表紙 前文

 

 ?あ ?い 'い ?う 'う ?え 'え ?お 'お                             ?め   ?や  ?ゆ  ?よ       ?わ  ?ゐ  ?ゑ  ?ん  

 

 「な」のトップで発音が時間とともに変化することについて述べたが、意味が変化する場合もある。名詞に関してはあまり変化することはないが、共通語の有名な例では、平安時代に「キリギリス」と呼ばれた虫は現在の「コオロギ」である。こんにちでも、「コオロギ」のことを「キリギリス」と呼ぶ地方があるらしい。名詞以外で意味が変化することはしばしばで、平安時代の「あからさま」は、「きわめて短い時間」という意味であり、徒然草でもそのような意味である。学校での古文の勉強がむずかしいのはそのためでもある。同僚のK・Iは、若いけれども「あからさま」のような古風な言葉を時々使うことがあり、この言葉は今も生きているようである。意味は時間だけではなく空間つまり場所によっても変化するようである。沖縄語の「なんとぅう」は、本土の「納豆」とはかなり違ったもののようである。「なつぃかしゃん(なちかさん)」は、「悲しい」という意味である。共通語の昔の意味が沖縄語では変化せずに残った例として「かなしゃん(かなさん)」がある。これは、万葉集に出てくる「かなし」とほとんど全く同じ意味である。万葉集・4106、「父母乎 見波多布刀久 妻子見波 可奈之」・「父母を見れば尊く、妻子(めこ)みれば愛(かな)し」、「父母を見れば尊く、妻や子を見ればいとしく可愛い」(岩波書店:日本古典文學大系・萬葉集四)。発音だけではなく意味も変化するということが、言葉のとても興味深い現象である。単語だけではなく「文」そのものの意味も変化することがある。たとえば、ことわざの「犬も歩けば棒に当たる。」は、「犬がおもてを歩いていると棒でなぐられる。」つまり災難に会うという意味に解釈する人がほとんどのようであるが、これはもともとは全く逆の意味で、幸運に出会うという意味であるようだ。「情けは人の為ならず。」は、「情けは人のためにならない。」と解釈する人がやがて大勢を占める時が来るはずである。私的な例であるが、コンビニに行っておにぎりを買おうとすると「あたためましょうか」と聞かれる。昔のコンビニにはそのようなマニュアル自体がなかったようである。さてあたためなくてもいい場合、皆さんは何と返事をするであろうか。私が「いいです。」と返事すると、店員はおにぎりをチーン。これは私の言い方が間違っているのかと次回は「よろしいです。」と返事するとやはりチーン。次々回は「結構です。」と返事してもやはりチーン。文の意味自体が変化しようとしているのである。会社の先輩のK・Oにこのような場合何と返事をするかと聞いてみると、「大丈夫です。」と答えるとのこと。なるほどそのような言い方もあるのかと感心したが、よく考えるとこれも将来どうなることか。C・Oに聞くと「あたためないの」と言われてしまった。これは言葉の変化であると同時に食文化の変化でもあるようだ。昭和以前にあたたかいおにぎりを食べた人がいたであろうか。さて、これからは、「いいえ、結構です。」とはっきり「いいえ」をつけたほうがよく、日本語は西洋の言語に近づいているような気がする。

 

   ぬ

 

‐ぬ: (助詞) @の。属格を示す。 @人(っちゅ)ぬ物(むん)。/人の物。 @桃

(むむ)ぬ花(はな)。/桃の花。 @首里(しゅい)ぬ観音堂(くぁんぬんどお)。

/首里の観音堂。 @山(やま)ぬ上(ぅうぃい)。/山の上。 @花(はな)ぬ童(わ

らび)。/花の(ような)子供。ただし、人名や一部の人代名詞、何(ぬう)などの場

合は、ふつうたとえば、太郎(たるう)書物(しゅむつぃ)[太郎の本]、誰(たあ)

物(むん)[だれのもの]、汝達(いったあ)親(うや)[おまえたちの親]、何(ぬう)

仕事(しぐとぅ)[何の仕事]などのようにいう。 ➁が。の。主格を示す。ただし、

人名や一部の人代名詞などの主格はふつう、‐ぬ、を用いずに、‐が、によって示す。

‐が、の項参照。また、‐ぬ、のあとには、‐や、‐ん、‐どぅ、などの助詞が付く

ことができる。 @太陽(てぃいだ)ぬ上(あ)がゆん。/太陽が昇る。 @鳥(と

ぅい)ぬ鳴(な)ちゅん。/鳥が鳴く。 @彼処(あま)ぬ参候而居(めんしょおち

ょお)ん。/あのかたがいらしている。 @水(みずぃ)ぬ飲(ぬ)み欲(ぶ)しゃ

ん。/水が飲みたい。[水(みずぃ)飲(ぬ)み欲(ぶ)しゃん、の「水」をとりたて

て強調したもの]。 @盗人(ぬすどぅ)ぬ為欲(しいぶ)しこお無(ねえ)んくとぅ

貧相(ふぃんすう)為居(しょお)ん。/泥棒がしたくないので貧乏している。 @

彼処(あま)のお参候(めんせえ)さ。/あのかたならいらっしゃるよ。 @夫婦(み

いとぅ)ん達(だ)喧嘩(おおええ)や犬(いん)ぬん喰(くぁあ)ん。/夫婦喧嘩

は犬(でさえ)も食わぬ。 @後(しり)引(ふぃ)ち前(めえ)引(ふぃ)ち為(っ

し)思(うむ)いぬどぅ有(あ)ええさに。/身辺をうろうろして、気でもあるのか

しら。

‐ぬ: (接尾) 〜なので。〜くて。形容詞の「終止形(現在)」から末尾の、ん、を除

いた形につく。 @忙(いちゅな)さぬ行(い)ち良(ゆう)為(さ)ん。/忙しく

て行けない。 @読(ゆ)み欲(ぶ)しゃぬ。/読みたくて。読みたいなあ。

糊(ぬい)⓪: (名) 糊。物を貼るもの、また、洗濯した布につけるもの。 *混効

験集:坤巻・言語に、のり、とある。 ※おもろさうし・1193には、のり、とあ

り、海草の海苔のことである。

塗(ぬ)い物(むん)⓪: (名) 塗りもの。漆器。

乗(ぬ)い物(むん)@: (名) 乗りもの。

塗(ぬ)い物屋(むんやあ)⓪: (名) 塗りもの屋。漆器商。

‐ぬ出(ぃん)じてぃ⓪: (句) 〜のくせに。〜でありながら。‐ぃんじてぃ<出(ぃ

ん)じゆん[出る]。出(ぃん)じ而居(とお)てぃ、ともいう。 @童(わらび)ぬ

出(ぃん)じてぃ酒(さき)飲(ぬ)でぃ。/子供のくせに酒を飲んで。 

‐ぬ出(ぃん)じ而居(とお)てぃ⓪: (句) 〜のくせに。〜でありながら。‐ぬ出

(ぃん)じてぃ、ともいう。 @良年(ゆちゃ)ぬ者(むん)ぬ出(ぃん)じ而居(と

お)てぃ。/いい年をしながら。

乗(ぬ)い馬(んま)@: (名) 乗用の馬。

野(ぬう)⓪: (名) 広々としていること。広さ。屋外について、また人の心などに

ついていう。「野」に対応する語か。 @彼処(あま)りかあや野(ぬう)ぬ有(あ)

ん。/あの辺は広々としている。 @野(ぬう)ぬ無(ねえ)ん。/狭い。 ※万葉

集・3978の長歌に「あしひきの山越え野(ぬ)行き天離(あまざか)る」とある。

何(ぬう)⓪: (名) 何。 @何(ぬう)ぬ有(あ)が。/何があるか。 @何(ぬ

う)やが。/何か。 @何(ぬう)隔(ふぃだ)てぃぬ有(あ)が。/何のへだてが

あるか。 @何(ぬう)思(うみ)いん無(ねえ)ん。/何の心配もない。無邪気な。 

@何(ぬう)が。/何か。 @何(ぬう)が何(ぬう)やら分(わ)からん。/何が

何だかわからない。 @何(ぬう)が何(ぬう)やが、物(むの)お旨(まあ)さみ。

/一体どうした、飯はうまいか。 @何(ぬう)から何(ぬう)までぃ。/何から何

まで。 @何(ぬう)が有(や)ら。/どうしたのか。どうしたわけか。 @今日(ち

ゅう)や何(ぬ)がやら面影(うむかぢ)ぬ面影(うむかぢ)ぬ目(み)ぬ上(う)

に下(さ)が而居(と)てぃ暮(く)らさらん〜[かまやしな節]きょうはどうした

ことか、面影が、面影が目の前にちらついて、じっとしていられない。 @何(ぬう)

がんでぃ言(ぃえ)え。/何となれば。なぜなら。何(ぬう)がどぅん有(や)れえ、

ともいう。 @何(ぬう)為(しゅ)が。/イ・何するか。何をしているか。ロ・何

になるか。何の役に立つか。 @汝(ぃやあ)や何(ぬう)為(しゅ)が。/おまえ

は何をしているか。 @彼(あ)ん成(ねえ)る物(むん)何(ぬう)為(しゅ)が。

/そんな物何になるか。 @何(ぬう)とぅん。/何とも。 @何(ぬう)とぅん嫌

(き)らん。/何ともかちあわない。 @何(ぬう)とぅん障(さあ)らん。/何と

もさしさわりがない。 @何(ぬう)どぅんでぃん言(ぃや)ららん。/何とも言え

ない。ことばで表せない。 @何(ぬう)ぬ。/何の。何が。 @何(ぬう)ぬ可笑

(うか)しゃが。/何がおかしいか(反語)。 @何(ぬう)ぬ間(みい)に。/いつ

の間に。 @何(ぬう)ぬ間(みい)に来居(ちょお)たが。/いつの間に来ていた

か。 @何(ぬう)やかん。/何よりも。何(ぬう)ゆかん、ともいう。 @何(ぬ

う)やかん好(ま)し。/何よりもよい。 @何(ぬう)有(や)てぃん。/何でも。 

@何(ぬう)有(や)てぃん喰(か)ぬすぃが有(あ)み。/何でもいいから食うも

のがあるか。 @何(ぬう)ん無(ねえ)ん。/何もない。 @何(ぬう)んち言(い)

ちゃる事(くとぅ)が。/何ということだ。何たることだ。 @何(ぬう)んでぃち。

/なぜ。 @何(ぬう)でぃちぇえ無(ねえ)ん。/何ということはない。何という

理由はない。

何(ぬう)言(い)ちん此(くぃい)言(い)ちん⓪: (副) 何のかのと言っても。 

@何(ぬう)言(い)ちん此(くぃい)言(い)ちん仕方(しかた)あ無(ねえ)ん。

/何のかのと言っても仕方がない。

何(ぬう)がな@: (名) 何か。 @何(ぬう)がな有(あ)ええさに。/何かあり

はしないか。

何此(ぬうくぃい)⓪: (名) 何やかや。何のかの。 @何此(ぬうくぃい)んでぃ

  言(い)ちん。/何のかのと言っても。

布口(ぬうぐち)⓪: (名) 布の織り始め。

何事(ぬうぐとぅ)⓪: (名) 何事。 @何事(ぬうぐとぅ)が。/何事か。

美御香筋(ぬうこおすぃじ)⓪: (名)[文] [美御小筋]細い線香のことか。御願(う

ぐぁん)[祈願]、の文句などでいう語。

何(ぬう)錆(さび)ん⓪無(ねえ)ん⓪: (句) 何のさしさわりもない。いっこう

さしつかえない。 @何処(まあ)から歩(あっ)ちん何(ぬう)錆(さび)ん無(ね

え)ん。/どんな所へ出ても、いっこうさしさわりない。

美御草履(ぬうざれえ)@: (名 御草履。草履(さば)、の敬語。御草履(うざれえ)、

  をさらに敬っていった語。美御草履(みゅうざれえ)、ともいう。

何(ぬう)為(さ)わん⓪: (副) どうしても。何をやっても。

主(ぬうし)⓪: (名) ぬし。あるじ。主人。持ち主。

虹(ぬうじ)@: (名) 虹。

何(ぬう)為(しゃ)る⓪: (連体) 何ほどの。何の。何する。たいしたことはない。 

@彼(あ)れえ何(ぬう)為(しゃ)る者(ぬむ)が。/あいつ、何ほどのものか。 

@良(い)い正月(しょおぐぁつぃ)やあ、女郎小(ずりぐぁあ)、何(ぬ)為(しゃ)

る良(い)い正月(しょおぐぁつぃ)が、年切(とぅしぢ)りや里前(さとぅめ)。「い

い正月だねえ、女郎さん。」「何がいい正月なものですか。お歳暮はどうしました。だ

んなさん。」 @刀刃(かたなば)に障(さわ)る者(むぬ)や何(ぬ)為(しゃ)る

者(むぬ)が。[刀ばにさはる者や のしやる者が(手水之縁)]刀のさまたげをする

者は何するものか。 ※手水之縁(てみずのえん)は、平敷屋朝敏(へしきやちょう

びん)作の組踊である。

何(ぬう)為(しゃ)ん此(くぃい)為(しゃ)ん⓪: (副) 何のかの。 @何(ぬ

う)為(しゃ)ん此(くぃい)為(しゃ)んでぃ言(い)ちゃんてえまん仕方(しか

た)あ無(ねえ)ん。/何のかのと言ったところでしかたがない。

美御筋(ぬうすぃじ)@: (名)[文] [美御せじ]神様。神の敬称。

又従兄弟子(ぬうちゅく)⓪: (名) 互いの曾祖父母が兄弟姉妹である間柄(の者)。

又従兄弟(またいとこ)、の子同志。

喉(ぬうでぃい)⓪: (名) のど。咽喉。

喉豚小(ぬうでぃいぅわあぐぁあ)⓪: (名) のどちんこ。のどびこ。懸壅垂。 ※  

懸壅垂(けんようすい)は、口蓋垂(こうがいすい)と同じ。口蓋垂がどのような働

きをするのかについては諸説がある。言語学的には、発音の補助の役目があるらしい。

よけいなことであるが、共通語の「ちんこ」は陰茎の幼児語であるが、もともとは、

小(ち)ん子(こ)、であるらしい。

喉瘤(ぬうでぃいぐうふ)⓪: (名) のどぼとけ。甲状軟骨の突起。

喉蔓(ぬうでぃいづぃる)⓪: (名) 声帯。 @喉蔓(ぬうでぃいづぃる)ぬ引(ふ

ぃ)っ切(ち)りいる尺(しゃく)喚(あ)びゆん。/声帯がちぎれるほど叫ぶ。

何(ぬう)てぃ事(くとぅ)⓪: (名) 何ということ。 @何(ぬう)てぃ事(くと)

お無(ねえ)ん。/何と限ったことはない。何もかも。 @何(ぬう)てぃ事(くと

ぅ)ん無(ねえ)ん。/何という返事もない。

何(ぬう)でぃん⓪: (副) 何でも。何でもいいから。 @何(ぬう)でぃん持(む)

っち来(くう)わ。/何でもいいから持って来い。

何(ぬう)とぅんが成(なあ)し⓪: (副) 何かの拍子に。ふとしたはずみに。ひょ

っと。 @何(ぬう)とぅんが成(なあ)し思(う)び出(ぃん)じゃしゅん。/何

かの拍子に思い出す。

何(ぬう)とぅん此(くぃい)とぅん⓪: (副) 何ともかとも。何とでも。 @何(ぬ

  う)とぅん此(くぃい)とぅん言(ぃや)りゆん。/何とでも言える。

何(ぬう)どお⓪此(くぃい)どお⓪: (句) 何だかだ。 @何(ぬう)どお此(く

ぃい)どおんでぃ言(ぃゆ)る場(ばあ)や親戚(ぅうぇえか)ぬ多(うほお)く居

(うぅ)せえ好(ま)し。/何かいう場合には親戚が多くいるのがよい。

何々(ぬうぬう)⓪: (名) 何々。何と何。 @何々(ぬうぬう)買(こお)ゆが。

  /何々を買うか。

何(ぬう)ぬ此(くぃい)ぬ⓪: (句) 何のかの。 @何(ぬう)ぬ此(くぃい)ぬ

  んでぃ言(い)ち来(くう)んたん。/何のかのと言って来なかった。

伸(ぬう)び⓪: (名) 伸び。疲れた時などに、手足を伸ばすこと。

饒波(ぬうふぁ)⓪: (名) 饒波。ぬふぁ、にふぁ、ともいう。 ※「ぬうは」、国頭

  郡大宜味村の地名。辺土名高校がある。饒波(のは)は豊見城市の地名である。

玄米(ぬうめえ)⓪: (名) 玄米。

美御前愛(ぬうめえがな)し@: (名) [美御前加那志]国王に対する呼び名。御主

愛(うしゅがな)しい前(めえ)、ともいう。

何(ぬう)やあ此(くぃい)やあ⓪: (名) 何やかや。 @何(ぬう)やあ此(くぃ

  い)やあ買(こお)い揃(すら)あ為(しゅ)ん。/何やかや買い集める。

何(ぬう)やてぃん此(くぃい)やてぃん⓪: (副) どうあろうと。ともあれ。

滑(ぬう)ら粘(くぁあ)ら⓪: (副) ぬらぬら。べとべと。汚物が所かまわずある

さま。 @泥(どぅる)さあい手足(てぃいふぃしゃ)滑(ぬう)ら粘(くぁあ)ら

為居(しょお)ん。/泥で手足がべとべとだ。 @洟垂(はなだ)いぬ滑(ぬう)ら

粘(くぁあ)ら為居(しょお)ん。/鼻みずをべとべとにたらしている。

苔(ぬうり)⓪: (名) こけ。 @苔(ぬうり)這(ほお)ゆん。/こけが生えひろ

がる。ほおゆん、は這う。

宣(ぬう)る⓪: (名) 沖縄固有の宗教の、いわゆる、のろ。祝女。みこ。神に奉仕

する女。数部落の宗教的代表者で、部落ごとの神官である、根神(にがみ)、一門ごと

の神官である、御口手(うくでぃ)、は宣(ぬう)る、に属し、宣(ぬう)る、自身は、

国家の宗教的元首である、聞得大君(ちふぃぢん)[きこえ大君]に属する。 ※「の

ろ」は、おもろさうしの頻出語である。

見(ぬう)ん⓪: (他・不規則) 見(んん)じゅん、と同じ。

縫(ぬう)ん@: (名) 織機の筬(おさ)の種類の名。十三よみ。経糸1040本を

通す。また、それで織った布。解(ふどぅ)ち、の項参照。

何(ぬう)ん此(くぃい)ん⓪: (副) 何もかも。すっかり。 @何(ぬう)ん此(く

  ぃい)ん似而居(にちょお)ん。/何もかも似ている。

糠(ぬか)⓪: (名) 糠(ぬか)。

逃(ぬがあ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) のがれる。免かれる。 @逃(ぬがあ)

らしゅん。/解放する。放免する。のがしてやる。許してやる。

糠子(ぬかぐ)⓪: (名) 虫の名。米・糠などの中に生じる、黄色のきわめて小さい

虫。 @糠子(ぬかぐ)ぬ如(ぐとお)ん。/「ヌカグ」のようだ。非常に小さい物

をたとえていう。けしつぶのようだ。 *おもろさうし・987に、ぬかこ、とあり、

かちや(蚊)、の対語として用いられている。

逃(ぬが)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) のがす。逃げられる。

何(ぬが)すぃ⓪: (副)[文] いかにして。どうして。 @何(ぬが)すぃ我(わ)

が袖(すでぃ)や草(くさ)ぬ葉(ふぁ)ん有(あ)らん、夕間暮(ゆまんぐぃ)に

成(な)りば露(つぃゆ)ぬ宿(やどぅ)る。[のがすわが袖や 草の葉もあらぬ 夕

間暮になれば 露のやどる]どうしてわが袖は、草の葉でもないのに、夕暮れになる

と露が宿るのか。

糠蜂(ぬかばちゃあ)⓪: (名) 蜂の一種。形は小さいが、毒は強い。

抜(ぬ)ぎ出(ぃん)じ⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) ぬきんでる。ひいでる。 @

勝(すぐ)りてぃ学校(がっこお)うてぃん抜(ぬ)ぎ出(ぃん)じ而居(とお)ん。

/すぐれて学校でもぬきんでている。

逃(ぬ)ぎ支度(じこお)い@: (名) 逃げ支度。

逃(ぬ)ぎ走(ふぁし)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 逃走する。

退(ぬ)き⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) のける。しりぞける。どける。退(どぅ)

  きゆん、ともぃう。

抜・脱(ぬ)ぎ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @抜ける。脱げる。 @歯(はあ)ぬ

  抜(ぬ)ぎゆん。/歯が抜ける。 ➁ぬきんでる。すぐれる。

逃(ぬ)ぎ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 逃げる。ただし、引逃(ふぃん)ぎゆん、

を多く用いる。

残(ぬく)い⓪: (名) 残り。

残(ぬく)い高(だか)⓪: (名) 残高。

残(ぬく)い物(むん)⓪: (名) 残りもの。

温国(ぬくぐに)⓪: (名) 暖国。暖かい地方。

温(ぬく)さん⓪: (形) 暖かい。 @温(ぬく)く成(な)ゆん。/暖かくなる。

残(ぬく)し⓪: (名) 残したもの。食べ残しなど。

残(ぬく)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 残す。

温溜(ぬくた)ま⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 暖まる。体などが暖かくなる。暖を

とる。

温溜(ぬくた)み⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 暖める。体などを暖めることを多く

いう。食物を暖める意では、熱(あつぃ)らしゅん、を多く用いる。

鋸(ぬくぢり)⓪: (名) のこぎり。

温所(ぬくどぅくる)⓪: (名) 暖かい所。

温年(ぬくどぅし)⓪: (名) 暖かい年。暖冬の年。

何名(ぬぐなあ)⓪: (名) 何とかいうもの。何がし。 @何名(ぬぐなあ)や来(く

う)んてぃい。/何がしは来なかったか。 @汝(ぃやあ)や彼(あ)りが何名(ぬ

ぐなあ)有(や)らやあ。/おまえは彼の何とかだろう。

温(ぬく)⁼ぬん⓪: (自 ⁼まん、⁼てぃ) 暖まる。暖を取る。 @温(ぬく)めえ。

  /火に当たれ。

温(ぬく)ばあ⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) (天候が)、暖かくなる。

温(ぬく)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) [新]暖める。元来は、温溜(ぬくた)

  みゆん[体を、暖める]、熱(あつぃ)らしゅん[食物を、暖める]などを用いた。

残(ぬく)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 残る。

拭(ぬぐ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) ぬぐう。ふきとる。

野国(ぬぐん)⓪: (名) 野国。 ※「のぐに」、中頭郡嘉手納町の地名。現在は嘉手

納基地の中にある。

能技(ぬざ)⓪: (名)[古] 芸。演技。技芸。能芸(ぬふぁ)、は芸能そのものをい

う。 *混効験集:坤巻・言語に、のざ、とあり、おもろさうし・861に、のさ、

とある。

野里(ぬざとぅ)⓪: (名) 野里。 ※「のざと」、中頭郡嘉手納町の地名。現在は、

  嘉手納基地の中にある。

熨斗(ぬし)⓪: (名) 熨斗(のし)。進物につける熨斗。 @熨斗(ぬし)付(つぃ)

きてぃ持(む)っち行(い)けえ。/熨斗をつけて持って行け。

乗(ぬ)し@: (名) 相撲の手。乗せの意。相手を腹の上に乗せてかかえ、投げるわ

ざ。

乗(ぬ)し掛(か)い者(むん)⓪: (名) 何にでも顔を出す者。差し出がましい者。

出しゃばり。

乗(ぬ)し掛(か)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @少し出る。出かかる。ちょっと

先が出る。 @月(つぃち)ぬ乗(ぬ)し掛(か)ゆん。/月が出かかる。 ➁ちょ

っと立ち寄る。ちょっと顔を出す。

乗(ぬ)し呉(き)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 差し出す。ちょっと出す。 @手

(てぃい)乗(ぬ)し呉(き)ゆん。/イ・手を差し出す。ロ・けんかをしかける。

手を出す。

主取(ぬしどぅ)い⓪: (名) [主取]廃藩前の役名。役所で事務をとる役。

乗・載(ぬ)し⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @乗せる。馬・車・船などに乗せる。 

➁載せる。記載する。

盗人(ぬすどぅ)⓪: (名) ぬすとの意。盗人。ぬすびと。泥棒。 @盗人(ぬすど

ぅ)に持(む)たってぃん分(わ)からん。/泥棒に持ち上げられてもわからない。

熟睡のさま。 @盗人(ぬすどぅ)ぬ首(くび)ぬ高(たか)さん。/泥棒の首が高

い。泥棒は発覚を恐れるあまり、かえって露見しやすい態度をとる。 ※共通語に、

ぬすと・ぬすっと、という語がある。

盗人(ぬすどぅ)ん喰(ぐぇ)え⓪: (名) 盗み食い。

盗(ぬす)⁼ぬん⓪: (他 ⁼まん、⁼でぃ) 盗む。泥棒する。

望(ぬず)み@: (名) 望み。希望。願望。所望。相撲で負けて今一度勝負を望む時

などに、望(ぬず)み、という。

望(ぬず)み通(どぅう)い@: (名) 望みどおり。

望(ぬず)⁼ぬん@: (他 ⁼まん、⁼でぃ) @望む。ほしがる。希望する。 ➁結婚の

相手に望む。結婚を申し込む。惚れる。 @望(ぬず)まっ而居(とお)ん。/惚れ

られている。

饅(ぬた)⓪: (名) 料理名。ぬた。ぬたあえ。 ※共通語の「ぬた」は、大言海に

よれば、沼田和(ぬたあへ)の略とあり、南方熊楠によれば、饅鱠(ぬたなます)の

略とある。

野嵩(ぬだき)⓪: (名) 野嵩。 ※「のだけ」、宜野湾市の地名。

命(ぬち)⓪: (名) 命。文語では、命(いぬち)、ともいう。 @命(ぬち)短(い

ん)ちゃさん。/命が短い。 @命(ぬち)蓄(たぶ)ゆん。/死なずに生きながら

える。命をたくわえる意。 @命(ぬち)切(ち)りゆん。/命が切れる。死ぬ。 @

酒(さき)さあい命(ぬち)取(とぅ)たん。/酒で命を落とした。 *おもろさう

し・64に、のち、とあり、この時代にはすでに、語頭の「い」が消滅していたよう

である。

貫(ぬ)ち@: (名) 貫(ぬき)。貫き木。柱の間を横に貫く材。

緯(ぬち)@: (名) 緯(ぬき)。緯糸(ぬきいと)。横糸。

抜(ぬ)ち@: (名) 味噌を作る時、麹をまぜる前のもの。米・大豆あるいは豌豆を

煮てつぶしたもの。

緯彩(にちあや)@: (名) 横縞。

抜(ぬ)ぢ討(う)ち@: (名) だまし討ち。ぬぢ‐<抜(ぬ)ぢゅん[だます]。

抜(ぬ)ぢ書(が)ち⓪: (名) 抜き書き。抜粋。

命限(ぬちかぢ)り⓪: (名) 命がけ。一生けんめい。 @命限(ぬちかぢ)り有(や)

たん。/一生けんめいだった。 @命限(ぬちかぢ)りぬ働(はたら)ち。/命がけ

の働き。

命果報(ぬちがふう)⓪: (名) [命果報] 運よく命が助かること。命(ぬち)ぬ

報(ふう)、ともいう。 @命果報(ぬちがふう)ぬ有(あ)てえさ。/運よく命拾い

したよ。

命薬(ぬちぐすい)⓪: (名) @命の薬。長寿の薬。 ➁転じて、非常においしいも

  の。

抜(ぬ)ち殺(くる)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 刺し殺す。 @槍(やい)さあ

に抜(ぬ)ち殺(くる)しゅん。/槍で刺し殺す。

抜(ぬ)ぢ挿(さ)し⓪: (名) 組み立て式の装置。抜いたり差したりできる道具。

命(ぬち)捨(すぃ)たあ⓪: (名) 命知らずの者。

命(ぬち)捨(すぃ)てぃ者(むん)⓪: (名) 命知らずの者。

命(ぬち)捨(すぃ)てぃ業(わざ)⓪: (名) 命がけの仕事。

抜(ぬ)ち心(しん)⓪: (名) 募金。醵金。抜(ぬ)ち‐<抜(ぬ)ちゅん[つの

  る]。 @抜(ぬ)ち心(しん)為(しゅ)ん。/※動詞化。

命助(ぬちだすぃ)き⓪: (名) 命を救うこと。救命。助命。

貫(ぬ)ち木(ぢ)家(やあ)⓪: (名) 貫き木のある家。本建築の家。農村で、茅

ぶきではあっても単なる掘立小屋[穴家(あなや)という]でなく、礎石を置き、柱

に貫き木を通して造った家。農村の家では上等の部に入る。

命(ぬち)蔓(づぃる)⓪: (名) 命の緒の意。 @命(ぬち)蔓(づぃる)弱(よ

  お)ゆん。/命が弱る。命が縮まる。非常な心配事などしたときにいう。

命切(ぬちち)り働(ばたら)ち⓪: (名) 命の限り働くこと。死物狂いで働くこと。

命(ぬち)とぅ覚悟(かくが)あ⓪: (名) 命がけ。命ととりかえですること。 @

  命(ぬち)とぅ覚悟(かくが)あ有(や)ん。/命がけだ。

命所(ぬちどぅくる)⓪: (名) 急所。

命(ぬち)ぬ親(うや)⓪: (名) 命の恩人。

命(ぬち)ぬ恩(うん)⓪: (名) 命の恩。命を助けてくれた恩。

命(ぬち)ぬ御祝儀(ぐしゅうぢ)⓪: (名) 命拾いしたお祝い。

命(ぬち)ぬ洗濯(しんたく)⓪: (名) 命の洗濯。平常の苦労を慰めるための気晴

  らし。

命(ぬち)ぬ報(ふう)⓪: (名) 命果報(ぬちがふう)、と同じ。

抜(ぬ)ぢ端(ふぁ)⓪: (名) 遺骨や遺体を移す場合に、その場所に霊魂が残らぬ

  ように祭ること。

抜(ぬ)ち引(ふぃ)ち@: (名) 非難攻撃すること。他の欠点を責めとがめること。 

@抜(ぬ)ち‐<抜(ぬ)ちゅん[突く]。 @抜(ぬ)ち引(ふぃ)ち為(しゅ)ん。

/※動詞化。

抜(ぬ)ち巻(ま)ち@: (名) 布を織る時、かせを抜いたり巻いたりすること。

貫(ぬ)ち物(むん)⓪: (名) 縫い取り。刺繍。

抜合為(ぬちゃあし)い⓪: (名) ごちそうを持ち寄って会をすること。旧暦3月3

日には重箱を持ち寄って宴会を開く。

抜合(ぬちゃあ)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 寄せ集める。金品などを持ち寄る。

抜上(ぬちゃ)が⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 抜けて上がる。抜けて上に出る。 @

涼(すぃ)だ涼(すぃ)だとぅ雲(くむ)ぬ御衣(んす)や打(う)ち外(はじ)て

ぃ澄(すぃ)みてぃ抜上(ぬちゃ)がゆる月(つぃち)ぬ清(ちゅ)らさ。[すだすだ

と雲の 御衣や打はずて 澄みて抜上ゆる 月の清らさ]すがすがしく雲の衣を脱い

で、澄んで出て来た月の美しさよ。

抜上(ぬちゃ)ぎ⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 下からささえて上げる。さし上げる。

退(ぬ)⁼ちゅん@: (自 ⁼かん、⁼ち) @のく。退く。立ち去る。退(どぅ)ちゅん、

ともいう。 @遊(あすぃ)でぃ退(ぬ)かりらん御茶屋御殿(うちゃやうどぅん)。

[遊でのかれらぬ 御茶屋御殿]景色がよいので、遊ぶと立ち去ることができない御

茶屋御殿。 ➁離間する。夫婦・友人などの仲がこわれる。また、別れる。離縁する。 

@汝達(いったあ)二人(たえ)え退(ぬ)けえ。/おまえたちふたりは別れろ。

貫・抜(ぬ)⁼ちゅん@: (他 ⁼かん、⁼ち) @ぬく。貫く。穴に通す。 @糸(いい

ちゅう)貫(ぬ)ちゅん。/(針に)糸を通す。 ➁突く。差す。指先や棒の先で突

く。 @指(いいび)抜(ぬ)ちゅん。/指さす。

抜(ぬ)⁼ちゅん@: (他 ⁼かん、⁼ち) 募る。 @銭(じん)抜(ぬ)ちゅん。/金

を募る。

抜・脱(ぬ)⁼ぢゅん⓪: (他 ⁼がん、⁼ぢ) @抜く。 @太刀(たち)抜(ぬ)ぢゅ

ん。/太刀を抜く。 ➁脱ぐ。 @肌(はだ)脱(ぬ)ぢゅん。/肌を脱ぐ。 @袴

(はかま)脱(ぬ)ぢゅん。/下ばかまを脱ぐ。 @脱(ぬ)がしゅん。/脱がす。 

@眼鏡(がんちょお)脱(ぬ)ぢゅん。/眼鏡をはずす。着物を脱ぐ場合は、剥(は) 

ぢゆん、という。

抜(ぬ)⁼ぢゅん@: (他 ⁼がん、⁼ぢ) だます。騙(だま)しゅん、ともいう。 @

  人(っちゅ)抜(ぬ)ぢゅん。/人をだます。

長閑(ぬどぅか)⓪: (名)[文] のどか。 @長閑(ぬどぅか)なる春(ふぁる)ぬ。

[のどかなる春の]のどかな春の。

布(ぬぬ)@: (名) 布。 @布(ぬの)お緯糸(ぬち)直(のお)い、夫(うぅと) 

お刀自(とぅじ)直(のお)い。/布は緯糸次第、夫は妻次第でよくも悪くもなる。

‐直(のお)い<直(のお)ゆん[適合する]。 *おもろさうし・983に、ぬの、

とある。

布売(ぬぬう)やあ⓪: (名) 機織りを業とする者。

布丈(ぬぬだき)@: (名) 一反の布の長さ。普通女物は七尋、男物は七尋半である。 

@太陽(てぃだ)や布丈(ぬぬだき)に日(ふぃ)ん暮(く)りてぃ居(うぅ)むぬ、

片時(かたとぅち)ん急(いす)ぢ忍(しぬ)でぃ行(い)ちゅん。[てだや布だけに 

日も暮れてをもの 片時も急ぢ 忍で行きゆん(忠臣身替)]日は布の長さほどに地平

線に迫り、日も暮れているから、すぐにでも急いで忍んで行こう。 ※忠臣身替(ち

ゅうしんみがわり)は、辺土名親雲上(へんとなぺえちん)作の組踊である。

布機(ぬぬばた)@: (名) 織機。機(はた)。普通は古くからある地機をいう。

飲(ぬ)⁼ぬん⓪: (他 ⁼まん、⁼でぃ) @飲む。 ➁酒を飲む。

伸(ぬ)ば上(が)い影(かあぎ)⓪: (名) 次の句でいう。 @伸(ぬ)ば上(が)

  い影(かあぎ)ぬ無(ねえ)ん。/(ときどき来る人が)ちっとも顔を見せない。

伸(ぬ)ば上(が)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) ちょっと覗く。ちょっと顔を出す。

ちょっと立ち寄る。 @端(はんた)んかい伸(ぬ)ば上(が)ゆん。/がけのふち

に首をだしてのぞく。

伸(ぬ)ば⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) (縮んだものを)伸ばす。長くする。また、

  延期する。 @日(ふぃい)伸(ぬ)ばしゅん。/日を延ばす。

伸(ぬ)ば切(ち)り仕事(しぐとぅ)⓪: (名) ぐうたらにする仕事。いいかげん

  な仕事。

伸(ぬ)ば切(ち)り者(むん)⓪: (名) ぐうたら。だらしない者。

伸(ぬ)ば切(ち)り⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) のびる。くたばる。

伸・延(ぬ)び⓪: (名) @伸び。伸びること。伸縮性。 ➁延びること。延長。延

期。 B寛大さ。寛容。 @伸(ぬ)びぬ有(あ)ん。/寛大である。 @伸(ぬ)

びぬ無(ねえ)ん。/短気である。

伸(ぬ)び縮(ちぢ)み⓪: (名) 伸び縮み。伸縮。

伸(ぬ)び耐(でえ)⓪: (名) 抱擁力。寛容性。 @伸(ぬ)び耐(でえ)ぬ有(あ)

ん。/抱擁力がある。 ※この場合、包容力のほうが適切だと思う。

延(ぬ)び延(ぬ)び⓪: (副) 延び延び。期日などが延び延びになるさま。 @延

  (ぬ)び延(ぬ)び成而居(なとお)ん。/延び延びになっている。

伸・延(ぬ)び⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @伸べる。伸ばす。 ➁(期日などを)

延ばす。延期する。 @日(ふぃい)延(ぬ)びゆん。/日延べする。 Bこらえる。

我慢する。堪忍する。許してやる。 @汝(ぃやあ)が延(ぬ)びれえ。/おまえが

我慢しなさい。 @吾(わん)ねえ沢山(いっぺえ)述(ぬ)び而居(とお)い侍(び

い)ん。/わたしはたいそう我慢をしております。 

野甫(ぬぶ)⓪: (名) 野甫島。伊平屋島(いひゃ)の属島。また、そこの部落名。 

※現在は野甫大橋で伊平屋島とつながっている。一般的には、ぬうふ、というようで

ある。

能芸(ぬふぁ)⓪: (名)[古] [能羽]芸能。能技(ぬざ)、の項参照。

饒波(ぬふぁ)⓪: (名) 饒波。にふぁ、ともいう。 ※「のは」、豊見城市の地名。

同じ漢字で「ぬうは」と読めば、国頭郡大宜味村の地名である。饒(ジョウ)の呉音

  は「にょう」である。饒波は呉音では「にょうは」と読める。

伊野波(ぬふぁ)⓪: (名) 伊野波。 ※「いのは」、国頭郡本部町の地名。沖縄語で

は、饒波と伊野波の発音は同じである。

饒辺(ぬふぃ)⓪: (名) 饒辺。 ※「のへん」、うるま市与那城の地名。私は前原高

  校の出身であるが地元では「よへん」と発音していたように記憶している。

上(ぬぶ)い@: (名) @上り。登り。高いところへ上ること。 ➁いなかから都へ、

また、沖縄から本土へ上ること。

上(ぬぶ)い下(くだ)い@: (名) [文]上り下り。上がったり下がったり。 @

阿嘉(あか)ぬ鬚水(ふぃじみずぃ)や上(ぅうぃ)んかいどぅ吹(ふ)ちゅる、竈

小(かまどぅぐぁ)が肝(ちむ)や上(ぬぶ)い下(くだ)い。[阿嘉の髯水や 上ん

かいど吹きゆる かまど小が肝や 上り下り]阿嘉(地名)の滝の水はひげのように

上に吹き上げるが、カマドグヮ(女の名)の心は上がったり下がったりして落ち着か

ない。 ※阿嘉は島尻郡久米島町の集落。滝のイメージからすると、髯(ほおひげ)

ではなく、鬚(あごひげ)が適切ではなかろうか。 @上(ぬぶ)い下(くだ)い為

(しゅ)ん。/※動詞化。

上(ぬぶ)い口説(くどぅち)@: (名) [上り口説] 旅口説(たびくどぅち)の

項参照。

饒平名(ぬふぃな)⓪: (名) 饒平名。 ※「よへな」、名護市の地名。旧屋我地村の

  村役場があった。地元では、「ぬぴな」と発音するようである。

逆上(ぬぶ)し@: (名) のぼせること。頭部が熱くなり、頭痛などを起こす病気。 

@逆上(ぬぶ)し下(さ)ぎゆん。/のぼせをさます。

上(ぬぶ)し珠(だま)@: (名) 宝珠の玉。如意宝珠。

逆上(ぬぶ)し⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) のぼせる。頭が熱く痛くなる。夢中に

なる・逆上するなどの意には用いなかった。

上(ぬぶ)し⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @高いところへ上げる。 ➁人・物をい

  なかから都へ、また、沖縄から本土へおくる。

上・登(ぬぶ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @上る。登る。空間を上がることは、

上(あ)がゆん、という。 @二階(にいけえ)んかい上(ぬぶ)ゆん。/二階へ上

がる。 @木(きい)んかい登(ぬぶ)ゆん。/木に登る。 ➁上る。いなかから都

へ、また、沖縄から本土へ上る。

伸・延(ぬ)⁼ぶん⓪: (自 ⁼ばん、⁼でぃ) @(縮んでいるものが)伸びる。長く伸

びる。 ➁(期間が)延びる。延期になる。

登川(ぬぶんぢゃあ)⓪: (名) 登川。 ※「のぼりかわ」、沖縄市の地名。

鑿(ぬみ)⓪: (名) 鑿(のみ)。工具の名。

蚤(ぬみ)⓪: (名) 蚤(のみ)。

飲(ぬ)み薬(ぐすい)⓪: (名) 飲み薬。内服薬。

飲(ぬ)み込(く)⁼ぬん⓪: (他 ⁼まん、⁼でぃ) @飲み込む。 ➁理解する。会得

  する。 

飲(ぬ)み友(どぅし)⓪: (名) 飲み友達。酒飲み仲間。

飲(ぬ)み水(みずぃ)⓪: (名) 飲み水。飲料水。飲(ぬ)ん水(みずぃ)、ともい

  う。使(つぃけ)え水(みずぃ)[用水]に対していう。

野山(ぬやま)⓪: (名)[文] 野山。 @野山(ぬやま)越(くぃ)る道(みち)や

幾里(いくり)隔(ふぃじゃ)みてぃん、闇(やみ)に唯(ただ)一人(ふぃちゅい)

忍(しぬ)でぃ行(い)ちゅん。[野山越へる道や 幾里へざめても 闇に唯一人 忍

で行きゆん]野山を越える道は幾里へだたっていても、闇にただひとり忍んで行く。

乗・載(ぬ)⁼ゆん@: @ (自 ⁼らん、⁼てぃ) @乗る。車馬・舟などに乗る。 @

馬(んま)んかい乗(ぬ)ゆん。/馬に乗る。「(人が)机の上にのる」[机(しゅく)

んかい上(ぬぶ)ゆん]、「(人が)紙の上にのる」[紙(かび)踏(くだ)みゆん]な

どの「のる」の意には用いない。 ➁載る。記載される。 @系図(ちいじ)なかい

載而居(ぬとお)ん。/系図にのっている。

塗(ぬ)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 塗る。 @墨(すぃみ)塗(ぬ)ゆん。/墨

を塗る。 

宣(ぬ)らあ⁼りゆん@: (‐りらん、‐ってぃ) 叱られる。宣(ぬ)らゆん[叱る]

の受身。

宣(ぬ)ら⁼ゆん@: (他 ⁼あん、⁼てぃ) 叱る。「呪う」に関係のある語か。呪うは、

生(い)ち様(じゃま)しゅん、という。ののしるは、悪口(あっく)しゅん、とい

う。叱られる(受身)は、宣(ぬ)らありゆん、。

乗(ぬ)り⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 気が進む。乗り気になる。 @乗(ぬ)り

らん。/気乗りがしない。 @心(くくる)ぬ乗(ぬ)りりわどぅ仕事(しぐと)お

成(な)ゆる。/乗り気になってこそはじめて仕事はできる。 @肝(ちむ)乗(ぬ)

りゆん。/気が進む。

宣(ぬ)れえ事(ぐとぅ)⓪: (名) 陰口。陰で呪うこと。呪い。

宣(ぬ)る⓪: (名) 宣(ぬう)る、と同じ。

宣(ぬ)る雲上(くみい)⓪: (名) [のろくもい]宣(ぬう)る、の敬称。

鈍(ぬる)さん⓪: (形) のろい。(動作が)鈍い。(速度が)遅い。

温(ぬる)さん⓪: (形) (液体などの温度が)ぬるい。 

温(ぬる)っくぃ様(かあ)@: (副) さめてなまぬるいさま。ぬるくておいしくな

さそうなさま。 @温(ぬる)っくぃ様(かあ)為居(しょお)ん。/(茶・吸い物

などが)ぬるくなっている。

温(ぬる)っくぃ物(むん)⓪: (名) なまぬるい者。ぐず。

温(ぬる)っくぃ⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) さめてぬるくなる。なまぬるくなる。

  ぬるくなって、おいしくなくなる。

温(ぬる)⁼ぬん⓪: (自 ⁼まん、⁼でぃ) (水などが)ぬるむ。 ※沖縄語辞典、ア

  クセントが抜けている。

温(ぬる)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) ぬるめる。少し暖める。

 

鈍(ぬる)ん微睡(とぅる)ん⓪: (副) とろとろ。まどろむさま。

御目掛(ぬんか)き⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 美御目掛(みゅんか)きゆん、と

同じ。

何(ぬん)くう⓪: (名) 料理名。のっぺいのようなもの。大根・にんじん・こんに

ゃく・昆布・揚げた豆腐などをさいの目に切って煮たもの。

御胴(ぬんじゅ)@: (名) 美御胴(みゅんじゅ)、と同じ。

御顔(ぬんち)@: (名) 御顔(みゅんち)、と同じ。

御仰事(ぬんちぐとぅ)@: (名) 御仰事(みゅんちぐとぅ)、と同じ。

御仰使(ぬんつぃけ)え@: (名) 御仰使(みゅんつぃけ)え、と同じ。

美御耐(ぬんで)え⓪: (名) お叱り。御耐(うんで)え、のさらに上の敬語。

布中(ぬんなか)@: (名) 布の織りかけ。まだ織り終わらない布。

御告(ぬんぬ)き⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 美御告(みゅんにゅ)きゆん、と同

  じ。

飲(ぬ)ん水(みずぃ)⓪: (名) 飲(ぬ)み水(みず)、と同じ。