

−(上)あぎゆん: (接尾・不規則) 〜しつつある。〜している。進行の意を表す。

−上(あ)ぎいん ということが多い。ふつう動詞の「終止形」から うん を除い

た形に付く。読(ゆ)ぬん[読む]→読(ゆ)なぎいん[読みつつある]など。 

安慶名(あぎな)⓪: (名) 安慶名。 ※「あげな」、うるま市の地名。 *おもろさ

  うし1168に、あけなは、とある。

開(あ)き⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 開ける。 @明(あか)い開(あ)きゆん。

  /障子をあける。 @開(あ)きたい満(み)ちたい。/あけたりしめたり。

明(あ)き⁼ゆん@: (自 ⁼らん⁼てぃ) 明ける。 @夜(ゆう)ぬ明(あ)きゆん。

  /夜が開ける。 

あきよ⓪: (感)[文] ああ。あわれ。 @あきよ、自由成(じゆな)らん事(くとぅ)

ゆ叉(また)やらわ、匂(にうぃ)やちょん袖(すでぃ)に移(うつ)つぃ給(たぼ)

り。[あけよ自由ならぬ ことよまたやらば 匂いやちよも袖に 移ちたばうれ]ああ

自由にならないことであるのなら、匂いだけでも袖に移して下さい。

あきよお@: (感) あら。驚いた時などに女が発する語。 

悪(あく)⓪: (名) 悪事。 @悪企(あくたく)ぬん。/悪事をたくらむ。

灰汁(あく)@: (名) あく(灰汁)。洗濯の時、または芭蕉布を煮て柔らかにする時

  などに用いる。

悪縁(あくいん)⓪: (名)[文] 悪縁。くされ縁。前世からの罪悪によりつながれた

  男女の悪縁。

悪口(あく)う⓪: (名) 人を叱ってばかりいる人。小言ばかり言う人。悪口(あっ

  く)[叱責]をする人の意。

赤胴(あくがに)@: (名) 胴。あかがね。

赤胴薬缶(あくがにやっくぁん)@: (名) 胴のやかん。

赤頭(あくがみ)@: (名) [赤頭]平民の初階の位階。

芥(あくた)⓪: (名) あくた。ごみ。 ※あくたは共通語である。

芥焚物(あくただむん)⓪: (名) ごみを集めて燃料としたもの。落葉、ごみ、木ぎ

  れなど搔き集めて煮焚きなどする場合にいう。

芥火(あくたびい)⓪: (名) ごみを燃やす火。火力弱く、すぐ消える。

悪党(あくとお)⓪: (名)[新?] 恐ろしい。こわい人。

悪党(あくとお)らあしゃん⓪: (形)[新?] 恐ろしい。こわい。叱りつけそうな、

  また、恐ろしいことをしそうな人についていう。 

粟国(あぐな)あ⓪: (名) 粟国島(あぐに)の者。卑称。粟国島は下男下女の島と

して知られていた。 ※「沖縄語辞典」は、現在からするといわゆるポリティカル・

コレクトネスを要する箇所が多分に見られる。昔の映画・テレビの再放送の最初のこ

とわり書きのようであるが、「原文を尊重してそのまま記載いたします。」なお、「この

ような卑称といわれる語も、もれなく採用された国立国語研究所に敬意を表します。」

粟国(あぐに)⓪: (名) 粟国島。那覇の西北方にある島の名。 ※粟国島は、国と

  島の字が同居する興味深い地名である。現在は、塩の産地として有名である。

悪人(あくにん)⓪: (名) 悪人。奸悪な人。

−倦(あぐ)ぬん: (接尾) あぐむ。できずにもて余す。 @歩(あ)っち倦(あぐ)

ぬん。/歩きあぐむ、為倦(しいあぐ)ぬん。/しあぐむ、など。 勝連(かつぃり

ん)ぬ島(しま)や通(かゆ)い欲(ぶ)しゃ有(あ)すぃが、和仁屋真門(わなま

じょ)ぬ潮(うしゅ)ぬ蹴遣(きや)い倦(あぐ)でぃ。/勝連の村に通いたくはあ

っても、その途中の和仁屋真門の潮を渡りあぐんでいる。 ※原文では、「真門」とな

っているが、これは、「間門」が正しいようである。歌の意味からすると、間よりは真

の字のほうが適切に思う。和仁屋(わにや)は、中頭郡北中城村の地名。昔は、今と

は違い、勝連へ行くにはこの集落の前の干潟を歩いて渡っていたようである。歩いて

渡ることを、蹴遣(きや)いと表現したところは詩的である。なお、倦(あぐ)むは、

共通語の古語である。 *おもろさうし750に、あくて、とある。

欠伸(あくび)@: (名) あくび。

悪魔(あくま)⓪: (名) [悪魔]根性の悪い者。意地の悪い者。 ※共通語とはア

クセントが違うようである。

悪魔袋木(あくまふくるぎ)⓪: (名) 意地悪く邪魔する者。恋の邪魔などをする者。

  袋木(ふくるぎ)はとげのある植物の名。

繰(あ)ぐ⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) よじ登る。縄などをたぐって登る。まれな

語。 @彼(あ)ぬ木(きい)んかい綱摑(つぃなかつぃ)みてぃ繰(あぐ)ら。/

あの木に縄をたぐって登ろう。

明(あ)けえ⁼ゆん: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 明るくなる。朝焼け・夕焼けなどで、また、

  にわか雨の前後などに、あたりが異常に明るくなることをいう。

蜻蛉羽(あけずばに)ん衣(す)⓪: (名)[文] 夏の晴れ着の美称。秋津羽のような

御衣(みそ)。とんぼの羽のように美しい着物。 *おもろさうし847に、あけずみ

そ、とある。 

明(あ)こお暗(くろ)お⓪: (名) 夕暮れ。薄暮。たそがれ時。夕方の暗くなりか

け。ゆまんぐぃい(夕間暮れ)という語とともに、夕方の一種の不安な感じを伴う語。

夕去(ゆさん)でぃ[夕さり]、夕入(ゆうい)り方(がた)[夕方]などにはこのよ

うな語感はない。 

朝(あさ)⓪: (名) 朝。単独にはあまり使わない。 @朝焼(あさあけえ)い[朝

焼け]、朝夕去(あさゆさ)[朝夕]、などの複合語に現れる。普通は、早朝(すとぅみ

てぃ)。また、早朝(すとぅみてぃ)のほうが、朝(あさ)、よりも早い時期をさす感

じがする。 ※すとぅみてぃは、枕草子冒頭の「冬はつとめて」の、つとめて、と同

根であることは、混効験集:乾巻・時候に見える。なお、首里以外での発音は、ふぃ

てぃみてぃ、が普通のようであるが、首里言葉の発音の方が共通語の古語の発音に近

いのは興味深い。

阿佐(あさ)⓪: (名) 阿佐。 ※「あさ」、島尻郡座間味村の地名。

麻(あさ)@: (名) 麻。 ※共通語である。

黒子(あざ)@: (名) ほくろ。あざは、染(す)み、という。

朝焼(あさあけえ)い⓪: (名) 朝焼け。

朝起(あさう)き⓪: (名) 朝早く起きること。早起き。早起(ふぇえう)き、とも

  いう。

朝御盆(あさうぶん)⓪: (名) 昼御飯。朝版(あさばん)の丁寧語。 ※一日二食

の名残りであろう。朝飯と昼飯をいっしょに食べると、それは、朝飯であろうか昼飯

であろうか。英語には、brunch、という語がある。

朝陰(あさかあぎ)⓪: (名) 朝の日陰。また、朝の日陰のある時刻。日中は暑いの

  で、朝陰(あさかあぎ)、夕陰(ゆうかあぎ)に出歩くように心掛ける。

立褄(あさぎ)⓪: (名) 立褄。着物の襟下。 ※褄(つま)、襟(えり)、ともに読

めない人が多いかもしれない。伊勢物語九段の「かきつばた」は妻と褄を掛けた歌で

ある。

彼(あ)さ程(き)い⓪: (名) あんなにたくさん。あんなに多く。 @彼(あ)さ

  程(き)いぬ人(ちゅっ)。/あんなに多くの人。

黒子小(あざぐぁあ)@: (名) 小さいほくろ。

朝曇(あさぐむ)い⓪: (名) 朝曇り。

漁(あさ)ぐ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) かき回して捜す。あさって捜す。漁(あ

  さ)ゆん、ともいう。

アザケエ⓪: (名)[文] しゃこ貝。口語は、アジケエ。その貝がらは魔よけとして用

いられる。 @年(とぅし)や名護(なぐ)からどぅ寄(ゆ)ゆんでぃち聞(ち)ち

ゅる、名護(なぐ)とぅ首里境(しゅりざけ)にアザケ植(うぃ)らな。[年や名護か

らど 寄ゆんでいち聞きゆる 名護と首里境に あざ貝植ゑらな]年(砥石)は名護

から寄って来るという話だが、名護と首里との間にしゃこ貝を植えて年が来ないよう

にしよう。名護は砥石(とぅし)の産地であった。 

漁返(あさげえ)ら⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) ものを捜して、ひっかき回してと

  りちらかす。

アササア⓪: (名) せみの一種。羽が白い。白羽(しるばに)い、ともいう。また鳴

き声から、サンサナア、ともいう。 *混効験集:坤巻・気形に、あささ、とある。

浅(あさ)さん@: (形) 浅(あ)っさん、ともいう。 @浅い。 @浅(あさ)さ

る池(いち)。/浅い池。 @肝(ちむ)ぬ浅(あさ)さん。/心が浅い。 ➁色が薄

い。 @色(いる)ぬ浅(あさ)さん。/色が薄い。

麻着物(あさじん)@: (名) 麻の着物。あさぎぬ。

朝立(あさだ)ち⓪: (名) 朝早く出発すること。朝立ち。 ※朝立ちは共通語であ

  る。

浅漬(あさづぃ)き⓪: (名) 軽く塩に漬けた漬けもの。浅漬け。ただし大根には限

  らない。

朝露(あさつぃゆ)⓪: (名) 朝露。 *おもろさうし833に、あさつゆ、とある。

明後日(あさてぃ)⓪: (名) あさって。明後日。 *混効験集:乾巻・時候に、あ

  さて、とある。 *おもろさうし988に、あさて、とある。

明々後日(あさてぃんなあちゃ)⓪: (名) しあさって。あさっての次の日。明々後

日。

安里(あさとぅ)⓪@: (名) 安里。 ※「あさと」、那覇市の地名。沖縄の人には簡

単に読めるが、ナイチャーは、ほとんど「やすざと」、「あんざと」と読んでしまう。

この名前の人は本土で名前で苦労したと思う。なお、アクセントであるが、首里の人

は⓪で発音し、その他の人はほとんど、@で発音すると思う。

朝凪(あさどぅ)り⓪: (名) 朝なぎ。夕凪(ゆうどぅ)り[夕なぎ]の対。 @朝

凪(あさどぅ)り夕凪(ゆうどぅ)り。/朝なぎ夕なぎ。 *混効験集:坤巻・言語

に、あさどれ、とある。 *おもろさうし515に、あさどれ、とある。

字庭(あざな)@: (名)[古] 首里城内にあった、旗を立てて時刻を示した台。首里

  城内に二箇所あった。

朝寝(あさな)あ⓪: (名) 朝寝坊。朝寝(あさに)する者の卑称。

字(あざな)あ@: (名) あだな。綽名。 @字(あざな)あぬ付(つぃ)ちょおん。 

  /あだなが付いている。

朝寝(あさに)⓪: (名) 朝寝。

朝寝昼寝(あさにふぃんに)⓪: (名) 朝寝昼寝。怠けて寝てばかりいること。

麻布(あさぬぬ)⓪: (名) 麻ぬの。 

朝飯(あさばん)⓪: (名) [朝飯]昼飯。正午ごろ食う食事。朝飯は、早朝物(す

とぅみてぃむん)という。一般人は、早朝物(すとぃみてぃむん)、朝飯(あさばん)、

夕飯(ゆうばん)の三食。労働者は、早朝物(すてぃみてぃむん)、朝飯(あさばん)

[昼ごろ食う]、昼間物(ふぃるまむん)[午後3時ごろ食う]、夕飯(ゆうばん)の四

食が普通であった。昔は、二食の風があったらしく、上流婦人は長く、朝飯(あさば

ん)、夕飯(ゆうばん)の二食しかとらなかった。 @朝飯持(あさばんむ)ちゅん。

/昼飯(の弁当)を持って行く。 ※小学校のころは、昼御飯なのに、なぜ朝飯(あ

さばん)というのかいつも不思議であった。これはやはり文字通り昔は、朝と夕の二

食であった名残りなのであろう。言葉というのは、きわめて保守的な場合があるよう

だ。なお、朝飯(あさはん)、夕飯(ゆうはん)は共通語である。沖縄語辞典では「食

う」という語が使われており、なんとなく違和感がある。「食べる」は、「食う」の丁

寧な言い方であり、辞典では丁寧な言い方を用いないのが原則のようである。私も※

以下では敬体ではなく常体を用いているが、なんとなくえらそうな感じがいつもして

いる。

朝飯追(あさばんうう)い⓪: (名) 昼飯時分。正午ごろ。

朝飯縋(あさばんすが)い⓪: (名) 昼飯の支度。 

安座間(あざま)⓪: (名) 安座間。 ※「あざま」、南城市知念の地名。地名として

は、安座真と書くようである。タレントに安座間美優がいる。 *おもろさうし13

14に、あざま、とある。

浅(あさ)ましゃん@: (形) あさましい。 @浅(あさ)ましい人間(にんじん)。 

  /あさましい人間。

朝間夕間(あさまゆま)⓪: (名)[文] [朝間夕間]朝夕。 

朝見(あさみ)い口(ぐち)⓪: (名) 朝の口あけ。商売人は朝の口あけを縁起のよ

  いものとして喜び、添(すぃ)い分(ぶん)[おまけ]を付けたりする。

欺(あざむ)⁼ちゅん@: (他 ⁼かん、⁼ち) あざける。軽蔑してかかる。あざむくは、

  抜(ぬ)じゅん、という。 @人(っちゅ)欺(あざむ)ちゅん。/人をあざける。

欺(あざむ)ち笑(われ)え@: (名) あざ笑い。嘲笑。嘲笑(あざわれ)え、とも

  いう。

朝夕(あさゆ)⓪: (名)[文] 朝夕。明け暮れ。 ※琉球語は、妙に長くなったり、

  妙に短くなったりする特色があるようだ。 

朝去夕去(あさゆさ)⓪: (名)[文] 朝夕。明け暮れ。

漁(あさ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) あさる。ほじくって捜す。漁(あさぐ)ゆ

  ん、はその意味を強めた語。

嘲笑(あざわれ)え⓪: (名) あざ笑い。嘲笑。欺(あざむ)ち笑(われ)え、とも

  いう。 @嘲笑(あざわれ)え為(しゅ)ん。/あざ笑う。嘲笑する。

朝(あさ)ん乍(なあ)ら⓪: (副) 朝っぱらから。朝早くからあまりよくないこと

があるときにいう。 @朝(あさ)ん乍(なあ)ら銭求(じんいみ)ゆん。/朝っぱ

らから金を催促する。

安謝港(あざんなとぅ)⓪: (名)安謝港。首里の西北方、旧真和志間切にある港。

あし@: (感) そうさ。けんか・口論の時、怒った時などに相手を侮蔑して肯定の返

事をする語。あしっさ、あしひゃあ、などともいう。

肢(あし)⓪: (名) @食用にする場合などの、豚などの肢。 ➁足。足の意味では

普通、足(ふぃしゃ)、といい、足(あし)は慣用句以外には用いられない。 @足(あ

し)ぬ向(ん)かゆるまま。/足の向くまま。 @少(うふぇ)え足早(あしはや)

みり。/少し足を早めろ。少し急げ。また、複合語としては、足音(あしとぅ)、足駄

(あしじゃ)[下駄]など。 ※なぜ足のことを、ふぃさ、というのか。これは、私の

推測であるが、足は、悪(あ)し、と同じ発音であることから、あるいは、喧嘩口論

の時に発する、あし、との混同をさけるために、寒(ふぃい)さ、という別の語を用

いるようになったのではないか。

汗(あし)⓪: (名) 汗。 @汗走(あしは)ゆん。/汗が出る。汗が流れる。

按司(あじ)⓪: (名) [按司] あんじ、ともいう。位階の名。大名。王子(おお

じ)の次。親方(うぇえかた)[親方]の上に位する。もとは地方に一城をかまえて割

拠したが、尚真王時代[1477〜1526]に首里に中央集権が敷かれた際、首里

に集められ、一間切を領する身分となった。按司(あじ)が首里に作った邸宅は御殿

(うどぅん)とよばれ、また、按司(あじ)は人びとから、御前(うめえ)と呼ばれ

るようになった。 ※あんし・あぢは、おもろさうしの頻出語である。

交(あ)じ⓪: (名) 機織りの器具の名。経糸を上下に分けるもの。前種(めえぐさ)

[その項参照]に穴をあけ、ひもで結び付ける。<交(あ)じゆん。

味(あじ)@: (名) @味。食物の味。 @味(あじぇ)え如何(ちゃあ)が。/味

はどうか。 ➁味見。味加減を見ること。 @味為(あじしゅ)ん。/味見をする。

鰓(あじ)@: (名) えら(鰓)。

按司前(あじいめえ)⓪: (名) 按司(あじ)の子が父親に対していう呼び掛けの語。

味(あじ)うぇえ@: (名) 味わい。おとなの使う語。 @味(あじ)うぇえぬ有(あ)

  ん。/味わいがある。

汗掻(あしが)ち@: (名) 気をもむこと。やきもきすること。あせり。 @汗掻(あ

しが)ち為(しゅ)ん。/あせる。やきもきする。

汗掻(あしが)ち直(のお)り@: (名) あせること。気をもむこと。やきもき。い

らいら。 @汗掻(あしが)ち直(のお)り為(しゃ)んてえまん、成(な)ゆる事

(ぐとぅ)どぅ成(な)ゆる。/やきもきしたところで、なるようにしかならない。

汗掻(あしが)ちゃあ@: (名) せっかち。性急な者。

汗掻(あしが)⁼ちゅん@: (自 ⁼かん、⁼ち) あせる。いらだつ。いらいらする。

按司愛(あじがな)しい⓪: (名) 按司様。按司(あじ)に対する敬称。愛(がな)

しい、は敬意を表す接尾辞。 *おもろさうし871に、あんしかなし、とある。

按司愛(あじがな)しい前(め)⓪: (名) 御按司様。按司(あじ)に対する敬称。

預(あじ)か⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 預かる。

預(あじ)きゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 預ける。

味濃(あじくう)たあ⓪: (名) 味のよいもの。深い味わいのあるもの。こくのある

  もの。

足腰(あしくし)⓪: (名) 足腰。 @足腰(あしくし)ん立(た)たん。/足腰も

  立たない。

汗込(あしぐ)⁼ぬん⓪: (自 ⁼まん、でぃ) 汗ばむ。

足車(あしぐるま)⓪: (名) 足枷。 @足車入(あしぐるまい)りゆん。/足枷を

  はめる。

交(あ)じ貝(けえ)⓪: (名) しゃこ貝。あじ<交(あ)じゆん。貝がらがかみ合

  うのでいう。つるしておくと邪気が通らないとして邪気をはらうまじないとされる。

按司地頭(あじじとぅう)⓪: (名) [按司地頭] 総地頭(すうじとぅう)、脇地頭

(わちじとぅう)の上。地方に一間切の領地をもつ領主。その位階は、按司(あじ)、

その邸宅は、御殿(うどぅん)、と呼ばれる。按司地頭(あじじとぅう)と総地頭(す

うじとぅう)とは二重に一間切を領する。両者を併称して、両総地頭(すうじとぅう)

という。

足駄(あしじゃ)⓪: (名) 下駄。駒下駄。表つきの下駄には、地駄(じた)、日本本

土の歯を入れた足駄には、立歯足駄(たちばああしじゃ)という。 @足駄(あしじ

ゃ)ぬ緒(うう)。/下駄の緒。

足駄町屋(あしじゃまちや)⓪: (名) はきもの店。下駄屋。

足擦(あしじ)らあ野原(もお)⓪: (名) 芝(あしじり)が一面に生えた所。芝生。

足切(あしじ)り⓪: (名) 足の裏に生ずる、あかぎれに似た裂け目。はだしで歩く

労働者に多くできる。寒さのためとは限らない。嫌切(ゆんじ)り、足切(あしじ)

り嫌切(ゆんじ)り、ともいう。

足擦(あしじ)り⓪: (名) 芝。芝草。

足擦(あしじ)り嫌擦(ゆんじ)り⓪: (名) 足擦(あしじ)り[芝草]の卑称。

足切(あしじ)り嫌切(ゆんじ)り⓪: (名) 嫌切(ゆんじ)り[足の裏が切れるこ

  と]の卑称。あし、には足の意のほかに、悪いという語感もある。

按司主位(あじすい)⓪: (名)[文] 按司様。按司(あじ)の敬称。すい、は百浦添

(むんだすぃい)、浦添(うらすぃい)、と同じく、もと治める意かと思われる。

按司鷹(あじたか)⓪: (名) 鷹の上等な美しいもの。按司(あじ)が飼う鷹の意か。

あしっさ@: (感) そうさ。そうさ、この野郎。あし、の項参照。

肢手引(あしてぃび)ち⓪: (名) 料理名。豚の肢の料理。高級な料理とされている。

足担(あしどお)に⓪: (名) 足の力。脚力。@足担(あしどお)にぬ無(ねえ)ん。

/足の力がない。足が弱い。

足音(あしとぅ)⓪: (名) 足音。足音(ふぃしゃうとぅ)ともいう。

汗走(あしは)い水走(みずぃは)い⓪: (副) 汗水流して。 @汗走(あしは)い 

水走(みずぃは)い働(はたら)ちゅん。/汗水流して働く。

汗走(あしは)やあ⓪: (名) 汗かき。よく汗をかく者。

按司部(あじび)⓪: (名) [按司部] 按司(あじ)の身分の人びと。諸侯。また、

按司に対する敬称。按司様。 @按司部(あじび)生(う)みん子(ぐぁ)ぬ如(ぐ

と)おさ。/按司様のお子様のようだ。上品で美しい子供を形容していう。

あしひゃあ@: (感) そうさ。そうさ、この野郎。あし、の項参照。

汗疹(あしぶ)⓪: (名) あせも。

肢足(あしふぃしゃ)⓪: (名) 足の卑語。肢(あし)、足(ふぃしゃ)、ともに足の

意。 @肢足(あしふぃしゃ)入(い)りんな。/家に足を入れるな。出入りするな。

交(あ)じ間(ま)あ⓪: (名) 交叉したもの。交叉したところ。 @褌(さなじ)

ぬ交(あ)じ間(ま)あ。/ふんどしの結び目。またその結び目の当たる腰の部分。 

@道(みち)ぬ交(あ)じ間(ま)あ。/四つ角。十字路。

交(あ)じ間(ま)あ結(むす)び⓪: (名) 十字に結ぶこと。荷造りなどで、縦横

  のひもの交叉したところを結ぶこと。

足転(あしまる)び⓪: (名) 足を滑らして転ぶこと。また、あわてふためいて走る

こと。 @足転(あしまる)びっ為(し)来(ちゃ)ん。/あわてて(走って)来た。

※転(まろ)ぶは、共通語の古語である。万葉集475に、展転(こいまろび)とあ

る。

足転(あしまる)び手転(てぃいまる)び⓪: (名) あわてふためいて走ること。 @

足転(あしまる)び手転(てぃいまる)びっ為(し)走合(はあえ)え成(な)てぃ

来(ちゃ)ん。/あわてふためいて(走って)来た。

按司婿(あじむく)⓪: (名) 按司の婿の意か。夜、掃除をすることは忌むが、
  どうしてもしなければならない時に、この語を唱えながらする。

按司前(あじめえ)⓪: (名) 按司様。按司の敬称。普通は御前(うめえ)という。

安謝(あじゃ)@: (名) 安謝。 ※「あじゃ」、那覇市の地名。

足上(あしゃ)ぎ⓪: (名) 農村の比較的裕福な家の前庭にある離れ屋。もと、祖神

を祭った建物で、母屋よりも美しくしてあり、客間にしたり、倉にしたり、機を置い

たり、いろいろな用に用いている。足上げの意か。前(めえ)ぬ屋(やあ)[前屋]と

もいう。 *おもろさうし974に、あしやけ、とある。

褪失(あしゅ)ら⓪: (名)[文] ゆくえ不明。 @玉黄金一人子(たまくがにちゅい

ぐぁ)行(んじゃ)る三月(さんぐぁつぃ)に褪失(あしゅ)ら為(し)ち居(う)

らん。[玉黄金一人子 去ぢやる三月に あしゆらしち居らぬ(女物狂)]大事な一人

子が去る三月にゆくえ不明になって、いない。 ※女物狂(おんなものぐるい)は、

玉城朝薫作の組踊。能の隅田川の影響がある。

交(あ)じ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 交叉する。十字に交わる。

足弱(あしよ)お⓪: (名) 足弱。足の弱いこと。足の弱い者。

足弱(あしよ)おばあ:⓪: (名) 足弱(あしよ)お、と同じ。

応(あし)れえ⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @あしらう。いい加減にもてなす。軽

く扱う。 @相撲(すぃま)ぬ強(ちゅう)ばあんかい掛(か)かてぃ出(んじゃ)

すぃが、応(あし)れえらったん。/すもうの強い者にかかって行ったが、軽くあし

らわれた。 ➁[新?] 配合する。とりあわせる。

交(あ)じん⓪: (名) 杵。手杵。太い一本の棒で、中央の握る所を細くしてあるも

  の。つき杵は、掻(か)き槌(じち)、という。

安次嶺(あしんみ)⓪: (名) 安次嶺。 ※「あしみね」、那覇市の地名。ゆいレール 

  の出発点あたりである。

朝飯(あすぃ)い⓪: (名) 昼飯(あさばん)。農村で使う語。 ※朝飯(あさいい)

が縮まった語と推測される。朝飯(あさいい)は、日葡辞書・南総里見八犬伝に見え

る語である。

安勢理(あすぃい)⓪: 安勢理。 ※「あせり」、うるま市与那城の地名。与那城饒辺と

  勝連平安名に間に位置する。

朝廷部(あすぃたび)⓪: (名)[古] 朝廷部(あさたび)と同じ。

遊(あすぃ)ばあ⓪: (名) 遊(あすぃ)びゃあ、と同じ。

遊(あすぃ)び@: (名) @歌・三味線・踊りなどを楽しむこと。また、村芝居・祭

りなど、仕事を休んで行う演芸・娯楽。類義語に、捏(く)にり、凌(しぬ)ぐ、な

どの古語がある。 @今日(きゆ)や御行会(うぃちぇ)拝(うが)でぃ 色々(い

るいる)ぬ遊(あすぃ)び、明日(あちゃ)や面影(うむかじ)ぬ立(た)ちゅらと

ぅ思(み)ば。[今日は御行合拝で 色々の遊び 明日や面影の 立ちゆらとめば]き

ょうはお会いしていろいろの遊びを楽しもう。あすはおもかげが立つと思えば。 ※

御行会(うぃちぇ)は、御(う)行(い)ち会(あ)い、が極端に短縮された語。原

文の「合」は「会」としたほうがいいと思う。 @遊(あすぃ)びんかい念入(にん

い)ゆん。/歌・踊りなどの遊びに夢中になる。 ➁子供などのする遊び。

遊(あすぃ)び暇無(いちゅな)さ@: (名) 遊ぶために忙しいこと。 ※いちよな

しやは、おもろさうし・混効験集に見えることばであるが、いとまなしが縮まった形

のように思う。

遊(あすぃ)び国(ぐに)@: (名) 踊り・村芝居などの盛んな村。また、男女の交

  際の自由な村。国は村里の意味。同義語に花国(はなぐに)[その項参照]。

遊(あすぃ)び仕口(しくち)⓪: (名) 遊び仕事。遊びながらでもできる、簡単な

  仕事。

遊(あすぃ)び仕事(しぐとぅ)⓪: (名) 遊(あすぃ)び仕口(しくち)と同じ。

遊(あすぃ)び清(ぢゅ)らさん@: (形) 歌・三味線・踊り・芝居などが上手であ

る。踊り・芝居などが美しい。 @彼(あ)ぬ村(むら)あ遊(あすぃ)び清(ぢゅ)

らさん。/あの村は演芸がうまい。

遊(あすぃ)びゃあ⓪: (名) 遊び人。遊蕩人。

遊(あすぃ)び友(どぅし)@: (名) 遊び友達。遊び仲間。

遊(あすぃ)び庭(なあ)@: (名) 遊(あすぃ)び[その項参照]を催す場所。村

  芝居をする所。庭(なあ)は庭のほかに、広場という意味がある。

遊(あすぃ)び惚(ぶ)り@: (名) 遊ぶことに心を奪われること。子供などが遊び

  ほうけること。

遊(あすぃ)びん食(ぐぇ)え⓪: (名) 徒食。遊食。

遊(あすぃ)⁼ぶん@: (自 ⁼ばん、⁼でぃ) @遊ぶ。子供などが遊ぶ。 @遊(あす

ぃ)ぶみ。/遊ぶか。子供にいうあいさつ。 ➁遊ぶ。仕事をしないでいる。 @今

(なま)あ遊(あすぃ)どおん。/今は仕事をしていない。今は失業している。 B

歌・三味線・踊りなどに興ずる。娯楽を楽しむ。

朝廷部(あすたび)⓪: (名)[古] 政務を司る役。三人いたので 三司官(さんしく

ぁん)[三司官]ともいう。国務卿の意。朝廷部(あすぃたび)ともいう。三司官(さ

んしくぁん)の項参照。 *混効験集:乾巻・人倫に、あすたへ、とある。 *おも

ろさうし887に、あすたべ、とある。 

安田(あだ)⓪: (名) 安田。 ※「あだ」、国頭郡国頭村の地名。難しいと言えば難

  しい読みである。

徒(あだ)@: (名) あだ。徒労。 @徒成(あだな)たん。/徒労になった。 ※

  徒(あだ)は伊勢物語にも見える古い共通語である。

仇(あだ)@: かたき。あだ。 @仇打(あだう)ちゅん。/かたきを討つ。

徒為(あだあ⁼しゅ)ん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 声高に叱りつける。どなりつける。 @

  童徒為(わらびあだあしゅ)ん。/子供をどなりつける。

当(あ)たい⓪: (名) @王室内の庶務係。身分の高い、若い者がなる。 ➁(接尾) 

係。⁼たい、ともなる。 @耕作当(こうさくあ)たい[農事係]、山当(やまた)い

[山林係]、花当(はなた)い[王室の接待係の少年]、倉当(くらた)い[王室の倉

庫係]など。 ※⁼たい、となるのは、前の語の語尾が、あ、で終わる場合のようであ

る。

辺(あた)い⓪: (名) 屋敷内にあり、野菜などを作る畑。菜園。複合語に、花辺(は

なあた)い[花畑]、織辺(ううあた)い[芭蕉畑]など。 *おもろさうし507に、

あたり、とある。

値(あたい)⓪: (名) くらい。ほど。 @其(う)ぬ値(あたい)ぬ事(くとぅ)

に怒(くさみ)くな。/それぐらいのことに怒るな。

当(あ)たい前(めえ)⓪: (名) @当然そうあるべきこと。義務。 @親(うや)

ぬ事(くと)お子(くぁ)ぬ当(あ)たい前(めえ)。/親の世話は子の義務。 ➁あ

たりまえ。普通。尋常。 @彼(あ)れえ当(あ)たい前(めえ)や有(あ)らん。

/彼は普通ではない。異常がある。

当(あ)たい親雲上(ぺえちん)@: (名) [当親雲上]士族の位階の名。

俄果報(あたがふう)@: (名)[文] 思いがけない幸福。突然の果報。あた<あった

(にわか)。 @はあ、果報(くぁふ)ん付(つぃ)ちゅすぃがどぅ付(つぃ)ちゅん

付(つぃ)ち清(ぢゅ)らさ。俄果報(あたがふ)どぅ付遣(つぃちゃ)る。果報(く

ぁふ)な我身(わみ)や。[はあ 果報も付きゆすがど 付きも付き清らさ あた果報

ど付きやる 果報な我身や(大川敵討)]ああ、幸運も付いてはいるが見事についたも

のよ。幸運なわたしは、不意の幸運にめぐまれた。 ※大川敵討(おおかわてきうち)

は、久手堅親雲上(くでけんぺえちん)作の組踊。

彼丈(あだき)@: (名) あの高さ。あんなに高く。あれだけの高さ。 @彼丈上(あ

  だきあ)がとおん。/あの高さに上がっている。

アタク⓪: (名) 蛙の一種。青蛙。芭蕉の葉によくいるので、芭蕉(うう)アタクと

もいう。 @アタク成(な)とおん。/青蛙のように座りこんで動かない。座りこん

で動かないさま、だだをこねて動かないさまなどをいう。

徒(あだ)し⓪: (連体) [文] はかない。はかなし。 @徒(あだ)し世(ゆ)

の中(なか)に長(なが)らいてぃ居(う)とぅてぃ。/[あだし世の中に ながら

へて居とて(忠臣身替)]はかない世の中に長らえていて。 ※京都市右京区嵯峨の化

野(あだしの)の、あだし、である。あだしは、共通語の古語である。忠臣身替(ち

ゅうしんみがわり)は、辺土名親雲上(へんとなぺえちん)作の組踊で、単に「八重

瀬(やえせ)」ともいう。なお作者については異論がある。 

案立(あだてぃ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 捜す。捜し求める。尋ね求める。求

めてあちこち聞いて回る。「あだて」と関係ある語か。 @今(なま)あ案立(あだて

ぃ)てぃん家(やあ)や尋(とぅめ)え苦(ぐり)しゃん。/今は捜しても、家は見

つけにくい。 ※あだては、共通語である。京都府舞鶴市の一部では、しょうがない

ことを、「あだてがつかん」と言うようである。なお「沖縄語辞典」は、「〜と関係あ

る語か。」という具合に、語源に言及した箇所が多くみられ、非常にありがたい。

阿旦巣(あだなし)⓪: (名) あだに(阿旦)の気根。またその繊維で作った縄。

阿旦(あだに)⓪: (名) たこのき科の亜熱帯性常緑灌木。気根を生じ、葉は細長く、

とがり、刺がある。葉からござ・帽子などを作り、気根の繊維は縄などにする。あだ

ん、ともいう。

アタビチ⓪: (名) @蛙。蛙の総称。 ➁蛙の一種。土色の小さいもの。

アタビチャア⓪: (名) アタビチと同じ。

頭(あたま)⓪: (名) @頭領。かしら。[身体名の「頭」は、頭(つぃぶる)] ➁

慣用句として、はじめ。あたま。 @頭(あたま)から人(っちゅ)どぅ侮(うせえ)

とおる。/あたまから人を見くびってかかっている。 @頭(あたま)に。/最初か

ら。

頭割(あたまわ)い⓪: (名)[新] 頭割り。人数割り。普通は、頂割(つぃじわ)い、

  または、頭割(つぃぶるわ)い、という。 

当(あ)た⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @当たる。的中する。相当する。また、合

う。また、出来事に出会う。事に当たる。 @算明(さんみの)お当(あ)たとおみ。

/計算は合っているか。 @肝(ちむ)ぬ当(あ)たゆん。/気が合う。心が通ずる。

@夫婦間(みいとぅんだ)やてぃん肝(ちむ)ぬ当(あ)たらん事(くとぅ)ぬ有(あ)

ん。/夫婦でも心の通わないことがある。 @当(あ)たてぃどぅ為(し)ゆる。/

実際に経験して、はじめてわかる。 @当(あ)たたる不祥(ふしょお)。/悪いこと

に出会ったのが運のつき。当たったのが運が悪い。 ➁食物に当たる。食中毒する。 

B悪いこと。やましいことが、思い当たる。痛いところを突かれる。 @当(あ)た

ゆる事(ぐとぅ)言(ゆ)ん。/痛いところを突くように言う。自分が攻撃されてい

るのでない時、自分自身のやましい点を思い当たった場合は、胴当(どぅうあ)たい

為(しゅ)ん、という。

惜(あた)ら⓪: (副) あたら。口語は、惜(あった)ら。 @惜(あた)ら人間(に

んじん)に生(ん)まり遣(や)い居(う)すぃが。[あたら人間に 生まれやい居す

が]あたら人間に生まれてはいるが。 ※共通語の古語でも、あったら、と促音化す

るようである。 *おもろさうし1010に、あたら、とある。

惜(あたら)し物(むん)@: (名) 大事なもの。手離せないもの。

惜(あた)らしゃん@: (形) 大事である。手離せない。 @惜(あた)らしい生(な)

し物(むん)ぬ子(っくぁ)。/大事な生みの子。 @惜(あた)らしゃ為(しゅ)ん。

/大事がる。手離したがらない。 *混効験集:坤巻・言語に、あたらしや、とある。

安谷屋(あだんな)⓪: (名) 安谷屋。 ※「あだにや」、中頭郡北中城村の地名。 @

ここで一度言及するが、沖縄の地名のほとんどは人名となっている。これは統計をと

ったわけでないが、人名の中にしめる地名の割合は日本本土と比較してかなりの割合

をしめると思う。

阿旦葉(あだんばあ)⓪: (名) あだに(阿旦)の葉。

阿旦葉草履(あだんばあさば)⓪: (名) あだんばあ(阿旦葉)で作ったぞうり。

阿旦葉筵(あだんばあむしる)⓪: (名) あだんばあ(阿旦葉)で作ったむしろ。

秋(あち)@: (名) @[文]秋。秋という季節感がないので、口語ではほとんど使

  わない。 ➁[古]収穫の時期。刈り入れ時。

飽(あ)ちざらん⓪: (自)(否定形のみがある) @飽き足りない。不満である。 @

飽ちざらん者(むん)。/飽き足らぬ者。不満を感じさせる者。 @飽(あ)ちざらん

物(むぬ)言(い)い方(かた)。/不満を感じさせる言い方。 ➁なごり惜しい。 飽

(あ)ちざらん別(わか)り。/なごり惜しい別れ。 @飽(あ)ちざらのお有(あ)

すぃが又(また)やあ。/なごり惜しいけど、また会おうね。 

秋(あち)ぬ魚(いゆ)⓪: (名) まぐろ。 赤秋(あかかち)と白秋(しるあち)

  とある。

商(あちね)え⓪: (名) 商売。あきない。 商(あちね)えしゅん。/※動詞化。

商(あちね)え固(ぐふぁ)さん⓪: (形) 商売がうまく行かない。

商(あちね)え為(しゃ)あ⓪: (名) 商人。

商(あちね)え上手(じょおじ)⓪: (名) あきない上手。商売上手。

商(あちね)え物(むん)⓪: (名) 商品。

商(あちね)えん人(ちゅ)⓪:  

飽果(あちは)い為(し)い⓪: (名)いやいやながらすること。 飽果(あちは)い

  為(し)いしゅん/※動詞化したものである。

飽果(あちは)い仕事(しぐとぅ)⓪: (名) 飽きてしまうような仕事。きりのない

ようないやいやながらの仕事。 @飽果(あちは)い仕事(しぐとぅ)ぬ汗走(あし

は)い仕事(しぐとぅ)。/いやいやながらの仕事は、よけい汗の出る仕事となる。

飽果(あちは)てぃ早(べえ)さん⓪: (形) 飽きが早い。飽きっぽい。

飽果(あちは)てぃ⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 飽きる。

明日(あちゃ)⓪: (名) あした。あす。 *混効験集:乾巻・時候に、あちや、と

  ある。 *おもろさうし995に、あちや、とある。

明日朝(あちゃあさ)⓪: (名) あしたの朝。

飽上(あちゃが)い@: (名) 時期が終わること。

飽上(あちゃが)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @時期が去る。時期はずれとなる。 

@商(あちね)えぬ飽上(あちゃが)ゆん。/商売の時期が終わる。 ➁飽きが来る。

仕事・人などに対する熱がさめる。 @互(たげえ)に一杯情(いっぺえかな)しゃ

そおたるむん、此間(くねえだ)んしぇえ飽上(あちゃが)とおる如(ぐとお)さ。

/互いにとても愛し合っていたのに、このごろは熱がさめたようだよ。

明日早朝(あちゃすとぅみてぃ)⓪: あしたの朝。

明日夕去(あちゃゆさ)んでぃ⓪: (名) あしたの晩。

明日夜(あちゃゆる)⓪: (名) あしたの夜。

熱(あちゅ)う⓪: (名) 熱いものの小児語。

明・開・空(あ)⁼ちゅん@: (自 ⁼かん、⁼ち) @明く。開く。 @走(はし)るぬ

開(あ)ちゅん。/戸があく。 穴(あな)ぬ開(あ)ちょおん。/穴があいている。 

➁空く。 @家(やあ)ぬ空(あ)ちょおん。/家があいている。

商人(あちょお)だあ⓪: (名) 商人。卑称。

商人(あちょおどぅ)⓪: (名) 商人。多く仲買人をいう。 ※(あきうど)が変化

したものと思われる。関西弁の(あきんど)である。

商人口(あちょおどぐち)⓪: (名) 仲買い人のことば。上手だが信用できない話し

  ぶりをいう。「仲人口」と似た語。

明(あち)らか⓪: (名) 明らか。公明。正しいこと。 @明(あち)らかな人(ち

  ゅ)。/公明な人。 

扱(あつぃか)⁼ゆん@: (他 ⁼あん、⁼らん、⁼てぃ) @扱う。取り扱う。使いこな

す。 @櫂扱(ええくあつぃか)ゆん。/櫂をあやつる。 ➁こき使う。酷使する。 

@扱(あつぃか)ありゆん。/こき使われる。

熱気(あつぃき)⓪: (名) ゆげ。また、蒸気。 @御精霊(うしょおろお)や熱気

(あつぃき)どぅ召上(うしゃが)ゆる。/御精霊は湯気を召しあがる。お供えもの

は熱いうちに、または、ふたを取って供えろの意。

暑国(あつぃぐに)⓪: (名) 暑い地方。熱帯地方。ふぃいぐに の対。

扱(あつぃけ)え苦(ぐり)さん@: (形) 人・道具などが扱いにくい。使いにくい。

熱香香(あつぃこおこお)@: (副) ほやほや。煮えたばかりのさま。また、料理の

熱いうちに。 @熱香香(あつぃこおこお)しょおいに嚙(か)めえ。/ほやほやの

うちに食べろ。 @御盆熱香香噛(うぶんあつぃこおこおか)ぬん。/御飯を熱いう

ちに食べる。 ※島豆腐を、あちこーこー豆腐というようである。

暑(あつぃ)さ思(うみ)い⓪: (名) 暑がり。暑がる者。

暑(あつぃ)さ構(かま)らさあ⓪: (名) 暑さ嫌い。暑さを苦にする者。

暑・熱(あつぃ)さん⓪: (形) @暑い。冷(ふぃい)さん;(寒い)の対。 ➁熱い。

  冷(ふぃじゅる)さん;(冷たい)の対。

厚(あつぃ)さん@: (形) 厚い。 薄(ふぃっ)さん;(薄い)の対。 ※熱いと厚

  いは、共通語同様にアクセントが違うようである。

熱地(あつぃじい)⓪: (名) 寝た時の足もと。枕元(まっくぁぐぁん)の対。

熱火(あつぃびい)⓪: (名) 柔らかい御飯。おかゆと御飯との中間ぐらいの、子供・

  病人などに食べさせる御飯。 ※私の祖父は、熱火(あつぃびい)が好きであった。

熱痺(あつぃびいら)ち⓪: (名) はれものなどが熱をもって痛むこと。また、やけ

  どが痛むこと。 

熱灰(あつぃべえ)⓪: (名 熱灰。まだ火気のある灰。 @熱灰(あつぃべえ)んか

い足入(ふぃしゃい)ったんねえ。/熱い灰に足を入れたように、非常にあわてるさ

ま。  ※広辞苑第6版には、熱灰(あつばい)は載っていない。

集(あつぃま)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ)[新] 集まる。元来は 揃(すり)ゆ

  ん、という。

集(あつぃみ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、=てぃ)[新] 集める。元来は 揃(すり)ら

  しゅん、という。 ※自動詞となっているが、これは他動詞であろう。

暑(あつぃ)やあ吹(ふ)うやあ⓪: (副) 暑くて、ふうふういうさま。盛んにあつ

  がるさま。 暑(あつぃ)やあ吹(ふう)やあしゅん。/※動詞化したものである。

熱(あつぃ)らし返(けえ)しゃあ⓪: 何度も暖め直したもの。 ※電子レンジの発達

  した今日この言葉の意味はわかりにくいと思う。

熱(あつぃ)ら⁼為(しゅ)ん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 熱くする。食物などを暖める。

熱(あつぃ)りゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 熱くなる。暖まる。食物などについて

  多くいう。

誂(あつぃれ)え⓪: (名) あつらえ。注文して作らせること。 @大和商売(やま

とぅしょおべえ、唐誂(とおあつぃれ)え。/※日本製は粗悪で、中国製は上等であ

るという意味。現在とは逆である。

誂(あつぃれ)え物(むん)⓪: (名) あつらえ物。注文して作らせたもの。 *混

  効験集:乾巻・言語に、あつらへ物、とある。

誂(あつぃれ)え⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) あつらえる。注文して作らせる。 ※

あつらえるは、オーダーメイドのことで、源氏物語、古今集、宇治拾遺物語にも見え

る古い言葉であるが、漢字とともに、現代人には難しい言葉である。 

あっかあ@: (感) 痛い時に発する語。あいた。

あっきよお@: (感) @ああ。失望した時などに女の発する語。 ➁死者を悲しんで

  女が泣く声。中国人が哀号と泣くのと似ている。

悪口(あっく)⓪: (名) 叱りつけること。叱責。 @悪口為(あっくしゅ)ん。/

  動詞化。

歩(あ)っく方(かた)⓪: (名) 行く先々。 @歩(あ)っく方追(かたうう)ゆ

ん。/行く先々をつけまわす。

悪口叱口(あっくむっく)@: (名) 散散に叱りつけること。 @悪口叱口為(あっ

  くむっくしゅ)ん。/動詞化。 

彼(あ)っさ⓪: (名) あれだけ。あれくらいの数量。あれほど。

浅(あっさ)ん@: (形) 浅(あさ)さん、と同じ。

熱田(あった)⓪: (名) 熱田。 ※「あつた」、中頭郡北中城村の地名。名古屋市に

  同名の区がある。

俄(あった)⁻: (接頭) にわか・不意・突然の意を表す接頭辞。 @俄富裕人(あっ

たうぇえきんちゅ)[にわか分限]。 @俄降(あったぶ)い[にわか雨]。など。

彼達(あったあ)⓪: (名) あの人たち。彼ら。

俄富裕人(あったうぇえきんちゅ)@: (名) にわか分限。成金。

俄運(あったうじゅみ)@: (名) 偶然の機会。ひょんなきっかけ。

俄驚(あったうどぅる)ち@: (名) 急に驚くこと。俄然色を失うこと。

俄思(あったう)み立(た)ち@: (名) にわかの思い立ち。

俄考(あったかんげ)え@: (名) にわかの考え。不意な思いつき。

俄事(あったぐとぅ)⓪: (名) 不意なこと。突然なできごと。 @俄事(あったぐ

  とぅ)やてぃ如何為(ちゃあせ)え良(ゆ)たしゃが分(わ)からんたん。

俄(あった)に@: (副) にわかに。不意に。いきなり。突然。 @俄(あった)に

  後(くし)から物言(むぬや)ったん。/だしぬけに後ろから呼びかけられた。

俄隙見(あったばじょお)@: (名) ちょっと見。また、ちょっと見た目にはよく見

  えるもの。

俄降(あったぶ)い@: (名) にわか雨。 

温(あった)み⓪: (名) 精肉。 @豚温(ぶたあった)み[豚肉]、 @角温(つぃ

  ぬあった)み[牛肉]、 @山温(やまあった)み[鹿の肉]、など。

惜(あった)ら⓪: (副) あたら。惜しくも。 ※あったら、は共通語の古語である。

惜(あった)る⓪: (連体) 惜しい。手離せない。 @惜(あった)る大魚逃(うふ

  いゆふぃんが)ち惜(いちゃ)さたん。/惜しい大きな魚を逃がして残念だった。

歩(あ)っち⓪: (名) @歩くこと。 ➁旅行。

歩(あ)っち習(なれ)え⓪: (名) 歩く練習。病後などの足ならし。

歩(あ)っち始(はじ)み⓪: (名) 幼児などの歩きはじめ。

歩(あ)っち引(ふぃ)ち⓪: (名) 出歩くこと。しばしば外出すること。 @此間

(くねえだ)んせえ歩(あ)っち引(ふぃ)ち為(っし)家(やあ)ねえ掛(か)か

らんたん。/近ごろは外出ばかりして家にはいなかった。

歩(あ)っちゃ⓪: (名) 歩行の小児語。あんよ。 @今歩(なああ)っちゃ為(し

ゅ)み。/もうあんよするか。

⁻歩(あ)っちゃあ: (接尾) 歩く人・旅行する人などの意。 @山原歩(やんばるあ)

っちゃあ。/よく山原へ行く人。 @大和歩(やまとぅあ)っちゃあ。/よく日本本

土へ旅行する人。

歩(あ)っちゃ前(めえ)⓪: (名) 掻混(かちゃあ)しい(三味線・歌の急調子の

曲)に合わせて舞う、急調子の即興的な踊り。農村の若者たちが、毛遊(もおあすぃ

び)い[その項参照]で好んで踊るもので、一定の法式も型もない。歩(あ)っちゃ

前小(めえぐぁあ)ともいう。 

歩(あ)っちゃ前小(めえぐぁあ)⓪: (名) 歩(あ)っちゃ前(めえ)、と同じ。

熱(あっちゅ)う⓪: (名) 熱(あちゅ)う、と同じ。

歩(あ)っ⁼ちゅん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) @歩く。歩行する。 @歩(あ)っからん

歩(あ)っち。/いやいやながら、または無理に歩くこと。 @歩(あ)っちゃがち

い。/歩きながら。みちみち。 @道歩(みちあ)っちゅん。/道を歩く。 @道許

(みちびけ)い歩(あ)っちゅん。/働かずに、ふらふら出歩いてばかりいる。 @

顔持(つぃらむ)っちぇえ歩(あ)っからん。/世間に顔出しができない(顔を持っ

ては歩けないの意)。 @山歩(やまあ)っちゅん。/山仕事をする。 @畑歩(はる

あ)っちゅん。/畑仕事をする。百姓をする。 ➁行く。進む。移動して行く。動い

て行く。動いて行く。 @時計(とぅちい)ぬ破(やん)でぃてぃ歩(あ)っかん成

(な)とおん。/時計がこわれて動かなくなった。 @船(ふに)ぬ歩(あ)っちゅ

ん。/船が進む。 @海歩(うみあ)っちゅん。/海を行く。航海する。また、猟師

をする。 B〜して暮らす。〜ばかりしている。いつも〜する。また、〜の状態が続

く。 @子(くぁ)ぬ達(ちゃあ)が儲(もお)きてぃ歩(あ)っちゅぐとぅ吾(わ

んね)え書物許(しゅむつぃびけえ)い読(ゆ)でぃ。/子供たちがずっと働いてい

てくれるから、私は本ばかり読んで暮らしている。 @吾嫌口言(わあやなぐちい)

ち歩(あ)っちゅる如(ぐとお)ん。/わたしの悪口を言い続けているようだ。 @ 

働(はたら)ち歩(あ)っちゅん。/ずっと仕事がある。 @此(ぬ)ぬ畑(はたけ)

え常干割(ちゃあふぃばり)てぃ歩(あ)っちゅん。/この畑はいつも干割れてばか

りいる。 C元気である。達者である。 @歩(あ)っちゅみ。/元気か。目下に対

するあいさつのことば。目上へは、御歩(うぁあち)み為侍(せえびい)み、という。

   @歩(あ)っちゅてぃい。/元気だったか。目下に対するしばらくぶりのあいさつ

のことば。歩いている人に対して言うわけではない。しかし、平民・いなかの者は、

立っている人へ、立(た)っちょおみ[立っているか]、座っている人へは、居(い)

っちょおみ[座っているか]、などというあいさつもする。 *おもろさうし1156 

には、あよみ、とあり、おもろの時代には、共通語同様に、あゆむ、であったようだ。

あっつぁあ@: (感) あっかあ、と同じ。

篤尊愛(あっとおがな)しい前(めえ)⓪: (名) @降嫁して按司(あじ)の妻とな

った王女の敬称。奥方様。 ➁篤尊前(あっとおめえ)の敬称。奥方様。そこの使用

人などがいう語。

篤尊前(あっとおめえ)⓪: (名) 按司(あじ)の妻。御前(うめえ)の妻。奥方。

あっぱ山猪(やましし)⓪: (名)[文] 伏山敵打(ふしやまてぃちうち)[組踊りの

名]に登場するいのしし。大いのししの意か。あっぱ、は、あひゃあ豚(うぁあ)[母

豚]などの、あひゃあ、と関係のある形か。

暴(あ)っぱん嗄(が)れえ⓪: (副) やけを起こすさま。 @暴(あ)っぱん嗄(が)

れえ為(っし)酒許(さきびけ)えい飲(ぬ)どおん。/やけを起こし酒ばかり飲ん

でいる。 

彼程(あっぴ)⓪: (名) あれだけ。あのくらい。あれほど。量・大きさなどについ

  ていう。

兄(あっぴい)⓪: (名) @兄。にいさん。若者。農村で用いる語。首里・那覇では、

士族については、やっちい、平民については、あふぃい、という。 ➁いなかの若者。

あんちゃん。

彼程小(あっぴぐぁあ)⓪: (名) あれっぽっち。あれっぱかり。

彼程(あっぺえ)る⓪: (連体) あれぐらいの。あれだけの。あれほどの。量・大き

  さなどについていう。 @彼程(あっぺえ)る石(いし)。/あの大きさの石。

当(あ)てぃ@: (名) @当て。目あて。心あて。目標。 ➁心覚え。心当たり。 @

当(あ)てぃぬ無(ね)えん。/心当たりがない。覚えがない。熟睡中に起こったこ

のなどについていう。 B思慮。分別。 @物(むん)ぬ当(あ)てえ無(ね)えん。

/分別がない。危険を知らない。 C音さた。たより。 @何当(ぬうあ)てぃん無

(ね)えん。/何の音さたもない。 @名護(なぐ)や山原(やんばる)ぬ行(い)

ち果(は)てぃがやゆら、今(なま)でぃ名護船(なぐぶに)ぬ当(あ)てぃや無(ね)

らん。[名護や山原の 行き果てがやゆら なまで名護船の あてやないらぬ]名護は

山原の果てであろうか、いまだに名護からの船のたよりもない。

宛(あてぃ)が⁼ゆん@: (他 ⁼あん、⁼てぃ) 目星をつける。擬する。 @宛(あて

ぃ)がありゆん。/目星をつけられる。容疑者とされる。 @吾(わね)え何(ぬう)

ん為(さ)んすぃが宛(あてぃ)があってぃ怒(くさみ)かりいさあ。/わたしは何

もしないのに目星をつけられて、しゃくにさわるよ。 @誰(たあ)が汝(やあ)宛

(あてぃ)がゆが、胴当(どぅうあ)たい為(っし)。/だれが君だというものか、自

分でひがんで。

当(あ)てぃ変(か)わ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 当てがはずれる。

宛(あてぃ)げえ報(ふう)⓪: (名) あてずっぽう。当て推量。

当(あ)てぃ性(しょお)@: (名) 思慮。 @当(あ)てぃ性(しょお)ぬ無(ね)

  えん。/思慮がない。

幼(あてぃ)ってえん@: (副) 女・子供などの、あどけないさま。無邪気なさま。 

  @幼(あてぃ)ってえん為(しょ)おん。/あどけないさまをしている。

当(あ)てぃ鉄砲(てぃっぷう)⓪: (名) あてずっぽう。

当(あ)てぃてぃん報(ぷう)⓪: (名) 当(あ)てぃ鉄砲(てぃっぷう)と同じ。

当(あ)てぃ無(な)し@: (名) 無邪気な者。あどけない者。女・子供など思慮分

別のない者。 @手水(てぃみずぃ)てぃすぃ知(し)らん当(あ)てぃ無(な)し

ゆでむぬ、許(ゆる)ち給(たぼ)り。[手水てす知らぬ あてなしよだいもの 許ち

たばうれ(手水之縁)]手水ということを知らない、いとけない者ですから、お許しく

ださい。 ※手水は、手を洗う水のことらしい。「手水の縁」は、平敷屋朝敏作の組踊

で、琉球王府、明治時代まで上演が禁止されていた。平敷屋が国家反逆罪で処刑され

たことが主な理由のようである。当時は、親が決めた結婚が社会制度となっており、「手

水の縁」は、現代的な自由結婚をテーマとしているのも禁止の理由らしい。もし、国

家反逆罪が事実とすれば、平敷屋朝敏という人物は非常に興味深い存在である。

当(あ)てぃ⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @当てる。的中させる。接着させる。あ

てはめる。相当させる。また、合わせる。 @柱(はあや)んかい木(きい)当(あ)

てぃゆん。/柱に木を当てる。 @時計(とぅちい)当(あ)てぃゆん。/時計を合

わせる。 ➁なぐる。人の体を打つ。那覇などではなぐることを、多く、殺(くる)

すん、叩殺(たっくる)すん、叩殺(たたっくる)すん、などというが、首里ではや

わらかに、当(あ)てぃゆん、と多くいった。

後(あとぅ)⓪: (名) [後方の意には多く、後(くし)、という。また、跡の意では、

複合語を除き、多く、印(しるし)、という。] @のち。後刻。将来。また、死後。 

@後(あとぅ)来(くう)わ。/あとでこいよ。 @後(あとぅ)ぬ事(くとぅ)。/

あとのこと。また、死後のこと。 @後(あとぅ)ぬ埋(うず)み。/あげくのはて。

結局。 @後(あとぅ)ぬ埋(うず)めえ絡(から)みらったん。/あげくのはては、

つかまえられた。 ➁次。 @其(う)ぬ後(あとぅ)。/その次。 B子孫。また、

後継者。 @後(あとぅ)絶(てえ)ゆん。/あとが絶える。

後後(あとぅあとぅ)@: (名) あとあと。のちのち。将来。

足処(あどぅ)⓪: (名) かかと。

後追(あとぅうぃ)い⓪: (名) あとをつけて行くこと。尾行。 @後追(あとぅう

  ぃ)い為(しゅ)ん。/※動詞化。⁼追(うぃ)い<追(う)うゆん。

後押(あとぅう)しい⓪: (名)[新] 車のあと押しを業とする者。立ちん坊。首里の

  坂の下などに、人力車のあと押しを業とする者がいた。

跡形(あとぅかた)⓪: (名)あとかた。痕跡。 @跡形(あとぅかた)ん無(ね)え

えん。/あとかたもない。

後片付(あとぅかたづぃ)き⓪: (名) あとかたづけ。あと始末。 

後先(あとぅさち)@: (名) あとさき。前後。

足処肉(あどぅじし)⓪: (名) @かかとの裏。➁かかとの裏にできる、うおのめの

ようなはれもの。はれて堅くなり、痛む。焼き針を立てたり、焼き瓦を当てたりして

治療した。

後退(あとぅすぃじ)ち⓪: (名) あとずさり。後退。また、しりごみ。 @後退(あ

  とぅすぃじ)ち為(しゅ)ん。/※動詞化。

後退(あとぅすぃじ)ちゃあ⓪: (名) 後退(あとぅすぃじ)ち、と同じ。 @後退

(あとぅすぃじ)ちゃあ為(しゅ)ん。/※動詞化。 ※退(すさ)るは共通語であ

る。

足処擦(あどぅすぃ)り擦(すぃ)り⓪: (名) 足ずり。子供などが足を地にすりつ

けて、だだをこねることをいう。 足処擦(あどぅすぃ)り(すぃ)りしゅん。/

※動詞化。 

跡継(あとぅつぃ)じ⓪: (名) あと継ぎ。相続人。嗣子。

後尋(あとぅどぅ)み⓪@: (名) 後妻。先尋(さちどぅ)み[先妻]の対。

後尋(あとぅどぅ)めえい⓪: (名) 後尋(あとぅどぅ)み、と同じ。

後成(あとぅな)い先成(さちな)い⓪: (副) @あとになったり、先になったり。 

➁相前後して。 @後成(あとぅな)い先成(さちな)い大和(やまとぅ)んかい来

(ちゃ)ん。/相前後して日本に来た。

後成(あとぅな)い成(な)い⓪: (副) 前成(めえな)い成(な)い、の対。 @

だんだん後へさがるさま。 ➁しりごみするさま。人の後になろうとするさま。 @

後成(あとぅな)い成(な)い許(びけえ)ん為(っし)。/しりごみばかりして。

後腹(あとぅばら)@: (名) 後妻の子。

後肢(あとぅびしゃ)⓪: (名) 動物のあとあし。

後勝(あとぅまさ)い果報(がふう)⓪: (名) あとになってうまく行くこと。あと

の方がかえってよくなること。

跡目(あとぅみ)⓪: (名) 跡目。あと継ぎ。後継者。

後戻(あとぅむどぅ)い⓪: (名) あと戻り。また、退歩。

穴(あな)⓪: (名) 穴。くぼんだ穴。貫通した穴・欠損・欠点などは、目(みい)

という。 @穴掘(あなふ)ゆん。/穴を掘る。 @穴(あな)ぬ開(あ)ちょおん。 

/穴があいている。

姉(あな)あ⓪: (名) 上流家庭の女子の世話役をする女。男の世話は男がして、そ

れには、兄(やか)あ、という。

強(あなが)ちさん@: (形) 昔が思い出され、再会したいと思う。また、再会して

うれしい。なつかしい。 @強(あなが)ちさ為しゅん。/なつがしがる。 @強(あ

なが)ちこお無(ね)えらん。/なつかしくない。 @強(あなが)ちさぬ強(ちゅ

う)さん。/とてもなつかしい。 *混効験集:坤巻・言語に、あなかぢ、とある。

彼長(あな)ぎ⓪: あの長さ。あれだけの長さ。あんなに長く。距離についていう。

穴刳(あなぐ)い強(じゅう)さん⓪: (形) 詮索し過ぎる。 @穴刳(あなぐ)い

強(じゅう)さいねえ争(おお)ええ成(な)ゆん。/あまり詮索するとけんかにな

る。

穴刳(あなぐ)い出(んじゃ)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 細かなもの、細かなこ

  とをほじくり出す。

穴刳(あなぐ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 細かいものをほじくる。また、(余計 

な)詮索をする。 @穴刳(あなぐ)ゆる物(むの)お有(あ)らん。/あまり詮索

するものではない。

足悩(あな)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ)[古] 物のありかを捜し求める。人を

捜すのには言わない。 ※万葉集3533、「人の児のかなしけ時(しだ)は、濱渚鳥

(はますどり)足悩(あなゆ)む駒の惜しけくもなし。」

穴家(あなや)⓪: (名) 掘立小屋。穴を掘って柱を立てた、そまつな小屋。

彼有(あなら)わん⓪: (副) 彼有(あねら)わん、と同じ。

彼人(あにひゃ)あ⓪: (名) あいつ。あの野郎。彼人(あぬひゃ)あ、ともいう。

彼(あ)ぬ@: (連体) あの。 其(う)ぬ[その]、此(く)ぬ[この]に対する。  

  @彼(あ)ぬ家(やあ)。/あの家。 @彼(あ)ぬ書物(しゅむつぃ)。/あの本。

彼(あ)ぬう此(く)ぬう⓪: (副) しどろもどろ。整然とものが言えないさま。 @

  彼(あ)ぬう此(く)ぬう為(しゅ)ん。/しどろもどろになる。

彼(あ)ぬ如(ぐとぅ)⓪: (副) あのように。あんなに。

彼(あ)ぬ如(ぐとお)る⓪: (連体) あんな。あのような。

彼(あ)ぬ如(ぐとお)るう⓪: (連体) あんなもの。あのようなもの。また、あれ

  と同じようなもの。

彼(あ)ぬ頃(くる)@: (名) あのころ。過去についていう。

彼(あ)ぬ尺(しゃく)⓪: (名) あのぐらい。あれくらい。あれほどの量・程度。

彼年(あぬちゃ)⓪: (名) あの年齢。あのとし。あの老境。⁼年(ちゃ)<寄年(ゆ

  ちゃ)。

彼(あ)ぬ時(とぅち)@: (名) あの時。

彼(あ)ぬっ人(ちゅ)@: あの人。彼(あり)というよりも丁寧。妻が他人に対して

  夫をいう場合にも用いる。

彼辺(あぬふぃん)⓪: (名) あの辺。あのあたり。

彼人(あぬひゃ)あ⓪: (名) あいつ。あの野郎。彼人(あにひゃ)あ、ともいう。

彼(あ)ぬまま⓪: (名) あのまま。

彼世(あぬゆう)@: (名) あの世。来世。後生。此世(くぬゆう)の対。

彼寄年(あぬゆちゃ)@: (名) 彼年(あぬちゃ)と同じ。

彼様(あぬよお)@: (名) あのよう。やや文語的な語。 @彼様(あぬよお)な/

あのような。 @彼様(あぬよお)に。/あのように。 @彼様(あぬよお)やみ/

あのようか。 彼如(あぬぐとお)る、彼如(あぬぐぅ)などというのが普通。

あね@: (感) ほら。それ。遠方のものをさし示して注意をうながす語。 @あね、

彼処(あま)んかい有(あ)せえ。/ほら、あそこにあるよ。 ➁珍しい時、意外な

時に発する語。おや。あれ。あら。

あねあね@: (感) [あね、を強めて言った語] @ほらほら。 ➁あれまあ。おや

  まあ。

彼有(あねえ)る⓪: (連体) 彼有(あんねえ)る、と同じ。

彼有(あねら)わん⓪: (副)[文] @そうでも。そうではあっても。口語では、彼有

(あんねえら)わん、という。 ➁どうであっても。どうあろうとも。口語では、如

何成(ちゃあな)らわん、という。 @仲村渠側戸真簾(なかんかりすべどぅますぃ

だい)は下(さ)ぎてぃ、彼有(あねら)わんとぅ思(み)ば忍(しぬ)でぃ入参(い

も)り。[仲村渠そばいと ますだれは下げて あにあらはんとまば 忍でいまうれ(仲

村渠節)]仲村渠の美しい娘の住む家の裏の戸はいつもすだれを下げてあるが、どうな

ってもよいと思うならば、忍んでいらっしゃい。 ※仲村渠(なかんだかり)は、現

在ではワープロで容易に変換できるが、沖縄語辞典では、「仲村柄」となっている。た

ぶん、活字の中に「渠」がなかったと思われる。新たに活字を作ればいいと思うのだ

が、全体として「沖縄語辞典」はできるだけ難しい漢字は使わない方針であった感じ

がする。なお仲村渠節の仲村渠は、仲村渠マカトといわれる伊江島の伝説の美女のこ

とらしい。(他説あり)。

彼有(あね)る⓪: (連体)[文] そんな。そのような。口語では、彼有(あんねえ)

る、という。 @彼有(あね)る読(ゆ)む鳥(どぅや)や聞(ち)ちゃらわん良(ゆ)

たしゃ。[あにあるよも鳥や 聞きやらはもよたしや]そんな鳥どもが聞いたとしても

かまわない。

あばあ⓪: (名) 姉。ねえさん。農村で用いる語。首里では、士族については、んみ

いい、平民については、あんぐぁあ、という。 ※士族、平民は、明治時代に新設さ 

れて族称であって、現在は存在しない。しかしながら、沖縄においては、現在も言葉

遣いにおいて、士族の子孫、平民の子孫が意識されるようである。

あはあい⓪@: (感) やあい。人を嘲り笑う語。

あばし⓪: (名) おてんば。おしゃべりな女。

アバシ⓪: (名) 魚の名。おこぜの類。暖海に産し、刺がたくさんある。

あばしゃあ⓪: (名) あばし(おてんば)と同じ。

余(あば)ち直(のお)り⓪: (副) もて余すさま。身動きのとれないようなさま。

  @余(あば)ち直(のお)りしゅん。/※動詞化したものである。

余(あば)ち仕事(しぐとぅ)⓪: (名) 手に余る仕事。もて余す仕事。

余(あば)ちゅん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) たくさんの着物・大きすぎる着物などを着

てもて余す。また、仕事などをもて余す。 @仕事多(しぐとぅうほお)く言(い)

い付(つぃ)きらってぃ余(あば)ちょおさ。/仕事をたくさん言い付けられてもて

余しているよ。

あははあ⓪: (感) 大いに笑うさま。あっはっは。

荒(あば)らあ@: (名) 大食い。大食漢。

荒(あば)ら屋(や)@: (名)「文」 あばらや。 ※あばらやは、共通語である。

喚(あび)い驚(うどぅる)かしゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 大声でどなって驚かす。

喚(あび)い声(ぐぃい)⓪: (名) 叫び声。 @彼方(かあま)から喚(あび)い

  声(ぐぃい)ぬ聞(ち)かりいん。/遠くから叫び声が聞こえる。

喚(あび)い放(ほお)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) わめき散らす。どなり散らす。

喚(あび)やあ⓪: (名) @叫ぶ者。わめく者。泣きわめく者。鳴くもの。 ➁鳴く

  せみ。鳴かないせみは つぃいがあ という。

あひゃあ⓪: (名) @家畜などの親。母体となるもの。人については言わない。 ➁

親豚。あひゃあ豚(うぁあ) の略。 B 酢・酒・塩辛・漬け物などのもととなる

もの。酵母など。生じふやすもと。 @酢(すぃい)ぬあひゃあ、/酢を作る際、も

ととなる酢や水など。 @酒(さき)ぬあひゃあ。/酒を作る際、少量いれる酒など。

あひゃあ豚(うぁあ)⓪: (名) 親豚。

喚(あび)やあ手(てぃい)やあ⓪: (副) わめき散らすさま。また、大勢がわいわ

い騒ぐさま。喧喧ごうごう。 @喚(あび)やあ手(てぃい)やあしゅん。/※動詞

化したものである。

あひゃんがれえ⓪: (感) [文] やけくそになった時に発する声。どうともなれ。

  口語は あっぱんがれえ。

喚(あび)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @叫ぶ。大声で呼ぶ。また、わめく。どな

る。 @喚(あび)てぃ見(ん)んでえ。/大声で叫んでみろ。 ➁大声で泣く。泣

き叫ぶ。 Bほえる。犬・猫・豚などが鳴く。

=あびゆん: (接尾) ます。〜します。話し相手に対する丁寧の敬語。あびいん と

いうことが多い。うん(いる)と複合した動詞(すなわち一般の動詞)に付く時には、

その「終止形」から うん を除いた形につく。書(か)ちゅん;(書く)→書(か)

ちゃびいん;(書きます)、取(とぅ)ゆん;(取る)→取(とぅ)やびいん;(取りま

す)など。うん(いる)、あん(ある)、やん(だ)などに付く時には末尾の ん を

除いた形に付き、居(う)やびいん、居(う)いびいん;(います)、有(あ)やびい

ん、有(あ)いびん;(あります)、ややびいん、やいびん;(です)のように、やびい

ん もしくは いびいん となる。形容詞の場合も同じく 遠(とぅう)さん;(遠い)

→遠(とぅう)さやびいん、遠(とぅう)さいびいん;(遠いです)のようになる。読

(ゆ)なびら;(読みましょう)。 @読(ゆ)みみしぇえやびいみ。/お読みになり

ますか。

安部(あぶ)⓪: (名) 安部(あぶ)。 ※「あぶ」名護市の地名。近くの海岸で米軍

  のヘリコプターが墜落大破。

安波(あふぁ)⓪: (名) 安波。 ※「あは」、国頭郡国頭村の地名。安波ダム、安波

節、タナガーグムイで有名である。安波ダムはかなりの高さである。安波節、「安波ぬ

まはんたや肝縋(ちむすが)い所(どぅくる)、奥(うく)の松下(まつぃしちゃ)や

寝成(にな)し所(どぅくる)。」まはんたは、真端(まはんた)と書くべきか、間端

(まはんた)と書くべきか、ここでは、端(はんた)の上の広場のことらしい。

合殻(あふぁくう)⓪: (名) 二枚貝。はまぐりなど、二枚貝の総称。また、二枚貝

  の貝がら。合貝(あふぁけえ)ともいう。

淡口(あふぁぐち)⓪: (名) 薄味。また塩加減の少ない味。また、薄味を好む者。

阿波根(あふぁぐん)⓪: (名) 阿波根。 ※「あはごん」、糸満市の地名。米軍によ

る強制土地接取に反対した平和運動家に阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)がいる。

*おもろさうし873に、あはこん、とある。

合貝(あふぁけえ)⓪: (名) 合殻(あふぁくう)と同じ。

淡返(あふぁげえ)り者(むん)⓪: (名) 不まじめな者。ちゃかしてばかりいる者。

  まじめに話をしない者。

淡返(あふぁげえ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @味が薄くなる。味が足りなくな

る。 ➁不まじめになる。ちゃかして馬鹿らしいことばかり言う。不まじめにおどけ

る。 @彼(あり)が言(ゆ)せえ淡返(あふぁげえ)りてぃ聞(ち)ちん成(な)

らん。/あいつの言うことは馬鹿らしくて聞く気にならない。

淡(あふぁ)さん⓪: (形) 味が薄い。甘み、塩味などが少ない。 *混効験集:坤

  巻・言語に、あはさ、とある。

安波茶(あふぁちゃ)⓪: (名) 安波茶。 ※「あはちゃ」、浦添市の地名。浦添市役

  所がある。 

安伏成(あふぁな)⁼ちゅん: (自 ⁼かん、⁼ち) 寝やがる。「寝る」の卑語。 @安

伏成(あふぁな)けえ。/寝やがれ。 @安伏成(あふぁな)ち喰(くぁ)とおん。

/寝てやがる。ひっくりかえっていやがる。

阿波連(あふぁり)⓪: (名) 阿波連。 ※「あはれん」、島尻郡渡嘉敷村の地名。阿

  波連ビーチは、透明度のある美しいビーチである。

鐙(あぶい)⓪: (名) あぶみ。 ※鐙(あぶみ)は、鞍の両脇にさげ騎者の足をふ

  きかける馬具。

彼程(あふぃ)⓪: (名) あれだけ。あれくらいの量・大きさ。 @彼程(あふぃ)

  どぅ有(あ)る。/あれだけしかない。

兄(あふぃい)⓪: (名) 兄。にいさん。平民についていう語。農村では あっぴい 

というところもある。士族については やっちい という。 ➁にいさん。平民の若

者をいう語。

兄小(あふぃいぐぁあ)⓪: (名) 一番下の兄。すぐ上のにいさん。平民についてい

  う。

彼程小(あふぃぐぁ)⓪: (名) 彼程小(あっぴぐぁあ)と同じ。

焙(あぶ)い網(くう)⓪: (名) 魚や餅などを焼く金網。

彼程(あふぃ)な⓪: (連体) あれほどの。あれほどの量の。また、あんなに大きな。

あんなに尊い。 @彼程(あふぃ)な按司主(あじすい)ぬ召遣(みしゃ)る事聞(く

とぅち)かな。[あへな按司そひの めしやる事聞かな(二童敵討)]/あんなに尊い

按司様のおっしゃることを聞かないで。 ※あへなという日本語は無い。すいと発音

しているものを、なぜ、そひと書き直さなければならないのか。「二童敵討(にどうて

きうち)」は、玉城朝薫作の組踊である。

鶩(あふぃら)あ⓪: (名) あひる。鶩(あふぃる)ともいう。 *混効験集:乾巻・

  気形に、あひら、とある。

鶩(あふぃら)あ尾(ずう)⓪: (名) 子供のぼんのくぼのところに少し長く伸ばし

た髪。あひるのしっぽに似ているのでいう。尾(ずう)はしっぽ。そこを刈るとそ

の子の運気(うんち)が弱るといって、そこだけ少し伸ばしておく習慣であった。

鶩(あふぃる)⓪: (名) 鶩(あふぃら)あ と同じ。

淡(あふぇえ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 酒・酢などが、水っぽくなり、味が落

  ちる。気がぬける。

畔(あぶし)⓪: (名) あぜ。田のあぜ。 ※畔(あぜ)は、田と田との間に土を盛

  り上げて境としたもの。

畔祓(あぶしばれ)え⓪: (名) あぜ祓いの意。旧暦4月に行う田の祭。仕事を休み、

ごちそうを作って一日を遊び暮らす。また、海人草(なちょおら)を煎じて飲み、海

人草の雑炊を食べる。海人草は回虫を除くのに効くとされる。

畔枕(あぶしまくら)⓪: (名)[文] 稲の穂がみのり、あぶし(畔)を枕にすること。

豊作を形容していう語。

畔道(あぶしみち)⓪: (名) あぜ道。

安富祖(あふす)⓪: (名) 安富祖。 ※「あふそ」、国頭郡恩納村の地名。

泡(あぶ)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) 飯などが吹きこぼれる。沸騰して吹き出る。

浴(あ)ぶちゅん@: (自 ⁼かん、⁼ち) 暑く蒸し蒸しする。蒸すように暑い。

危(あぶ)なしゃん@: (形) [文・新] 危ない。元来は 冒(うかあ)しゃん と

  いう。 ※危(あぶね)え所(とぅくる)。/危ない所。

焙(あ)ぶ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) あぶる。食物などを焼く。また、火にかざ

し暖める。 @餅焙(むちあ)ぶゆん。/餅を焼く。 @手(てぃい)ぬ先焙(さち

あ)ぶゆん。/手の先をあぶる。

阿真(あま)⓪: (名) 阿真。 ※「あま」、島尻郡座間味村の地名。野生のウミガメ

  が見られる美しいビーチがある。

あま@: (名) @あそこ。あっち。あちら。くま[ここ]、うま[そこ]、まあ[どこ]

に対する語。 @あまから来(ちゃ)ん。/あそこから来た。 ➁あのかた。あり[彼 

、彼女]、あぬっ人(ちゅ)[あの人]などの敬語。 @あまあ まあ うやんせえび

いが。/あの方はどなたでいらっしゃいますか。 歌では、男から女をさしては あ

り、女から男をさしては あま、と使い分けることがある。 @渡海(とぅけ)や隔

(ふぃざ)みてぃん照(てぃ)る月(つぃち)や一(ふぃとぅ)つぃ、ありん眺(な

がみ)ゆら今日(きゆ)ぬ空(すら)や。[渡海や隔めても 照る月や一つ あれも眺

めよら今宵の空や]海を隔てても照る月は一つ、彼女もながめているだろう今宵の空

を。 この歌を女が歌うときには、あまん眺(なが)みゆら[あのかたもながめてい

るだろう]と変える。

余(あま)い⓪: (名) 余り。余分。 @昔(んかし)ん人(ちゅ)ぬ言葉(くとぅ

  ば)ねえ余(あま)ええ無(ねえ)ん。/昔の人のことばには無駄がない。

あま言(い)いくま言(い)い⓪: (副) 話し方が整然としないさま。あっちを言い、

こっちを言い。しどろもどろ。 @あま言(い)いくま言(い)い為(しゅ)ん。/

※動詞化。

余(あま)い物(むん)⓪: (名) 余り物。余ったもの。

暴(あま)い者(むん)⓪: (名) あばれ者。乱暴者。

天降(あまう)り⓪: (名)[文] 天女が天からくだること。天降り。天降(あま)り、

  天降(あも)り、天降(あもお)り、天降(あもお)い、などともいう。 

天川踊(あまかあうどぅ)い⓪: (名) [天川踊]踊りの名。男女で踊るもの。

雨泣(あまが)かあ⓪: (名) 雨泣(あまが)く と同じ。

雨泣(あまが)く⓪: (名) @虫の名。雨の降る前に蛙に似た声で鳴く。けらのこと

か。 ➁あまのじゃく。なんでもわざと人に反対する者。次のような伝説がある。あ

まのじゃくの子を心配した親が、墓を山に作ってもらいたいと思い、墓は河原に作れ

と遺言して死んだ。しかし、子は遺言だけは守り、雨が降りそうになると、大水を心

配して泣いた。そこであまのじょくを、雨泣(あまが)く、という。 ※この伝説か

ら、がく、には泣くという意味があると推測できる。

雨傘(あまがさ)⓪: (名) @雨傘。雨天用の傘。 ➁月がさ。雨の前などにかかる、

月の傘。 *混効験集:坤巻・乾坤に、あまかさ、とある。

甘菓子(あまがし)⓪: (名) 甘酒の一種。端午の節供に作る。大麦を煮つめ、少量

の麹を入れて一日ぐらい水にひたして発酵させて作る。菖蒲の葉を切ったものを箸の

代わりに用いる。 

雨乞(あまぐ)い⓪: (名) 雨乞い。首里の崎山町に、雨乞(あまぐ)い端(ばんた)

という高台があり、旱魃の時には女ばかりが集まって、雨給(あみたぼ)り[雨を給

われ]の歌を歌って祈った。

甘(あま)く垂(た)らく@: (副) 甘言で人をつるさま。うまうまと。 <甘(あ

  ま)さん[甘い]。

甘口(あまくち)⓪: (名) 甘口(あまぐち)と同じ。

甘口(あまぐち)@: (名) 甘言。甘口(あまくち)ともいう。 @甘口垂(あまぐ

ちた)ら垂(た)ら為(しゅ)ん。/甘言をたらたら言う。 ※甘口(あまくち)と

アクセントが違うのが興味深い。

彼処此処(あまくま)@: (名) あちこち。あちらこちら。 *混効験集:坤巻・言

  語に、あまこま、とある。

彼処触(あまさ)あい此処触(くまさ)あい: (副) 珍しがって方々をなで回すさま。 

@彼処触(あまさ)あい此処触(くまさ)あい為(しゅ)ん。/※動詞化。

彼処騒(あまざあ)ひゃあ騒(ざあ)⓪: (副) あれやこれやと思い悩むさま。 @

彼処騒(あまざあ)ひゃあ騒(ざあ)っし寝(に)んだらんたん。/心配の余り眠れ

なかった。  

甘酒(あまざき)@: (名) 酢。巣(すぃい)、生(ふぇえ)い、ともいう。昔は甘酒

  をいったものか。

彼処騒(あまざら)ひゃあ騒(ざら)⓪: (副) 彼処騒(あまざあ)ひゃあ騒(ざあ)

  と同じ。

甘(あま)さん@: (形) 甘い。甘みがある。味が薄い意では、淡(あふぁ)さん、

  という。 *混効験集:坤巻・言語に、あまさ、とある。 

余(あま)した者(むん)⓪: (名) 品行の悪い者。乱暴者。もて余し者。

騒地付(あまじち)かあ⓪: (副) @ゆらゆら、ぐらぐら。しきりに揺らぐさま。 ➁

うろたえるさま。また、ためらうさま。 @目騒地付(みいあまじち)かあ為(しゅ)

ん。/(狼狽して)目をうろうろさせる。

騒地(あまじ)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) @揺らぐ。動揺する。動揺が起こる。 

@目暴地(みいあまじ)ちゅん。/(狼狽)して目をうろうろさせる。 ➁ためらう。

躊躇する。 肝(ちむ)ぬ騒(あま)じゅん、と同じ。

甘塩(あまじゅう)@: (名) 甘塩。薄味の塩漬け。

余(あま)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 余す。余りを残す。

甘生姜(あましょおがあ)@: (名) 菓子の名。甘しょうが。しょうがを砂糖で煮つ

  めたもの。 

あま走(は)いくま走(は)い@: (副) あちこちかけずり回るさま。東奔西走。

‐はい<走(は)ゆん[走る]。 @あま走(は)いくま走(は)い為(しゅ)ん。/

※動詞化。

甘(あま)びり⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 甘くなり過ぎる。糖分が多すぎて、料

理が甘ったるくなる。

甘味(あまみ)@: (名) 甘味。 @甘味(あまめ)え如何(ちゃあ)が。/甘味は

  どうか。

彼処見(あまみ)い此処見(くまみ)い@: (副) あちこち見回すさま。きょろきょ

  ろ。 @彼処見(あまみ)い此処見(くまみ)い為(しゅ)ん。/※動詞化。

奄美国去行国(あまみくしにりく)⓪: (名)[文] [あまみこしねりこ]奄美人去行

  (あまみちゅうしにりちゅう)と同じ。

雨水(あまみずぃ)@: (名) 真水。淡水。塩水(しゅうみずぃ)[塩水]の対。

奄美人去行人(あまみちゅうしにりちゅう)⓪: (名) [あまみきよしねりきよ]琉

球列島を創造したといわれる神の名。男女二柱の神か、あるいは単なる対語か。また、

あまみは、奄美と関係のある形と思われる。 ※私見であるが、あまみきよは、単に

奄美人(あまみちゅ)で、しねりきよは、それに添えた意味のない対語であると思う。

*混効験集:坤巻・神祇に、あまみきよう、しねりきよう、とある。

奄美家去行家(あまみやしにりや)⓪: (名)[文] [あまみやしねりや]奄美人去行

人(あまみちゅうしにりちゅう)[琉球創造の神]の故国。東方にあり、そこから五穀

が渡来したといわれる。

彼処向(あまむ)てぃ⓪: (名) あちら側。あっちの方。

甘物(あまむん)@: (名) 甘いもの。菓子など、甘い食べ物。

甘世(あまゆう)@: (名)[文] 豊年。苦世(にがゆう)[凶年]の対。 *混効験

集:坤巻・乾坤に、あまよう、とある。 *おもろさうし1330に、あまよ、とあ

る。

あま読(ゆ)みくま読(ゆ)み⓪: (副) あちこちを飛び飛びに読むさま。 @あま

読(ゆ)みくま読(ゆ)み為(しゅ)ん。/※動詞化。

余(あま)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @余る。残りが出る。 ➁越す。以上にな

る。 @七十余(しちじゅうあま)てぃ此(く)ぬ憐(あわ)り為(しゅ)ん。/七

十歳を越してこんな苦労をする。 @六十余(るくじゅうあま)れえ土手(あむとぅ)

ぬ下(しちゃ)。/六十歳を越せば土手の下に捨てる。六十歳以上は世間の邪魔。 ※

私の祖母はよくこの言葉を口にした。これは六十歳以上の人が自分を卑下してのブラ

ックジョークであって、六十歳以下の人が使う言葉ではない。

暴(あま)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 暴れる。いたずらなどをして騒ぐ。主とし

て子供・犬猫などについていう。 @暴(あま)んなけえ。/あばれるなよ。 ※琉

球語の暴れると余るは発音上全くおなじである。暴れるの、ば、の音が、ま、に変化

したものと思われる。

天降(あま)り⓪: (名)[文] 天降(あまう)り、天降(あも)り、天降(あもお)

い、天降(あもお)り、と同じ。天降り。 ※天降(あまくだ)りは、天上の神の世

界から地上の人間の世界に降りること。官僚の天下りはここから来た言葉。なお万葉

集257の天降(あも)りつくは、天の香具山につく枕詞である。

彼処辺(あまりか)あ⓪: (名) 彼辺(ありか)あ、と同じ。 

アマン⓪: (名) やどかり。節足動物の名。

彼処(あま)ん世(ゆ)⓪: (名)[文] 昔の世。昔の時代。 @地頭代主(じとぅで

えしゅ)したり前(めえ)、御取次為侍(うとぅつぃじしゃび)ら彼処(あま)ん世(ゆ)

ぬ凌(しぬ)ぐ御許(うゆる)し召候(みしょお)り。[地頭代主たり前 お取次しや

べら あまん世のしのぐ お許しめしようれ(恩納節)]地頭代申し上げます。昔の世

のしのぐ踊り(しぬぐ)をお許しください。

雨(あみ)⓪: (名) 雨。 @雨(あみ)ぬ降(ふ)ゆん。/雨が降る。 @雨(あ

み)ぬ晴(は)りゆん。/雨がやむ。雨があがる。[雨(あみ)ぬ止(や)ぬん、とは

元来はいわない。] *おもろさうし536に、あめふりやり、とある。

網(あみ)⓪: (名) 網。漁網など。

飴(あみ)@: (名) 飴。

雨小(あみぐぁあ)⓪: (名) 小雨。細雨(ぐまあみ)ともいう。霧雨には、さらに

  細雨小(ぐまあみぐぁあ)という。

編(あ)み笠(がさ)⓪: (名)[文] 編み笠。編(あ)ん笠(ざさ)、ともいう。

雨風(あみかじ)⓪: (名) 雨風。

天久(あみく)⓪: (名) 天久。 ※「あめく」、那覇市の地名。あめくみちこは、宜

  野湾市出身の女優である。 *おもろさうし1052に、あめく、とある。

雨雲(あみぐむ)⓪: (名) 雨雲。

雨被(あみこお)⁼じゅん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 味噌を作る過程で、命(ぬち)[大

  豆・えんどうなどを煮てつぶしたもの]と麹とをまぜたものが発酵する。  

雨地(あみじ)⓪: (名) みみずに似た小動物。みみずより小さく、悪臭があり、色・

形などはみみずに似ている。つぶすと蛍光を発する。 ※共通語では何というのか、

これだけの説明ではわからない。「どなたか教えてください。」

天底(あみすく)⓪: (名) 天底。 ※「あめそこ」、国頭郡今帰仁村の地名。天底(て

  んてい)と読めば天文学の用語である。

雨垂(あみだ)い⓪: (名) @軒。 ➁軒下。 @雨垂(あみだ)いなかい立(た)

っちょおん。/軒下に立っている。

雨垂(あみだ)い水(みずぃ)⓪: (名) 雨だれ。軒から落ちる雨だれ。

雨露(あみつぃゆ)⓪: (名)[文] 雨と露。 @豊(ゆたか)なる御世(みゆ)ぬ徴

現(しるしあらわ)りてぃ雨露(あみつぃゆ)ぬ恵(みぐ)み時(とぅち)ん違(た

が)ん。[豊かな御代の しるしあらはれて 雨露の恵み 時もたがぬ]豊かなる御代

のしるしがあらわれて、順調に雨と露が恵まれる。

雨子(あみなあ)⓪: (名) おたまじゃくし。蛙の子。

雨(あみ)ぬ根(にい)⓪: (名) 雨のもと。雨の根。雨を降らす黒雲、遠雷などを

いう。 @雨(あみ)ぬ根(にい)ぬ切(ち)りらん。/雨の根が切れない。まだ、

雨が降りそうである。

雨降(あみふ)い⓪: (名) 雨降り。雨天。

雨降(あみふ)いぎさん⓪: (形) 雨が降りそうである。 @雨降(あみふ)いぎさ

あやたくとぅ。/雨が降りそうだったので。

雨降(あみふ)い籠(ぐま)い⓪: (名) 雨ごもり。雨降りで家にひきこもること。

雨降(あみふ)い支度(じたく)⓪: (名) 雨天に外出する時のしたく。雨具を用意

  すること。

雨降(あみふ)い続(つぃじ)ち⓪: (名) 雨降り続き。雨天続き。

雨降(あみふ)いぬ後(あとぅ)⓪: (名) 雨降りのあと。雨後。

雨催(あみむゆう)し⓪: (名) 雨模様。雨の降りそうな気配。

浴(あ)み⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 水浴する。水浴びをする。行水する。単に、

体に水を浴びるには、水被(みずぃかん)じゅん[水をかぶる]、水掛(みずぃか)き

ゆん[水をかける]などと言い、また、受動的に水を浴びるには、水掛(みずぃか)

  きらりゆん、などという。 @童浴(わらびあ)みらしゅん。/子供を行水させる。

  ※浴びる、浴みゆん。バ行とマ行は交替するようである。

アミリカ⓪: (名) アメリカ。米国。

アミリカア⓪: (名) アメリカ人。卑称。

吾知(あむし)られ⓪: (名)[文] [あもしられ]。彼為(あんし)たり[首里三平

等にいる、女の神官]と同じ。 ※「首里三平等(しゅりみふぃら)」は、現代の我々

にはその読み方さえもわからない言葉である。ふぃら、とは、琉球語で坂のことであ

る。首里はもともと三つの大きな坂の上に位置した。琉球王府時代は、三つの行政区

域に分けられていて、その三つの行政区域を三平等(みふぃら)といった。平等(ふ

ぃら)は当て字である。首里市は1954年に那覇市と合併し那覇市となった。もと

もと首里市に属する地名が首里○○町と呼ばれるのはそのためである。事情は、今日、

うるま市において、もとの石川市に属する地名が、うるま市石川○○と呼ばれるのと

同じである。ところで私にとって大変疑問であるのは、なぜ那覇市となったかである。

那覇は元来マイナーな地名であり、首里の方がステイタスのある地名であった。首里

市のほうがむしろ自然であったと思う。事情はもしかすると、もともと小さな村名で

あった神奈川、兵庫が県名となったのと同じかもしれない。つまり海外への港の名前

である。

土手(あむち)⓪: (名) 土手(あむとぅ)と同じ。

土手(あむとぅ)⓪: (名) 土手。堤。耕地と山野の境目に築いた土手をいう。土手

(あむち)、土手(あもおち)、ともいう。 @六十余(るくじゅうあま)れえ土手(あ

むとぅ)ぬ下(しちゃ)。/六十歳を超せば土手の下に捨てる。昔は六十歳を超すと土

手の下に捨てた、という伝説がある。 ※余(あま)ゆん、の項参照。

安室(あむる)⓪: (名) 安室。 ※「あむろ」、中頭郡西原町の地名。富山県南砺市

には安室(やすむろ)という地名がある。安室奈美恵により、「あむろ」という読み方

の方が全国的かもしれない。なお琉球語では、安室の住民を「あむらあ」という。

歓(あめ)え御門(うじょお)@: (名) 首里城の門の名。御城(うぐすぃく)の項

  参照。

暴(あめえ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ)。 増長する。つけあがる。 @此間(く

  ねえだ)んせえ暴(あめえ)とおん。/このごろは増長している。

天降(あもお)い⓪: (名) 天降(あもお)り、と同じ。

土手(あもおち)⓪: 土手(あむち)、土手(あむとぅ)と同じ。

天降(あもお)り⓪: (名) 天降り。天人が地上に降りること。天降(あまう)り、

天降(あま)り、天降(あも)り、天降(あもお)い、などともいう。 ※これだけ

たくさんのバリエーションがあるのは、かなりの日常語だったのであろう。

天降(あもお)り井戸(があ)⓪: (名) 天人が降って水浴びしたという井戸。羽衣

伝説とともに、方々にこの名の井戸がある。 ※組踊「銘苅子」には天女が登場する。

天人、天女は普通の存在だったのであろう。 

天降(あも)り⓪: (名)[文] 天人の天降り。天降(あま)り、天降(あまう)り、

  天降(あもお)り、天降(あもお)い、などともいう。

縞(あや)⓪: (名) 縞。着物などの縞をいう。ただし、言葉(くとぅば)の縞(あ

や)、[文]ことばのあや。縞間見(あやまみ)じゅん。布を折る時、縞糸の数を間違

える。間見(まみ)じゅんの項参照。

母(あやあ)⓪: (名) 母。おかあさん。士族についていう語。平民については、あ

  んまあ、という。

母彼知(あやああんし)らり⓪: (名)[古] 妻(つま)[王の妾で身分の低い者]を

敬っていう語。 ※琉球語のつまは特殊な意味を持つ語のようである。共通語の古語

の「つま」は、愛しあう男女が相手を呼び合った言葉であり、万葉集の153では男

がつまであり、1285では女がつまである。 

母追(あやあうう)やあ⓪: (名) 母親のあとばかりを追いかける子。いくじなしの

子。士族についていう。平民についてならば 母追(あんまあうう)やあ、という。

※この語は、主に男の子をいう語のようである。

母父(あやあたありい)⓪: (名) 父母。おとうさんおかあさん。士族についていう。 

  @切(ち)りてぃ捥(むしり)てぃん母父(あやあたありい)。/着物はぼろぼろでも、

あやあたありい を使う。貧乏士族が身分に執着するのを笑ったことば。 @母父御

顔拝(あやあたありいうんちゅうが)でぃ呉(くぃり)よお。/御両親によろしく言

ってくれ。 

母前(あやあめえ)⓪: (名) @母彼知(あやああんし)らり と同じ。 ➁奥様。

既婚の士族の婦人に対して平民のいう語。士族同志ではいわない。 *混効験集:乾

巻・人倫に、あやあまへ、とある。

母前小(あやあめえぐぁあ)⓪: (名) 若奥様。士族の若奥様に対して平民のいう語。

  大母前(うふあやあめえ)[大奥様]と区別していったもの。

母前踊(あやあめえうどぅ)い⓪: (名) 踊りの一種。士族の女の服装でする踊り。

  首里の士族は単に 女踊(うぃなぐうどぅい)[女踊り]という。  

肖(あやかあ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) あやかる。 *混効験集:坤巻・言語

  に、あやかる、とある。

彩書(あやが)ち香書(こおが)ち⓪: (副) まだらによごれたさま。顔・手足など

が、ところどころよごれたさま。 @彩書(あやが)ち香書(こおが)ちしょおん。

/まだらによごれているさま。

綾語(あやぐ)⓪: (名) 宮古島に伝わる歌謡の一種。 @道(みち)ぬ清(ちゅら)

  さや仮屋(かいや)ぬ前(めえ)、綾語(あやぐ)ぬ清(ちゅら)さや宮古(みゃあく)

ぬ綾語(あやぐ)。/[道のきよらさや仮屋の前 あやごのきよらさや宮古のあやご]

道の美しいのは在番所の前で、あやごの美しいのは宮古のあやご。 ※綾は、美しい

のいう意味の美称辞で、あやごは、もともとは美しいことばという意味の普通名詞で

あったようだ。 *おもろさうし183に、あやこ、とある。

綾小(あやぐぁあ)⓪: (名) 細かい柄。着物のもようについていう。

綾小着物(あやぐぁあじん)⓪: (名) 柄(模様)の細かい着物。

綾門(あやじょお)⓪: (名) [綾門]首里の守礼門と中山門との間の大通りをいう。

  綾門(あいじょお)ともいう。また、俗に 綾門大道(あいじょおうふみち)という。

危(あや)っさん@: (形) 危ない。冒(うかあ)しゃん ともいう。

綾蝶(あやはべる)⓪: (名)[文] 蝶の美称。美しい蝶。 *おもろさうし965に、

  あやはへる、とある。

綾蝶御衣(あやはべるんす)⓪: (名)[文] 晴れ着の美称。蝶のように美しい御衣(み

そ)。 ※御衣(おんぞ)は、竹取物語、宇津保物語、源氏物語にも見える古い共通語

である。

綾船(あやふに)⓪: (名)[文] 綾船(あやぶに)と同じ。

綾船(あやぶに)⓪: (名)[文] 船の美称。中国への進貢船などをいう。

綾船遣(あやぶにつぃけ)え⓪: (名)[文] 進貢船で中国へ行く使者。

過(あやま)い事(ぐとぅ)⓪: (名) あやまち。過失。

誤(あやま)ち⓪: (名) あやまち。道徳的な間違い。

過(あやま)ち⓪: (名) あやまち。過失。失敗。 @如何(ちゃあ)る過(あやま)

ちぬ有(あ)てぃ、出(んじゃ)さったがやあ。/どんな過失があって離縁になった

のかねえ。

縞間見(あやまみ)じ⓪: (名) 布を織る時、縞糸の数を間違えること。

誤(あやま)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) あやまちを犯す。誤る。謝罪する意はな

  い。

誤(あやま)り⓪: (名)[文] 誤(あやま)いの文語。

綾前(あやめえ)⓪: (名)[文] 貴族の嫁がしゅうとめを敬って言う語。綾前(あい

  めえ)ともいう。

誤(あやめ)え臭(くさめ)え⓪: (名) 邪魔。仕事の邪魔。 @誤(あやめ)え臭

(くさめ)えぬ多(うふ)さん。/邪魔が多い。 @童(わらび)ぬ誤(あやめ)え

臭(くさめ)えっし仕事(しぐとぅ)ぬ成(な)らん。/子供が邪魔して仕事ができ

ない。

綾物(あやむん)⓪: (名) 縞物。縞模様の着物・布地。取切(とぅっちり)[かすり]、

  型付(かたつぃ)き[型付]などに対する。

綾(あや)ん中(なあか)あ⓪: (名) 縞の間にかすり模様のある布地・着物。かす

  り模様だけのものは 諸取切(むるどぅっちり) という。

歩(あゆ)ぬん⓪: (自 ⁼まん、⁼でぃ)[文] 歩む。 @歩(あゆ)でぃ歩(あゆ)

まらん、今(なま)どぅ着(つぃ)ちゃる。/歩いても歩いても着かなかったが、い

まやっと着いた。      

粗(あら)@: (名) あら。搗いた穀物の中にまじっている、もみその他の雑物。

新(あら)⁻: (接頭) 新しいこと、はじめてのことを示す。 @新旅(あらたび)[新

  旅]、 @新上(あらぬぶ)い[新上り]、 @新下(あらくだ)い[新下り]、など。

荒・粗(あら)⁻: (接頭) 荒い・粗雑な・乱暴な・などの意を表す。 @荒仕口(あ

らしくち)[荒仕事]、 @粗笊(あらばあきい)[目のあらいざる]、など。

粗(あら)あ@: (名) 粒の大きいもの。粒のあらいもの。

荒荒(あらあら)⓪: (名) 大体。ざっと。 @荒荒(あらあら)ぬ話(はなし)/

大体の話。 @荒荒話(あらあらはなせ)え聞(ち)ちょおん。/ざっと話は聞いて

いる。

洗(あら)い代(げ)え@: (名) 洗濯する場合の代わりの衣類。

新行会(あらいちぇえ)ぬ⓪夜(ゆる)⓪: (句)[文] 初めて会う夜。初夜。 @里

前(さとぅめ)恐(うとぅる)しゃや新行会(あらいちぇ)えぬ夜(ゆる)、女将(あ

んま)恐(うとぅる)しゃや朝(あさ)ん夕去(ゆさ)ん。[里前おとろしやや あら

行逢の夜よ あんまおとろしやや 朝もよさも]男のかたが恐ろしいのは初めての夜

だが、かかえ親は年中おそろしい。女郎の読んだ歌とみえる。  

抗(あらが)あ⓪: (名) @競争。 @馬抗(んまあらが)あ為(しゅ)ん。/馬の

競争をする。 ➁口論。議論。 @抗(あらが)あ為(しゅ)ん。/※動詞化。

抗合(あらがあ)い⓪: (名) 抗(あらが)あ、と同じ。

抗合(あらがあえ)え⓪: (名) 競い合うこと。競争。

抗(あらが)あ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @競う。競争する。あらがう。 ➁口

論する。議論する。

新垣(あらかち)⓪@: (名)新垣。 ※「あらかき」、中頭郡中城村の地名。女優の新 

垣結衣は「あらがき」であり、愛称は「ガッキー」である。 *おもろさうし63に、

あらかき、とある。

新城(あらぐすぃく)⓪: (名) 新城島。八重山群島の島の名。また、新城。 ※「あ

らぐすく」、八重山郡竹富町の地名。宜野湾市にも同名の地名がある。新城島は、上地

島と下地島の両島からなり、二つに離れていることから、八重山の方言では、離(ぱ

な)り、という。朝鮮の資料に、「勃乃伊島」とある。かつては、南西諸島最大のジュ

ゴンの産地であった。 *おもろさうし704に、あらくすく、とあるが、これは久

米島の地名らしい。

新下(あらくだ)い⓪: (名) 初めて都から地方へ下ること。初下り。

荒返(あらげえ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @大きくなる。野菜・穀物などが普

通より大きくなることをいう。大きくなりすぎる。 @荒返(あらげえ)とおる豆菜

(まあみなあ)旨(まあ)こお無(ねえ)ん。/大きくなりすぎたもやしはおいしく

ない。 ➁身体が大きくなる。多く、子供・女などが普通より大きく、たくましくな

ることにいう。 

非(あら)ざらん事(くとぅ)⓪: (名) 根も葉もないこと。ありもしないこと。 @

散々非(さんざんあら)ざらん事(くとぅ)言(ゆ)ん。/散々根も葉もないことを

いう。

荒(あら)さん@: (形) @乱暴である。荒っぽい。 @酒飲(さきぬ)みねえ荒(あ

ら)く成(な)ゆん。/酒を飲むと乱暴になる。 ➁荒い。荒っぽい。柔(やふぁら)

さん、細(くま)さん、などの対。 @言葉(くとぅば)ぬ荒(あら)さん。/こと

ばが荒い。 @銭使(じんづぃけ)えぬ荒(あら)さん。/金使いが荒い。 B荒い 

静(しずぃ)かやん、の対。 @風(かじ)ぬ荒(あら)さん。/風が荒い。 @波

(なみ)ぬ荒(あら)さん。/波が荒い。 C太い。糸などが太い。また、目や粒な

どが粗い。空(うろお)さん、の対。 @綾(あや)ぬ粗(あら)さん。/縞が荒い。

@目(みい)ぬ粗(あら)さん。/目が粗い。

嵐(あらし)@: (名) 嵐。おとなの使う語。最も普通の語は、大風(ううかじ)。台

風(てえふう)は文語的な語。 @嵐吹(あらしふ)ちゅん。/嵐が吹く。 @無臓

(んぞ)が寝座敷(にざしち)に嵐吹(あらしふ)ち込(く)まば、焦(く)がりゆ

る我身(わみ)ぬ遺念(いにん)とぅ思(む)り。[むぞが寝座敷に 嵐吹きこまば 焦

がれよる我身の 遺念ともれ]恋しい君の寝室に嵐が吹き込んだならば、恋している 

わたしの恨みの念と思え。

荒(あら)し声(ぐぃい)@: (名)[文] 不幸な知らせ。死んだという知らせなど。 

@荒(あら)し声(ぐぃい)ぬ有(あ)らば我身(わみ)や如何為(ちゃあしゅ)が。

[あらし声のあらば わみやきやしゆが(忠臣身替)]不孝な知らせがあったら、わた

しはどうしようか。 ※「忠臣身替」は辺土名親雲上(へんとなぺえちん)作の組踊。

[ ]の中の「わみやきやしゆが」という表記法を見ていると、おもろさうし、混効

験集の表記法を思い出す。琉球語を日本語で表記しようとすると、どうしてもこんな

風になるのであろう。

荒仕口(あらしくち)⓪: (名) 荒仕事。体力のいる仕事。

荒仕事(あらしぐとぅ)@: (名) 荒仕口(あらしくち)と同じ。

粗(あら)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 石臼などの目を立てる。 @臼粗(ううす

ぃあら)しゃびら。/臼の目を立てましょう。臼の目立てを業とするものが呼び歩く

文句。 ※臼(うす)の目を立てるということは現在の生活とはかけはなれたことで

あるが、なんとなく郷愁を感じてしまう。

荒(あ)ら⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 荒らす。 @風(かじ)ぬ物作(むづく)

  い荒(あ)らしゅん。/風が作物を荒らす。

争(あらすぃ)い⓪: (名) 競争。抗(あらがあ)い、勝負(しゅうぶ)ともいう。

争(あらす)う⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 競争する。勝敗などを争う。

粗所帯(あらずうてえ)@: (名) 所帯持ちが悪いこと。またそのような世帯。 

荒立(あらだてぃ)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 荒立てる。騒ぎを大きくする。

新旅(あらたび)⓪: (名) 初旅。 *混効験集:坤巻・言語に、あらたひ、とある。

  *おもろさうし957に、あらたひ、とある。

改(あらた)ま⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 改まる。

改(あらた)み⓪: (名) 検査。調査。調べ。 @人数改(にんずあらた)み、は人

員調査。戸口調査。

改(あらた)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @改める。 @為持(しむ)ち改(あ

  らた)みゆん。 ➁調べる。検査する。

荒気(あらち)@: (名) 荒々しいこと。乱暴。 @荒気(あなち)な者(むん)。/

  乱暴な者。 @荒気(あらち)に為(しゅ)な。/荒々しくするな。

粗作(あらづく)い⓪: (名) 下ごしらえ。大体を作ること。

新尋(あらどぅめえ)い⓪: (名) 初婚。男についていう。初めて妻をめとること。  

尋(どぅめえ)い<尋(とぅめえ)ゆん。女の初婚は、新新引(あらにいび)ち、ま

たは、新持(あらむ)ち、という。

荒波(あらなみ)@: (名) 荒波。 ※共通語である。アクセントは違う。

新新引(あらにいび)ち⓪: (名) 初婚。女についていう。初めてとつぐこと。新持

(あらむ)ち、ともいう。男の初婚は、新尋(あらどぅめえ)い、という。

新上(あらぬぶ)い⓪: (名) 初めて地方から都へ上ること。初上り。

粗笊(あらばあきい)⓪: (名) 目のあらいざる。いもなどを入れる。米笊(ゆなば

  あきい)の対。

粗葉茶(あらばあちゃあ)⓪: (名) 葉の粗い茶。粗茶。

荒火(あらび)@: (名) たたり。また、たたりの前兆。たたりが起きるという警告。

凶兆。荒火(あるび)ともいう。 @何柄(ぬうがら)ぬ荒火(あらべ)え有(あ)

らに。/何かのたたりの警告ではないか。 @墓(はる)ぬ荒火(あらび)。/墓のた

たり。

粗碗(あらまかい)⓪: (名) 大きい粗末などんぶり[碗(まかい)]。農村などで飯

をもるのに用いる。 ※碗(まがり)は、共通語の古語である。

粗碗(あらまかや)あ⓪: (名) 粗碗(あらまかい)と同じ。

新持(あらむ)ち⓪: (名) 初婚。女が初めて結婚すること。新新引(あらにいび)

  ち、ともいう。

荒儲(あらもお)き@: (名) 荒かせぎによるもうけ。大もうけ。ぼろもうけ。

粗焼(あらや)ち⓪: (名) 素焼き。上焼(じょおや)ち、の対。

粗焼(あらや)ち碗(まかい)⓪: (名) 素焼きのどんぶり。

粗焼(あらや)ち薬缶(やっくぁん)⓪: 素焼きのやかん。

洗(あら)⁼ゆん@: (他 ⁼あん、⁼てぃ) 洗う。また洗濯する。洗濯(しんたく)の

  項参照。 @髪洗(からじあら)ゆん。/髪を洗う。

現(あらわ)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 現す。あらわにする。あばく。姿を現す

などの意ではあまり用いないようである。また、書物を著す意では、書(か)ちゅん

[書く]という。 @肌現(はだあらわ)しゅん。/肌を現す。 @実現(ずぃちあ

らわ)しゅん。

現(あらわ)り⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 現れる。あらわになる。露見する。ま

た、明らかになる。 @隠(かく)ち隠(かく)さりみ尚又(にゃまた)現(あらわ)

りら。[隠ち隠されめ にや叉あらはれら(手水之縁)]隠しても隠せるものではない

から、では名前をあかしましょう。 @豊(ゆた)かなる御世(みゆ)ぬ徴現(しる

しあらわ)りてぃ[豊かなる御世の しるしあらはれて〜]豊かな御世のしるしがあ

らわれて〜。 ※「手水之縁」は、平敷屋朝敏(へしきやちょうびん)作の組踊。平

敷屋朝敏は、蔡温(さいおん)を批判したとされる平敷屋・友寄事件で処刑された。

彼(あ)り@: 其(う)り[それ]、此(く)り[これ]に対する。 @あれ。あの物。

あの事。 @彼(あ)りやか此(く)れえ良(ま)し。/あれよりこれはよい。 ➁

あれ。あの者。彼。彼女。彼(あ)ま[あのかた]、彼(あ)ぬっ人(ちゅ)[あの人]

よりはぞんざいな形。また、彼(あ)ま、の項参照。 B(感)ほら。人に指摘する

場合などに発する。目上に対しては、男は、彼(あ)りさい、女は、彼(あ)りたい、

と言い、目下などをさげすんでいう時には、彼(あ)りっさ、彼(あ)りひゃあ、な

どという。

ありありい⓪: (感・副) あれよあれよ。 @ありありい為(しゃ)り乍(なが)ら

あ落(う)てぃたん。/あれよあれよと言われながら落ちた。

彼(あ)り思(うみ)い此(く)り思(うみ)い⓪: (副) あれこれ思いなやむさま。

  @彼(あ)り思(うみ)い此(く)り思(うみ)い為(しゅ)ん。/※動詞化。

彼(あ)り辺(かあ)⓪: (名) あの辺。

彼(あ)り辺(かあ)此(く)り辺(かあ)⓪: (名) あちこち。あちらこちら。 

有難(ありがて)え事(くとぅ)⓪: (名) ありがたいこと。感謝すべきこと。有難 

  (ありがた)さん、という形は用いないようである。

彼(あ)りくる⓪: (副) 彼自身で。

彼(あ)り触(さ)あい此(く)り触(さ)あい⓪: (副) 珍しがって、あれこれと

さわるさま。 @彼(あ)り触(さ)あい此(く)り触(さ)あい為(しゅ)ん。/

※動詞化。

ありさい@: (感) ほら。男が目上に対して、注意をうながす時などに発する語。

有様(ありさま)⓪: (名)[文] 有様。様子。 @如何有様(いちゃるありさま)に

成(な)やい居(い)めが。[いきやる有様になやいいまいが(花売之縁)]どんな様

子になっていらっしゃるか。 ※「花売之縁」は高宮城親雲上(たかみやぐすく・た

かなあぐすくぺえちん)作の組踊。これは乙樽か鶴松が森川の子(しい)に対しての

セリフであろう。

ありたい@: (感) ほら。女が目上に対して注意をうながす時などに発する語。

荒地(ありち)@: (名) 荒れ地。

ありっさ@: (感) ほら。ほら、こいつ。目下に対してさげすんで、また、喧嘩など

  で、注意をうながすために発する語。

荒(あ)り果(は)てぃ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 荒れ果てる。荒廃する。

彼(あ)り好(ま)さらあ此(く)り好(ま)さらあ⓪: (副) あっちがいいだろう、

  こっちがいいだろう。絶えず気が変わるさま。

ありひゃあ@: (感) ほら。ほら、こいつ。目下に対してさげすんで、また、喧嘩な

  どで、注意をうながすために発する語。

彼(あ)りやあ此(く)りやあ⓪: (副) あれやこれや。あれこれ。

荒(あ)り⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @荒れる。 @海(うみ)ぬ荒(あ)りゆ

ん。/海が荒れる。 @風(かじ)ぬ荒(あ)りゆん。/風が荒れる。 @肌(はだ)

ぬ荒(あ)りゆん。/肌が荒れる。 ➁大きくなる。大きくなり過ぎる。たくましく

なる。荒(あ)らげえゆん、と同じように用いる。 @腕(けえな)ぬ荒(あ)りゆ

ん。/腕がたくましくなる。 

或(あ)る⓪: (連体) 或る。文語的な語。 @或(あ)る寺(てぃら)。普通は、何 

柄(ぬうがな)ん言(でぃ)る寺(てぃら)とか、何処柄(まあがな)ん言(でぃ)

る寺(てぃら)などという。

有(あ)る丈(うっさ)⓪: (名) あるだけ。あるかぎり。全部(の数量)。

有(あ)る丈(うっぴ)⓪: (名) あるだけ。あるかぎり(の量)。

有(あ)る丈(うっぴ)い⓪: (名) あるだけですます人。また、あるだけ何でもさ

  らけ出す人。隠しだてのない人[何隠(ぬうかく)しぬ無(ねえ)んっ人(ちゅ)]。

有(あ)るかしるか⓪: (名) あるもの全部。一切合切。ことごとく。 @有(あ)

るかしるかぬ物(むん)。/一切合切の物。 @有(あ)るかしるか諸出(むるんじゃ)

ちゃん。/一切合切全部出した。

有銘(あるみ)⓪: (名) 有銘。 ※「あるめ」、国頭郡東村の地名。私は幼い時、一

週間ほど住んだことがあるだけだが、なぜか今でも時々思い出す。

有(あ)る物(むん)無(ね)え物(むん)⓪: (名) あるもの無いもの。あるもの

全部。一切合切。 @有(あ)る物(むん)無(ね)え物(むん)出(んじゃ)ち御

取(うとぅ)い持(む)ち為(しゅ)ん。/一切合切出しておもてなしする。 

洗(あれ)え髪(がみ)@: (名) 洗い髪。洗ったあとの結ってない髪。

洗(あれ)え髪(からじ)@: (名) 洗(あれ)え髪(がみ)と同じ。

洗(あれ)え代(げえ)い@: (名) 洗(あら)い代(げえ)い、と同じ。

洗(あれ)え仕口(しくち)@: (名) 洗濯。洗濯仕事。

洗(あれ)え着物(じん)@: 洗濯した着物。

洗(あれ)え物(むん)⓪: (名) 洗い物。洗濯物。 

粟(あわ)⓪: (名) 粟。 ※粟と栗の区別がつかない人が多いと思う。粟の音読み

は「ソウ」で、栗の音読みは、「リツ」である。宍粟(しそう)市。栗林(りつりん)

公園。

あわあわあ⓪: (名) あばばばば。口を手でたたきながら声を出す幼児の芸。

粟粒(あわつぃじ)⓪: (名) 粟粒。

慌(あわ)てぃい逸(ひゃあ)てぃい⓪: (副) 大急ぎでするさま。大あわてでする

さま。 @時間(じかん)ぬ有(あ)くとぅ慌(あわ)てぃい逸(ひゃあ)てぃい為

(っし)行(ん)じゃん。/時刻が決まっているので、大急ぎで行った。

慌(あわ)てぃ直(のお)り@: (副) @大急ぎでするさま。 @其(う)ぬ場所(ば

しょ)お慌(あわ)てぃ直(のお)り為(しょ)おたん。/その時は大急ぎだった。 

➁あわてふためくさま。

慌(あわ)てぃ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @急ぐ。 @慌(あわ)てぃてぃ為(せ)

  え。/急いでしろ。 ➁あわてる。

あわり・憐(あわ)り⓪: @(感)[文] あわれ。ああ。 @あわり此(ぬ)ぬ二人(た

い)や如何(いちゃ)が成(な)ゆら。[あはれこの二人や いきやがなゆら]あわれ、

このふたりはどうなることか。 ➁(名) あわれ。つらいこと。みじめさ。苦労。

憐(あわ)り為(しゅ)ん。/みじめになる。苦労する。 @憐(あわ)り尽(つぃ

く)しゅん。/あわれを極める。 @山原(やんばる)に行(い)きば憐(あわ)り

どぅや至極(しぐく)、見(み)る方(かた)や無(ね)らん海(うみ)とぅ山(やま)

とぅ。[山原に行けば あはれどや至極 見る方やないらぬ 海と山と]山原に行けば

どんなにつらいことか、海と山ばかりで、ながめるものとてない。 *おもろさうし

1013に、あはれ、とある。

餡(あん)⓪: 餡。菓子・餅などの中に包みこむもの。握り飯の中に入れるものなどを

もさす。

彼(あ)ん⓪: (副) @そう。 @彼(あ)ん遣侍(やいびい)ん。/そうです。 @ 

彼(あ)ねえ有遣侍(あやびら)ん。/そうではありません。 @彼(あ)んどぅや

る。/そうだ。しかり。 @彼(あ)んどぅんやれえ。/そうであるならば。それな

ら。 @彼(あ)んやいがちいなあ。/そうでありながら。それにもかかわらず。@

彼(あ)んや事(くとぅ)。/そうだから。だから。 @彼(あ)んやさ。/そうさ。

@彼(あ)んやてぃん。/それでも。けれども。 @彼(あ)んやらあ。/そうなら。

それなら。 @彼(あ)んやらはじ。/そうであろう。そうだろう。→彼(あ)んや

るはじ。/ともいう。 @彼(あ)んやらやあ。/そうだろうねえ。 @彼(あ)ん

やらわん。/そうだろうが。 @彼(あ)んやる如(ぐとお)ん。/そうらしい。 @

彼(あ)ねえやんむん。/そうは言うべきではない。そうは言わないもの。 @彼(あ)

ねえ為(さ)ん。/そうはしない。また、そうしてはいけない。よしなさい。 ➁あ

あ。あんなに。あのように。 @伊集(いじゅ)ぬ木(き)や豊(ゆ)かてぃ彼(あ)

ん清(ちゅ)らさ咲(さ)ちゅい、吾身(わみ)ん伊集(いじゅ)やとぅてぃ真白咲

(ましらさ)かな。[伊集の木やよかてあんきよらさ咲ちゆい 我身も伊集やとて真白

咲かな]伊集の木は栄えて、あのように真白に咲いているが、私も伊集となって真白

に咲きたい。 @彼(あ)ん言(い)ちゃい斯(か)ん言(い)ちゃい為(しゅ)ん。

/ああ言ったりこう言ったりする。言を左右する。 @彼(あ)ん思(うむ)たい斯

(か)ん思(うむ)たい。/ああ思ったりこう思ったり。 @彼(あ)んがやら斯(か)

んがやら。/ああだろうかこうだろうか。

有(あ)ん⓪: (自・不規則) @ある。有る。在る。否定は、無(ね)えん、または、

無(ね)えらん。有(あ)らん、は、也有(や)ん、の否定として用いる。 @銭(じ

ん)ぬ有(あ)ん。/金がある。 @家(やあ)ぬ有(あ)ん。/家がある。 @学

校(がっこお)ぬ有(あ)ん。/学校(授業)がある。 @怪我人(きがにん)ぬ有

(あ)ん。/被害者がある。[子供がある・妻があるなどにはふつう、有(あ)ん、を

用いず、居(う)ん、を用いる。] @有(あ)み、無(ね)えに。/あるか、ないか。

@有(あ)いがしゅら。/あるかしら。 @御胴(うんじょ)お煙草(たばく)ぬ有

(あ)みせえびいみ。/あなたはたばこがおありになりますか。 ➁補助動詞として、〜

してある。 @読(ゆ)でぃどぅ有(あ)る。/読んであるとも。→読(ゆ)でえん

[読んである]の強調形。 @誇(ふくら)しゃどぅ有(あ)ゆる。[文][ほこらし

やどあゆる]とてもうれしい。

彼(あ)ん言(い)い斯(か)ん言(い)い⓪: (副) ああ言いこお言い。言を左右

するさま。 @彼(あ)ん言(い)い斯(か)ん言(い)い為(しゅ)ん。/言を左

右する。

彼(あ)ん思(うみ)い斯(か)ん思(うみ)い⓪: (副) ああ思いこう思い。思い

迷うさま。 @彼(あ)ん思(うみ)い斯(か)ん思(うみ)い為(しゅ)ん。/※

動詞化。

安閑坊主(あんかんぼおじ)@: (名) 髪を剃った頭。坊主頭。

姉小(あんぐぁあ)⓪: (名) @姉。ねえさん。平民についていう。 ➁ねえさん。

娘さん。娘。平民の若い娘をいう。

姉小舞(あんぐぁあもお)い⓪: (名) 踊りの一種。平民の女の服装でする踊り。浜

千鳥節はその一つ。女踊(うぃなぐうどぅ)い、に対する。

案外(あんぐぇえ)@: (名) 案外。 @案外(あんぐぇえ)な。/案外な。

胡坐居(あんぐぇえい)い⓪: (名) あぐら。あぐらをかいてすわること。 @胡坐

居(あんぐぇえい)い為(しゅ)ん。/あぐらをかく。平(ふぃら)く居(い)ゆん、

ともいう。

胡坐取(あんぐぇえどぅ)い⓪: (名) 胡坐居(あんぐぇえい)い、と同じ。

彼(あ)ん如(ぐとぅ)⓪: (副) あのように。あんなに。

彼(あ)ん如(ぐとお)る⓪: (連体) あのような。あんな。

鮟鱇猫(あんこおまやあ)@: (名) 目を光らした、すごい猫。怪猫。

彼(あ)ん為(さ)わん斯(か)ん為(さ)わん⓪: (副) ああかこうか。何とか。 

@彼(あ)ん為(さ)わん斯(か)ん為(さ)わん為見(っしんん)じゅさ。/何と

かしてみるよ。

彼(あ)んし⓪: @(副) そんなに。それほど。また、微妙な感動の意を表して用い

る。なんと。あとを連体形で結ぶのが普通である。 @彼(あ)んし清(ちゅ)らさ

る。/なんてきれいだろう。 @彼(あ)んし怯(ふぃる)ましゃる。/なんて不思

議だろう。 @彼(あ)んし胴安(どぅうやっさ)がやあ。/そんなにやさしいのか。

➁(接続) そうして。そして。それから。 @彼(あ)んし如何為(ちゃあしゅ)

が。/そしてどうするか。

按司(あんじ)@: (名) [按司]。按司(あじ)と同じ。

姉末(あんしい)⓪: (名) おかみさん。平民の主婦に対する敬称。 @ええ、姉末

(あんしい)。/もし、おかみさん。

彼(あ)ん為(し)い斯(か)ん為(し)い⓪: (副) ああしたりこうしたり。 @

彼(あ)ん為(し)い斯(か)ん為(し)い為(しゅ)ん。/※動詞化。

焙(あ)んじ紙(かび)⓪: (名) 彼岸その他の祭祀の時、祖先を祭るために燃やす、

銭型を打った紙。紙銭。この紙を燃やす彼岸の行事は、御紙(んちゃび)、紙焙(かみ

あんじ)い、などという。

姉末前(あんしいめえ)⓪: (名) おかみさん。平民の主婦に対する敬称。 @此処 

(くま)ぬ姉末前(あんしいめえ)や御肝清(うじむじゅ)らさぬ。/ここのおかみ

さんはお恵み深くて、、、[七月(しちぐぁつぃ)えいさあ、の時の歌の文句]。

彼(あ)ん為(し)た事(くとぅ)⓪: (名) そうしたこと。そんなこと。

彼(あ)ん為(し)たり⓪: (名) 首里三平等(しゅいみふぃら)に一人ずつ、計三

人いる、神に使える女。聞得大君(ちふぃじん)に属し、この三人が実際は全国の告

(ぬう)る[のろ]を支配した。

姉為(あんし)たれえ⓪: (名) @[文] やや身分のよい平民の主婦に対する敬称。

口語は、姉末(あんしい)。 ➁御殿(うどぅん)[御殿]などに使われている、やや

身分のある平民の主婦の敬称。おかみさん。

姉(あん)したん前(めえ)⓪: (名) 士族の妾(平民)が老女となったときの称。

  士族の妾と遊女とは、身分は平民を決められていた。

編(あ)ん笠(じゃさ)⓪: (名) 編み笠。農民の用いるもの・乗馬用のもの・踊り

  の時のものなどがある。

彼(あ)んしゅか⓪: (副) それほど。さほど。さして。あとへ否定的表現が続く。 

@彼(あ)んしゅか清(ちゅ)らこお無(ね)えん。/それほど美しくはない。

彼(あ)んしゅかわあき⓪: (副) それほどまでも。あとへ否定的表現が続く。 @

彼(あ)んしゅかわあき遣(や)てぃん済(すぃ)めえさに。/それほどまで言わな

くてもいいではないか。

彼(あ)ん為(しゅ)ん⓪: (自 不規則) (彼(あ)ん 為(しゅ)ん、のつまっ

た形) そうする。 @「大人成(うふっちゅな)らあ阿蘭陀(うらんだ)かい行(い)

ちゅん。」「早(ふぇえ)く彼(あ)ん為(せ)え。」/「大人になったら西洋へ行く。」

「早くそうしろ。」 @彼(あ)ん為(すぃ)み候侍(せえびれ)え。/そうなさいま

せ。 @彼(あ)ん為(っし)。/そして。それから。 @彼(あ)ん為(せ)え。/

そうしたら。 @「銭(じん)ぬ無(ね)えん成(な)たん。」「彼(あ)ん為(せ)

え如何為(ちゃあしゅ)が。/「金がなくなった。」「それじゃあどうするか。」 @彼

(あ)ん為(せ)え成(な)らん。/そうしてはいけない。 @彼(あ)んし成(な)

ゆる物(むぬ)い。/そんなことをしてできるものか。 @彼(あ)ん為(せ)え有

(あ)らん。/そうするものではない。そんな法はない。 @彼(あ)ん為(しゅ)

らあ。/それなら。そしたら。 @彼(あ)ん為(しゅ)らあ彼(あ)ん為(せ)え。 

/そんならそうしろ。 @彼(あ)ん為(しゅ)る物(むん)ぬ。/それなのに。そ

うなのに。 @「酒飲(さきぬ)みいねえ頭(つぃぶる)ぬ痛(や)ぬん。」「彼(あ)

ん為(しゅ)る物(むん)ぬ飲(ぬ)ぬみ。/「酒を飲むと頭が痛い。」「それなのに

飲むのか。」 @彼(あ)ん為(しょお)けえ。/そうしとけ。 @彼(あ)ん為(し

ょお)る内(うち)に。/そうしているうちに。そのうちに。 @彼(あ)ん為(し

ゅ)くとぅ。/それだから。だから。 @「明日(あちゃ)行(い)ちゅみ。」「彼(あ)

ん為(さ)わん為(しゅ)さ。」/「あした行くか。」「そうするかもしれない。」 @

彼(あ)ん為(しゃ)んてえまん。/そうしても。それでも。 @「鼻揉(はなみみ

み)げえ。」「彼(あ)ん為(しゃ)んてえまん起(う)きらん。」/「鼻をつまめ。」「そ

れでも起きない。」 彼(あ)ん為(しゃ)んてえん、彼(あ)ん為(しゃ)んてえま

ん、と同じ。 @彼(あ)ん為(し)。/そうして。 @彼(あ)ん為呉(しくぃ)り。

/そうしてくれ。

焙(あん)⁼じゅん⓪: (他 ⁼だん、⁼てぃ) あぶる。火にかざす。また、焼く。焙(あ

ぶ)ゆん、ともいう。 @手焙(てぃいあん)じゅん。/手をあぶる。 @紙焙(か

びあん)じゅん。/紙を焼く。

彼(あ)ん知(し)らり⓪: (名)[古] [あもしられ] @彼(あ)ん為(し)たり、

  と同じ。 ➁彼(あ)ん為(し)たれえ、と同じ。

彼(あ)ん為(し)ん斯(か)ん為(し)ん⓪: (副) ああしてもこうしても。どう

  したところで。

油(あんだ)⓪: (名) 油。脂。 @油戻(あんだむどぅ)しゅん。→揚げ物をする

場合、においを消し温度を調整するために、あらかじめ何か別なものを揚げる。 *

混効験集:坤巻・言語に、あむた、とある。

安駄(あんだ)⓪: (名)[安駄] 駕籠(かぐ)[駕籠]の敬語。普通は、さらにその

上の敬語、御安駄(うなあんだ)、を用いる。駕籠(かぐ)の項参照。

油揚(あんだあぎ)い⓪: (名) 菓子の一種。揚げ菓子。麦粉を水でこね、油で揚げ

たもの。小判揚(くばんあぎ)い、ともいう。砂糖のはいったものは、砂糖油揚(さ

あたああんだあぎ)い、という。

脂渇(あんだがあ)き⓪: (名) 久しく肉食をしないこと。⁼があき<渇(かあ)きゆ

  ん。

油甕(あんだがあみ)⓪: (名) 油がめ。食用油を入れるかめ。髪油は油壷(あんだ

  つぃぶ)に入れる。

油糟(あんだかし)⓪: (名) 豚の脂をしぼって取ったかす。食用となる。

油口(あんだぐち)⓪: お世辞のうまいこと。油を塗ったようななめらかな甘言。油口。

@油口垂(あんだぐちた)ら垂(た)ら為(しゅ)ん。/おべんちゃらをたらたら言

う。 ※油口(あぶらぐち)は共通語である。

脂強(あんだじゅう)さん⓪: (形) 脂っこい。

溢(あんだ)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 溢れさせる。

油抱(あんだつぁ)あ⓪: (名) とかげ。

油壷(あんだつぃぶ)⓪: (名) 油つぼ。頭髪用の油を入れるつぼ。

油徳利(あんだどぅっくい)⓪: (名) 油用の徳利。

油鍋(あんだなあび)⓪: (名) 揚げものをするために、油を煮えたぎらせてある鍋。

脂太太(あんだぶとぅぶとぅ)⓪: @(副) 脂っこいさま。 @油太太(あんだぶと

ぅぶとぅ)っし噛(か)まらん。/脂っこくて食べられない。 ➁(名) 豚などの

脂身。

脂回(あんだまあ)⁼ゆん⓪:  (自 ⁼らん、⁼てぃ) 脂ぎる。人・食べ物などに、脂

  が多く行き渡る。

油餅(あんだむち)⓪: (名) 祭祀用の菓子の名。麦粉を薄くのべ、油でこねたもの。

車輪(ひゃあがあ)という菓子といっしょに供える。食用とはしない。

油餅車輪(あんだむちひゃあがあ)⓪: (名) 油餅(あんだむち)と車輪(ひゃあが

  あ)。ともに祭祀用の菓子で、法事などにいっしょに供える。

油屋(あんだやあ)⓪: (名) 油屋。

油味噌(あんだんす)⓪: (名) 味噌を油いためしたもの。味噌の中には肉などを入

れる。茶うけにしたり、握り飯の中に入れたりする。また、湯にとけば、そのまま味

噌汁になるので、旅行用の味噌として用いる。 *混効験集:坤巻・言語に、あんた

むす、とあるが、これはたぶん、油味噌のことではないかと思う。混効験集では、こ

のような日常語を、さも仰々しいことばのように説明した箇所が多分に見られる気が

する。

彼(あ)ん程(ちぇえ)ん⓪: (名) そのくらい。そればっかり。それっぽっち。彼

(あ)ん程(てえ)ん、ともいう。 @彼(あ)ん程(ちぇえ)んぬ事(くとぅ)に

ん苦騒(くさみ)ちゅみ。/そればっかりのことにも怒るのか。

彼(あ)ん程(ちぇえ)ん小(ぐぁあ)⓪: (名) そればっかり。それっぽっち。 @

彼(あ)ん程(ちぇえ)ん小痛(ぐぁあや)まん。/それっぽっち痛くない。

重曹(あんちょお)@: (名) 重曹。油揚(あんだあぎい)い、を作る時、ふくらま

  すために使う。

彼(あ)んてぃ事(くとぅ)@: (名) そういうこと。 @彼(あ)んてぃ事(くと

ぅ)ぬ有(あ)み。/そういうことがあるか。 @彼(あ)んてぃ事(くとぅ)ぬ物

言(むぬい)い様(よお)ぬ有(あ)み。/そんな口のきき方があるか。

溢(あんでぃ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 溢れる。 

あんでえ⓪: (感) あれ。おや。ほら。 @あんでえ、鷹(たか)、鷹(たか)、沢岻

(たくし)ぬ後(くし)から見(みい)ゆんどお。/あれ、鷹が沢岻村の後ろの方に

見えるぞ(童謡の文句)。 @あんでえ、此(く)に人(ひゃあ)。/おやこいつ。 ※

鷹と沢岻は頭韻のようである。

彼(あ)ん程(てえ)ん⓪: (名) 彼(あ)ん程(ちぇえ)ん、と同じ。

安仁屋(あんな)⓪: (名) 安仁屋。 ※「あにや」、宜野湾市の地名。アメリカ統治

下の沖縄初のプロ野球選手に安仁屋宗八(あにやそうはち)がいる。

彼(あ)んな⓪: (連体) あんな。 @彼(あ)んな書物(しゅむつぃ)。/あんな本。

彼(あ)ん成(な)い斯(か)ん成(な)い⓪: (副) ああなったりこうなったり。

ああやったりこうやったり。決まったことをしないさま。 @彼(あ)ん成(な)い

斯(か)ん成(な)い為(しゅ)ん。/※動詞化。

彼(あ)ん長(なげ)え⓪: (名) あの長さの時間。また、あんなに長い間。時間に

ついていう。 @彼(あ)ん長(なげ)え待(ま)たち。/あんなに長く待たして。 

@彼(あ)ん長(なげ)えぬ苦(くる)しみ。/あんなに長い間の苦しみ。

網(あん)ぬ目(みい)⓪: (名) あじろの目の粗いもの。垣根・茅ぶき小屋の壁な

  どに用いる。目のつまったものは、気伸(ちに)ぶ、という。

案内(あんねえ)⓪: (名) 案内。 @案内為(あんねえしゅ)ん。/※動詞化。

彼(あ)んねえたる⓪: (連体) そんな。そのような。悪い意味に用いる。 @彼(あ)

  んねえたる人間(にんじん)。/そんな(悪い)人間。

案内無(あんねえな)しく⓪: (副) 何のあいさつもなく。断りもなく。案内無(あ

んねえな)しに、ともいう。 @案内無(あんねえな)しく人(っちゅ)ぬ家(やあ)

んかい入(い)っち来(ちゅう)ん。/断りもなく人の家にはいって来る。

案内無(あんねえな)しに⓪: (副) 案内無(あんねえな)しく、と同じ。

彼(あ)んねえらわん⓪: (副) 彼(あ)ねらわん、の口語的発音。

彼(あ)んねえる⓪: (連体) そんな。そのような。多く悪い意味に用いる。彼(あ)

んねえたる、ともいう。 @彼(あ)んねえる物捨(むんすぃ)てぃり。/そんなも

の捨てろ。 

安瓶(あんびん)⓪: (名) 水差し。やかんの形をした大きな陶器。 ※これは中国

  語起源の言葉かもしれない。

塩梅(あんべえ)⓪: (名)按配。加減。調子。ぐあい。味・気分・病状などについて

いう。天気についてはいわない。敬語は、御按配(うぁあんべえ)。 @塩梅(あんべ

え)や如何(ちゃあ)が。/ぐあいはどうか。 @塩梅為(あんべえしゅ)ん。/按

配する。加減する。調節する。

按摩(あんま)⓪: (名)[新] 元来は、胴揉(どぅうみみ)じ、などという。按摩。

  また按摩を業とする者。

あんまあ⓪: (名) @母。おかあさん。おっかさん。平民についていう。士族の母は、

あやあ。 ➁娼家の場合は、抱え主である女[尾類(ずり)あんまあ]をいう。やり

てばば。 ※遣手婆(やりてばば)は、妓楼で遊女を取り締り、万事を切り回す女。

あんまあ追(うう)やあ⓪: (名) 母親のあとばかりを追いかける子。いくじなしの

子。平民についていう。士族については、あやあ追(うう)やあ、という。 ※私の

語感では、この言葉は男の子に対して使う言葉のようである。

彼(あ)ん曲(ま)がい斯(か)ん曲(ま)がい⓪: (副) ああ曲がったりこう曲が

ったり。曲がりくねったさま。 @彼(あ)ん曲(ま)がい斯(か)ん曲(ま)がい

為(しょお)ん。/曲がりくねっている。

腕白(あんまく)⓪: (名) @腕白。きかん坊。乱暴者。奴(まく)の項参照。 ➁

  やどかりの大きいもの。

余(あんま)し物(むん)⓪: (名) 頭をなやます事。頭痛の種。やっかいなこと。

おっくうな、やりたくない事。 @通(とお)いぬ無(な)あさあ後(あとぅ)ぬ余

(あんま)し物(むん)。/当座に安易にしておくとあとがめんどうなことになる。 @

只(いちゃん)だ活計後(ぐぁっちいあとぅ)ぬ余(あんま)し物(むん)。/ただで

ごちそうになると、あとがやっかい。

余(あんま)しゃ擡(ぶちげ)え⓪: (名) 気分が悪いこと。気分がすぐれないこと。

余(あんま)しゃん⓪: (形) @気分が悪い。頭が重い。 @余(あんま)しゃ為(し

ゅ)ん。/気分が悪くなる。また、卒倒する。気絶する。気を失う。 ➁頭をなやま

す。やっかいである。面倒である。 @余(あんま)しい事(くとぅ)。/面倒なこと。

余(あんま)でぃ⓪: (名) あんまり。余(あんま)り、ともいう。 @余(あんま)

でえ有(あ)らに。/あんまり(ひどい)ではないか。 @余(あんま)でぃ難儀(な

んぜ)え有(あ)らん。/さまで苦労ではない。

按摩取(あんまとぅ)い⓪: (名)[新] 按摩とり。按摩を業とする者。

あんまよお@: (感) あれまあ。あれっ。びっくりした時、つまづいた時などに、女・

子供などが発する語。「おかあさん」の意か。

余(あんま)り⓪: (副) 余(あんま)でぃ、のやや文語的発音。

餡飯(あんみし)⓪: (名) 中に餡(あん)を入れた握り飯。餡(あん)には、油味

噌(あんだんす)[その項参照]などを用いる。

餡餅(あんむち)⓪: (名) 餡餅。中に餡を入れた餅。

姉前(あんめえ)⓪: (名) 乳母。母に代わって幼時に乳を飲ませる女。乳姉前(ち

いあんめえ)または、乳姉(ちいあん)ともいう。

安楽(あんらく)@: (名) 安楽。 @安楽(あんらく)な暮(く)らし。/安楽な

  暮らし。 ※見出し語、例文ともに共通語である。