表紙 前文

 

 ?あ ?い 'い ?う 'う ?え 'え ?お 'お                     

 

 カタカナ語について述べたいと思う。あからさまなイアリングをしている女性が私の会社にいる。このイアリングという言葉、以前は何と言っていたのか知らない人が多い。「耳輪」である。(耳飾りという語もある。)「耳輪」というとあからさまに笑う人がほとんどであるが、「ear ring」を日本語にすると「耳輪」になるのである。耳輪がおかしいなら「指輪」もおかしいはずであるが、これはあいかわらず日本語のままである。同様に「浮輪」という古風な日本語が健在で、いつカタカナ語になってもいいような言葉である。昭和半ば以前までは、「耳輪」というのはごくふつうの言葉で、私に言わせればこの言葉があったことすら知らない人がいることのほうが不思議である。小津安二郎の映画で原節子がたしかに「耳輪」と言っているのである。それではネックレスは日本語で何というのであろうか。「首飾り」である。さすがに「首輪」とは言わないようであるが、私の祖母はネックレスのことを「首輪」と言っていた。グレンミラーの曲に「真珠の首飾り」があり、ザ・タイガースの「花の首飾り」は、1968年の曲である。指輪という日本語が残り、イアリング、ネックレスというカタカナ語が日本語にとってかわる。日本語がカタカナ語に変化する基準となるものは何であろうか。とても興味深い。「指輪」がおかしくなく「耳輪」がおかしいのはなぜか、その基準は何か、これも興味深いことである。簡単に言えば、使う人の数が多いか少ないかであろうが、何パーセントの人が使えばおかしくなくなるのであろうか。最初にイアリングという語が使われ始めた時にはかなり違和感があったと思われるが、何パーセントぐらいの人がこの語を使うようになってから違和感がなくなり始めたのであろうか。ピアスが女性にはやりだしたころは、偏見を持つ人がかなりいたが、現在ピアスをする女性に抵抗感のある人はほとんどまったくいないような感じである。何パーセントの女性がピアスをするようになってから違和感がなくなったのか。社会的風習の流行と言語現象は関係があるようである。ところで、沖縄の女性にはハジチという風習があった。漢字で書くと、針突(はぢ)ち、となる。(針の「ri」の「r」がなくなり、次に「i」が消滅したと推測される。)いわゆる入れ墨、彫り物、タトゥーのことである。魔よけ、婚姻の通過儀礼の意味などがあるといわれるが、要するにかっこよかったのであろう。昔の沖縄の女性は確かにハジチ(タトゥー)にあこがれを持っていたようであり、男性のほうもそうであった。私の祖母にも手の甲にハジチがあって、学校の参観日に祖母が来ることがあったが私自身には何の抵抗感もなかったし、まわりもたしかそうであった。高校生の女の子で上腕の目立つところにタトゥーをしている、いわゆる、ヤンキーがいたりして、両親・親戚などは心労のようであるが、ハジチとタトゥーのどこに違いがあるのであろうか。1899年に日本政府によって「文身(いれずみ)禁止令」が出ることによって、入れ墨が社会的なアウトサイダーとなってしまったいきさつがある。現在、タトゥーは別に犯罪行為でもなんでもないのであるが、これだけ自由主義な社会になった今でも抵抗感・違和感のある人が多いのはなぜか。これもやはりパーセントの問題であろうか。言語現象と似たようなところがあるのかもしれない。(ちなみに、文身は「いれずみ」と読み、漢字の「文」は、白川静によれば、もともとは「いれずみ」をかたちどった象形文字らしい。私がいまここに書いるのは、文・ぶん、であると同時に、文・いれずみ、ということになる。)(もうひとつちなみに、谷崎潤一郎に「刺青(しせい)」という小説がある。何度も映画化された。これをあやしげな小説と思っている人が多いようであるが、きわめてすぐれた文学である。)

 

   ね

 

鳴(ね)え⓪: (名) 地震。 @鳴(ね)えぬ寄(ゆ)ゆん。/地震が起きる。

苗(ねえ)⓪: (名) 苗。

似合(ねえ)@: (名) 似合い。似合うこと。ふさわしいこと。つりあうこと。似合

(にえ)え、似合(にいえ)え、ともいう。 @良(い)い似合(ねえ)やさ。/よ

い似合いだ。

‐様(ねえ): (助) (〜する)ように。(〜したごとく)比喩の場合に用いる。 @

貧相者(ふぃんすうむん)ぬ鷹(たか)貰(いぃい)たん様(ねえ)。/貧乏者が鷹を

もらったように。 @湯水(ゆうみずぃ)使(つぃか)ゆんねえ銭(じん)使(つぃ

か)ゆん。/湯水を使うように銭を使う。 @虹(ぬうじ)ぬ立而居(たっちょお)

ん様(ねえ)っし清(ちゅ)らさたん。/虹が立ったようにきれいだった。

未(ね)え来(か)⓪: (名) @今晩。今夜。きょう来るべき晩をいう。すなわち、

朝・昼に今晩についていう語。未(ね)え来(か)ぬ夜(ゆる)、ともいう。夜に今晩

のことをいう時には単に、来了(ちゅう)[きょう]を用いる。 ➁死後。死んだあと。 

@未(ね)え来(か)為(っし)呉(くぃ)ゆる人(っちゅ)ん居(うぅ)らん。ま

たは、未(ね)え来(か)成(な)てぃ後(あとぅ)為(っし)呉(くぃ)ゆる人(っ

ちゅ)ん無(ねえ)らん。/ともに、死んだあとを見てくれる人もいない。 ※トー

トーメーを見てくれる人がいないということである。

萎(ね)えがあ⓪: (名) 萎(ね)え具(ぐう)、の卑称。萎(ね)えぢゃあ、ともい

う。

萎(ね)え具(ぐう)⓪: (名) 足の働きが不自由なもの。びっこ。ちんば。具(ぐ

う)萎(な)あ、ともいう。<萎(ね)えじゅん。

内証(ねえしゅう)⓪: (名) 内証。内密。 ※共通語の内証(ないしょう)は、も

ともとは仏教用語であり、ないしょ話の、「ないしょ」は内証の縮まった形である。

内証話(ねえしゅうばなし)⓪: (名) 内証話。

萎(ね)えぢゃあ⓪: (名) 萎(ね)えがあ、と同じ。

萎(ね)えぢゅん⓪: (自 ⁼がん、⁼ぢ) 「蹇ぐ」に対応する。足が不自由で歩行で

きない。 ※「蹇(な)ぐ」と読むようであるが、日本国語大辞典には載っていない。

「蹇」は音読みは「ケン」で、訓読みは「あしなえ」である。「あしなぐ」という共通

語は存在しないようである。 

根切(ねえち)り@: (名) 着物のあげ。縫いあげ。

内通(ねえつう)@: (名)[文] 内通。 @色々(いるいる)に言(い)い回(まわ)

ち落着(らくちゃく)ゆ為(し)みてぃ、文(ふみ)ぬ通(かゆ)わしに内通(ねえ

つう)ゆ為(すぃ)りゆ。[色々に言ひまわち 落着よしめて 文の通はしに 内通よ

すれよ(忠臣身替)]いろいろに言い抜けて敵を安心させ、手紙で内通してくれ。 ※

忠臣身替(ちゅうしんみがわり)は、辺土名親雲上(へんとなぺえちん)作の組踊で

ある。

似合(ねえ)とぅ代(けえ)とぅ@: (名) 似合い。似たり寄ったり。同じ程度。甲

乙なし。多くは、程度が低い場合にいう。 @似合(ねえ)とぅ代(けえ)とぅぬ夫

婦達(みいとぅんだ)。/似合いの夫婦。 @鈍(どぅん)なさあ似合(ねえ)とぅ代

(けえ)とぅ。/愚鈍さはどっちもどっちだ。

内々(ねえねえ)⓪: (名) 内々。ひそかに。 @内々(ねえねえ)行(い)ちゅん。

  /ひそかに行く。 @内々(ねえねえ)ぬ話(はなし)。

倣(ねえ)び@: (名) まね。動作・表情などのまね。すなわち、外面的なまねごと

をいう。一方、真似(まに)、は模倣して見習うこと。 @猿(さある)ぬ人(っちゅ)

ぬ倣(ねえ)び為(しゅ)ん。/猿が人まねをする。

内分(ねえぶん)⓪: (名) 内分。内々。公にしないこと。 @内分(ねえぶん)ぬ

話(はなし)。/内分の話。

担(ね)え真似(まい)@: (名) せがむこと。(子供が)ねだること。

縫(ね)え目(み)⓪: (名) 縫い目。

萎(ね)え⁼ゆん⓪: (自 ⁼らん、⁼てぃ)萎える。(草木などが)しおれる。しなびる。

活力がなくなる。 @太陽(てぃいだ)ぬ萎(ね)えゆん。/日ざしが弱る。

担(ねえ)⁼ゆん@: (他 ⁼らん、⁼てぃ) 差し出す。前に出す。突き出す。 @舌(す

ぃば)担(ねえ)ゆん。/舌を出す。 @手(てぃい)担(ねえ)ゆん。/手を差し

出す。手(てぃい)出(ぃん)じゃしゅん(手を出す)はけんかになる意。 @銭(じ

ん)担(ねえ)ゆん。/金を差し出す。

無(ねえ)らん⓪: (自・不規則) 無(ねえ)ん、と同じ。

無(ねえ)らん物(むん)⓪: (名) 無いものと思ってしまっておく物。金など、あ

  ると思うと使ってしまうので、無いことにして、大事にとっておくこと。

無(ねえ)ん⓪: (自・不規則) @ない。有(あ)ん[あん]の打ち消し。無(ねえ)

らん、ともいう。 @無(ねえ)有侍(やび)らん。/ありません。 @無(ねえ)

ん成(な)しゅん。/無くする。 @無(ねえ)ん成(な)ゆん。/無くなる。 @

無(ねえ)んやあ。/無いねえ。 @無(ねえ)んがやあ。/無いかなあ。 @無(ね

え)んが有(あ)ら。/無いだろうか。 @無(ねえ)ぬん有(あ)らん。/無くも

ない。 @読(ゆ)でえ無(ねえ)ん。/読んでない。[読(ゆ)でえん―読んである―

の打ち消し]。 @着物(ちん)ぬ着(ちい)様(よお)ぬ無(ねえ)ん、引(ふぃ)

ち着(ちい)皮(かあ)着(ちい)為(っし)。/着物の着かたがなってない、あっち

こっち引きつって。 @無(ねえ)さみ。[ないさめ][文語]ないだろう。 ➁〜し

てしまった。 @喰(か)でぃ無(ねえ)ん。/食べてしまった。 @読(ゆ)でぃ

無(ねえ)ん。/読んでしまった。 @何(ぬう)とぅんがなあし間違(ばっぺえ)

てぃ無(ねえ)むん。/何となしに間違えてしまったんだもの。