?あ ?い 'い ?う 'う ?え 'え ?お 'お か き く け こ さ し す せ そ た ち つ て と な に ぬ ね の は ひ ふ へ ほ ま み む ?め め も ?や や ?ゆ ゆ ?よ よ ら り る れ ろ ?わ わ ?ゐ ゐ ?ゑ ゑ ?ん ん
か
⁻か: (接尾) ほど。 @面(つぃら)ぬ後(くしゃ)あ成(な)るか悪口(あっく)
為(しゅ)ん。/顔が向けられなくなるほど叱る。 @腸(わた)ぬ裂切(はっち)
りいるか物(むぬ)噛(か)だん。/腹がはち切れるほど食べた。 @息(いいち)
ぬ切(ち)りるか走合(はあえ)え成(な)ゆん。/息が切れるほど走る。 @死(し)
ぬかぬ憐(あわ)り為(し)みらったん。/死ぬほどの苦労をさせられた。 @見(み)
いらんか見(み)いらんか為居(しょお)ん。/かすかに見えている。
⁻が: (助) @が。人名・人代名詞などに付いて主格を示す。他の名詞の主格はふつう、
⁻ぬ(が)で表される。ただし、人を表す名詞の場合(逆説の、⁻すぃが、とは別)、そ
の他の場合にも、⁻が、の付く例がある。また、⁻が、のあとには、⁻や(は)、⁻ん(も)、
⁻どぅ(こそ)などの助詞が付いて、⁻があ、⁻がん、⁻がどぅ、などとなることがある。
なお、、わん(わたし)に付く時は、わあがあ(わたしが)、となる。 @彼(あ)り
が来(ちゃ)ん。/彼が来た。 @吾(わあ)が書(か)ちゃる手紙(てぃがみ)。/
私の書いた手紙。 @先生(しんしい)が参候而居(めんそおちょお)ん。/先生が
いらっしゃっている。この場合は、先生(しんしい)ぬ、とも言える。しかし、たと
えば、彼(あ)ま[あのかた]の場合は、彼(あ)まぬ、と言い、彼(あ)まが、と
はふつう言わない。 @見(んん)だんすぃが好(ま)し。/見ない方がよい。 @
何(ぬう)やてぃん喰(か)ぬすぃが有(あ)み。/何か食べるものがあるか。 @
彼(あ)りがあ行(い)ちゅさ。/彼なら行くよ。 @吾(わあ)があ成(な)らん
すぃが汝(ぃやあ)が成(な)ゆみ。/わたしにはできないがおまえにできるか。 @
大和(やまとぅ)ん人(ちゅ)があ彼(あ)ねえ為(さ)ん。/日本人ならそうはし
ない。 @吾(わん)やか外(ふか)ねえ誰(たあ)がん知(し)らん。/わたしよ
りほかには誰も知らない。 @此(く)れえ吾(わあ)がん成(な)ゆん。/これは
わたしにもできる。 @彼(あ)りがどぅん若(む)しか我沙汰(わさた)どぅん為
(しゅ)らば。[あれがどももしか 我沙汰どもしゆらば]彼女がもしもわたしの話で
もしたら。 ➁の。が。属格を示す。⁻ぬ、の項参照。 @彼(あ)りが書物(しゅむ
つぃ)。/彼の本。 @芝居(しばい)見(んん)だじやか其(う)っさが肉(しし)
喰(か)めえ何処(まあ)走(は)いが。/芝居を見るよりはその分の肉を食べた方
がどれだけいいかわからない。 Bに。〜するために。〜しに。動詞の「連用形」に
付く。 @魚(いゆ)取(とぅ)いが行(い)ちゅん。/魚を取りに行く。 C疑わ
しさを表す文に用いて、文の疑わしい部分に付く。あとを推量の形(⁻あ、で終わる)
で結ぶ。述語となる動詞につく場合には「連用形」に付き、あとを、しゅら(するだ
ろうか。ただし否定の場合は、あら、あるだろうか)などで結ぶ。 @彼(あ)れえ
手紙(てぃがみ)が書(か)ちゅら書物(しゅむつぃ)が読(ゆ)ぬら分(わ)から
ん。/彼は手紙を書いているのか本を読んでいるのかわからない。 @有(あ)いが
しゅら。/あるだろうか。 @取(とぅ)いが為侍(しゃびい)ら。/取りましょう
か。 @既(なあ)掛(か)き合(おお)らんが有遣侍(あやびい)ら。/もう間に
合わないでしょうか。 @彼(あ)んがやら。/そうだろうか。 @此(く)れえ吾
(わあ)がやら。/これはわたしだろうか。 @今日(ちゅう)拝(うぅ)がむ事(く
とぅ)や夢(ゆみ)が遣遣侍(ややびい)ら。[今日拝むことや 夢がややべいら(花
売之縁)]きょうこうしてお会いするのは夢でしょうか。 ※花売之縁(はなうりのえ
ん)は、高宮城親雲上(たかみやぐすくぺえちん)作の組踊である。 Dか。疑問を
表し、疑問を表す語に先行されて、質問文・反語文などの文末に用いる。活用する語
に付く場合にはその「短縮形」(apocopated form)につく。ただし、そのあとに助詞、
やあ(ねえ)が続く時は、疑問を表す語に先立たれなくてもよい。やあ、の項参照。
@誰物(たあむん)が。/だれの物か。 @誰(たあ)が。/だれか。 @如何(ち
ゃあ)為(しゅ)が。/どうするか。 @泡盛(ああむえ)え何(ぬう)さあに作(つ
く)てえが。/泡盛は何で作ってあるか。
皮(かあ)⓪: (名) 皮。皮膚・皮革・樹皮など、ものの表面に張ったもの。
井戸(かあ)@: (名) 井戸。また、天然に湧いていて用水に使われるものをもさす。
「川」に対応する。車井戸(くるまがあ)、桝(つぃいが)あ[桶を手でたぐり上げて
汲む井戸]、樋川井戸(ふぃいじゃあがあ)[湧水を樋で引いたもの]などの種類があ
る。 ※車井戸(くるまがあ)に説明がないのは、これがごくふつうの井戸だったの
であろう。滑車につるべ縄をかけて水を汲む井戸のことである。
⁻かあ: (接尾) 程度のはなはだしいさまをいう。 @浸(し)ったいかあ[びしょ
ぬれ]、欠(か)きかあ[欠けたところだらけ]、破(や)んでぃかあ[こわれたとこ
ろだらけ]など。
⁻かあ: (接尾) 辺。あたり。 @彼(あ)りかあ[あの辺]、此(く)りかあ[この
辺]、此処(くま)りかあ[この辺]、何処(まあ)りかあ[どの辺]など。あるいは、
⁻りかあ、を接尾辞とすべきものか。 ※「り」は、ここら、そこら、どこら、の「ら」
に相当する語であると思う。
我(があ)⓪: (名) 我。 @我(があ)張(は)ゆん。/我を張る。 @我(があ)
折(うぅ)うりゆん。/(我が折れる)我を折って他に従う。
⁻適(があ)い: (接尾) 相当・匹敵の意を表す接尾辞。 @十人適(じゅうにんがあ)
い。/十人に匹敵すること。 @男適(うぃきががあ)い。/男に匹敵すること。男
まさり。 など。
我張(があ)い者(むん)⓪: (名) 威張り散らす者。威勢をふりまわす者。<我張
(があ)ゆん。
革緒(かあうぅう)⓪: (名) 下駄・ぞうりなどの皮の鼻緒。士族の娘および貴族が
用いた。一般の士族は、縒(に)り緒(うぅう)、を用いた。なお、鼻緒(はなうぅう)、
の項参照。
湧水(かあ)降(う)りい⓪: (名) 出産祝いの行事。昔、湧水(かあ)[湧き水のあ
る所]に降りて行って、みそぎをしたのでこの名がある。小さい蟹を何匹もうぶ着の
上にはわせる。 @湧水(かあ)降(う)りいぬ御振舞(うふるめ)え。/出産祝い
のごちそう。平民は、産着(んばぎ)い、という。
我張(があえ)え⓪: (名) 綱引(つぃなふぃ)ち、の時のもみ合い。綱引きの威勢
をつけるため、大勢が拳を頂上に交叉して上げ、背中をむけ合ってもみあう。拳を上
に上げるのは、喧嘩をさけるため。<我張(があ)ゆん。
辛(か)あ辛(か)あ⓪: (名) 辛いものの小児語。
があがあ@: (副) (からすなどが)騒がしく鳴くさま。があがあ。
影(かあがあ)⓪: (名) @影。水・鏡などに映る影。 ➁影。影法師。
影踊(かあがあうどぅ)い⓪: (名)[新] 活動写真。影踊りの意。
皮乾(かあかしゃ)あ⓪: 鮒[田魚(たあいゆ)]の燻製。
乾(かあ)か⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 乾燥させる。(火にあぶって)乾かす。
川辺守(かあがりもお)@: (名) かっぱ。水に住む想像上の動物。赤髪(あかがん
た)あ[赤ちゃけた髪のおかっぱ頭]をしていて、恐れられる。那覇では、禿髪(か
むろ)お、という。 ※平家物語巻一の段落名「禿髪(かぶろ)」を拝借。皮痩坊(か
あがりもお)という当て字も考えられる。
川上(かあかん)⓪: (名) 川上。 ※「かわかみ」、名護市の地名。
皮被(かあかん)じゃあ⓪: (名) 目がかすむこと。また、目がかすんでいる者。皮
をかぶった者の意。
影・陰(かあぎ)⓪: (名) @姿。また、容貌。 @影(かあぎ)ぬ悪(わ)っさん。
/器量が悪い。 @清(ちゅ)ら影(かあぎ)。/美貌。 ➁陰。日陰など。光の当た
らない暗い所。 @木(きい)ぬ陰(かあぎ)。
賭(かあ)きい⓪: (名) @賭け。 ➁指折り。互いに小指をひっかけてする子供の
約束。 @賭(かあ)きい為(しゅ)ん。/指切りする。
影変(かあぎぐぁ)い⓪: (名) おも変わり。老衰・病気などで、容貌が変わること。
陰干(かあぎぶ)し⓪: (名) 陰干し。
渇(かあ)き⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @(のどが)渇く。 ➁(水が)涸れる。
干上がる。(地面)などが乾く。
川崎(かあさち)⓪: (名) 川崎。 ※「かわさき」、うるま市の地名。
革草履(かあさば)⓪: (名) 革ぞうり。雪駄。
井戸浚(かあされ)え@: (名) 井戸さらえ。 *混効験集:坤巻・言語に、川さら
へ、とある。
都度(かあじ)@: (名) つど。度。たびに。ごと。ごとに。 @行(い)ちゅる都
度(かあじ)。/行くたびに。
笹(かあしゃ)⓪: (名) 木の葉の広いもの。食物を盛ったり、包んだりする。多く
用いるものは、浜芙蓉(ゆうな)あ笹(があしゃ)、苧笹(うぅうがあしゃ)、月桃(さ
んにん)笹(があしゃ)、蒲葵(くば)笹(があしゃ)、など。
我謝(があじゃ)⓪: (名) 我謝。 ※「がじゃ」、中頭郡西原町の地名。
我喜屋(があじゃ)⓪: (名) 我喜屋。 ※「がきや」、島尻郡伊平屋村の地名。
笹(かあしゃ)ぬ葉(ふぁあ)⓪: (名) 笹(かあしゃ)、と同じ。
笹(かあしゃ)ぬ葉(ふぁあ)魚(いゆ)⓪: (名) 魚の名。平目。また、かれい。
笹(かあしゃ)ぬ葉(ふぁあ)包(づぃち)ん⓪: (名) 笹(かあしゃ)[木の葉の広
いもの]で包んだもの。
笹弁当(かあしゃびんとお)⓪: (名) 芭蕉の葉に包んだ弁当。
皮滑(かあしん)だあ⓪: (名) 皮膚がただれている者。やけどなどで皮膚がむけて
いる者。
革細工(かあぜえく)⓪: (名) 革細工。また、それを業とする者。
革細工(かあぜえく)う⓪: (名) 革細工を業とする者の卑称。
川田(かあた)⓪: (名) 川田。 ※「かわた」、国頭郡東村、および、うるま市の地
名。
過多喰(があだが)み⓪: (名) むだ食い。
過多喰(があだぐぇ)え⓪: (名) むだ食い。過多喰(があだが)み、と同じ。
夏至(かあちい)⓪: (名) 夏至。二十四節の一つ。 夏(げ)は呉音、夏(か)は
漢音。至(ちい)は、中国音に近いようである。
夏至南風(かあちいべえ)⓪: (名) 夏至のころ吹く南風。
我強(があぢゅう)⓪: (名) 我の強い者。強情者。意地っぱり。
我強(があぢゅう)さん⓪: (形) 我が強い。強情である。
鴨鳥(があとぅい)⓪: (名)[古] 鴨。 *混効験集:乾巻・気形に、があとり、と
ある。
瘤(があなあ)⓪: (名) こぶ。打ちつけてできるこぶ。
鵞鳥(があなあ)⓪: (名) 鵞鳥。
皮(かあ)ぬ主(ぬうし)⓪: (名) 菓子などを分ける時、皆に分け与えて自分の分
け前が無くなってしまった分配者をこっけいにいう語。「皮の主」すなわち包みの皮の
持ち主の意。
皮張(かあは)い⓪: (名) (ひからびて)皮のように張り付くこと。また、その張
りついたもの。 @鼻垂(はなだ)いぬ皮張(かあは)い。/鼻みずのひからびて張
り付いたもの。
皮張(かあは)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @皮が張る。皮が生じる。また、ひか
らびて皮のように張り付く。 ➁転じて、いじきたなく〜する。ぐずぐずと長居する、
未練がましく長生きする、などの意に用いる。 @欲(ゆく)ぬ皮張(かあは)てぃ。
/欲の皮が張って。いじきたなく欲張って。
皮薄(かあびすぃ)い⓪: (名) 皮の薄いもの。皮膚の薄い者。
皮薄(かあびす)う⓪: (名) 皮薄(かあびすぃ)い、と同じ。
黴吹(かあぶ)い⓪: (名) 醤油・味噌などに生ずる薄いかび。 @黴吹(かあぶ)
い銜(くう)ゆん。/(醤油・味噌などの表面に)かびが生える。黴吹(かあぶ)い
為(しゅ)ん、ともいう。
顔振(かあぶ)い⓪: (名) (否定・拒否の意を表して)顔を横に振る動作。かぶり。
※「かぶり」は、冠、顔、のことで、顔を横に振るという意味はないと思う。
顔振(かあぶ)い顔振(かあぶ)い⓪: (名) かぶりかぶり。いやいや。顔を横に振
る小児の芸。 @かぶりかぶり、という共通語はないと思われる。
香吹(かあぶ)ちい⓪: (名) 柑橘類の一種。実は皮が厚く、甘味が強い。
顔振(かおぶ)やあ⓪: (名) こうもり(蝙蝠)。 ※この当て字が正しいなら、蝙蝠
の特徴をよく表していると思う。
顔振(かあぶ)やあ傘(がさ)⓪: (名)[新] こうもり傘。洋傘。段傘(だんがさ)、
ともいう。 ※だんがさ、は宮崎県、鹿児島県でも使われる方言らしい。
があ開(ぶら)ち@: (名) 口を大きく開くこと。⁻ぶらち<開(ふら)ちゅん。 @
があ開(ぶら)ち為(しゅ)ん。/口をパクリとあく。
斯彼間(かあま)⓪: (名) 遠方。遠く。遠方(いぃんぽお)、ともいう。 @斯彼間
(かあま)から来(ちゃ)ん。/遠くから来た。
竈(があま)⓪: (名) 無茶。無茶な行為。 @竈(があま)掛(か)かゆん。/無
茶をする。 @掛(か)からん竈(があま)掛(か)かゆん。/ひどい無茶をする。
甕(かあみ)⓪: (名) 甕(かめ)。
亀(かあみい)⓪: (名) 亀。水陸両棲の亀。海亀は、海亀(うみがあみい)、という。
*おもろさうし・505に、かめ、とある。ジュゴンとともに登場する。
亀甲(かあみいくう)⓪: (名) 亀の甲。 @亀甲(かあみいくう)やか年(とぅし)
ぬ劫(くう)。/亀の甲より年の功。
亀(かあみ)な甲(くう)⓪: (名) べっこう。
亀(かあみ)な甲(くう)御墓(うふぁか)⓪: (名) 亀甲式の墓。墓の様式の一つ
で、屋根が亀の甲の形にできているもの。
甕(かあみ)ぬ尻(つぃび)一(てぃいつぃ)⓪: (名) (夫婦の骨が)死後一つの
甕の中に収められること。死後一緒になること。
亀(かあみ)ん首(くうび)⓪: (名) 着物のえりが首の内側に曲がること。亀の首
のように、愚物らしく見える。
甕(かあみ)ん砂利(じゃり)⓪: (名) 甕・瓦などの破片。
我張(があ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @おごり高ぶる。威勢をふり回す。 ➁
綱引(つぃなふぃ)ち、の時、東西の若者が踊り狂って、威勢をつける。
瓦(かあら)⓪: (名) 瓦。屋根に用いるほか、垣として積み、また城内・境内など
の道路に敷く。 @瓦(かあら)載(ぬ)しゆん。/瓦で屋根をふく。
川原(かあら)@: 川。河。川原の転意。
瓦石垣(かあらいしがち)⓪: (名) 瓦石垣。上半を瓦と土、下半を石で築いた垣。
屋敷内の中門の左右に多く見受けられる。
加玻羅玉(があらだま)⓪: (名) 曲玉。宣(ぬう)る[のろ]などが首に掛けたも
の。 *おもろさうし・1169に、「かはら、たむ」、とある。
乾(かあ)ら⁼ちゅん@: (自 ⁼かん、⁼ち) 乾く。水分・湿気が去る。 @乾(かあ)
ら而居(ちょお)る着物(ちん)。/乾いた着物。
川原端(かあらばんた)⓪: (名) 川端。川べり。川岸。
があらふぃっちい⓪: (副) がたびし。物がすれ合ったり倒れたりして出る音のさま。
瓦葺(かあらぶ)ち⓪: (名) 瓦ぶき(の家)。以前は首里・那覇だけに多く、他では、
番所(ばんじゅ)、だけが瓦ぶきであった。
瓦弄(かあらぶって)え石弄(いしぶって)え⓪: (感) 女の子と遊んでいる男の子
をからかって言うことば。
瓦家(かあらやあ)⓪: (名) 瓦ぶきの家。
瓦焼(かあらや)ちゃあ⓪: (名) 瓦屋。瓦焼きを業とする者。
川原駆回(かあらかんじゅ)やあ@: (名) かわせみ。川原真平(かあらまったら)
あ、ともいう。
渇(かあ)らきさん⓪: (形) (道などが)渇いている。 @乾(かあ)らきさる道
(みち)/乾いた道。
川原真平(かあらまったら)あ@: (名) かわせみ。川原駆回(かあらかんじゅ)や
あ、ともいう。
仮(かい)@: (名) 仮。 @仮(かい)ぬ外(はん)し。/仮の間に合わせ。
⁻かい: (助) へ。に。目的地を示し場所を表す語につく。 @学校(がっこお)かい
行(い)ちゅん。/学校へ行く。 @何処(まあ)かい行(い)ちゅが。/どこへ行
くか。 @次郎達(じるうたあ)かい行(い)ちゅん。/次郎の家へ行く。 ※おも
ろさうし・915の「かち」の原注に、「向てといふ事也」とある。「かち」と「かい」
とは直接の関係がないというのが仲原善忠の説である。
蚕(かいぐ)⓪: (名) 蚕。糸虫(いとぅむし)、ともいう。
開化党(かいくぁとお)⓪: (名) [開化党]賛成(さんしい)、と同じ。
開墾(かいくん)@: (名) 開墾。 @開墾(かいくん)為(しゅ)ん。/※動詞化。
開合(かいこお)⓪: (名) [開合・開口]開合。開音と合音との区別。エ段とオ段
の母音を[い]、[う]と発音し、またキをチのように沖縄式に発音するのを合とし、
それらを「けせて〜」、「こそと〜」、「き」のように書き、または、読書の場合などに
日本本土式に発音するのを開とする。 @開合(かいこお)正(ただ)しゅん。/開
合を正す。
借(か)い物(むん)@: (名) 借り物。
仮家(かいや)@: (名) [仮屋] @仮屋。仮小屋。綱引(つぃなふぃ)つぃ、の
時などに見物席として作る仮の桟敷。 ➁在番奉行の役所。 ※在番奉行は、薩摩藩
の琉球支配のための出先機関。
顔(かう)@: (名)[文] 顔。口語は、顔(つぃら)。 ※異なった母音が二個並ぶ
のは琉球語ではたいへんめずらしい。やはり文語なのであろう。
がうぇえがうぇえ⓪: (副) 豚の鳴き声。ぶうぶう。騒がしく鳴き立てる時の声をい
う。
掛(か)かい触(さあ)らち⓪: (名) さしさわり。障害。 @何(ぬう)ぬ掛(か)
かい触(さあ)らちん無(ねえ)ん。/何のさしさわりもない。
掛(か)かい縋(すぃが)い⓪: (副) うるさくつきまとうさま。まつわりつくさま。
@稲(ぃんに)ぬ穂(ふ)ん有(あ)らん麦(むじ)ぬ穂(ふ)ん有(あ)らん、輩
(やから)忌(ゆ)む鳥(どぅ)やが掛(か)かい縋(すぃが)い。[稲の穂もあらぬ
麦の穂もあらぬ やからよむ鳥が かかりすがり]稲の穂でも麦の穂でもないわたし
に、うるさい鳥(男)どもがつきまとって来る。
掛(か)かい代(でえ)⓪: (名) ねばり強い力。一事に執心できる力。 @掛(か)
かい代(でえ)ぬ有(あ)ん。/物事にねばり強い。
憑(か)かい物(むん)⓪: (名) 憑き物。もののけが憑くこと。生霊または死霊が
何か頼みごとなどがあって人に憑くこと。
賀数(かかじ)⓪: (名) 賀数。 ※「かかず」、糸満市の地名。
嘉数(かかじ)⓪: (名) 嘉数。 ※「かかず」、豊見城市の地名。 *おもろさうし・
1097に、かかす、とある。
齧(かか)じ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) かじる。 @親(うや)ぬ物(むん)齧
(かか)じゆん。/親のすねをかじる。
日々並(かがな)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 手を下す。手を加える。関与する。
関係する。 @誰(たあ)がん成(な)らん、彼(あ)りが手(てぃい)日々並(か
がな)しわどぅ成(な)ゆさ。/だれにもできない。彼が手を下してはじめてできる。
日々並(かがな)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 関係する。関与する。 ※「日本書
紀・中・景行・歌謡26」の、迦賀那倍弖(かがなべて)と関係のある語のように思
われる。
屈(かが)ま⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) かがむ。しゃがむ。うずくまる。
掛(か)か⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @掛かる。ひっかかる。また、掛かって下
がる。 @雨垂(あみだい)なかい立(た)ちいねえ水(みずぃ)ぬ掛(か)かゆん。
/軒下に立っていると水がかかる。 ➁(費用が)掛かる。 Bたよる。厄介になる。
@兄(すぃいざ)掛(か)かゆん。/兄にたよる。 @言(ぃゆ)すぃどぅ掛(か)
かゆる。/言う人に頼む。 C碇泊する。 Dかかわる。〜の対象となる。 @世間
(しきん)ぬ口舌(くちすぃば)に掛(か)かゆん。/世間のうわさに上る。 E及
第する。合格する。
関(かか)わい@: (名) 係わり。関係。掛かりあい。
関(かか)わ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 係わる。関係する。
掛(か)かん⓪: (名) [下裳]女が腰から下に着ける着物。腰巻状で後ろに合わせ
る式のものと、労働用の前から股を通すふんどし式のものと二種ある。胴着物(どぅ
ぢん)、と一緒に着る。
鏡(かがん)⓪: (名) 鏡。 @鏡(かがん)栄(ふぇえ)しゅん。/鏡(金属製)
をみがく。 @北谷(ちゃたん)真牛愛(もしじゃに)や水(みずぃ)ぬ上(ぅうぃ)
ぬ鏡(かがん)、拝(うぅが)まりやしゅすぃが自由(じゆ)や成(な)らん。[北谷
まうしぎやねや 水の上の鏡 拝まれやしゆしが 自由やならぬ]北谷まうし(女の
歌手の名)は自分にとっては水鏡と同じこと、鏡を見ることはできても、自由にはな
らない。 ※琉歌には、たびたび、自由という語が登場するが、日本の和歌・短歌で
自由という語に出会ったことは、私はない。
鏡栄(かがんふぇ)えさあ⓪: (名) 鏡(金属製)をみがくことを業とする者。 @
鏡栄(かがんふぇ)え為侍(さび)ら(鏡をみがきましょう)と呼んで歩いた。
掛(か)き⓪: (名) かけ値。売値より高くいう値。
欠(か)き@: (名) かけら。茶碗などの欠けたはし。
欠(か)ぎ@: (名) 欠け。欠けること。欠けたもの。欠員・欠席者など。掛(か)
き、とは別。
掛(か)き合(あ)あし物(むん)⓪: (名) 期限付きのもの。正月用・婚礼用に頼
まれた物など。
掛(か)き合(あ)あ⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 間に合わせる。期限に遅れない
ようにする。
掛(か)き合(あ)あ⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 間に合う。定められた期限に間
に合う。
掛(か)き歌(うた)⓪: (名) 諷刺歌。物にたとえてよんだ歌。たとえば、 @鎌
小(かまぐぁ)頤額(うとぅがく)や古辺底(くふぃんずく)やすぃが、按司(あじ)
ぬ御頤(みうとぅげ)や残波岬(ざんぱみさち)。(真壁按司の愛妾カマグァのあごは
古辺底のように短いが、真壁按司のおあごは残波岬のように長く出ている。)のような
もの。 ※現在、古辺底という地名はないようであるが、名護市許田に湖辺底という
バス停がある。前が許田港であるが、その西側の小さな半島のことであろうか。
掛(か)き合(え)え⓪: (名) 掛け合い。談判。
欠(か)き多(かあ)@: (副) 欠けたところだらけ。 @欠(か)き多(かあ)為
居(しょお)る茶碗(ちゃわん)。/方々欠けた茶碗。
掛(か)き言葉(くとぅば)⓪: (名) 掛けことば。音が同じか類似していて、両様
の意味を兼ね含ませたことば。たとえば、 @如何(いちゃ)が成(な)てぃ行(い)
ちゅら果(は)てぃや白波(しらなみ)ぬ〜[いきやがなて行きゆら 果や白波の〜]
どうなって行くか果ては白波の(知らないが)〜。
欠(か)き五十(ぐんじゅう)@: (名) びた一文。きわめてわずかな銭。欠けた一
厘銭の意。 ※五十文(ごじゅうもん)が一厘(いちりん)であった。
掛(が)き鈎(ざあ)⓪: (名) 掛(が)き鈎(じゅう)、の卑語。
搗(か)き槌(じち)⓪: (名) 丁子形をした杵。穀物・餅などを搗くもの。また、
杭などを打つ槌として用いるもの。
掛(が)き鈎(じゅう)⓪: (名) 鈎。つるし鈎。物を下げるために天井などからつ
るす、先の曲がった鈎。
掛(か)き心(しん)⓪: (名 掛け金。無尽などの掛け金。
掛(か)き継(つぃ)⁼じゅん⓪: (他 ⁼がん、⁼じ) あとを継いで掛ける。掛け継ぐ
の意。無尽などの掛金を引き継いで、その掛金を取る権利を得る。
掛(か)き値(に)ん⓪煽(おお)らん⓪: (句) お話にならない。とてつもない。
@掛(か)き値(に)ん煽(おお)らん巨大(まぎい)やん。/とてつもなく大きい
のだ。 @掛(か)き値(に)ん煽(おお)らん安(やっ)さん。/お話にならない
ほど安い。
掛(か)き話(ばなし)⓪: (名) 横になって話をすること。
掛保久(かきぶく)⓪: (名) 掛保久。 ※「かけぼく」、中頭郡西原町の地名。
掛(か)き持(む)ち⓪: (名) 掛け持ち。二つ以上の仕事を兼ね持つこと。
掛(か)き物(むん)⓪: (名) 掛け軸。掛け物。
欠(か)き物(むん)@: (名) 欠けたもの。欠けた茶碗など。
掛(か)き前(めえ)⓪: (名) 無尽などで、掛けておいてまだ受け取っていない出
し前。のちに利子と共に受け取る権利のある掛け金。送(うく)い前(めえ)[送り前]
の対。
掛(か)き⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @掛ける。 @冠(かんむい)掛(か)き
ゆん。/帽子を掛ける。 @橋(はし)架(か)きゆん。/橋を掛ける。 @水(み
ずぃ)掛(か)きゆん。/水を掛ける。 @腕(うでぃ)掛(か)きゆん。/腕相撲
で、互いの腕を掛ける。 @褌(さなじ)掛(か)きゆん。/ふんどしをする。 @
情(なさき)掛(か)きゆん。/情をかける。 ➁(費用・掛け金を)掛ける。また、
賭ける。 @百貫(ひゃっくぁん)賭(か)きゆん。2円掛(賭)ける。 B掛け値
をいう。 @掛(か)きてぃ言而居(いちょお)ん。/掛け値を言っている。 C掛
けもつ。 @二所(たとぅくる)掛(か)きゆん。/二箇所掛け持つ。 D(はかり
に)掛ける。 @測(はかい)掛(か)きゆん。/はかりに掛ける。 @掛(か)き
れえ桁(きた)ぬどぅ折(うぅう)りいる。/掛ければ、はかりの竿が折れる。甲乙
ない。また、どっちもどっちだ。 E領する。支配する。統治する。 @島(しま)
掛(か)きゆん。/領土を支配する。 F(接尾)〜し掛ける。〜し始める。 @噛
(か)み掛(か)きゆん。/食べかける。など。
掛(か)き⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 肘をつき、手で頭をささえて横になる。
欠(か)き⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 欠ける。損じる。 @茶碗(ちゃわん)ぬ
欠(か)きゆん。/茶碗が欠ける。
欠(か)ぎ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 欠ける。不足する。また、欠席して欠ける。
欠番となる。 掛(か)きゆん、とは別。
加計呂麻(かきるま)@: (名) 加計呂麻島。奄美群島の島の名。 ※加計呂麻は漢
字のようにみえるが草書で書けば、かけろ麻、というひらがなとほぼ同じである。麻
も昔はひらがなとして用いられていた。
加減(かぎん)⓪: (名) 加減。 @加減(かぎの)お如何(ちゃあ)が。/(味な
どの)加減はどうか。 @咳気(げえち)加減(かぎん)。/かぜ気味。
腫瘍(かく)@: (名) 病名。食堂癌・胃癌・胃潰瘍などをいう。酒が原因ならば、
酒腫瘍(さきがく)、という。
楫子(かく)@: (名) 水夫。舟子。「かこ」に対応する。
角(かく)@: (名) 四角。方形。
駕籠(かぐ)@: (名) 駕籠。貴族のみが普通に用いた。士族は、公用・婚礼・葬式
などにのみ用いた。その敬語は、安駄(あんだ)、御安駄(うなあんだ)。平民は病人
などを運ぶ時、囲いのない、山駕籠(やまかぐ)、を用いた。
楽(がく)⓪: (名) 楽吹(がくぶ)ら[管楽器の名]の略。
囲(かく)い@: (名) 囲い。屋敷などの周囲の垣。石で囲ったものは、石囲(いし
がく)い、竹のものは、竹囲(だきがく)い。
駕籠石御門(かぐいしうじょお)@: (名) 首里城の門の名。御城(うぐすぃく)の
項参照。
がくがく@: (副) ぺらぺら。へらず口をたたくさま。
駕籠舁(かぐか)ち@: (名) 駕籠かき。 ※舁(か)くは、かついで運ぶという意
味の漢字。
掛(か)く金(がに)⓪: (名) 掛けがね。戸をかたくとざすための用具。
格護(かくぐ)⓪: (名) [格護] @大切にしまいこむこと。秘蔵。 @格護(か
くぐ)為(しゅ)ん。/秘蔵する。 ➁守護。 @亀千代(かみじゅう)が格護(か
くぐ)油断(ゆだん)為(す)るな。[亀千代が格護 油断するな(忠臣身替)]亀千
代を守護して油断するな。 ※忠臣身替(ちゅうしんみがわり)は、辺土名親雲上(へ
んとなぺえちん)作の組踊である。
格護(かくぐ)⓪: (名) 落としぶた。箱の内側にはまりこむように作ったふた。ま
た、他の箱の内側のへりにはまりこむように作った箱。衣服を入れる、笥(けえ)、に
付いている。
覚悟(かくぐ)⓪: (名) 覚悟。
加護(かぐ)さみ⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @監督する。監督して勉強などをさ
せる。 ➁加護する。神仏の通力を加えて守る。 @鳥(とぅい)でんすぃ深山(み
やま)茂(しげ)る谷(たに)選(いら)でぃ、我(わ)が身(み)加護(かぐ)さ
みる事(くとぅ)ぬ萎(しゅら)しゃ。[鳥だいんす深山 しげる谷選で わが身かぐ
さめる ことのしほらしや]鳥でさえ深山のしげった谷を選んで自分を守ることの殊
勝さよ。 ※しほらし、ではなく、しをらし、と思われる。もともとは、萎(しお)
れるような感じという意味のようである。
隠(かく)し⓪: (名) 隠すこと。隠しだて。 @何(ぬう)隠(かく)しぬ無(ね
え)ん人(っちゅ)。/隠しだてのない人。
顎(かくじ)⓪: (名) あご。下あご。両わきに出たあごの骨もふくめて下あご全体
をいう。口の下のとがった部分は、頤(うとぅげえ)、という。 @顋(かくじ)覆(う
す)ゆん。/あごをおさえる(がっかりした場合の動作)。
隠(かく)しい回(まあ)しい⓪: (副) ひた隠しに隠して。大事に隠して。
隠(かく)し事(ぐとぅ)⓪: (名) 隠しごと。
鹿児島(かぐしま)@: (名) 鹿児島。
学者(がくしゃ)@: (名) 学者。以前は漢学者のみを言った。
隠(かく)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 秘密にする。他に知られないように隠す。
ただ見えないように隠すことは、隠隠(くぁっくぁ)しゅん、という。
学生(がくしょお)@: (名) [学生]学生。生徒。 ※学生のもともとの読み方は、
「がくしょう」であり、明治になって、「student」の訳語として登場、読み方が漢音の
「がくせい」となった。
駕籠作(かぐつく)やあ⓪: (名) 駕籠作りを業とする者。
籠灯籠(かぐどぅうる)⓪: (名) 竹で籠のように編んだ、あんどん式の灯籠。畳め
ないが、安価なので、一般に多く用いられた。
格別(かくびつぃ)@: (名) とくに仲の良い間柄。 @彼(あ)りとぅ吾(わん)
とお格別(かくびつぃ)やん。/彼とわたしとは別懇の間柄だ。
楽吹(がくぶ)ら⓪: (名) 楽吹(がくぶ)ら[管楽器の名]による音楽。
楽吹(がくぶ)ら@: (名)[古] 楽器の名。路地楽(るじがく)[路次楽]など、王
の行列の時に吹奏した管楽器。明笛の一種であろう。略して楽(がく)、ともいう。こ
れを吹き鳴らす者を、吹(ぶ)らあ、という。ぴいらるうら、と鳴る。
学触(がくぶ)り@: (名) 学問気違い。学問に熱中して世事をかえりみない者。
学問(がくむん)⓪: (名) 学問。墨(すぃみ)、ともいう。
囲(かく)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @囲う。かくまう。専有する。尾類(ずり)
[女郎]の場合は、詰(つぃ)みゆん、という。 ➁象棋(ちゅんじい)[中国式の将
棋]で、王を囲う。
囲(かく)⁼ぬん@: (他 ⁼まん、⁼でぃ) 囲む。
学力(がくりち)@: (名) 学力。
被(かげ)え⓪: (名) 支配・保護のもとにあるもの。領地。封土。支配圏。勢力圏。
また、配下にある者。
被(かげ)え内(うち)⓪: (名) 領内。支配圏内。
掛合(かけ)え引合(ふぃちぇ)え⓪: (副) いろいろなものが互いに関連し合うさ
ま。 @掛合(かけ)え引合(ふぃちぇ)え夢(いみ)見(ぃん)じゅん。/いろい
ろなものが結び合わさった夢を見る。
被(かげ)え⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 支配する。また、保護する。 @島(し
ま)被(かげ)えゆん。/部落を支配する。 @余(どぅく)被(かげ)え過(すぃ)
じいねえ童(わらび)ぬ為(ため)え有(あ)らん。/あまり保護しすぎると子供の
ためにならない。 ※かげえゆん、は、共通語の古語の「被(かがふ)る」と関係の
ある語に思われる。
襤褸(かこお)⓪: (名) 「かかふ」に対応する。 @衣類のぼろ。 ➁おしめ。お
むつ。 Bぼろをより合わせて作った火種。畑・山などに行く時、たばこの火種とし
て持って行くもの。 ※襤褸(かかふ)は、万葉集・892の貧窮問答歌に見える。「か
かふ」の原文での表記は、大矢本が「可可夫」で、それ以外の諸本はすべて「可可布」
である。
襤褸火臭(かこおびかざ)⓪: (名) きな臭いにおい。 @襤褸火臭(かこおびかざ)
為(しゅ)ん。/きな臭いにおいがする。 ※共通語の「きな臭い」は、もともと、「衣
(きな)臭い」の意味らしい。
傘・笠(かさ)⓪: (名) 傘。笠。 @傘(かさ)張(は)ゆん。/傘を張る。傘を
作る。傘の種類は、段傘(だんがさ)[蘭傘]、または、顔振(かあぶ)やあ傘(がさ)
[こうもりがさ、すなわち洋傘]、藍紙傘(ええがみがさ)[着婦人用]、唐傘(とおが
さ)、または、青傘(おおがさ)の男子用、蒲葵笠(くばがさ)[びろうの笠、農民用]、
面垂(みんた)りい笠(がさ)[面垂れ笠、編笠の一種で農民用]、麦藁笠(むんじゅ
るがさ)[いなかの娘用]、編(あ)み笠(がさ)[芝居用]、花笠(はながさ)[芝居用]
など。
瘡(かさ)⓪: (名) 瘡。悪性の腫れものをいう。普通の腫れものは、根蓋(にいぶ
たあ)、という。
臭(かざ)@: (名) におい。匂(に)うぃ、ともいう。匂(に)うぃ、はおとなの
使う上品な語。 @臭(かざ)為(しゅ)ん。/イ・においをかぐ。 ロ・においが
する。 @花(はな)臭(かざ)為(しゅ)ん。/花のにおいをかぐ。
苛察(がさ)あ@: (名) がさつな者。教養の低い潤いのない人間。
飾(かざ)い@: (名) 飾り。装飾。
がさがさ@: (副) @ごとごと。がさがさ。物のふれ合う音、ねずみが物を引く時の
音など。 ➁口ざわりの悪いさま。食物に砂がはいった時などにいう。じゃりじゃり。
にりがさがさ、ともいう。
瘡気(かさき)@: 瘡のできかかる気配・性質。
嵩上(かさ)ぎ⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) はらむ。みごもる。妊娠する。女は、
巣出果報(しどぅうがふう)為居(しょお)ん。[ありがたい頂戴物をいただいている]
などという。 @嵩上(かさ)ぎら為(しゅ)ん。/はらませる。妊娠させる。不義
の場合などにいう。
嵩上(かさ)ぎん人(ちゅ)⓪: (名) 妊婦。
痰(かさぐい)@: 痰。
傘細工(かさぜえく)⓪: (名) 傘作りを業とする者。傘屋。
重(かさ)に重(がさ)に@: (名・副) 重ね重ね。 @重(かさ)に重(がさ)に
ぬ事(くとぅ)。/重ね重ねのこと。 @重(かさ)に重(がさ)に言(ぃゆ)ん。/
何度も言う。
重(かさ)⁼ぬん⓪: (自 ⁼まん、⁼でぃ) かさむ。かさばる。
傘張(かさは)やあ⓪: (名) 傘張り。傘作りを業とする者。
嵩張(かさば)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @重なる。二重になる。 ➁かさばる。
⁻かさび: (接尾) 重ね。 @一重(ちゅかさ)び。/一重ね。 @二重(たかさ)び。
/二重ね。 など。
重(かさ)び⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 重ねる。
瘡蓋(かさぶた)@: (名) かさぶた。腫れものがつぶれてから、上に生ずる厚い皮。
瘡蓋(かさんた)、ともいう。
蝤蛑(がざみ)⓪: (名) 蟹の一種。海に産し、体が大きく、美味。 ※蝤蛑(がざ
み)は、広辞苑にも載っている共通語である。
飾(かざ)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 飾る。 @飾(かざ)い立(た)てぃゆん。
/飾り立てる。
蚊(がざん)⓪: (名) 蚊。蚊(がじゃん)、ともいう。
瘡蓋(かさんた)@: (名) 瘡蓋(かさぶた)、と同じ。
綛(かし)⓪: (名) @裃糸(かせいと)。綛(かせ)。布を織る経糸。 ➁桛(かせ)。
経糸を巻きつける器具。 @桛(かし)掛(か)きゆん。/かせにかける。一反分の
糸を張りわたす。 ※@裃糸、となっているが、桛糸の誤りだと思う。裃は、「かみし
も」という国字である。 *おもろさうし・983に、かせ、とある。
陰(かじ)⓪: (名) 陰。光の当たらない場所。 @木(きい)ぬ陰(かじ)。/木陰
[木(きい)ぬ影(かあぎ)]ともいう。
舵(かじ)⓪: (名) 舵。
風(かじ)@: (名) 風。
項(かじ)@: (名) うなじ。えりくび。
筋(かじ)@: (名) 繊維。筋。
⁻かじ: (接尾) ごと。たび。ごとに。たびに。 @人(っちゅ)かじ。/人ごとに。
@地内(ちねえ)かじ。/家ごとに。など。 @家(やあ)かじ旗(はた)ぬ立而居
(たっちょお)ん。/家ごとに旗が立っている。
餓死(がし)@: (名) 飢饉。餓死の転意。餓死は、痩(やあ)さ死(じ)に、とい
う。
綛綾(かしあや)⓪: (名) 縦縞。
加勢(かしい)⓪: (名) 加勢。手伝い。援助。応援。 @加勢(かしい)為(しゅ)
ん。/※動詞化。
楫(かじ)い⓪: (名) @ねばり強い者。容易に負けない者。➁下品な者。下等な者。
加勢加勢(かしいかしい)@: (副) さっさと。手早く。 @加勢加勢(かしいかし
い)為(せ)え。/さっさとしろ。
風上辺(かじぅわあら)⓪@: (名) 風上。風上辺(かじわあら)、ともいう。
樫皮(かしがあ)⓪: (名) 南京袋などに用いる粗布。木の繊維で作る。
項皮(かじがあ)@: (名) 項(かじ)、の卑語。首のねっこ。⁻があ<かあ(皮)。
樫皮袋(かしがあぶくる)⓪: (名) 南京袋。
項掛(かじか)き⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 念を押す。だめを押す。また、約束
する。
数々(かじかじ)⓪: (名・副) たびたび。 @数々(かじかじ)ぬ事(くとぅ)や
てぃ。/たびたびの事で。 @数々(かじかじ)御面倒(ぐみんどお)掛(か)きて
ぃ。/たびたび御面倒かけて。
風片処(かじがたか)@: (名) 風よけ。風を防ぐためのもの。片処(かたか)、は遮
蔽物。
筋肥(かじぐぇ)え⓪: (名) 堆肥。
綛引(かしち)⓪: (名) 布の織り始めの部分。織り始めて1尺ぐらいまでをいう。
@綛引(かしち)置(う)ちゅん。/1尺ぐらい布を織った時、ひもを切って布を巻き
つける。
爨(かしち)い⓪: (名) もち米を蒸した飯。おこわ。強飯。旧暦8月10日に作っ
て祝う。
楫(かじ)⓪利(ち)⁼ちゅん⓪: (句) 利(ち)ちゅん[利く]の項参照。 ※楫が
利く、と解釈した。
風切(かじち)り喚(あ)びい@: (名)) 声を限りに叫ぶこと。絶叫。
限(かじ)てぃ@: (副) きっと。かならず。 @限(かじ)てぃ来(ちゅう)んや
あ。/かならず来るねえ。
舵取(かじとぅ)い@: (名) 舵取り。操舵手。
餓死年(がしどぅし)@: (名) 飢饉の年。凶年。古語で、苦世(にがゆう)、ともい
う。
綛貫(かしぬ)ち⓪: (名) 経糸と緯糸。かせ糸とぬき糸。
綛貫(かしぬ)ち白髪(しらが)⓪: (名) 経糸・緯糸ともに、白髪(しらが)[その
項参照]の布。純絹。
綛貫(かしぬ)ち桐板(とぅんびゃん)⓪: (名) 経糸・緯糸とも、桐板(とぅんび
ゃん)[その項参照]で織った布。最上の夏物となる。
陰干(かじぶ)し⓪: (名) 陰干し。日陰で干すこと。
風吹(かじふ)ち@: (名) 暴風。⁻ふち<吹(ふ)ちゅん。
風吹(かじふ)ち蜻蛉(ああけえずう)@: (名) とんぼの一種。暴風の吹きそうな
時、その前触れのように群れ飛ぶ赤とんぼ。
風吹(かじふ)ち豆菜(まあみな)@: (名) ひょろ長く、細いもやし。
風回(かじまあ)い@: (名) 風が回ること。風向きが変わること。
姦(かしま)しゃん⓪: (形) かしましい。やかましい。うるさい。音にかぎらす用
いる。
風巻(かじま)ち@: (名) 旋風。つむじ風。海上の竜巻きは、龍(るう)、という。
風回(かじま)やあ⓪: (名) @風車(かざぐるま)。風に舞うものの意か。 @花(は
な)ぬ風回(かじま)やや風(かじ)連(つぃ)りてぃ回(みぐ)る、我身(わみ)
や友(どぅし)尋(とぅ)めてぃ遊(あすぃ)び欲(ぶ)しゃぬ。[花の風車や 風つ
れてめぐる 我身やどしとまひて 遊びぼしやの(女物狂)]花の風車は風といっしょ
に回る、わたしは友だちを捜して一緒に遊びたい。 ※女物狂(おんなものぐるい)
は、玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)作の組踊である。 @風回(かじま)やあぬ
御祝(ういうぇ)え。/九十九歳の祝い。来客にみやげとして風車を贈る。 ➁転じ
て、十字形のもの。 B十字路。四つ角。 C首里の尚家の角にある十字路。 D植
物名。くちなし。その白い花が十字形をしているのでいう。朽(く)ち無(な)し、
ともいう。 ※くちなしの花は6弁である。十字形ではない。子供がこの花を風車の
ようにして遊んだので、かじまやあ、と呼ぶのだと思う。なお、風に回るものは、か
じまあやあ、風に舞うものは、かじもおやあ、である。どちらが、かじまやあ、に変
化したのかは不明。
風守(がじま)る⓪: (名) 榕樹。ガジマル。沖縄至る所にある亜熱帯植物。老樹に
なると枝から気根が出て地中に入る。果実はいちじくに似て小さい。
隠(かじ)み外(ふか)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 大事にしまい込んで、どこに
あるのかわからなくなる。
隠(かじ)み物(むん)⓪: (名) 大事にしまって置いたもの。とっておき。秘蔵品。
隠(かじ)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 秘蔵する。大事にしまって置く。
蚊(がじゃん)⓪: (名) 蚊。
頭(かしら)⓪: (名)[文] 髪。 @東(あがり)赤(あか)がりば墨(すぃみ)習
(な)れが行(い)ちゅん、頭(かしら)結(ゆ)てぃ給侍(たぼ)り吾(わ)親愛
(うやがな)し。[あがりあかがれば 墨習れが行きゆん かしら結てたばうれ 我親
がなし]東の空が明るくなれば学問を習いに行きます。髪を結ってください。おかあ
さま。
頭(かしら)⓪: (名) かしら。長。
筋(かじ)らあしゃん⓪: (形) 卑しい。さもしい。
頭毛(かしらぎい)⓪: (名)[文] 頭髪。髪の毛。 @頭毛(かしらぎ)ぬ霜(しむ)
や何時(いつぃ)ぬ間(ま)に降(ふ)たが、肝(ちむ)や今(なま)春(はる)ぬ
盛(さか)りやすぃが。[髪毛の霜や いつの間に振たが 肝やなま春の 盛りやすが]
髪の毛の霜はいつの間に降ったか。心はまだ春の盛りなのに。
頭立(かしらだ)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼たん、⁼っち) かしら立つ。長として立つ。
限(かじ)ら回(まあ)い⓪: (名) 軒下の盛り土をしたところ。家の周囲の軒下に
石を並べ土を盛って、地面よりやや高くして、水はけをよくする。その盛り土した部
分。
頭役(かしらやく)⓪: (名)[文] かしら役。組踊り用語から察すると、群雄割拠時
代に城主按司の相談役・長官を兼ねていた役であったろうと思われる。
限(かじ)り⓪: (名) @限り。きり。 @浜(はま)あ行(ぃん)じん行(ぃん)
じん限(かじ)りぬ無(ねえ)らん。/浜は行っても行っても限りがない。 ➁期限。
@限(かじ)り為(しゅ)ん。/期限を決める。 @限(かじ)れえ為居(しょお)
てぃん返弁(ふぃんびの)お為(さ)ん。/期限は決めておいても返しはしない。 B
(接尾)限り。ありったけ。 @命限(ぬちかじ)り働(はたら)ちゅん。/命の続
く限り働く。
悴者(がじりむん)@: (名) やせ細った者。
悴(がじり)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) やせ細る。
風上辺(かじわあら)⓪@: (名) 風上辺(かじぅわあら)、と同じ。
数(かずぃ)⓪: (名) 数。
糟(かすぃ)⓪: (名) かす。よいところを取った残り。酒・豆腐のかすなど。
糟材(かすぃぜえ)⓪: (名) 泡盛のかす。酒かす。 *混効験集:乾巻・飲食に、
かすざい、とある。
糟材和(かすぃぜえええ)い⓪: (名) 酒かすの汁であえたあえ物。
糟材目(かすぃぜえみい)⓪: (名) 鷹の灰色をした目。また、その鷹。比較的安価
で士族の子供たちが買ってもらった。貴族の子供が買う、金目(ちんみい)[金色の目
の鷹]に対する。
カスィティラ⓪: (名) @カステラ。菓子名。 ➁料理名。魚肉をすりつぶし、卵を
入れて作る。材料も味も伊達巻きに似ている。
瓦斯糸(がすいとぅ)⓪: (名) [新] 瓦斯糸。
数成(かずぃな)らん者(むん)⓪: (名) 数えるに足りない者。自分の謙称として
使う。不肖。
掠(かすぃ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 痛飲する。大酒を飲む。 @掠(かすぃ)
れえ新垣(あらかち)い、飲(ぬ)めえ比嘉(ふぃじゃ)あ。/大いに飲めよ、新垣、
比嘉。[新垣(あらかち)い、比嘉(ふぃじゃ)あ、は平民の人名。語末母音を短くす
れば士族の人名となる。]
加増(かずう)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) (予定より)ふえる。増す。加増の意
か。 @人数(にんず)ぬ加増(かずう)ゆん。/人数がふえる。 @入目(いりみ)
ぬ加増(かずう)ゆん。/入費がふえる。
数(かずう)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 数える。普通は、読(ゆ)ぬん、という。
風強(かぞお)さん@: (形) 風が強い。大風というほどではないが、室内で紙が飛
んで障子をしめなければならない程度の風。海上なら、小さい漁船が警戒する程度の
風をいう。
風折(かぞお)り焚物(だむん)⓪: (名) 風で折れた木の枝をたきぎとしたもの。
気触(かぞお)り物(むん)⓪: (名) 蕁麻疹。ほろせ。 ※気触(かぶ)れるとい
う共通語と関係があると思われる。
風折(かぞお)り物(むん)⓪: (名) 風で折れた木の枝など。
肩(かた)⓪: (名) 肩。 @肩(かた)比(くら)びゆん。/肩を並べる。比肩す
るの意。
型(かた)@: (名) @型。典型。 ➁型どった絵。 @馬(ぅんま)ぬ型(かた)。
/馬の絵。 B跡かた。 C規則。規定。基準。 @型(かた)居(いぃ)すぃゆん。
/イ、規定を作る。基準を定める。 ロ、かたをつける。爪あとなどをつける。 D
かた。抵当物。担保。
片(かた)⁻: (接頭) 片。片一方の。 @片足(かたふぃしゃ)。片手(かたでぃい)。
など。
⁻方(かた): (接尾) @方向。方面。方。 @東方(あがりかた)[東の方]。下方(し
むかた)[島尻方面]。首里方(しゅいがた)ぬ侍(さむれえ)[首里の士族]。 など。
方(がた)⓪: (名)[新] 次の句で用いる。 @方回(がたまあ)ゆん。/[俗語]
(破局が)やがて来ようとしている。たとえば、陶器にひびが入ってやがて割れよう
としている時、やがて捕らわれそうな状態である時などにいう。方(がた)<⁻方(が
た)あ[〜しそう]。
潟(がた)@: (名) 埋立地。
⁻方(がた): (接尾) 〜しそう。ふつう、⁻方(が)たあ、を多く用いる。まさにその
ことが起ころうとしていること。 @死(し)に方(がた)/死にそう。など。
⁻方(がた)あ: (接尾) 〜しそう。まさにそのことが起ころうとしているさま。回(ま
あ)ゆん、の項参照。 @雨降(あみふ)い方(がた)あ。/雨が降りそう。 @死
(し)に方(がた)あ。/死にそう。 @落(う)てぃい方(がた)あ成而居(なと
お)ん。/落ちそうである。 @泣(な)ち方(がた)あ回而居(まあとお)ん。/
泣きそうである。 など。
片上(かたあ)がい⓪: (名) 料理などが片側だけでき上がること。半煮え。蒸し物
などが片側だけ煮えて、他の側が煮えない場合などをいう。
語(かた)い部(び)@: (名)[文] 語る人。「語り部」に対応すると見られる。⁻び、
の付く語にはほかに、知(し)らし部(び)[知らせる人]などがある。
片腕(かたうでぃ)⓪: (名) @片腕。 ➁最も頼みとなる、協力者。片腕。
片思(かたうむ)い⓪: (名) 片思い。片恋。
片親(かたうや)⓪: (名) 片親。また、片親しかいないこと。
片処(かたか)⓪: (名) @遮蔽。さえぎるもの。 @太陽片処(てぃいだがたか)[日
よけ]。風片処(かじがたか)[風よけ]。など。 ➁庇護。かばうこと。 @縁(いぃ
ん)ぬ面片処(つぃらがたか)。/縁が顔をかばう。縁のある者は顔までいい顔に見え
る。 @片処(かたか)為(しゅ)ん。/さえぎる。よける。また、かばう。
片欠(かたか)き⓪: (名) 片手落ち。不公平。 @今日(ちゅう)ぬ月影(つぃち
かじ)や国々(くにぐに)ん照(てぃ)ゆら、片欠(かたか)きん無(ね)らぬ天(て
ぃん)ぬ御肝(うじむ)。[けふの月影や 国々も照ゆら 片欠もないらぬ 天のお肝]
きょうの月影は国々を照らすだろう。不公平もない天の御心。
片掛(かたか)き真掛(まあか)き⓪: (副) 方々の仕事を掛け持ちするさま。
片掛(かたか)き⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 兼務する。掛け持つ。片手間に他の
仕事をする。くり合わせて仕事する。 @忙(いちゅな)さん片掛(かたか)きてぃ。
/忙しいのもくり合わせて。
片糟(かたかさ)あ@: (名) 片糟(かたかし)、と同じ。
片糟(かたかし)@: (名) 魚名。赤味を帯びた黒い、ありふれた魚で、干物にする
ことが多い。
片頭(かたかしら)⓪: (名) [欹髻]成人男子の髪型。元は頭の右辺に結び、後に
は中央に結ぶようになった。貴族は15歳で、一般は10歳内外で結った。
片頭結(かたかしらゆう)い⓪: (名) [欹髻結]元服。男子が10歳前後に達した
時、はじめて、片頭(かたかしら)、を結う儀式。親戚中の人格者・成功者に結っても
らい、盛大に祝って、供の者を従えて親類回りをして披露した。貴族の場合は、15
歳で行い、元服(ぢんぶく)という。
片頭結(かたかしらゆう)やあ⓪: (名) 髪結い床。一貫髷(いっくぁんまぎ)、二貫
髷(にくぁんまぎ)など、料金の別があった。
旁(かたがた)@: (副) たまたま。あいにく。一時に両様のことがある場合にいう。
@行(い)きわどぅやたすぃが、旁(かたがた)忙(いちゅな)しい場所(ばしゅ)
やてぃ、行(い)からんたん。/行くべきだったが、ちょうど忙しくて行けなかった。
※旁(かたがた)は、源氏物語にも見える古い共通語である。
がたがた@: (副) @がたがた。恐れ・寒さなどで体がふるえるさま。 ➁がたがた。
安定が悪く音が出るさま。 @走(はし)るぬがたがた為居(しょお)ん。/雨戸が
がたがたしている。
片処道(かたかみち)⓪: (名) ひっこんだところにある、人目につかない道。
片具(かたぐう)⓪: (名) 片方。一対あるものの片方。
片具混(かたぐうまん)ちゃあ⓪: (名) 片ちんば。ちぐはぐ。箸・下駄など、一対
となるべきものが互いに不揃いなこと。
片心(かたくくる)⓪: (名) 片心の意。次の句でいう。 @片心(かたくくる)許
(ゆる)しゅん。/(すっかり安心するのでなく)ひとまず安心する。一息つく。
片腰脱(かたくしぬ)じ⓪: (名) 片袖を脱ぐこと。女が働きやすくするためにする。
固(かた)く貫(ぢ)ら⓪: (副) @始終。ずっと。 @小(くう)さにから固(か
た)く貫(ぢ)ら。/小さい時からずっと。 ➁〜をはじめとして。 @刀自子(と
ぅじくぁ)固(かた)く貫(ぢ)ら残(ぬく)らじに殺(くる)ち、味方(みかた)
に怪我(きが)や一人(いちに)ぬん居(うぅ)やびらん。[妻子かたくづら 残らず
に殺ち 味方に怪我や 一人も居やべらぬ(忠臣身替)]妻子をはじめ残らず殺し、味
方にけがはひとりもおりません。 ➁早々。 @来(ち)いや固(かた)く貫(ぢ)
ら。/来るが早いか。 ※忠臣身替(ちゅうしんみがわり)は、辺土名親雲上(へん
となぺえちん)作の組踊である。
片口笑(かたくちわれ)え⓪: (名) 微笑。ほほえみ。片口笑いの意。
肩腕(かたげえな)⓪: (名) 肩から二の腕にかけての部分をいう。
肩先(かたさち)⓪: (名) 一方の手を伸ばした、その先端から他方の肩先までの長
さ。布の長さなどを計る基準。肩先の意。鯨尺3尺。
固(かた)さん@: (形) @固い。堅い。 ➁濃い。那覇では、濃(くう)さん、と
いう。 @此(く)ぬ御汁(うしろ)お、味噌(んす)ぬ固(かた)さん。/このお
つゆは味噌が濃い。 @此(く)ぬ赤(あか)尚(なあ)少(いふぇ)え固(かた)
されえやあ。/この赤がもうすこし濃ければねえ。 B堅い。堅実である。義理堅く、
品行が正しい。 @堅(かた)しい人(っちゅ)。/堅い人。
固(かた)し油(ゆう)⓪: (名) 髪油。女が髪につける油。
片筋(かたすぃじ)@: (名) 布を織る時の、経糸一本。一葉(ちゅふぁあ)[経糸二
本]に対して片すじの意。
片隅(かたすぃみ)⓪: (名) 片隅。
片袖(かたすでぃ)⓪: (名) 片袖。
片袖脱(かたすでぃぬ)じ⓪: (名) 片腰脱(かたくしぬ)じ、と同じ。
敵(かたち)⓪: (名) @敵(かたき)。 ➁気の合わない者。
形(かたち)@: (名) @形。 ➁姿。容貌やなりふり。 @形(かたち)ぬ良(ゆ)
たしゃん。/姿がいい。
固茶(かたぢゃあ)@: (名) 濃い茶。 @固茶(かたぢゃあ)飲(ぬ)でぃ目固(み
いぐふぁ)い為居(しょお)ん。/濃い茶を飲んで眠れない。
型付(かたつぃ)き@: (名) 型付け。染め方の一種。型紙を布の上に張り、その上
から染料を塗って模様をつけるもの。また、その染めた布・着物。紅型(びんがた)、
藍型(ええがた)、などがある。
型付(かたつぃ)きやあ⓪: (名) 型付け[紅型(びんがた)、藍型(ええがた)など]
を業とする者。
片付(かたづぃ)き⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 片付ける。
片頭病(かたつぃぶるや)ん⓪: (名) 偏頭痛。半頭痛(はんづぃちゅう)、ともいう。
片爪蟹小(かたつぃみがにぐぁあ)@: (名) かにの一種。海産で、一方のはさみだ
けが大きい。 ※シオマネキをさすようである。
片膝(かたつぃんし)⓪: (名) 片ひざ。 @片膝(かたつぃんし)立(た)てぃゆ
ん。/片ひざを立ててすわる。昔の男女の正座のしかたである。のちには、男は端座、
女は横ずわりが正座となった。 ※韓国のドラマを見ると、男女ともに片膝を立てて
座っているようである。
片手(かたでぃい)⓪: (名) 片手。片方の手。
片手間(かたてぃま)⓪: (名) 片手間。
片胴(かたどぅう)⓪: (名) 半身。体の右あるいは左の半分。
片時(かたとぅち)⓪: (名)[文] 片時。 @別(わか)り日(び)や詰(つぃ)ま
てぃ明日(あちゃ)が日(ふぃ)に成(な)りば、片時(かたとぅち)ん御側(うす
ば)離(はな)り苦(ぐり)しゃ。[別れ日やつまて 明日が日になれば 片時もお側
はなれぐれしや]別離の日が迫って、あすの日になると片時もお側を離れられない。
刀(かたな)⓪: (名)刀。
⁻難成(がたな)さん: (接尾) 〜し兼ねる。〜し難い。(気を使うために)〜しにく
い。 @行(い)ち難成(がたな)さん。/行きにくい。 @別(わか)り難成(が
たな)さ。/別れがたいこと。 など。
片荷(かたにい)⓪: (名) 半分の荷。半荷。 @片荷(かたにい)降(う)るしゅ
ん。/負担が軽くなる。
片煮(かたに)い⓪: (名) 片方だけ煮えて、他の片方がよく煮えていないこと。半
煮え。
肩似合切(かたねえち)り⓪: (名) 肩上げ。子供の着物のゆきを肩のところに縫い
上げておくこと。
肩張(かたば)い⓪: (名) 肩の盛り上がったところ。また、肩の張りぐあい。
肩幅(かたはば)⓪: (名) 肩幅。
片腹(かたはら)⓪: (名) かたわら。わき。 @割(わ)れえ片腹(かたはら)ん
かい。/かけらはわきへ。割れものを落として割った時、そばの者が先回りしてひや
かすことば。
潟原(かたばる)@: (名) 潟。干潟。遠浅で、潮の干満によって現れたり隠れたり
するところ。原(はる)、は平原。
片引(かたびい)ち⓪@: (名) えこひいき。偏愛。
片帆(かたぶ)⓪: (名)[文] 片帆。片方の帆。諸帆(むるふ)、の対。 @片帆(か
たふ)持上(むちゃぎ)りば片目(かたみ)ぬ涙(なだ)落(う)とぅち、諸帆(む
るふ)持上(むちゃぎ)りば諸目(むるみ)ぬ涙(なだ)落(う)とぅち。[片帆もち
やげれば 片目の涙落ち 諸帆もちやげれば 諸目の涙落ち(おやあんま狂言)](別
れを悲しんで)片方の帆をあげれば片方の目の涙を落とし、両方の帆をあげれば両目
の涙を落して。 ※狂言は、能狂言のことではなく、いわゆる芝居一般をさすようで
ある。
片刃(かたふぁ)⓪: (名) 片刃。諸刃(むるふぁ)[両刃]の対。
片端(かたふぁ)⓪: (名) 片輪。不具。
片端(かたふぁ)あ⓪: (名) 片輪者。
片刃細具(かたふぁすぃいぐ)⓪: (名) 片刃の小刀。
片端者(かたふぁむん)⓪: (名) 片輪者。片端(かたふぁ)あ、ともいう。
片足(かたふぃしゃ)⓪: (名) 片足。
片引(かたふぃ)ち@: (名) 畸形。
片引(かたふぃ)ち者(むん)@: (名) 畸形の者。
片降(かたぶ)い⓪: (名) かたしぐれ。片方は晴れていながら片方で降る夏の雨。
@夏(なつぃ)ぬ雨(あめ)え馬(ぅんま)ぬ長根(ながに)ん降(ふ)い分(わ)
かしゅん。/(夏の雨は馬の背も降りわける)という。
塊(かたまい)@: (名) かたまり。
塊(かたま)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) つまる。塞がる。 @鼻(はな)ぬ塊(か
たま)ゆん。/鼻がつまる。 @溝(んず)ぬ塊(かたま)ゆん。/溝がつまる。 @
塊(かたま)らしゅん。/つまらせる。
片間処空(かたまどお)ち⓪: (名) 一段落。仕事などが一段落してちょっと暇にな
ること。 ※片(かた)・間処(まどぅ)・空(あ)ち、が変化した語と思われる。
片身(かたみ)@: (名) 男女の契り。また、契りとしてとりかわすもの。
形見(かたみ)@: (名) 形見。死者または長く別れる人の形見。
⁻担(かた)み: (接尾) 荷。かつぎ上げる荷を数える接尾辞。一担(ちゅかた)み[一
かつぎ]、二担(たかた)み[二かつぎ]、など。
担(かた)み商(あちね)え⓪: (名) 行商。また、行商人。荷をかついで商う男を
いう。荷を頭にのせて行商する女は、頭(かみ)い商(あちね)え。
片目(かたみい)⓪: (名) @片目。一方の目。 @片目(かたみい)閉(くう)ゆ
ん。/片目を閉じる。 ➁片目。隻眼。また、片目の者。
片道(かたみち)⓪: (名) 片道。
担(かた)み手間(でぃま)⓪: (名) かつぎ賃。かついで運ぶ手間賃。
担(かた)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) かつぐ。荷を肩にのせる。 @鉄砲(て
ぃっぷう)担(かた)みゆん。/鉄砲をかつぐ。
塊(かた)み⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @濃くする。茶・色彩などについていう。
➁[新]固くする。
語(かた)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) [文] 語る。 @語(かた)やびら。/
語りましょう。 @良(い)い事(くとぅ)語(かた)り。/[口語]からすが鳴い
た時に言うまじない。いいことを語れの意。
語(かた)ら⁼ゆん@: (他 ⁼あん、⁼てぃ) 仲間に入れる。味方に引き入れる。「語
らう」に対応する語だが、⁻かた(方・味方)との連想がある。
語(かた)れえ@: (名) @仲間となること。仲間入りを約束すること。 ➁男女の
一緒になる約束。言語(いかた)れえ、ともいう。
片分(かたわ))き⓪: (名) 不公平な配分。片寄った分け方。 *混効験集:坤巻・
言語に、かたわけ、とある。
片分(かたわ))き手(てぃい)⓪: (名) 勝負事で人数を二手に分けること。
片割(かたわ)り⓪: (名) 片割れ。割れた一片。
傾(かたん)き⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 傾ける。
傾(かたん)ち⓪: (名) 傾き。傾斜。
傾(かたん)ち走(ば)い⓪: (名) 恥じてこそこそと急いで行くこと。傾き走りの
意。
傾(かたん)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) @傾く。 @日(ふぃい)ぬ傾(かたん)
而居(ちょお)ん。/日が傾いている。 ➁傾倒する。熱中する。
肩項(かたんなじ)⓪: (名) 着物をゆがめて着ること。褄があわないこと。項(ん
なじ)、は背縫いのことで、これが片方にゆがむ意。
徒歩(かち)⓪: (名) 徒歩。 @徒歩(かち)から行(い)ちゅん。/徒歩で行く。
勝(か)ち⓪: (名) 勝ち。
垣(かち)@: (名) 垣根。単独では、普通いけ垣をいう。垣根の種類は、石垣(い
しがち)、瓦石垣(かあらいしがち)[瓦と石の垣]、塀垣(ふぃいがち)[板塀]、竹垣
(だきがち)[竹垣、また竹のいけ垣]、暖竹垣(でえくがち)[暖竹(でえく)の垣]、
月橘垣(ぎきじがち)[つげの垣]、福木垣(ふくじがち)[福木の垣]、竹編垣(ちに
ぶがち)[竹を編んだ垣]、など。
⁻かち: (接尾) 働くことに関係のある語の下につけ、反復の意を表す接尾辞。 @濯
(すす)いかち[ぞうきんがけ]、箒(ほおち)かち[掃き掃除]、用事(ゆうじゅ)
かち[用足し]、など。
餓鬼(がち)⓪: (名) 食いしんぼう。食をむさぼる者。餓鬼のような者。
⁻がちい: (接尾) ながら。つつ。がてら。 @歩(あ)っちゃがちい読(ゆ)ぬん。
/歩きながら読む。
勝(か)ち戦(いくさ)⓪: (名) 勝ちいくさ。
書(か)ち入(い)り⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 書き入れる。書き込む。
餓鬼(がち)ぎさん⓪: (形) 餓鬼のようである。食い意地が張っている。餓鬼(が
ち)らあしゃん、ともいう。
掻(か)ち込(く)⁼ぬん⓪: (他 ⁼まん、⁼でぃ) (食物を)かき込む。
掻(か)ち穿(くじ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) ひっかき回す。ほじくり回す。
掻(か)ち崩(くん)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 突きくずす。掻いてくずす。
餓鬼返(がちけえ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 食い意地が張る。がつがつする。
書(か)ち添(すぃ)い⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 書き添える。
掻(か)ち縋(すぃが)い縋(すぃが)い⓪: (副) 抱きつき、すがりつくさま。 @
掻(か)ち縋(すぃが)い縋(すぃが)い為(しゅ)ん。/※動詞化。
餓鬼茶(がちちゃあ)⓪: (名) うに。那覇で、真潮喰(まあしゅくぇ)え、農村で、
海胆(うな)あ、というようである。黄色辛塩(ちいるからしゅ)[黄色い塩辛]にす
る。
書(か)ち付(つぃ)き⓪: (名) 書き付け。また、文書。
垣花(かちぬはな)⓪: (名) 垣花。 ※「かきのはな」、那覇市の地名。
掻(か)ち放(ほお)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 掻き散らす。
掻(か)ち放(ほお)りい⓪: (名) 散らかっていること。乱雑。
勝(か)ち負(ま)き@: (名) 勝ち負け。勝敗。
餓鬼猫(がちまやあ)⓪: (名) 餓鬼のような猫。泥棒猫。
掻(か)ち巡(みんぐぁ)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) かき回して濁らす。また、
かき乱す。かき回して紛糾させる。
書(か)ち物(むん)⓪: (名) 書きもの。
蚊帳(かちゃ)@: (名) 蚊帳。 @蚊帳(かちゃ)引(ふぃ)ちゅん。/蚊帳を吊
る。 ※今は、蚊帳(かや)という字が読めない人がほとんどだと思う。 *おもろ
さうし・1367に、かちや、とある。
掻合(かちゃあ)しい⓪: (名) 三味線の曲の一種。ジャズのように急テンポで乱調
子のもの。歩(あ)っちゃ前(めえ)小(ぐぁあ)、という乱舞に合わせるもの。
掻合(かちゃあ)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) かき混ぜて一緒にする。「かきあわ
せる」に対応する。
掻上(かちゃ)ぎ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) (灯心などを)かき上げる。
鍛冶屋出風節(かぢゃでぃふうぶし)⓪: (名) [かげやで風節]歌曲の名。祝宴の
最初に歌うめでたい歌の節の名。御前風節(ぐじんふうぶし)に属する。「この名称、
漠然と拠るところなけれども、或人の説に、カンヂヤーデーフーなり、むかし、国頭
間切奥間村の鍛冶屋、尚円王を救ひ奉りたる御褒賞によりて、国頭間切総地頭を命ぜ
られ、按司の位に叙せられたる嬉しさをかたどりて作りたる歌曲にして、カンヂヤー
首里に出るの風儀といふの意なりといふ。此の外他説あれども、此の説近きに似たり、
斯く記して後人の参考を待つ。鍛冶屋の末世は今の馬国頭按司家也。(南島八重垣)」
代表的な歌詞を二つあげておく。 今日(きゆ)ぬ誇(ふく)らしゃや何(な)う似
(に)じゃな譬(たてぃ)る、蕾(つぃぶ)でぃ居(うぅ)る花(はな)ぬ露(つぃ
ゆ)来当(ちゃ)た如(ぐとぅ)。[けふのほこらしやや なをにぎやなたてる つぼ
でをる花の つゆきやたごと]きょうのうれしさは何にたとえられようか。花のつぼ
みが露にあったようだ。 急(あた)果報(がふう)着(つぃ)ちゃすぃ夢(ゆみ)
やちょん見(ん)だん、我胴(わどぅ)やりば我胴(わどぅ)い拝(うぅが)でぃ巣
出(すぃでぃ)ら。[あた果報のつきやす 夢やちよも 見らぬ 我胴やれば我胴い 拝
ですでら]こんな幸運が来るとは夢にも見なかった。わが身がわが身であるとも思え
ない。ありがたくいただきましょう。 ※「あたがふう」の「あた」は共通語の古語
である。万葉集・4382、「ふたほがみ悪(あ)しけ人なりあた病(ゆまひ)わがす
る時に防人(さきもり)にさす」。作者は栃木県那須郡の人で、病(ゆまひ)は方言の
ようである。急病の時に防人にさせられた歌。「あた」は、現在でも、中国・四国地方
に方言として残っているらしい。にわか雨のことを現代琉球語では、「あったぶい」と
いい、「あた」が「あった」に変化したようであるが、八重山地方では、いまも「あた
ぶい」というらしい。
掻(かちゃ)⁼ぬん@: (他 ⁼まん、⁼でぃ) ひっかく。爪でかきむしる。
掻(かちゃ)ん喰(くぁ)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 盛んにひっかく。かきむし
る。
勝(か)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼たん、⁼っち) @勝つ。 ➁まさる。すぐれる。 @存分
(じんぶの)お無(ねえ)んすぃが影(かあげ)え勝而居(かっちょお)ん。/才能
は無いが、容姿はすぐれている。
掻(か)⁼ちゅん⓪: (他 ⁼かん、⁼ち) @(かゆい所などを)かく。 ➁(恥を)か
く。 @生(い)ち恥(はじ)掻(か)ちゅん。/大恥をかく。
書(か)⁼ちゅん⓪: (他 ⁼かん、⁼ち) 書く。描く。
構(か)⁼ちゅん⓪: (他 ⁼かん、⁼ち) 組み立てる。「構く(かく)」に対応する。 @
棚(たな)構(か)ちゅん。/棚を作る。
餓鬼らあしゃん⓪: (形) 餓鬼(がち)ぎさん、と同じ。
摑(かつぃ)み⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @つかむ。にぎる。 @落(う)てぃ
らん如(ぐとぅ)枝(ゆだ)掴(かつぃ)みゆん。/落ちないように枝につかまる。
➁つかまえる。捕らえる。 @盗人(ぬすどぅ)掴(かつぃ)みゆん。/泥棒をつか
まえる。
掴(かつぃ)みん候(そお)れえ⓪: (名) 鬼ごっこ。つかまえなさいの意。
鰹(かつう)⓪: (名) かつお。かつおぶしの意もある。 @鰹(かつう)生(ふぇ)
えしゅん。/かつおぶしをけずる。 ※生(は)やすは、切る、削るなどの忌み詞(こ
とば)で、保元物語にも見える。
嘉津宇(かつう)@: 嘉津宇。 ※「かつう」、国頭郡本部町の地名。
鰹煎(かつうしん)じ⓪: (名) かつおぶしのだし汁。
嘉津宇岳(かつうだき)@: (名) 嘉津宇岳。国頭郡本部半島にある山の名。 *お
もろさうし・1205に、「かつお、たけ」とある。
鰹節(かつうぶし)@: (名) かつおぶし。
かっくいかっくい⓪: (名) 下駄(の音)の小児語。
格好(かっこお)⓪: (名) 格好。ようす。なりふり。
学校(がっこお)@: (名) 学校。学校地(がっこおじ)、ともいう。首里には、各村
に、村学校(むらがっこお)、平等(ふぃら)ごとに、平等学校(ふぃらがっこお)、
さらにその上に、国学(くくがく)、があった。 ※平等(ふぃら)、は首里独特の行
政区。
学校地(がっこおじ)@: (名) [学校所]学校(がっこお)、と同じ。
軽(かっ)さん@: (形) @(お産・病気などが)軽い。 ➁(進物などが)軽少で
ある。 目方が軽い意では、軽(がっ)さん、という。
軽(がっ)さん@: (形) 軽い。目方が、軽い。また、軽薄である。 軽(かっ)さ
ん、とは意味が異なる。
勝連(かっちん)⓪: (名) 勝連。 ※「かつれん」、うるま市の地名。 *おもろさ
うし・1163に、かつれん、とある。かつれんは、巻16に頻出する。
勝連(かっちん)ぬ岬(みさち)⓪: (名) 勝連岬。沖縄本島東海岸にある岬。
確掴(かっつぃか)⁼ぬん@: (他 ⁼まん、⁼でぃ) つかむ。ひっつかむ。
勝手(かってぃ)@: (名) 勝手。都合のよいまま。きまま。 @吾(わあ)勝手(か
ってぃ)。/わたしの勝手。 @彼(あ)りが勝手(かってぃ)。/彼の勝手。
合点(がってぃん)⓪: (名) 合点。承知。承諾。 @合点(がってぃ)ぬい。/承
知するか。 @合点(がってぃん)成(な)らん事(くとぅ)。/承知できないこと。
@合点(がってぃん)為(しゅ)ん。/※動詞化。
合羽(かっぱ)⓪: (名) 合羽。 ※合羽は、広辞苑ではカタカナで表記されるポル
トガル語からの外来語である。
額拝(がっぱい)⓪: (名) おでこ。ひたい[額(ふぃちぇえ)、向(むこ)お]、の
卑語。また、飛び出しているひたい。
額拝頭(がっぱいつぃぶる)⓪: (名) おでこの頭。ひたいの出た頭。
額拝(がっぱや)あ⓪: (名) おでこの者。
勝引(かっぴ)ち@: (名) 親類。会家(ぅうぇえか)、と同じ。
鯵(がつん)⓪: (名) 鯵。
嘉手苅(かでぃかる)⓪: (名) 嘉手苅。 ※「かでかる」、中頭郡西原町の地名。
嘉手納(かでぃなあ)⓪: (名) 嘉手納。 ※「かでな」、中頭郡嘉手納町の地名。
合(か)てぃ物(むん)⓪: (名) おかず。お菜。<合(か)てぃゆん。
合(か)てぃ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) おかずにする。おかずにして飯といっし
ょに食う。首里では単に「加える・付加する」の意では用いない。 ※万葉集・38
29、「醤酢(ひしおす)に蒜(ひる)搗(つ)き合(か)てて鯛願ふわれにな見せ
そ水葱(なぎ)の羹(あつもの)」。「合(か)つ」は、混ぜ合わせるという意味の古い
共通語である。
搗合(かて)え物(むん)@: (名) 困った事。やっかいな事。生活難・家庭の不和
などをいう。 ※搗合(かて)え、は、搗(か)ち合う、と関係のある語のように思
われる。
角(かどぅ)⓪: (名) 義理固さ。廉直な心。 @角(かどぅ)ぬ有(あ)りわどぅ
人間(にんじん)やる。/義理があってこそ人間だ。
角(かどぅ)⓪: (名) 角(かど)。
角立(かどぅだ)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼たん、⁼っち) 角が立つ。円滑に行かない。
角貫合(かどぅぬちゃあ)し⓪: (名) 軒を相接した隣。すぐ隣(の家)。
堅(かと)お@: (名) 堅固。丈夫。 @家(やあ)ぬ締(しま)れえ堅(かと)お
に為(っし)よお。/戸じまりは堅固にしろ。 @堅(かと)おな墓(はか)。/堅固
な墓。 ※これは関西弁の「堅(かと)お」と同じようであるが、関西弁は副詞のよ
うであり、琉球語は形容動詞の語幹のようである。
縢(かな)⓪: (名) 縢(かな)。かせにかける前の一束にした糸。縢(かな)、を染
色したのち、綛(かし)[かせ]にかける。のち、西洋綛(せえやんがし)、が輸入さ
れてからは、縢(かな)、を作るのは芭蕉布を織る時のみとなった。 @縢(かな)支
度(しこお)ゆん。/縢(かな)を作る。
鉋(かな)⓪: (名) かんな。大工道具の一種。 ※共通語の「かんな」は、もとも
とは「かな」であったようだ。万葉集・1385の「眞鉇持(まかなも)ち」の「鉇
(かな)」は「かんな」のことである。「眞鉇持ち」は、「弓削(ゆげ)」にかかる枕詞
である。なお、鉇は、今日のような鉋(かんな)ではなく、宮大工などが使う「ヤリ
ガンナ」のことである。
仮名(かな)@: (名) 仮名。 @仮名(かな)正(ただ)しゅん。/発音を正しく
する。逐次的に仮名で書いたとおりに正す意。平民式発音を士族式の発音に矯正する。
すなわち、たとえば、ちち(月)をつぃち(月)、みじ(水)をみずぃ(水)、すうぶ
(勝負)をしゅうぶ(勝負)のように改める。士族の子弟はこのような発音の矯正を
受けて、士族式の発音体系をもつようになった。
⁻がな: (接尾) か。疑問を表す語に付き、不定の意を示す。 @何(ぬう)がな。/
何か。 @誰(たあ)がな。/だれか。 @何処(まあ)がな。/どこか。 など。
⁻がな: (接尾) [文] 限り。可能な限り。できるだけ。口語は、がなあし。 @天
(てぃん)ぬ御咎(うとぅが)みぬ巡(みぐ)るがな巡(みぐ)てぃ。[天の御咎目の
めぐるがなめぐて(忠臣身替)]天のおとがめがめぐるだけめぐって。 ※忠臣身替は、
辺土名親雲上(へんとなぺえちん)作の組踊。咎めは、咎めるの連用形で、咎目は、
誤りであると思う。
⁻がなあ: (接尾) ながら。 @行(い)ちゃがなあ。/行きながら。 @乳(ちい)
飲(ぬ)まがなあ寝(に)んたん。/乳を飲みながら寝た。
⁻がなあし: (接尾) 〜できるだけ。 @待(ま)つがなあし待(ま)っちん来(く)
うん。/待てるだけ待っても来ない。 @上(あ)がるがなあし上(あ)がてぃ下(さ)
がるがなあし下(さ)がゆん。/上がれるだけ上がって、下がれるだけ下がる。
噛(か)なあ⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 噛む。咀嚼する。
噛(か)なあ引(ふぃ)ちゃあ⓪: (副) やたらに噛むさま。また、よく噛むさま。
@噛(か)なあ引(ふぃ)ちゃあ為(しゅ)ん。/※動詞化。
愛愛(かながな)あとぅ@: (副) 愛想よく。仲良く。また、かわいがって。 @二
人(たえ)え愛愛(かながな)あとぅ為居(しょお)んやあ。/ふたりは仲よくして
いるねえ。 *混効験集:坤巻・言語に、かながなしや、とある。
絡(かな)ぎ⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) からげる。まくり上げる。 @壷折(つ
ぃぶ)い絡(かな)ぎゆん。/尻をからげる。 @魂(たまし)絡(かな)ぎゆん。
/心をひきしめる。
金具(かなぐ)@: (名) 金具。器具につける金物。
金糞(かなくす)@: (名) 金糞(かにくす)、と同じ。
金城(かなぐすぃく)⓪: (名) 金城。 ※「かなぐすく」、那覇市の地名。
鉋屑(かなくでぃい)⓪: (名) かんなくず。
⁻愛(がな)し: (接尾) [文] ⁻愛(がな)しい、の文語。 ※⁻かなし、はおもろ
さうしの頻出語である。
⁻愛(がな)しい (接尾) [加那志]様。尊敬の意を表す接尾辞。 @按司愛(あじが
な)しい。/按司様。 @御主愛(うしゅがな)しい。/国王様。 @吾親愛(わう
やがな)し。/わが親御様。 など。また、人以外の語につく場合もある。 @御上
寝(ぅうぇえしん)愛(がな)しい召候(みしょお)り。/お休み遊ばしませ。非常
な目上に対する寝る時のあいさつ。など。愛(かな)しゃん、の転じたものと思われ
る。 ※吾親愛(わうやがな)し、は、⁻愛(がな)し、の用例とすべきである。
⁻愛(がな)しい前(めえ): (接尾) [加那志前]様。尊敬を表す接尾辞。⁻前(めえ)、
も尊敬の接尾辞で、⁻愛(がな)しい、にさらに敬意を加えたもの。 @御主愛(うし
ゅがな)しい前(めえ)。/国王様。など。
愛(かな)しゃん@: (形) かわいい。愛らしい。 ※愛(かな)しゃ為(しゅ)ん。
/かわいがる。愛する。 *おもろさうし・341に、かなしや、とある。
金汁(かなしる)@: (名) 金気のある汁。 新しい鍋釜で物を煮た場合などに出る
汁。
愛(かな)しん子(ぐぁ)⓪: (名) いとし子。愛児。
金槌(かなぢちゃ)あ⓪: (名) 金槌(かにぢちゃ)あ、と同じ。
我那覇(がなふぁ)⓪: (名) 我那覇。 ※「がなは」、豊見城市の地名。 *おもろ
さうし・1276に、がなは、とある。
要(かなみ)@: (名) 交際上のかなめとなる点。すなわち、挨拶。また、交際上の
かんどころ。 @要(かなみ)掛(か)きゆん。/挨拶すべき所には必ず挨拶する。
義理をかかさない。
要上手(かなみじょおじ)@: (名) 挨拶上手。交際上手。
金物(かなむん)@: (名) 金物屋。金物を売る店。
適(かな)⁼ゆん⓪: (自 ⁼あん、⁼てぃ) @達者である。働ける。自由がきく。かな
うの意。 @胴柄(どぅうがら)適(かな)ゆん。/体が達者で働ける。 @手(て
ぃい)ぬ適(かな)あん。/手の自由がきかない。 @口(くち)ぬ適(かな)ゆん。
/口が達者である。口答えをよくする。 ➁かなう。望み通りとなる。 @願(にげ)
え事(ぐとぅ)ぬ叶(かな)ゆん。/願いがかなう。 Bかなう。敵し得る。 @吾
(わあ)があ適(かな)あん。/わたしではかなわない。 C気に入る。 @気(ち
い)に適(かな)ゆん。/気に入る。心が合う。 @心(くくる)に適(かな)ゆる
女(うぃなぐ)。/心にかなう女。気に入った女。
愛(がな)らあしゃん⓪: (形) かいがいしい。けなげである。よく立ち働くさまな
どをいう。 *混効験集:坤巻・言語に、がならさ、とある。
愛(がな)らぎさん⓪: (形) 愛(がな)らあしゃん、と同じ。
必(かなら)じ@: (副) 必ず。文語的な語。必(かんな)じ、または、必(かんな
あ)じ、が普通。
適(がな)ら者(むん)⓪: (名) 適(がな)り者(むん)、と同じ。
適(がな)り者(むん)⓪: (名) 働き者。
矩(かに)@: (名) @矩。かねじゃく。L字形のものさし。 ➁生活上・社交上のわ
く。社会的な規範。常識。また、常識があること。頭がしっかりしていること。理性・
理解力。 @矩(かに)ぬ無(ねえ)ん。/常識がない。理性がない。 @矩(かに)
ぬ外(はん)でぃ而居(とお)ん。/常識をはずれている。頭がおかしい。 @矩(か
に)掛(か)きゆん。/(社交などで)常軌をはずさない。
金(かに)@: (名) 金。金属。金銭の意では、銭金(じんかに)、という。
鐘(かに)@: (名) 鐘。また、鉦。
蟹(がに)@: (名) 蟹。
庚(かにい)@: (名) かのえ(庚)。十干の一つ。暦の上では吉日として、転宅・建
築などの日に選ばれる。
⁻金(がに)い: (接尾) [金]男の名前の下につく、敬愛の意を表す接尾辞。貴族な
どの男の名の美称となる。 @松金(まつぃがに)い[松金]。樽金(たるがに)い[樽
金]。など。 *混効験集:坤巻・言語に、かね、とある。
金帯(かにうび)@: (名) 金属製のたが。桶類のたがで、鉄・胴などで作ったもの。
金柄(かにがら)@: (名) かなてこ。鉄梃。
金井戸(かにがあ)@: (名) 鉱山。とくに銅山。沖縄では鉱山としては羽地に銅山
があっただけであった。金(かに)の井戸(かあ)の意。
兼箇段(かにかだん)⓪: (名) 兼箇段。 ※「かねかだん」、うるま市の地名。
兼久(かにく)⓪: (名) @海岸地方の砂地。 ➁馬場。 B地名に多く、兼久(か
にく)、大兼久(うふがにく)、前兼久(めえがにく)、内兼久(うちがにく)、などが
ある。
我如古(がにく)⓪: (名) 我如古。 ※「がねこ」、宜野湾市の地名。
金糞(かにくす)@: (名) かなくそ。鉄を焼いてきたえる時に落ちるかす。
兼城(かにぐすぃく)⓪: (名) 兼城。 ※「かねぐすく」、島尻郡南風原町、および、
糸満市の地名。 *おもろさうし・1343に、かねくすく、とある。
兼次(かにし)⓪: (名) 兼次。 ※「かねじ」、国頭郡今帰仁村の地名。
金性(かにしょお)@: (名) 金性。木火土金水の五行の一つで、これを人の生年に
配したもの。
兼(か)に地(ち)⓪: (名) 綱引き[綱引(つぃなふぃ)ち]の時、雄綱(うぅう
んな)と雌綱(みいんな)とのつなぎ目に通す木の棒。両方の綱の先端は輪になって
おり、雌綱の輪に雄綱の輪を入れて、その雄綱の輪に丸木棒を通し、両方で引き合う。
兼(か)に地(ち)棒(ぼお)、ともいう。 ※日本書紀などに見える、鍛(かぬち)
と関係のある語のように思われる。
兼(か)に地(ち)口(ぐち)⓪: (名) 綱引き[綱引(つぃなふぃ)ち]の時、雄
綱と雌綱とが相接し、互いにつなぐ場所。綱引き場の中央に当たる。
金槌(かにぢちゃ)あ⓪: (名) 金づち。金槌(かなぢちゃ)あ、ともいう。
兼(か)に地(ち)繋(つぃじゃ)あ⓪: (名) 綱引き[綱引(つぃなふぃ)ち]の
時、雄綱と雌綱とが互いに、兼(か)に地(ち)口(ぐち)、に寄せて来た時、兼(か)
に地(ち)、を両方の綱に貫き通す役の者。大力の者が選ばれて当たる。
兼(か)に地(ち)棒(ぼお)⓪: (名) 兼(か)に地(ち)、と同じ。
予(かに)てぃ@: (名・副) かねて。以前。また、前もって。あらかじめ。 @予
(かに)てぃからぬ願(にげ)え。/かねてからの願い。宿題。
矩外(かにはんでぃ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 耄碌する。ぼける。老人以外に
も、ぼける・性格がルーズになることにいう。正矩(しょおかに)ぬ外(はんでぃ)
ゆん、ともいう。矩(かに)、はかね尺・状態などの意。
金火箸(かにふぃいばし)@: (名) 金火箸。金属製の火箸。
黄金虫(かにぶうぶう)@: (名) こがね虫。かなぶんぶん。
金仏(かにぶとぅき)@: (名) 金仏。金属製の仏像。
金回(かにまあ)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) @包囲する。とり囲む。 ➁かばう。
擁護する。
兼(か)に⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 兼ねる。口語では、掛(か)きゆん、二(た
あ)つぃ為(しゅ)ん、などという。
不可(かに)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) さえぎる。 @水(みずぃ)不可(かに)
ゆん。/水の流れをさえぎる。 @綱(つぃな)さあに不可(かに)てぃ人(っちゅ)
通(とぅう)さん。 ※行きかねる、食べかねる、などの、かねると関係のある語の
ように思われる。
辛(かぬとぅ)@: かのと(辛)。十干の一つ。
喰(か)⁼ぬん⓪: (他 ⁼まん、⁼でぃ) 食う。食べる。敬語は、押上(うしゃが)ゆ
ん。動物について、また、卑しめていう場合は、喰(くぁ)ゆん、という。 @喰(か)
まらん。/食べられない。 @喰(か)まらん喰(か)み。/食べられないのに、食
べ(ようとす)ること。
適(かね)え⓪: (名) @借地料。また、小作料。 ➁地租。また、租税一般。 *
おもろさうし・227に、かない、とある。
適(かね)え掛(が)かい⓪: (名) 他人の土地を小作すること。
適(かね)え掛(が)き⓪: (名) 土地を他人に小作させること。
適(かね)え者(むん)⓪: (名) 働き者。よくかせぐ者。
適(かね)え寄(ゆ)し⓪: (名) 小作料を集めること。小作料を持った小作人たち
が地主の家に集まり、地主はその日ふるまいをするのが例。
芳油(かばあんだ)@: (名) 香油。丁子などを入れて香りをつけた髪油。
芳香(かばかじゃ)@: (名) 芳香。よいにおい。
芳牛蒡(かばぐぼお)⓪: (名) 料理名。ごぼうを小麦粉で包み、油で揚げたもの。
芳(かば)しゃん@: (形) 香りがよい。かんばしい。 *混効験集:坤巻・言語に、
かばしや、とある。
芳黄大根(かばちでえくに)⓪: (名) 料理名。にんじんを小麦粉で包み、油で揚げ
たもの。
蒲焼(かばや)ち@: (名) かば焼き。
紙(かび)@: (名) 紙。 ※茶紙(ちゃあかび)、藁畳紙(わらどおし)、芭蕉紙(ば
しゅうし)、百田紙(むむだかび)、杉原(すぎわら)、奉書紙(ふうしゅがみ)、美濃
紙(みぬがみ)、などの種類がある。おのおのその項参照。 ※杉原(すぎわら)、は、
共通語では、杉原紙(すぎはらがみ)という。
紙焙(かびあん)じい⓪: (名) 春秋の彼岸の祭り。平民の用いる語。銭型を打った
紙を焚いて祭るのでいう。紙あぶりの意。士族は、御紙(んちゃび)、という。
紙打(かびう)ち@: (名) 彼岸その他の祭祀用に、紙に銭型を打ちつける鉄製の道
具。これで銭型を打ちつけた紙は、打(う)ち紙(かび)、焙(あん)じ紙(かび)、
などという。 ※私自身、この道具を小学校の時に見た記憶があるが、今は、スーパ
ーに行けば、ほとんどどこでも、打(う)ち紙(かび)、を置いてある。
紙木(かびぎ)@: (名) こうぞ。紙の原料の木。
紙漉(かびすぃ)ちゃあ⓪: (名) 紙漉きを業とする者。
紙張(かびば)い@: (名) 紙張り。
川平(かびら)⓪: (名) 川平。 ※「かびら」、石垣市の地名。川平湾は絶景スポッ
トである。
頭(かぶ)⓪: (名) かんざしの端のしゃくし型の部分。 ※頭(かぶ)は、広辞苑
にも載っている共通語である。
我部(がぶ)⓪: (名) 我部。 ※「がぶ」、名護市の地名。屋我地島にある。
我張我張(がふぁがふぁ)@: (副) かくしゃくと。老人の頑健なさま。
我張為(がふぁさ)あ@: (名) 強情者。頑固者。
我張為(がふぁし)⓪: (名) 強情。頑固。 @彼(あ)れえ強張為(ぐぁふぁし)
やさ。/彼は頑固だよ。
我張(がふぁ)みか⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) (げんこつで)こつんと打つ。 @
叩触(こおさあ)強張(ぐぁふぁ)みかしゅん。/げんこつの先でこつんと食らわせ
る。
殻垢(がふぁら)⓪: (名) 不潔にした頭の皮膚にたまる黒い垢。
被(かぶ)い⓪: (名) 門・便所(ふる)、などの上のおおい。
被(かぶ)い物(むん)⓪: (名) かぶりもの。帽子など。
家風(かふう)@: (名) 家風。
果報(かふう為(し)⓪: (名)ありがとう。目下への感謝の語。目上へは、二拝(に
ふぇえ)でえ侍(び)る、という。 @果報(かふう)為(し)為(しい)びちい事
(くと)お有(あ)らに。/感謝すべきことでないか。 @果報(かふう)為(し)
やたさ。/ありがとう。 ※いかにも士族の言葉で、私は、沖縄芝居以外で聞いたこ
とがない。果報(かほう)、はおもろさうしの頻出語である。
我部祖河(がぶすか)⓪: (名) 我部祖河。 ※「がぶそか」、名護市の地名。 *お
もろさうし・1182に、かふすか、とある。
兜(かぶとぅ)⓪: (名) かぶと。
被(かぶ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 商売で損をする。被(かん)じゅん、と同
じ。御道化(うどぅき)ゆん、ともいう。
神谷(かま)⓪: (名) 神谷。 ※「かみや」、今は存在しない地名のようである。か
つては、うるま市勝連津堅にそういう地名があったらしい。
竈(かま)@: (名) かまど。昔は石三つで作ったので、御三物(うみつぃむん)[か
まどの神]という名がある。のち、土をこねて作るようになった。
鎌(かま)@: (名) 鎌。鎌(いらな)、ともいう。
竈(がま)@: (名) 洞窟。ほら穴。その多くは鍾乳洞である。普天間と金武に有名
なものがある。 @がまは、竈(かまど)に似ていることから、竈(がま)というよ
うになったのではと推測する。
腰回(がまく)⓪: (名) 腰回りの細くくびれている部分。ウエスト。 @腰回(が
まく)堅締(くんし)みる綿糸(みんさ)呉(くぃ)らな。[がまこくんしめる めん
さ呉らな(かなよ節)]腰をぎゅっとしめるメンサ帯をやろうか。
腰回骨(がまくぶに)⓪: (名) 腰骨。
魳(かまさあ)⓪: (名) 魚名。かます。
叺(かまじい)⓪: (名) かます。穀類を入れる四角い袋。 ※叺(かます)は国字
である。
竈(かま)⓪縛(しか)ゆん⓪: (句) 男女・夫婦などが、仲よくしっくり行く。 @
似合(のお)たる竈(かま)どぅ縛(しか)ゆる。/相応の者が夫婦となる。 @竈
(かま)縛(しか)てぃ二人(たい)や彼(あ)ぬ世(ゆ)迄(までぃ)ん。/[文]
仲よくふたりはあの世までも。
構不(かまじ)為(さ)あ@: (名) 愛想のない者。
構不為(かまじし)@: (名) 無愛想。 @構不為(かまじし)銜(くう)ゆん。/
にが虫をかみつぶしたように、無愛想にしている。
竈飛蝗(かまぜえ)@: (名) こおろぎ。竈(かま)[かまど]のそばにいる、飛蝗(せ
え)[ばった]の意。
框(かまち)⓪: (名) @かまち。農家の土間からの上がり口の上に渡した横木。 ➁
頭の卑語。 @框(かまち)割(わ)らりんどお。/頭を割られるぞ(けんかの文句)。
竈塗(かまぬ)い@: (名) かまど作り。こまかく刻んだわらを土とこね合わせて作
る。かまどは宗教的に大事なものであるので、吉日を選んで行う。
竈塗(かまぬ)い日(びい)⓪: (名) かまど作りの日。吉日が選ばれる。
蒲鉾(かまぶく)@: (名) かまぼこ。多く飛魚で作る。
構(かま)⁼ゆん@: (他 ⁼あん、⁼てぃ) かまう。構(かむ)ゆん、と同じ。 @構
(かま)あん。/かまわない。ほうっておく。
構(かま)らしゃあ@: (名) 気むずかしい者。
構(かま)らしゃん@: (形) 気むずかしい。よく苦情をいう。きげんをとりにくい。
@構(かま)らしい人(っちゅ)。/気むずかしい人。
竈蓋(かまんた)⓪: (名) @大なべのふた。農家でさつまいもを煮る大きななべの
ふたをいう。かや・わらなどを編んで作る。 ➁魚名。あんこう。形がなべのふたに
にているのでいう。 ※かまんたは、竈(かま)ぬ蓋(ふた)が縮まった語と思われ
る。
竈蓋(かまんた)⓪: (名) 情婦。かくし男。
構(かま)え⓪: (名) [かまい]首里城の建物の名。
神(かみ)⓪: (名) 神。天の神・地の神・屋敷の神・便所の神・かまどの神など。
神は至るところに多い。死者の霊も三十三年忌を過ぎると神になる。
神足上(かみあしゃ)ぎ⓪: (名) [神軒]部落の神を祭ってある建物。その前の広
場で祭りなどを行う。 *おもろさうし・925に、「かみ、あしやけ」、とある。
頭商(かみあちね)え⓪: (名) (女が)商品を頭にのせて売り歩くこと。
構(かみ)い@: (名) 係り。係りの役人。<構(かむ)ゆん。
上句(かみく)@: (名) 上の句。琉歌は上の句8・8、下の句8・6、全体で30
字より成る。
神御代(かみぐでえ)⓪: (名) 先史時代。大昔。上御代の意。 ※これは、やはり、
神御代の意味ではないだろうか。神代という共通語がある。
噛(か)み苦(ぐり)しゃん⓪: (形) 食べにくい。歯痛・遠慮などのために食べに
くい。
髪挿(かみさ)し⓪: (名) 男用のかんざし。男が髪を結っていたころのもので、梅
の花の形をした飾りが付いていた。貴族のものは金製、士族のものは銀製、平民のも
のは真鍮と決められていた。貴族のものは敬って、御髪挿(みかみさ)し、または、
御簪(んかんざし)、という。 ※かみさし、が変化した形がかんざしである。方言に
はこのように変化せずに残った語がある。
髪挿(かみさ)し花(ばな)⓪: (名) 植物名。さくららん。
上下(かみしむ)@: (名) 身分などの上下。上の者と下の者。
神垂(かみだあ)り⓪: (名) 神がかり。神人(かみんちゅ)になる際の精神異常の
状態。しきりに神事を口走る。神触(かみぶ)り、ともいう。
噛(か)み気(ち)⓪: (名) 胃けいれん。また、胃けいれんの持病があること。胃
けいれんで苦しむことを、噛(か)みらりゆん、という。
頭荷(かみにい)⓪: (名) 頭にのせて運ぶ程度の荷物。 かみ⁻<頭(かみ)ゆん。
持(む)ち荷(にい)、より重い。
神願(かみにげ)え⓪: (名) 神への祈願。お祈り。
神念(かみにん)じ@: (名) 神を信仰すること。神に祈ること。神頼み。
喰(か)み残(ぬく)し⓪: (名) 食べ残し。食べ残すこと。また、食べ残した余り
物。
喰(か)み外(はん)⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 食べそこなう。食いはぐれる。
また、失業する。
神仏(かみふとぅき)⓪: (名) 神仏。
喰(か)み不足(ぶらあ)り⓪: (名) 栄養不良。食うことが不足[不足(ぶらあ)
り、参照]している意。
神触(かみぶ)り⓪: (名) 神垂(かみだあ)り、と同じ。⁻ぶり<触(ふ)りゆん[狂
う]。
神谷(かみゃ)⓪: (名) 神谷。 ※「かみや」、かつて勝連間切にあった地名。「か
ま」ともいう。
頭(かみ)やあ牛(うし)⓪: (名) よく人を突く牛。
神山(かみやま)⓪: (名) 神山。 ※「かみやま」、宜野湾市の地名。
頭(かみ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @頭の上にのせる。(女が運搬のために荷
を)頭にのせる。 @頭(かみ)らしゅん。/(女の頭に荷を)のせてやる。ひとり
で運べるが、ひとりでは頭にのせられない時、それを手助けする場合をいう。 ➁い
ただく。長上からもらう意の敬語。頭上におしいただく意。 B(牛が)角で突き上
げる。 C上にのせる。
頭(かみ)ら⁼しゅん⓪: (他 ⁼さん、⁼ち) 火の上にのせて暖める。<頭(かみ)ゆ
ん(上にのせる)。 @茶(ちゃあ)頭(かみ)らしゅん。/お茶を暖める。 @御汁
(うしる)ん頭(かみ)らちから飲(ぬ)みよお。/おつゆも暖めてからお上がり。
頭(かみ)らりやあ⓪: (名) 胃けいれんの持病のある者。
頭(かみ)ら⁼りゆん⓪: (自 ⁼りらん、⁼ってぃ) 胃けいれんなどで苦しむ。棒で突
き上げられるように痛む状態をいう。牛の角で突かれることを、頭(かみ)らりゆん、
といい、そのように突き上げられるのでいう。頭(かみ)ゆん、の受身の形。
神(かみ)ん人(ちゅ)⓪: (名) 神に仕える人。神人。神の人の意。宣(ぬう)る、
根神(にがみ)、御口手(うくでぃ)、およびそれらに仕える女たちの総称。その項参
照。
鴨(かむ)⓪: (名) 鴨。
構(かむ)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) かまう。関係する。干渉する。世話する。
@構(かむ)んな。/かまうな。干渉するな。 @何(ぬう)ん有(あ)らん者(む
ん)ぬ人(っちゅ)構(かむ)てぃ。/何の関係もない人が人に干渉して。
禿髪(かむろ)お⓪: (名) @子供の髪の結い方の一種。髪の上部をまげて元結い糸
でとめるもの。 ➁川辺守(かあがりもお)[かっぱ]の那覇語。
禿髪童(かむろおわらび)⓪: (名) 髪を、禿髪(かむろ)お、に結っている子供。
構(かめ)え@: (名) 構え。こしらえ。作り。また、身の構え。 @座構(ざあが
め)え。/座敷の作り。 *混効験集:乾巻・家屋に、かまい、とある。
捜(かめえ)い物(むん)⓪: (名) 拾い物。拾った物。尋(とぅ)めえい物(むん)、
ともいう。
捜(かめえ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) (尋(とぅ)めえゆん、と同義であるが、
やや下品な語) @(落とし物などを)拾う。拾いものをする。 ➁捜し求める。 @
刀自(とぅじ)捜(かめえ)ゆん。/妻をめとる。
茅(かや)⓪: (名) 茅。屋根をふくのに用いる。
返合(かやあ)⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 持ち運ぶ。とくに、何度も持ち運ぶ場
合にいう。
茅葺(かやぶ)ち⓪: (名) 茅ぶき。
茅葺(かやぶ)ち家(やあ)⓪: (名) 茅ぶきの家。
茅家(かややあ)⓪: (名) 茅葺(かやぶ)ち家(やあ)、と同じ。
通(かゆ)い⓪: (名) @通うこと。 ➁渡り廊下。母屋と離れなどを結ぶ、板敷き
の通路など。
通(かゆ)い路(ぢ)⓪: (名)[文] 通い路。 @若(わか)さ一時(ふぃとぅとぅ
ち)ぬ通(かゆ)い路(ぢ)ぬ空(すら)や闇(やみ)ぬ坂平(さくふぃら)ん車平
原(くるまとおばる)。[若さ一時の通路の空や 闇のさくひらも 車たうばる]若い
時代に女のもとに通う身には、暗やみの急な坂も砂糖車(くるま)を据えつけるよう
な平原と同じである。 ※「さくひら」は、坂を意味する日本各地の方言「さかひら」
と関係があると思われる。平らな場所を砂糖車が回せる場所と表現したのは、沖縄ら
しい比喩だと思う。
通(かゆ)⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) [文] 通う。口語では多くは単に、行(い)
ちゅん、という。 ※「沖縄語辞典」ではアクセントの表示が抜けている。@だと思
う。
借(か)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 借りる。要(い)らゆん、の項参照。
刈(か)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 刈る。
嘉陽(かよお)⓪: (名) 嘉陽。 ※「かよう」、名護市の地名。1964年の東京オ
リンピックで聖火が宿泊した所。
殻(から)@: (名) (豆などの)さや。 @豆(まあみ)ぬ殻(から)。/豆のさや。
豆殻(まあみぐる)、ともいう。
空(から)@: (名) から。からっぽ。中身がないこと。虚(んな)、ともいう。
柄(から)@: (名) 体格。また、体力。 @柄(から)付(つぃ)ちゅん。/体力
がつく。
⁻から: (助) @から。空間・時間の起点を示す。 @此処(くま)から彼処(あま)
までぃ。/ここからあそこまで。 @今日(ちゅう)から明日(あちゃあ)までぃ。
/きょうからあしたまで。 @仕事(しぐと)お済(すぃ)まちから戻(むどぅ)れ
え。/仕事は済ませてから帰れ。 ➁を。通行する場所を示す。 @彼(あ)りが道
(みち)から歩(あっ)ちゅたん。/彼が道を歩いていた。 Bで。通行の手段を示
す。 @徒歩(かち)から行(い)ちゅん。/徒歩で行く。 @船(ふに)から行(い)
ちゅん。/船で行く。 Cから。原料・根拠などを示す。 @酒(さけ)え米(くみ)
から作(つく)ゆん。/酒は米から作る。 @其(う)ぬ事(くとぅ)から。/その
ことから。
⁻柄(から): (接尾) 匹。頭。豚などの家畜を数える時の接尾辞。 @一柄(ちゅか
ら)。/一頭。 @二柄(たから)。/二頭。 など。
殻(がら)@: (名) 殻(から)。中身のない外皮。また、中身をぬいたから。 @殻
(がら)成而居(なとお)ん。/からになっている。 ➁(接尾) @絞(しぶ)い
殻(がら)。/しぼりかす。 @荻殻(うぅうじがら)。/さとうきびのしぼりがら。
など。
空(がら)@: (名) 人畜の骨(卑語)。くずになった骨(の全体)、捨てられた骨な
どをいう。 @空(がら)成(な)ゆる迄(までぃ)ん。/くたばって死ぬまでも(悪
口)。
⁻柄(がら): (接尾) 柄。品位・様子などの意。 @地内柄(ちねえがら)。/家柄。
@所柄(とぅくるがら)。/土地柄。 など。着物の柄は、綾(あや)、という。
空威張(からいば)い@: (名)[新] からいばり。
空酔(からうぃ)い吐(ば)ち@: (名) からえずき。吐き気をもよおしながら、何
も吐けないこと。
唐芋(からぅんむ)⓪: (名)[新?] さつまいも。薩摩人が伝えた語か。普通は単に、
芋(ぅんむ)、という。
空渇(からがあ)き⓪: (名) 井戸・川などが、すっかり干上がること。
唐傘(からかさ)⓪: (名) 唐傘。かぶる笠に対する、柄のあるさし傘。
唐金(からかに)⓪: (名) 青銅。唐金。
拘(からか)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 長くかかる。手間取る。 ※一仕事(ち
ゅしぐとぅ)長(なげ)え拘(からか)而居(とお)ん。/一つの仕事に長くかかっ
ている。
からからあ⓪: (名) 酒を入れる器の一種。いろいろの形があるが、丸くて扁平、中
央に注入口、わきに注出口が付いた形のものが多い。倒れにくく、また倒れてもこぼ
れにくい。 @満(み)たんからからあ弱満(よおん)ち小瓶(ぐふぃん)。/少々足
りない人間。満たない、からからあ、や、いっぱいはない小瓶の意。振ればかえって
大きい音がする。 @満(み)たんからからあ弱満(よおん)ち心(ぐくる)、ともい
う。
がらがらあ⓪: (名) 玩具の一種。金属製の円盤に多くの小鈴をつけたもの。ふりま
わすとガラガラ鳴る。がらがら。
⁻絡(から)ぎ: (接尾) 束。束ねたもの(糸・たきぎ・萱・牧草など)を数える接尾
辞。 @一絡(ちゅから)ぎ。/一束。また、一束になるほどの分量。 @二絡(た
から)ぎ。/二束。 など。
空小買(がらぐぁあこお)やあ⓪: (名) 動物の骨を買い集め、くだいて肥料にする
業者。賤業とされる。
柄小巨(がらぐぁあまぎ)い⓪: (名) 図体ばかり大きい者。うどの大木。空(がら)
で売って初めて値になるような者。 ※がらは、空(がら)なのか殻(がら)なのか
判別しにくい。柄小(がらぐぁあ)は図体のことで、それが大きいという意味に思う。
絡繰(からく)い⓪: (名) @機械。 ➁三味線(さんしん)、のねじ。捩(むでぃ)、
結髪(じいふぁあ)、ともいう。 ※むでぃ、は、捩(むでぃ)ゆん[ねじる]の連用
形だと思われる。形がかんざしに似ていることから結髪(じいふぁあ)ともいうらし
い。結髪の北京音は、jifa(ジイファア:両方とも第四声)である。jiと発音する場合
は髷(まげ)のことをいうらしい。
絡繰(からく)い纏(まつぃ)ぶい⓪: (副) からみつき、まつわりつくさま。 @
絡繰(からく)い纏(まつぃ)ぶい為(しゅ)ん。/※動詞化。
空籤(からくじ)@: (名) からくじ。はずれたくじ。屁放(ふぃいふぃ)り籤(く
じ)[屁ひりくじの意]ともいう。
絡繰(からく)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) からみつく。まつわりつく。
辛(から)⁼さん⓪: (形) 辛い。刺激性の辛さ(唐辛子・わさびなど)をいう。塩味
については、渋辛(しぷから)さん、塩味が強いことは、塩強(しゅうぢゅう)さん、
という。 *混効験集:坤巻・言語に、からさ、とある。
軽石(からし)⓪: (名) 軽石。
辛子(からし)⓪: (名) 辛子。
肉桂(がらし)⓪: (名) 植物名。肉桂(にっけい)。樹皮は薬用にも子供の好物にも
なる。
髪(からじ)⓪: 髪。頭髪。文語では、頭(かしら)、ともいう。敬語では、御頂結(う
んちょおび)、御美頂結(ぬんちょおび)卑語では、髪頭(かんとぅ)、という。 @
髪(からじ)取合(とぅや)あ為(しゅ)ん。/髪の乱れをととのえる。 @髪(か
らじ)結(ゆ)うゆん。/髪を結う。 @髪(からじ)ぬ毛(きい)。/髪の毛。
髪毛(からじぎい)⓪: (名) 髪の毛。頭髪。
髪喰(からじくぇ)え⓪: (名) かみきり虫。
髪解(からじぶち)き⓪: (名) 抜け落ちた毛髪。抜け毛。
貸(か)らし家(やあ)⓪: (名) 貸家。
空茶(からじゃあ)@: (名) から茶。お茶うけなしのお茶。
辛塩(からしゅ)⓪: (名) 魚貝類を塩漬けにしたもの。塩辛。
髪結(からじゆ)うやあ⓪: (名) 髪結い床。片頭(かたかしら)、を結うことを業と
する者。一般人相手の職業となったのは明治以降である。
枯(か)ら⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) @(草木などを)枯らす。 ➁(声を)か
らす。
貸(か)ら⁼しゅん@: (他 ⁼さん、⁼ち) 貸す。要(い)らあしゅん、参照。
烏(からすぃ)⓪: (名) からす。凶鳥とされ、夕方家の上を鳴いて飛ぶのを見ると、
良(い)い事(くとぅ)語(かた)り[良い事を語れ]と呪文をとなえる。
空脛(からすぃに)@: (名) むこうずね。「からすね」に対比される。
烏蛇(がらすぃふぃいば)あ⓪: (名) からすへび。山かがしの一種。全身が暗灰色
をした蛇。
烏曲(がらすぃま)がい⓪: (名) 手足の指などの筋肉がひきつって痛むこと。から
すまがり(こむらがえり)には、腓上(くんだあ)がやあ、という。
空濯(からずす)い@: (名) 乾いたぞうきんで拭くこと。からぶき。
体(からた)@: (名) 体。身体。体格。柄(から)、ともいう。
唐竹(からたき)⓪: (名) [唐竹]まだけ。竹の一種。公儀用として王室のために
用い、また鹿児島に移出した。
柄強(からぢゅう)さん@: (形) 体が強い。
唐名(からな)⓪: (名) 唐名。貴族・士族のもっていた中国風の名前。たとえば羽
地朝秀の唐名は向象賢(しょおしょおけん)。
唐針(からはあい)⓪: (名) 羅針盤。唐(から)渡来の、針(はあい)、の意。
唐羽鳥(からはあとぅい)⓪: (名) 鶏の一種。大型で、闘鶏用にもされる。略して、
羽鳥(はあとぅい)、ともいう。カラバ(ジャカルタの古称)から来た鳥の意か。
唐橋(からばし)@: (名) 利口者。主に才智のある子供をいう。
唐破風(からふぁあふ)⓪: (名) 唐破風。首里城正殿[百浦添(むんだすぃ)い]
の屋根を特にさす。また、首里城正殿の俗称。
空足(からふぃしゃ)⓪: (名) はだし。
空灰(からふぇえ)⓪: (名) たきぎの灰。
空骨(からふに)@: (名) 骸骨。がら。肉の付いていない骨。 @空骨(からふに)
ぬ如(ぐとお)ん。/骸骨のようにやせている。
空回(からま)あ⓪: (名) 玩具の名。蝶型をしていて、ばねじかけで羽が閉じるよ
うになっており、あげたたこの糸に通して空中を上下させる。
絡(から)ま⁼ちゅん⓪: (他 ⁼かん、⁼ち) 巻きつける。 @糸(いいちゅう)絡(か
ら)まちゅん。/糸を巻きつける。
絡(がら)み⁼ちゅん@: (他 ⁼かん、⁼ち) [文] 奉仕する。勤める。まれな語。
@御供(うとぅむ)絡(がら)みちゅん。/お供申し上げる。「がらめき 勤め営む事
也 混効験集」。 *混効験集:乾巻・言語に、からめき、とある。
絡(から)み取(とぅ)⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) からめとる。絡(から)みゆ
ん、と同じように使う。 ※沖縄語辞典では、否定形が「たん」になっているが、「ら
ん」だと思う。
絡(から)み⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) からめる。捕まえて縛る。
辛物(からむん)⓪: (名) 辛いもの。刺激性の辛いものをいう。塩辛いものは、塩
強物(しゅうぢゅうむん)。
空物(からむん)⓪: (名) おかず[糅(か)てぃ物(むん)]のない飯。飯だけ。
空床(からゆか)⓪: (名) 板敷き。何も敷いてない板の間。
飼(から)⁼ゆん@: (他 ⁼あん、⁼てぃ) (家畜などを)飼う。
柄弱(からよお)さん@: (形) 体が弱い。
金良(からら)⓪: (名) 金良。 ※「かねら」、豊見城市の地名。
空御花(からんぱな)@: (名) 洗い清めてない、御花米(んぱなぐみ)[その項参照。]
嘉例(かりい)⓪: (名) 嘉例。吉例。めでたいこと。縁起のよいこと。不嘉例(ぶ
かりい)、の対。 @嘉例(かりい)な物(むん)。/縁起物。成功した人のみやげな
ど。
枯(か)り枝(いだ)@: (名) 枯(か)り枝(ゆだ)、と同じ。
枯(か)り烏賊(いちゃ)⓪: (名) するめ。
枯(か)り木(き)@: (名) 枯れ木。枯(か)り木(ぎい)、ともいう。
枯(か)り木(ぎい)@: (名) 枯(か)り木(き)、と同じ。
枯(か)り草(くさ)@: 枯れ草。
枯(か)り国(ぐに)@: (名) 寒村。産物とくに農産物の豊かでない土地。枯れ国
の意。
彼(か)り此(く)り⓪: (名) [文]あれこれ。 @彼(か)り此(く)りぬ仕事
(しぐとぅ)。/あれやこれやの仕事。
枯(か)り葉(ばあ)@: (名) 枯れ葉。
枯(か)り果(は)てぃ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 枯れ果てる。
嘉例寄(かりゆ)し⓪: (名) [嘉例吉]めでたいこと。縁起のよいこと。 @誠(だ
んじゅ)嘉例寄(かりゆ)しや選(いら)でぃ指(さ)し召(みせ)る、船(うに)
ぬ綱(つぃな)取(とぅ)りば風(かじ)や真艫(まとぅむ)。[だんじゆ嘉例吉や い
れでさしめしやる お船の綱とれば 風やまとも]まことにめでたい旅行は、日を選
んでなさるので船の綱をほどくと風は順風。(旅人の無事を祈って一族が集まり、歌い
踊る時の歌。)
枯(か)り枝(ゆだ)@: (名) 枯れ枝。
枯(か)り⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @(草木が)枯れる。 ➁(声が)かれる。
軽々(かるがるう)とぅ@: (副) 軽々と。軽く。 @重物(ぅんぶむん)軽々(か
るがるう)とぅ持(む)ちゅん。/重い物を軽々と持つ。 @軽々(かるがるう)と
ぅ入(い)ってぃ呉(くぃれ)え。/(飯などを)軽くよそってくれ。
家禄(かるく)@: (名) 家禄。大名をはじめ、御会代人(ぅうぇえだいにん)[役人]
の与えられた録。
家禄持(かるくむ)ち@: (名) 家禄持ち。俸禄を与えられている家柄。
軽荷(がるにい)@: (名) 軽い荷。
軽(かる)⁼ぬん@: (自 ⁼まん、⁼でぃ) 分娩する。軽くなる意。
軽物(がるむん)@: (名) 軽い物。
軽業(かるわざ)@: (名) 軽業。放下(ほおか)、ともいう。
軽(かる)んじ⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 軽んずる。大事にしない。 @親(う
や)軽(かる)んじゆん。/親をそまつにする。 @命(ぬち)軽(かる)んじゆん。
/命を軽んずる。
借合(かれ)え分(わ)あきい⓪: (名) 家畜を共同で飼育して、利益を折半するこ
と。たとえば、豚を飼うのに甲が資金を出し、乙が飼育して、甲乙で利益を分け合う
など。
井戸(かわ)⓪: (名)[文] 井戸。口語は、井戸(かあ)。
代(か)わい@: (名) 代わり。代理。代用。
変(か)わいい事(くとぅ)@: (名) 変わった事。珍しい事。
変(か)わいい物(むん)@: (名) @変わったもの。珍しいもの。 ➁殊勝な者。
替(か)わい合(え)え⓪: (名) 交替。役目などの交替。 @替(か)わい合(え)
え為(しゅ)ん。/※動詞化。
渇(かわ)⁼ちゅん⓪: (自 ⁼かん、⁼ち) (のどが)渇く。おとなの語。子供なら、
渇(かあ)きゆん、という。
変(か)わった事(くとぅ)@: (名) @変わった事。珍しい事。 @何(ぬう)ん
変(か)わった事(くと)お無(ねえ)に。/何も変わった事はないか。 ➁とんで
もない事。思いもよらない事。 @「頼前(たんめえ)さい、飛行機(ひこおき)ん
かい乗(ぬ)み為候侍(せえびい)み。」「はあ、変(か)わった事(くとぅ)。」/「お
じいさん、飛行機にお乗りになりますか。」「おお、とんでもない。」
変(か)わてぃ@: (副) とりわけ。格別。特に。ことに。 @今日(ちゅう)や変
(か)わてぃ然(しか)らあしゃん。/今日は特別寂しい。
変・代・替(か)わ⁼ゆん@: (自 ⁼らん、⁼てぃ) @変わる。変化する。また、異な
る。 @年(とぅし)ぬ変(か)わゆん。/年が改まる。 @主(ぬうし)ぬ変(か)
わゆん。/主が変わる。 @昔(んかし)とぅ変(か)わらん。/昔と変わらない。
@沖縄(うちなあ)とぅ変(か)わゆん。/沖縄と違っている。 ➁代わる。入れ替
わる。交替する。違(ちが)あゆん、ともいう。
変(か)わる目(み)御門(うじょお)⓪: (名) 首里城の門の名。御城(うぐすぃ
く)、の項参照。 *混効験集:乾巻・家屋に、かわるめのおちやう、とある。
寒(かん)⓪: (名) 寒。寒さ。 @今日(ちゅう)や寒(かん)ぬ有(あ)っさあ
やあ。/きょうは寒いねえ。 @大和(やまとぅ)ぬ寒(かの)お沖縄(うちなあ)
とぅ変(か)わゆんどお。/日本本土の寒さは沖縄と違うぞ。
勘(かん)⓪: (名) 勘。さとり。 @勘(かん)取(とぅ)ゆん。/さとる。了解
する。
羹(かん)@: (名) 羹(かん)。羊羹の類をいう。米羹(くみがん)[米の粉の羹]、
豆羹(まあみがん)[小豆の羹]など。
斯(か)ん⓪: (副) こう。かく。かように。 @斯(か)ん成(な)たる上(ぅう
ぃ)や仕方(しかた)無(ねえ)ん。/こうなった以上しかたがない。 @斯(か)
ん来(くう)わ。/ちょっと来い。子供を呼ぶ時にいう。 @斯(か)ん来(ちゃあ)
んでぃ。/ちょっと来て見ろ。斯(か)ん来(くう)わ、と同じ。
龕(がん)@: (名) 龕(がん)。葬式の時、死者の棺を入れて墓地まで運ぶためのも
の。四人でかつぎ、さらに、二、三人補助する者がつく。 ※共通語の龕(がん)と
は、大分異なったもののようである。
斯(か)ん斯(か)ん⓪: (副) こうこう。かくかく。 @斯(か)ん斯(か)んな
事(くとぅ)ぬ有(あ)たん。/かくかくのことがあった。
考(かんげ)え⓪: (名) 考え。思考。考案。
考(かんげ)え物(むん)⓪: (名) 考えごと。
考(かんげ)え⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) @考える。思案する。 ➁世話する。
面倒をみる。 @彼(あ)りが事(くとぅ)考(かんげ)ゆん。/あの人の世話をす
る。
頑為(がんさ)あ@: (名)大根根頑為(でえくにがんさ)あ、と同じ。 ※頑固者。
鑑札(かんさつぃ)@: (名) 鑑札。営業免許証などを書いた札。
神里(かんざとぅ)⓪: (名) 神里。 ※「かみざと」、島尻郡南風原町の地名。南風
原町の南端である。 *おもろさうし・412に、かみ里、とある。おもろさうし原
文の漢字表記はめずらしい。
斯(か)んし⓪: (副) かように。こんなに。<斯(か)ん+為(っし)[して]。 @
斯(か)んし難儀(なんじ)やんでえ思(うま)あんたん。/こんなに難儀だとは思
わなかった。
被(かん)じ⓪: (名) @たてがみ。 ➁とさか。
被(がん)し縄(な)⓪: (名) 女が荷物を頭にのせて運ぶ時、荷物の下に敷く丸い
輪。荷の座りをよくし、頭の痛くなるのを防ぐもので、たいていは藁で編んだもの。
転じて、西瓜などの下に敷くものをもいう。 ※被(かん)し縄(なあ)、が変化した
語であると推測する。
被(がん)し縄小(なぐぁあ)火付薬(ひょおちゃく)⓪: (名) うず巻き花火。ね
ずみ花火。
被(がん)じ目(み)@: (名) 釘抜き。
被(かん)じ物(むん)⓪: (名) @頭にかぶるもの。 ➁夜、体をおおうもの。ふ
とん。夜具。
鍛冶屋(かんじゃあ)⓪: (名) 鍛冶屋。鍛冶を業とする者。
鍛冶屋家(かんじゃあやあ)⓪: (名) 鍛冶小屋。
頑丈(がんじゅう)⓪: (名) 頑丈。強健。丈夫。 @御頑丈(うがんじゅう)遣召
候侍(やみせえいびい)てぃい。/御壮健でいらっしゃいましたか。
頑丈(がんじゅう)ぎさん⓪: (形) 強健らしい。丈夫そうである。
頑丈者(がんじゅうむん)⓪: (名) 頑丈者。強健な者。
斯(か)んしゅか⓪: (副) これほど。かほど。 @貧相(ふぃんすう)や斯(か)
んしゅか苦(くり)しゃんでぃせえ今(なま)どぅ分(わ)かゆる。/貧乏はこれほ
ど苦しいのだということが、今になってわかった。
斯(か)んしゅか幅(わあ)き⓪: (副) これほどまで。 @斯(か)んしゅか幅(わ
あ)き難(むつぃか)しい物(むん)やんでえ思(うま)あんたん。/これほどまで
にむずかしいものとは思わなかった。
被(かん)し⁼ゆん⓪: (他 ⁼らん、⁼てぃ) かぶせる。かぶらせる。 @帽子(ぼお
し)被(かん)しゆん。/帽子をかぶらせる。 @恩義(うんじ)被(かん)しゆん。
/恩を着せる。
斯(か)んしゅん⓪: (自・不規則) 斯(か)ん、と、為(しゅ)ん、のつまった形。
こうする。
勘定(かんじょお)⓪: (名) 勘定。金銭の計算。算明(さんみん)、ともいう。
勧進(かんじん)⓪: (名) [肝煎] 葬式の時、一切の世話をする世話役。隣近所
の人が受け持つ。
髪剃(かんす)い⓪: (名) かみそり。
髪剃(かんす)い使(づぃけ)え⓪: (名) かみそりを使うこと。かみそりの使い方。
翡翠(かんじゅやあ)⓪: (名) かわせみ。もと、翡翠(かんずい)、といった。
被(かん)⁼じゅん⓪: (他 ⁼だん、⁼てぃ) @かぶる。 @帽子(ぼおし)被(かん)
じゅん。/帽子を被る。 ➁(負債などを)負う。損をする。 @債(しい)被(か
ん)じゅん。/負債を負う。 @元(むうとぅ)被(かん)じゅん。/(商売で)元
がとれずに、損をする。 B(接尾)いっぱいに〜する。こぼれるほど〜する。 @
咲被(さちかん)じゅん。/咲きこぼれる。 @笑(われ)え被(かん)じゅん。/
盛んに笑う。笑いこぼれる。 など。
鍛冶細工(かんぜえく)⓪: (名) 鍛冶屋。また、いかけ屋。鍛冶屋(かんじゃあ)、
ともいう。
鍛冶細工(かんぜえく)う⓪: (名) 鍛冶細工(かんぜえく)、と同じ。
甘草(かんぞお)⓪: (名) 甘草(かんぞう)。あまぎ。薬草で、産婦の乳が出るまで
の間、煎じて産児に飲ませたりする。
蔓(かんだ)⓪: (名) @かずら。つる草の類。 ➁甘藷。さつまいも。その植物と
しての名。また、そのつる。根は、芋(ぅんむ)、という。 ※「かんだ」と「かずら」
は音が似ているが語源的には別の語らしい。 *混効験集:坤巻・草木に、かむだ、
とある。
髪平(かんたあ)⓪: (名) おかっぱ。少女の髪型。髪を結うまでにならない年ごろ
の、耳のあたりまで垂らして切った髪。また、おかっぱ頭をした平民の少女。また、
おかっぱ頭の少女(士族)をその家族の者などが呼ぶ語。召使が呼ぶ場合には、敬語
にして、髪平(かんとぅう)、という。貴族の少女の場合は、髪平前(かんとぅうめえ)、
という。
蔓葉(かんだばあ)⓪: (名) さつまいもの葉。
蔓骨(かんだぶに)⓪: (名) さつまいもの茎。⁻ぶに<ふに(骨)。
奸智(がんち)@: (名) 悪知恵。 @奸智(がんち)喰而居(くぁとお)ん。/悪
知恵をもっている。 @奸智(がんち)な者(むん)。/悪知恵のある者。奸智(がん
ち)ゃあ、ともいう。 ※琉球語はけっこう多くの漢語を取り入れていると思う。
寒菊(かんちく)⓪: (名) 寒菊。茎や葉を茶に入れて飲み、その風味を愛する。
⁻かんてぃい: (接尾) 〜しかねること。〜できかねること。 @待(ま)ち不可(か
ん)てぃい。/待ちかねること。 @言(い)い不可(かん)てぃい。/言いかねる
こと。 @行合(いちぇ)え不可(かん)てぃい。/会いかねること。届きかねるこ
と。 など。
奸智喰(がんちくぇ)え者(むん)⓪: (名) 悪知恵のある者。奸智(がんち)ゃあ、
ともいう。
勘違(かんちげ)え: ⓪: (名) 勘違い。
奸智(がんち)ゃあ⓪: (名) 悪知恵のある者。奸智(がんち)喰(くぇ)え者(む
ん)、ともいう。
眼鏡(がんちょお)⓪: (名) 眼鏡。めがね。目鏡(みいかがん)、ともいう。 ※音
読み「がんきょう」が変化した語であろう。
髪(かん)とぅ⓪: (名) 髪(からじ)、の卑語。
髪平(かんとぅう)⓪: (名) 髪平(かんたあ)[おかっぱ娘]の敬語。召使などが主
人のおかっぱ娘を呼ぶ語。
髪平前(かんとぅうめえ)⓪: (名) おかっぱ[髪平(かんたあ)]にした貴族の娘を
召使などが呼ぶ敬称。
髪(かん)とぅ組合(くうめ)え⓪: (名) 髪のつかみ合い。女のけんかをいう。
勘遠(かんどぅう)⓪: (名) 鈍感。勘が鈍いこと。
頑鈍(がんどぅ)⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ) 元気をなくして、しょんぼりとする。
がっかりする。
寒豆腐(かんとおふ)⓪: (名) 焼き豆腐。路上で女たちが扇をはたはたさせて焼き
ながら売っていた。焼(や)ち豆腐(どおふ)、ともいう。
カンナ⓪: (名)[新] カンナ。だんどく。カンナ芭蕉(ばしゅう)、ともいう。
漢那(かんなあ)⓪: (名) 漢那。 ※「かんな」、宜野座村の地名。
必(かんなあ)じ@: (副) 必ず。必(かんな)じ、必(かなら)じ、ともいう。
雷(かんない)⓪: (名) かみなり。
必(かんな)じ@: (副) 必(かんなあ)じ、と同じ。
堪忍(かんにん)⓪: (名) 堪忍。
肝要(かんぬう)@: (名) 肝要。 @肝要(かんぬう)な物(むん)。/肝要なもの。
かなめとなる大切なもの。
斯(か)ん成(ねえ)る⓪: (連体) かような。こんな。斯成(かねえ)る、ともい
う。文語は、斯成(かね)る。 @斯(か)ん成(ねえ)る物(むん)。/こんなもの。
また、こんなつまらないもの。こんなやつ。
旱魃(かんぱち)@: (名) はげの一種。頭の傷跡などにできて。赤く光る。震(ふ
でぃ)い、ともいう。 @震(ふでぃ)い旱魃(かんぱち)御月夜(うつぃちゅう)
上(あ)がらち夕版(ゆうばん)喰(くぇ)え。/はげはげ、お月さまを上がらせ光
らせて、夕飯を食え。(はげをからかった童謡の文句)。 ※震(ふでぃ)い、はもと
もと稲妻のことである。かんぱち、の語源が旱魃(かんばつ)だとすれば、この童謡
ははげをからかったものではないようである。
看病(かんびょお)⓪: (名) 看病。 @看病(かんびょお)為(しゅ)ん。/※動
詞化。
勘弁(かんびん)⓪: (名) 勘弁。他人の過失を許すこと。
髪封(かんぷう)⓪: (名) 男の子の髪型。髪が短くて結えない場合に、折りまげて
小さく結うもの。女の子のそれには、端結(はあゆうい)い、という。また男の子が
4〜5歳ごろ入れ髪をして結うものは、入(い)り髪(がん)端結(はあゆうい)い、
という。
構遣(がんま)り⓪: (名) いたずら。また、ふざけること。 @手(てぃい)ぬ構
遣(がんま)り。/手のいたずら。
冠(かんむい)⓪: (名) かんむり。頭にかぶるもの一般。帽子。
癇虫(かんむし)⓪: (名) 虫気。体質の弱い幼児のひき起こす癇。
龕家(がんやあ)⓪: (名) 龕(がん)、を納めておく小屋。
寒露(かんる)⓪: (名) 寒露。二十四節の一つ。沖縄で鷹の渡る季節である。
寒露(かんる)う⓪: (名) 寒露(かんる)、と同じ。